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35:森の家

4/19水曜日16時ごろ更新予定です。

よろしくお願いします。

 きれいに手入れされた広い庭には、様々な草花が植えられ、その奥には。いかにもファンタジー系の漫画やアニメに出てきそうな木造りの家が。

 年代物の平屋にはテラスがあって、軒下にはいろいろな草や花がぶら下がっている。

 庭では小さな、身長1mほどの草の塊でできた人形が何体も、トコトコと動き回っては植えられた草花の手入れらしきことをしている。

 ボーっと見ていると、家のドアが開いて女性が現れた。

 「いまさら探しに来るはずも無いと思っていたけれど。」

 厳しい表情で言うと、周囲の空気が変わった。

 人形たちが動きを止め、いっせいにこちらへ向きを変える。

 鳥肌が立つような寒気を感じた。

 「待ってください!敵意はありません。」

 ウシオが両手をピンと真上に上げて、無抵抗の意思を表現したので、俺もそれにならった。

 「この森で迷ってしまっていて。ここにきてしまったのは偶然なんですぅ。」

 必死に弁解するウシオ。う~ん、嘘ではないけど、こんな森の奥深く、隠れて暮らす女性・・・普通じゃないよね。

 "常識"さんも、ありえないと言っている。まだ信頼に足る"常識"さんではないけれど。

 でもまぁ、偶然でここに入れるわけが無いって、言われそうな気はしたけどそう言うしかないよね。だって、ここを見つけたのは間違いなく偶然だし。

 チートアイテム使ってだけど。

 「視覚操作と魔物除けだけでは足りなかったのね。」

 ん?視覚操作に魔物除け?すごい興味あります。

 「こんな深い森の中に迷い込むとは思えないけれど。」

 それはあなたもね。とは言えないか。

 葉っぱ人形がどれくらい強いのかは分からないけれど、数が多いな。

 「あぁあのですね、少し離れた場所に大きな洞窟があるんですけど、僕は、そこにいました。一人で。いきなりそこで気が付いて・・・そのですね。死に物狂いで何とか生きてこれたんですけど、こちらの、シンさんに助けてもらって、外に出ることができたんです。なのでその・・・僕はここがどこか知らないんです。」

 いや、そういうことじゃないんだけど。ただ、ウシオの必死さは伝わったようだ。女性は少し考えるそぶりを見せると、

 「いつからそこにいたのかしら?」

 そう聞いてきた。

 「へ?いつから?その、真っ暗な中で時間の感覚も無くて・・・。」

 「たぶん半年くらいか、俺も彼と似たような境遇でね、この森の中で気が付いた。秋になる前だった。それからいろいろあって、偶然発見した洞窟を迂回しようとしたけど落ちた。」

 隣でフブキがうなだれてしまった。いや、もう気にすんなって。

 「落ちた穴からは出られなかったんで、さ迷ってるうちに彼に助けられて、協力して脱出したところなんだ。」

 まぁ、信じてくれなくてもいいさ。とっととお暇します。

 「そう。やっぱりあの時の異変は彼の仕業なのね。」

 ん?異変と彼?

 ちょっと待て、話は変わった。ここでお暇するわけにはいかんぞ。

 「僕も彼も、この世界の人間ではありません。」

 そう告げると、ウシオがびっくりした顔でこちらを見てきた。

 うん、ここは言うべきだと思う。賭けだ。

 女性は考え込んでいる。

 信じなくても、興味を持ってくれればいい。

 そして、どうやら賭けには勝ったようだ。

 「まぁいいでしょう。王と関係ありそうには見えないし、とりあえずは歓迎しましょう。」

 そう言うと、一気に緊張感が消えた。人形たちも元の動きに戻っている。

 「いらっしゃい。私は家の外には出られないの。中で話を聞かせて。」

 そう言うと、女性は家の中へ入っていった。

 せっかくお招きいただいたので家の中へ、おぉ、魔女の家っぽい。

 ドライフラワーとでもいうのか、色とりどりの花が瓶に詰められていたり、天井から乾燥された草花がぶら下がっている。棚には乳鉢のようなものや粉の入った瓶、木箱などが詰まっている。

 丸いテーブルに小さな椅子が4つ、そのうち2つに座るように促されたので従うと、女性はガラス製のポットから木のカップに透明な液体を注ぐと、二人に出してくれた。

 「さて、あなたたちは何者?」

 女性も椅子に座り、同じ飲み物に口をつけた。

 エルフだ。

 そう思ってしまったのは、先の尖った耳がチラリと見えたからだ。

 美女だってのもあるけどね。

 10人見たら、10人が美女だと感じるだろう。

 ハリウッド女優のようなタイプの美女、という表現が一番近いか。長いストレートのプラチナブロンドに、堀の深い顔立ち、透き通るような白い肌ってやつだ。

 ちなみに、最近ラノベやアニメ界で勢力を拡大しているエロフ系ではない。元祖エルフ、王道な感じの女性だ。

 と、余計なことを考えてる場合じゃないな。

 「え~、自分達でも、よくわかってないんですよ。そもそも、異世界人って、信じます?」

 ひどい回答だとはわかってる。語彙力の無さは、レベルダウンで知識が下がってるせいだからってことでひとつ。

 「そう・・・あの人はまた、なにか起こそうとしているのね・・・。」

 そう言うと、女性は悲痛そうに目を閉じてしまった。

 そのまま沈黙・・・・

 ぬぅ・・・何か言うべきか?

 沈黙が耐えられぬ。

 隣のウシオに助けを求めようと視線を移すと、彼は真っすぐ窓の外を見ていた。おい!

 窓の外には、牛?

 よく知っている種類とは違うけど、牛っぽい何かが見える。

 あぁ、畜産関係でしたね、だからってこの雰囲気でそれはどうよ?空気読め!

 「あの、あの人というのがどなたのことかは分からないんですが、普通に生活していただけなのに、悪魔という存在?に突然拉致されて、自由にしろとこの世界に放り込まれまして。」

 沈黙に耐えられないし、異世界の牛にくぎ付けのウシオは当てになりそうもないのでとりあえずこの世界に来ることになったいきさつとかを話すことにした。

 特に、ウシオの境遇には涙がポロリと。

 「辛かったのね。」

 そう言って、ウシオの手を握る美女。

 牛のことも忘れてドギマギするウシオ。

 そんなやり取りをしつつ魔導地図というアイテムで森からの脱出を図っていたところ、違和感に気が付いてここにきてしまったことを伝えた。

 彼女は、この世界で言うエルフでは無いと言う。その祖先と言えなくもないかしら、と訳ありげに微笑んだ。

 日もだいぶ傾いてきたということで、夕食をごちそうになることになった。

 豆や葉、芋が中心の食事だったけど、久しぶりに落ち着いた雰囲気で美味しく頂いた。

 ん?

 美味しい?

 エグみが無い?

 あらかた平らげてからそのことに気が付いて、美女ノエルを凝視してしまった。

 「苦手なものでもあったかしら。」

 突然凝視した自分に不快感を示さず、不思議そうに見つめ返されてしまった。

 「いえ、とても美味しかったです。エグみが全くなかったんです・・・魔素抜きをご存じなんですか?」

 そう、この世界ですべてに含まれ、エグみの原因でもある魔素は、現状自分とスローク意外に対処できないはずだった。

 「そう・・・まだ外では対処できていないのね。」

 「はい。エグみの原因が魔素だってことも、自分と村の仲間以外にはまだ広がっていないと思います。」

 この世界の人々でも再現可能なら、世界中の食事情が大きく変わることになる。

 「私の家には、魔素が入ってこれないの。ここで取れたものだけで作っているから、魔素の影響を受けていないのよ。」

 なんと。

 魔素が無い空間が再現可能なのか。

 「私の家位なら問題ないけれど、魔素の無い空間を作るということは、追い払われた分魔素の濃い空間ができるということでもあるの。だから、多用することはできないし、維持するには相当な魔力が必要だから。」

 つまり、それさえクリアできれば利用できるってことだな。

 良いことを知った。

 その日は、そのままこの部屋に泊まらせていただくことになった。貯蔵庫から毛布を取り出して床にごろ寝。簡易拠点を出すのは控えたよ。

 

 食欲をそそる臭いで目覚めた。

 ノエルさんはすでに起きていて、朝食の準備をしてくれていた。

 朝食後には、ウシオが家畜を見せてほしいと願い出て、早々に家を出ていった。

 室内には二人。

 かなり確信に近いことも知っていそうだけど、どこまで話すべきか悩んでいた。 

 と、

 「あなた方をこの世界に呼び込んだのは、細身の白い悪魔ね?」

 何か察したのか、ノエルの方から話を振ってくれた。

 「はい。それと、黒くて丸い悪魔とも会いました。」

 自分が一度死んで、その先でうずくまる黒くて丸い悪魔に出会ったこと、その時の会話など、できる限り自分の解釈を省いて話した。

 「そうなのね。おそらく、という程度だけれど。」

 そう前置きをしたうえで、ノエルの知りえる情報と、自分が提供した情報、そこからノエルが出した推測を話してくれた。

 

【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】

相変わらず雑で下手な絵ですいませんノエルさんの家イメージです。


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