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42:問題山積

明日も16:00に更新します。

 村に戻って早々、俺はなぜか会社の名誉職モードに入ってしまったようだ。

 いわゆる、相談役ってやつだ。

 

 まずは、勝手に村作っちゃったけどいいのこれ?問題。

 「はい、良いです、終了。」

 簡単に済まそうとしたんだけど、やっぱりソンチョーは不安そうだ。

 「長老衆や識者がほっとけって言ってんだからいいよ、それで。

 そもそも、何か言って来ようにもここは王家も放棄したほどの無法地帯だしね。人が住んで魔物が減るなら喜びこそすれ文句つけてくる理由は無いっしょ。」

 「それはそうなんだけどねぇ。」

 まじめなソンチョーは、最悪のケースを捨てきれないみたい。

 確かに、本当の意味の危機管理って、最悪のさらに一歩先を想定して対応できるように準備しておくのが正しい在り方なんだろうけどね。でも、他のことでいっぱいいっぱいの現状では優先順位を下げてもいいと思う。

 「隣接してるコリント伯爵領もカルケール伯爵領も、魔物の氾濫には手痛い思いを何度もしてきただろうし諸手を挙げて喜んでいると思うよ。

 サンサテで聞いた話だとさ、最近コリント伯爵領で氾濫があったみたいだけど、ごく小規模で済んだんだって。で、実はこの村の影響だったって、まことしやかなうわさが出回っているみたいだからね。実際、ほぼ間違いなく大雨の日に出会った熊さんが原因だっただろうし。」

 「熊さん?」

 「そ、グレートベアにばったり出会っちゃって退治したんだけどさ、位置的に氾濫のあった近くだったんだよ。だから、たぶん氾濫も、それが小規模だったのもそのせいだと思う。」

 なんて、こともなげに告げるシン。

 「大雨って、結構前だよな。またオリヒメもカタコトだったし、レベル20以下だったんじゃないのか?無茶しすぎだろう。」

 ムスッとした表情でスロークが詰め寄る。

 「いや、雨宿りの準備してたら出くわしちゃったんだよ。で、いきなり壁ドンされちゃってさぁ、人間からもされたことないのに、まさかグレートベアからとはねぇ。」

 はぁ~っとため息を吐くスローク。

 「笑い話じゃ済まんぞ。」

 「まぁ、フブキもいたし、装備は自慢の逸品で固めてたからね、問題無く倒せたよ。」

 ソンチョーとスロークが呆れてる。

 いいじゃん、無事だったんだし。

 「とりあえずさ、何か言ってくるのがいたとしたら王家関係だろうけれど、かなり遠いみたいだしまだまだ時間がかかるでしょ。

 ちょっかいを出してくるにしても、街道がつながっているカルケール伯爵が守ってくれそうな気がするんだよね、森の脅威が減るかもしれないのに余計なことするなってさ。

 ってことで、この問題は誰かが何か言ってくるまで放置でOKで~す。」

 ソンチョーの不安を和らげられるようにカル~く言ってみたけどどうかな。無理か?

 「次に、ワタリビト増えすぎだけど、いかげん言い訳苦しいよネ問題ね。

 昨日話したことをブラッシュアップして、区画整理の理由とくっつけてアホ王のせいにしちゃおうね~ってことで、力業で押し切ろうよ。」

 うん、諸悪の根源ガイゼルヘルグには、迷惑をかけられてる分せいぜい利用させてもらうよ。どうせ誰にも確かめられないんだしね。

 「アオイさんがいたら、悪い顔してるってツッコミが入るところだね。」

 それツッコミなの?

 まぁいいや。 

 「移住して早々だけど、というかだからこそ、区画整理は今のタイミングがいいよね。」

 現状の地図を広げたテーブルを覗き込むシン。

 「移住者の多くがハンターや職人だろうと考えていたんだけどね。実際には、商人や農家の三男坊とか、要するに、親の跡を継げない独立を目指す若者がすごく多いんだ。」

 よく考えてみればそうだった。この世界ではまだ仕事自体が少ないし、学も無い以上わずかな希望に殺到するのは必然だった。それでも、移住してこれた者はまだ恵まれた環境にいただろう。なんせ、読み書きできることが条件だったからね、家がある程度裕福でなければ、そんな資金も余裕も無いだろう。

 危険とされる森の奥への移住だ。当然9割は男。女性は・・・バネッサクラスの方々だよ。職人さんの奥方だったり、が多いかな。

 う~む。男臭い村になりそうだな・・・。まぁ、発展して安全性が認知されれば若い女性も移住してくるだろう。

 それだけに、店を持ちたい、畑が欲しい、というものが多い。

 独立さえできれば、結婚への第一歩を踏み出せると考えている若者が多いようなのだ。

 「なけなしの資金で用意してきたのかもしれないけど、馬車とか荷車が想定以上に多く持ち込まれたんだ。中古の古いものが多くて、途中で壊れたり、道を譲れだのって争いで渋滞とかトラブってるんだ。」

 ソンチョーやスロークは、連日のようにトラブルの仲裁に出ているらしい。

 「原因は道幅が5mで想定してしまっていたことだね。

 だんだんと安全圏が広がっていくゲーム仕様の弊害だよね、狭いスペースに色々施設を作るために、まぁ道幅5mなら通りとして広いよね、それ以上だと施設入りきらないし、って感じで作ってきちゃったからね。」

 誰が悪いかというと、ゲームシステムが何だけど、それを言っても始まらない。

 「まぁ、まとめてアホ王のせいにさせちゃうとしようよ。」

 俺の案を原型に、ソンチョー、スロークとで矛盾をつぶして区画整理する理由もぶち込んで、混ぜてこねて揚げてみる。

 で、深夜まで続いた試行錯誤の成果は翌日発令されることになりました。

 文字読めることを移住の条件にしてあったのが良かったよね。説明は最低限で、後は張り紙しておけばOKなんだから。


 「珍しくも守護神像から警告が発せられた。」

 広場の壇上で集まった住人に演説を始めたスローク。

 「天空の大陸に現存する王国に危機が訪れたのだ。

 住民が原因不明の病に倒れだし、調査の結果魔素が原因だと分かったらしい。

 魔素の薄い天空に暮らしていたので、天空の住民は魔素に弱かったという結論にいたり、天空の国の王、ガイゼルヘルグが、解決のために禁術を用いて悪魔を召喚し、天空の大陸は救われた。

 しかし、その影響で世界中に異様な魔素の波が発生し、その影響を受けて突然特殊能力を持つものが現れてしまった。

 その特殊能力は守護神像の加護にも匹敵するものだが、誰彼かまわず発現してしまうようだ。

 先の襲撃者は、それによって力を得た者たちが原因だったのだ。

 そう、悪人が力を持つケースが出てしまっている。

 最近村に加入することになった特殊能力保有者は、悪人によって虐げられていた犠牲者だ。守護神像の求めに応じて救出して村に保護した。

 この先も、特殊能力に目覚めたけれどその事実に対応できず、悪人の被害にあっている特殊能力者を保護する可能性はある。

 さらに、特殊能力を持ってしまった悪人が世界中で問題を起こしており、再びこの村が脅威にさらされる危険性もあるので備えるように、という内容だ。

 これまで、村は守護神像の加護によって安全だった。それは、我々の脅威が魔獣だったからだ。しかし、人間には効果が無い以上、強力な力を持つ悪人が入り込んだら大きな被害が出るかもしれない。」

 ザワつく広場。

 スロークは少しの間沈黙して、ザワつきが落ち着くのを待ってから言葉をつづけた。

 「村を新たな脅威から守るため、大規模な移住が終わった直後だが、守護神像の警告に従って村の治安対策、防御を高めるために、大規模な区画整理を行うこととした。

 ちょうど、交通問題でのトラブルも報告が上がって来て対策を考えなければならなかったので、防御と交通、両方を解決したいと思う。

 新たに加わった特殊能力者の能力で、今住んでいる家、店舗はそのまま移築できるようになったので、とりあえず今まで通り過ごしてくれ。

 区画整理後の概要図は近日中に公開する。

 店舗、工場にできる地区も大幅に増やすことになるので、独立を考えていなら準備を始めてくれ。

 農地も拡大する。

 加護で与えられた食物を植えることになるので、農業に従事する者は一時的に村に雇用される形となるが、さらに拡大した時には畑の権利を所有することも可能だ。

 同時に警備兵の募集も行う。村を守るため、村の中でのトラブルを解消するために力を貸してほしい。」

 さすがスローク先生、長文を丸暗記で堂々とした演説でございました。 

 反応は千差万別、独立が現実味を帯びてきた連中は目を輝かせ、すでに安定している商店主などは不安げだ。家がそのまま移動できるといっても、そのまま言葉通り信頼はできないだろうしね。

 今までよい場所にいた人たちの中には、場所が変わることへの不満もあるだろう。

 新たな脅威への恐怖を感じている人もいるだろう。

 移住直後でこれなのだから、時間をかけなくてよかったよ。

 

 で、その後2日がかりで完成したランク4みどり村の区分け図がこれだ。


 挿絵(By みてみん)

 

 道は、商業地、工業地、各施設周辺は大きめの馬車が問題無くすれ違えて、歩行者も普通に歩けるように幅10m、中央に白線を引いて、左側通行にした。

 畜産と果樹園、糸を取るためのソリッドスパイダー繁殖用地も確保。実験用の施設とか、娯楽施設、警備のための施設に、学校。

 読み書きや簡単な計算など、基本的な学力を身に着けるための初等部と、職業訓練を行う専門部を予定している。年齢制限、学費無しだ。識字率と除算乗算程度まではみんなに身に着けてほしいからね。先生はソンチョー。

 ゲームじゃないのになぜか獲得していると思われるカテキョーチートがあれば、生徒の学習能力も格段に速いから、半年とか1年くらいで実用レベルになるだろう。

 専門部の内容、講師はまだ未定。将来の話だ。

 警備や役所とかに務めることになる職員用の寮は、男女に分けて部屋は狭く。余裕ができたら家の権利を買って引っ越せよ、と。同時に新しくやって来た住人たちの一時的な住まいとしても利用する。

 研修所は、この村に来たばかりの住人にこの村のルールとかを学んでもらう施設。

 一応研究所とかも確保してあるけど、まだ何も決まっていない。まぁ、将来を見越して場所だけ確保してあるって感じ。

 迎賓館、と言えば聞こえはいいけど、とりあえずお客さんが来た時の宿泊所兼、現地職人たちのガス抜き施設。思う存分腕を振るって、豪華な建物を作ってもらう。この村に来る職人連中は、小銭を稼ぐよりも腕を振るいたい、というタイプが多い。

 なので、村づくりが終わって仕事が落ち着いた後、存分に腕を振るって満足してもらう場所として迎賓館を依頼する予定。うん、これは完成しなくていいや。偉い人に来てもらいたいわけじゃないし。

 共同浴場は最重要施設。衛生的な生活は感染症予防にも重要だからね。浴槽にはばっちり浄化印を刻みこもう。

 図書館は一応確保しただけ。本なんてろくに無いし。

 卸売市場は実験的な設置。ハンターとか、商店とかとの直接取引の無い行商人、一般人などからの買い取りを一手に行い、村の商店や食堂、工房に卸す。ゼノにあった買取所の拡張版みたいな場所で、価格の安定化と利便性を追求したい。

 カブロの店は、一応いろいろ苦労もしてくれたようなので一頭地を確保した。他に申請のあった店舗はあらかじめ確保して、場所はくじ引きで決めさせる。くじ引きなら文句は出まいよ。

 飲食関係も、営業中のベリッサ食堂に酒場と、軽食を扱いたいと相談を受けていた2店舗を確保。後続は商業地の中からだ。

 ゴブリンやオークは、普通に居住地に住んでもらう。もちろん家の権利も買えるし店を始めるのも自由だ。オヤカタにトウリョー、オリヒメも同様で、俺の従魔というより、すでに村の住人だ。

 ちなみに俺は、しばらくは未使用地区に簡易拠点を設置して寝泊まりする予定だ。

 長屋は区画整理とともに役目を終える。

 そうなるとなんか、感慨深いな。

 

 そして、区画整理後の区分け図面公開だ。

 できるだけ大きく書いた図を、広場に作った掲示板に貼り付けた。

 入居先の奪い合いでしばらくはもめるだろうなぁ。

 がんばれソンチョー。

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