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26:春へ

週二で更新できるストックが無くなりました。

これからは週一更新を目標にすることにしました。

 時間にして1時間弱の闘争は終わった。

 当事者たちにとっては果てしなく長く感じたであろう1時間は、中枢の一人を失いながらも勝利に終わった。

 結局村の中での戦闘はほぼ無く、施設や住人に被害が出ることはなかった。

 とはいえ、その後が大変。

 9匹のデモンエイプに3桁ものヒエン。村人総出での解体作業が待っていた。

 得られるのは魔石と皮、肉はどちらも臭く、硬く食べられたものではないので、大きな穴を掘って焼却後埋められることとなった。

 4人の襲撃者は、村人の目の届かない場所で焼却して、迷彩男と同じ場所へ。弔う気はしなかったので、掘り起こした穴に雑多に放り込んで埋められた。

 シンの亡骸は、スロークのスキル、第3貯蔵庫に収められている。

 今のスロークには使えないが、エイルヴァーンには生命力が尽きて戦闘不能に陥った仲間を復帰させる魔法がある。

 大司教の魔法なので習得には転職やクラスアップをしていかなければならない。

 すぐに行動できない歯がゆさがある。

 エイルヴァーンには死亡というステータスが無い。生命力が0になっても、ステータスには戦闘不能と表記されるだけだ。だからすでに死亡しているシンに効果があるのか。それもスロークには不安だった。

 それでも、その希望にすがりたかった。 

 時間経過の無い第3貯蔵庫は、シン復活の希望を込めての措置だ。この中なら、遺体が傷むことも無い。

 村の住民たちには、重傷で絶対安静な状態だと伝えてある。死んだなどとは絶対に言えないが、長期に及ぶ可能性もあるので何か言い訳を考えないといけない。死者復活が可能だとなれば、シンの危惧していた宗教化が一気に進んでしまうかもしれないからだ。

 復活の可能性を示したことで、ふさぎ込んでいたユーシン達も、少しづつ元気を取り戻してきている。特にアオイは、自分のせいで助けられなかったのではないかとかなりのショックを受けていたので復活の希望にすがるしかない。不安要素は自分の中だけに収めようと、スロークは心に決めていた。

 彼が最後に残したメッセージ 魔物=魔石 スロークはすぐにその意図を察した。

 自分たちは魔物ではない。なぜなら、魔石が無いからだ。

 エイプに変身していた襲撃者との会話で、「自分は魔物なのか」と肯定しかけていたスロークだったので、一目で伝わるメッセージだった。

 あの時、「自分が魔物だったとしても気にはならない」と言っておきながら、このメッセージでホッとした自分に気が付いてあきれてしまった。まだまだ修行が足りない。

 シン復活のために、まずは遺体を保管できる方法を探さなければならない。

 転職すれば、レベルは1からやり直しだ。第三貯蔵庫は長期間使えなくなる。

 当然、過去貯蔵庫の中に遺体を入れておいたことは無い。

 もし、転職で使えない期間に何かあったら、という思いがスロークの転職をためらわせていた。

 冷凍という案もあったが、現状村に冷凍技術は無い。

 コールドの魔法でもできるのは氷、せいぜい0度までだ。水を瞬間的に凍らせる、という魔法なら、瞬間的に-40℃とかになったかもしれないが、あくまで何もないところに氷を作り出す、という種類の魔法だった。とうぜん遺体は冷凍することができないし、時間がたては溶けてしまう。

 マスターの氷系魔法も同じような状況だった。

 マスターがプレイしていたゲーム、マッキーアイランドには、死亡そのものが無かった。HPが0になっても戦闘後には復活するので、復活魔法は無い。

 アイテムを入れる魔法のカバンには、入れられるアイテムが決まっており、ゲームのアイテム以外入れられなかった。つまりここでは役に立たない。

 アオイもストレージ機能があり、時間停止のような機能、というかゲーム自体に食物が傷むという概念が無かったが、素材しか入れられない。

 八方ふさがりとなり、新たにプレイヤーを探して招く、という案も含めて、長期戦で、慎重に進めることになった。

 そこから派生して、プレイヤーという呼び方はどうなのか?という声が上がった。

 元々は迷彩男が言っていた呼び方だし、仲間の襲撃犯たちもそう言っていたので、何となく嫌だ。という声が出たのだ。雑談交じりに話し合った中で、とりあえずは、異世界から渡ってきた人、ワタリビトで統一することになった。

 ユーシンの「クソ悪魔拉致られ会」は即刻否決された。

 魔物に関しても、村にいるゴブリンやオークたちとデモンエイプのような魔物を一緒にするのはなんか嫌だ。という理由で、意思疎通ができて、協力も可能な魔物を「魔者」、それ以外を「魔獣」と呼ぶことにした。

 ワタリビト間の取り決めだけど、魔物の呼び方は村の住民に周知していきたいところだ。

 

 村は春へ向けて急ピッチで建築が進んでいる。

 シンの従魔だったオヤカタ達は、そのまま村に残っている。

 スキルは失われ、流暢だった言葉にもたどたどしさが感じられるようになったが、それまでに村の面々とかわしてきた関係性は変わらず、そのまま残ってくれたようだ。

 スキルによる超絶な正確性や速度といった恩恵は無いが、身に着けていた技術力などはしっかり受け継ぎ、それぞれが村の仕事に従事してくれている。

 オークのグラン族一行は、パラミドとお付きのパナ、パトを残して村を出た。

 バラバラになった民を探し出して、村へ案内するためだ。どれだけ生き残っているかも分からない中での捜索なので、数年がかりとなるだろう。その間パラミドたちは、オリヒメと服飾班として働いてもらうことになっている。

 食べものの魔素抜きもスロークが受け継いでいるし、酒の研究も、忙しい合間を使ってマスターが取り組んでいる。

 シンの貯蔵庫に入っていた建材も、紛争前に貯蔵庫からあらかた運び出されており、ゴブリンのンダバたちが仕分けを進めている。

 何の問題も無い。

 ふと、背筋に冷たいものが走った。

 シンがいなくても、村づくりは滞りなく進んでゆく。

 彼は、そのことに気が付いていたんじゃないのか。

 いや、そう仕向けていたんじゃないか。

 自分はいなくてもいいなんて、そんなことを考えて、一番危険な場所へ向かったのではないか。

 それこそスロークが勝手に思ってしまったことだけれど、的を射ているような気がしてならない。

 考えてみれば、迷彩服の男の襲撃時も、彼は一番の問題を引き受けて村から出て行こうとしていた。

 無性に怒りが込み上げてきた。

 勝手すぎる。

 シンがいなければ、ここは村にすらなっていなかっただろう。

 それなのに、与えるだけ与えて消えてしまおうとするなんて。

 許さない。

 何が何でも生き返らせて、文句を言ってやらねば気が済まない。

 そんなことを考えながら、日課の巡回をする。

 ユーシンとユーキ、ライアーは、暇を見つけては模擬戦を繰り返している。

 もう誰一人死なせないと、自己鍛錬に余念がない。

 スロークが転職することで一気に低下する防衛力を補うつもりのようだ。

 三人は村周辺の巡回と魔獣の駆除も始めている。そのうち自警団とか組織しそうだな。

 襲撃者の一人を軟禁していた倉庫は、改装して診療所として利用することになった。

 診療所には連日職人やハンターたちが押しかけ、マナが対応に追われている。

 マナのレベルアップに伴い、サポート用の施設が解放された。

 その中でも、回復用の医療ポッドが現地の住人にも利用可能だと分かって、診察室に設置され、マナが仮の医師として就任している。

 どうも、マナ目当てで必要のない連中まで通っているようだ。過労で倒れないうちに、何か対策を考えた方がいいかな。ソンチョーに相談してみよう。

 村の食を一手に手掛けるマスターもかなりの過剰労働といえる。弟子たちが育ってきているとはいえ、メイン料理やメニューなど、負担は大きい。春には解決しそうだけど、それまでは彼に頼らなければならない。こちらもソンチョーに相談して対策を考えないと。

 そんな中、あいかわらずのんびりと暮らすユーコ。日中は子ゴブリンたちの世話を、というか戯れ、隙を見つけては日向で寝ている。そして夕方からは食堂で給仕の手伝い、夜は酔っ払いの介抱と、食堂にとって、なくてはならない存在になってはいたが、あれ以前とあまり変わった様子はない。まぁ、自分にそう見えているだけで実際にはいろいろと頑張っているんだろう。あの戦いで彼女のすごさをしっかりと認識できたから、そう思えるようになった。

 クリフトとソンチョーは村の開拓、特にインフラ整備にかかりきりになっている。

 忙しくすることで辛さを振り払おうとしているようで、時折心配になるほど集中していた。

 「シンさんが起きてきたら唖然とするほど発展させる」なんてソンチョーが言っていたな。

 意外なのがアオイで、日中は道路やインフラ整備の手伝いをして、夕方からは籠って鍛冶に打ち込んでいる。何としてもちゃんとした日本刀を作りたいらしいが、現状あまりうまくいってないようだ。

 それぞれが一歩ずつでも、確実に前進していた。

 春へ。

 

 オッサン死んじゃいました。

 週2の定期で更新できるのはここまでです。

 続きは週一を目標に、土曜か日曜に更新していければ良いな、と妄想しています。

 

 

 いいね、ブックマークなどありがとうございました。

 誤字報告、ありがとうございました。自分で何度も読み返していた部分でもあったりして、驚きと恥ずかしさであたふたでした。

よろしければ、これからもお付き合いください。


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