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24:決戦<第二ラウンド>

水曜日と土曜日、16時ごろ更新予定です。

よろしくお願いします。

 いつ飛んでくるか分からない土塊に意識を取られ、目の前のエイプに集中できないマナは、ジリジリと追い込まれていた。

 精彩を欠いたマナのブレードでは、深手を負ったエイプにすら届かなかった。

 高威力のビーム砲も、もし外してライアーに当たったら、と、使うことができない。それほど余裕が無くなっていた。

 普段のマナなら、ライアーの位置を補足して絶対邪魔をしない位置で撃つことなど容易いことなのに、完全に自分を見失っていた。ほんの少し余裕があれば、土塊を投擲したエイプが、姿を消したスロークと交戦中なのにも気が付いていただろうに。

 右腕の復活でエイプを圧倒していたライアーも、マナの異変に気が付いた。

 その一瞬のスキを見逃さず、エイプの拳が襲い掛かった。

 咄嗟にガードしたものの、バランスを崩して落下してしまうライアー。

 そんな二人の間を、大きな毛玉が弾丸のように突き抜けていった。

 弾丸は奥にいたエイプに衝突すると、真上にポーンと飛び上がって、少し後ろの地面に降りた。

 「むふふぅ。ここはぁ、ユーコちゃんにお任せなのですぅ。」

 そこには、背中から無数の長いトゲを生やした、直立する猫がいた。

 「猫にヤマアラシのトゲって、無茶するなぁ。」

 (すっかり忘れてたけど、ユーコってヤマアラシだったんだよな。)

 トゲ猫は再び体を丸めて弾丸のようにエイプに襲い掛かると、エイプと周囲の木を使ってピンボールのように飛び回ってはエイプに攻撃を繰り返した。エイプですらついていけないほどの速さで縦横無尽に飛び掛かるユーコに、完全に翻弄されている。

 「こっちはぁ~まぁかせてぇ~~。」

 動きとセリフがあっていない。そんなユーコに、思わず吹き出してしまった。

 落ちた時についた土をはらうと、呆然としているエイプに意識を戻した。

 (まぁ、こいつにとっても異様だよな。)

 木の上で飛び回る弾を見ていたエイプだが、すぐに我に返ると、ライアーめがけて頭上から襲い掛かってきた。

 その瞬間、ライアーの体が炎に包まれた。

 炎に驚いたエイプが振り下ろそうとした腕を引っ込めると、空いたみぞおちに、真上を蹴ったライアーの足がクリーンヒットした。

 炎に包まれるエイプに、反撃のいとまを与えずに連続技を叩き込む。

 炎によるダメージは、実は見た目と違って大したことが無い。デモンエイプにはほぼ効果無しと言っていい。それでも使ったのは、炎で相手を驚かせ、その炎に包まれたことで起こる数秒の拘束、さらに現実では心理的な影響が大きいからだ。

 (これがゲームじゃ味わえない駆け引きだよな。)

 連続技を決めてデモンエイプを仕留めると、ライアーは迷わずユーコの元へ向かった。

 スピードで圧倒していてもダメージになっていないことが分かったからだ。エイプの傷は、スロークに付けられたもの以外見当たらない。動きに慣れられたら、ユーコでは太刀打ちできない。

 スロークに対してのアピールでもあった。ここはもういいと。

 ライアーの炎に驚いたのは、マナと対峙していたエイプも同じだった。

 ビクッと体を震わせ、一瞬意識がライアーへ向く。

 マナも、その隙を逃さなかった。

 ユーコの登場に安堵して、冷静さを少し取り戻せたことが大きい。

 メガブレードを再度発動して、デモンエイプめがけて飛び込む。

 我に返って、避けるのは無理と。拳で迎撃するエイプ。その拳が当たる寸前、体を右回転させて躱すと、エイプの胸に肘打ちするように巨大化したブレードを叩き込んだ。

 これで3対1。

 完全に形勢逆転、マナも迷わず最後の一匹を仕留めにかかった。

 

 3匹目も仕留めると、ライアーの炎が消えた。どうやら、火に強い服は間に合わなかったようだ。

 「あららぁ?ライアーちゃんってぇ、女の子でしたっけぇ?」

 あいかわらず隠そうともしないライアーの股間には、以前あったものが無くなっていた。

 「切り落とされちゃたまんないからね。」

 と言ってマナをどや顔で見るライアー。

 「どうでもいいけど服は着なさい。露出狂は男女問わず犯罪です。」

 そう言うと、木陰に隠してあったローブを取り出した。ライアーと組むとなった時から用意して、戦闘前に隠していたのだ。

 「さて、次はどうしようか?」

 ローブを着ながら、次のターゲットを考えるライアー。

 「君はとりあえず村へ戻ってちゃんとした服を着てきなさい。」

 「あ~、さすがにシンさんのローブ燃やしちゃまずいか。」

 燃やす気だったようだ。

 「最初から脱いで戦った方がいいのかな。服燃やさなくて済むし。」

 「君、本当にそっちの趣味の人?なら早急に村を出てほしいんだけど。」

 「すっぽんぽんはだめぇ~ですよ。」

 ユーコの背中に生えていたトゲはすっかりなくなっている。マナのブレードと同じで、戦闘時にだけ生えてくるようだ。

 「はいはい、わかったよ。とりあえずソッコーで服着てシンさんの加勢に行くかな。」

 そう言うとライアーは村へ向けて歩き出した。

 「ユーコはぁ、アオイちゃんが心配なのでそっちへ行きますぅ。」

 「そう言えば、なんであなたがここにいるの?アオイも一緒にユーキと監視してるんじゃ。」

 「それはぁ、おとめの秘密なのですぅ。」

 そう言って村の方向へと走り去ってしまった。

 「オトメって・・・猫でしょ・・・あ!」

 思い出した。余裕があれば、魔石はとっておいてと言われたんだった。

 ライアーがおとなしくしたがったのは、やりたくなかったからか。

 ポーションで傷は治っても、疲労感は癒せない。2度のメガブレードで疲れてはいたが、高額になるとも聞いていたし、毛皮も魔物除けにいいから。

 苦労して3匹の死体を障壁の中に押し込んだ。

 後でライアーにやらせる。絶対やらせる。

 (シンさんを手伝わなきゃ。)

 そう思った時、障壁が波打つようにたわんだ。

 (ハンターたちのいる方からだ。)

 一瞬迷ったが、マナはハンターたちの元へと駆け出した。


 突然飛び込んできた毛玉。

 それがユーコだと気が付いたのは、間の抜けた名乗りを聞いてからだ。

 彼は、子供たちの世話をするか日向ぼっこしているユーコしか見たことが無かったので、高速で飛び回るユーコに驚かされた。とても想像もつかなかったが、確かに彼女がプレイしていたのは高速アクションゲームだった。

 すぐに炎に包まれたライアーと、ブレードを巨大化させたマナがやってくる。

 ここでの役目は終わった。

 スロークの分体は、本体と合流すべくその場を去った。


 アオイが見つけたとき、ユーシンは白ランを赤く染めて地に伏していた。

 かろうじて動く手が、無事であることを知らせてくれた。

 「わぁあああ!」

 自分の打った剣を振りかざして、ユーシンにとどめを刺そうとしていたデモンエイプに切りつけた。

 新手の登場に飛びのいたエイプは、アオイを見定めるように威嚇する。

 アオイはユーシンの目の前にもう一本の剣を突き刺した。

 「ポーション持ってるんでしょ!とっとと飲みなさい。一番いいやつ。それまでは、あたしが時間稼ぐから。」

 「バ、カか・・・おまえ、なん、で、来やがった・・・。」

 「うっさい!あんたのキャラ、隠しコマンドで出る武器日本刀でしょ!だから届けに来ただけ!」

 そこにあったのは、日本刀とは似ても似つかない、ガタガタに波打った片刃剣だった。

 (なんだよ、どこが日本刀だって・・・。アスクラじゃねぇんだから。)

 アースクラフトオンラインに登場する武器のデザインは知っている。この世界で最初に作った剣も見た。ここまでにするのに相当な努力が必要だっただろう。

 だからこそ、痛みを我慢して、かろうじて動く指で何とかポーションを、スロークから渡されたエクスポーションを飲み込む。

 「や、やぁあああ!」

 無理やり大声を上げてアオイがつっこんでいった。

 「くそ!」

 治りきっていない体を無理矢理起こす。

 アオイでは時間稼ぎすらできない。

 エクスポーションでも完全回復には至らないし、疲労の回復は望めない。それでも、アオイの無茶を止めなければ。

 アオイの持ってきた剣を手にする。

 (こいつは正真正銘、狂弥の断風夜叉王タチカゼヤシャオウだ。)

 ユーシンの使っていたキャラ、狂弥のメイン武器は金属バットだが、バトル前に特定のコマンドを入力することで隠し武器、日本刀・断風夜叉王を装備、技の破壊力やリーチが強化される。上級者と対戦する中級者、初心者へのハンデ的な意味が強いシステムだが、そんなことを言っている場合じゃない。本物だと思い込むことで少しでも効果が出るのなら。そんな心境だった。

 剣を構える。

 重い。

 ポーションのおかげで怪我の痛みはだいぶ取れてきている。

 「おぉおおぉお!」

 嫌がる体に気合を入れるつもりで声を上げ、デモンエイプへと駆け出した。

 

 「なんで当たんないの!」

 頭上から振り下ろす、ゲームでの攻撃モーションはこれだけだ。それ以外の振り方もできるが、全く通用しない。唯一通用する攻撃は単調すぎてかすりもしない。それでも、1秒でも長く時間を稼ぎたかった。

 初めての戦闘。叫ぶことで恐怖をごまかしていたが、デモンエイプには通じなかった。

 剣を振り下ろす。

 腕と剣で視界が遮られる一瞬、真横から強烈な衝撃がアオイを襲った。

 デモンエイプの腕だったと気が付いた時には、10mも吹っ飛ばされて木にたたきつけられた後だった。

 白い星が散る視界に、刀を振りかざしてエイプに切りかかるユーシンが映った。

 エイプの肩に切りつけた刀は、デモンエイプを切ることなく止まった。

 (あぁ、やっぱり、自分が作った出来損ないじゃ無理だ。)

 ユーシンが死ぬ。

 今まで感じたことの無い恐怖が、激痛で呼吸もままならないアオイを奮い立たせた。

 ポーションを一気にあおると、剣を拾い、自分でも何と言っているか分からない、奇声に近い叫びをあげて再びデモンエイプに突っ込んでいった。

 その奇声にデモンエイプの気がとられた。

 (あのバカ!)

 せっかくアオイから意識をそらしたのに。

 切れない剣でめったやたらに切りつけた。

 (くそ!なんで切れねぇ!刃はついてる。俺がヘタクソなせいだ。切れないはずがない!)

 切れないはずがない、もっと速く、もっと鋭く。一振りごとに、剣が軽く、手に馴染んでくる気がする。

 アオイの奇声に気を取られていたエイプも、ユーシンに意識を戻した。

 歯牙にもかけない相手から、うっとおしい相手、くらいには認識が変わってくれたようだ。

 アオイの剣先がエイプの腕を切った。

 皮一枚、かすり傷程度だったが、確かに切った。

 (やっぱり切れるじゃねぇか。)

 そう思った瞬間、ユーシンの中で、手に持つ剣が、昔から慣れ親しんだもののようにしっくりと感じられた。

 切られたことに驚いたエイプが、再びアオイに狙いを定める。

 それを見逃さずフルスイング。

 バットを振るうように振り切った剣は、エイプの腹を深く切り裂いた。

 思い出した。

 ゲームでも、狂弥は日本刀をバットのように扱っていた。というか、同じエフェクトで武器だけ差し替えられていただけだった。

 腹の傷に気を取られているエイプの頭に、上段から振り下ろす。バットで頭をかち割るように。

 ようやく2匹目、あともう一匹。

 そこでようやく、スロークが姿を現してエイプと戦っていることに気が付いた。

 戦っている、というより、一方的に嬲られている?

 ユーシンもアオイも、一言も発さずスロークの元へ駆け出した。

 

 暗殺者のスキルは、基本隠密で隠れた状態からの攻撃に限定されている。

 隠密を解いて姿を現した段階では、ほとんどのスキルは使えないも同然だった。

 それでも隠密を解いたのは、相手に存在どころか位置までも把握されていると悟ったからだ。

 その段階でもう、スキルは通用しない。それどころか、必殺のしっぺ返しを食らいかねない。

 「驚いたな。魔物に化けるなんて。」

 隠密を解いた時に見せたエイプの表情やしぐさに人間臭さを感じて、何となくカマをかけてみたが、

 「知らねぇのによくわかったな。」

 日本語が帰ってきて驚いてしまった。

 「演技の練習をした方がいいな。人間臭すぎるぞ。」

 「そうか・・・覚えておこう。」

 デモンエイプに擬態した(?)プレイヤーは、ゆっくりと体をスロークに向けると、姿を変えた。

 筋骨隆々、といった感じの、アメコミに出てきそうな男だ。

 「獣戦記っても知らねぇか。要はレトロゲーよ。ぶっ殺したモンスターに変身して戦うアクションゲーな。デモンエイプになって力づくで何匹か従わせたんだけど、イマイチ使えねぇんだよ。簡単な命令もまともにこなせねぇ。」

 弱肉強食、デモンエイプ同士ならなおさら、強いものには従う。そうやって9匹ものデモンエイプを従えたのか。

 こいつが元凶か?

 「あ、俺殺れば全て解決とか思ってる?ざぁ~んねん。」

 再びデモンエイプの姿になる。

 「獣戦記って、二人プレイできるんだわ。あの時、双子の弟と一緒にやっててよぉ。」

 そう言って指した指先は、ハンターたちのいる方角へ。

 ヒエンの後ろにももう一体のエイプがいる!

 そちらに気を取られた一瞬で、間合いを詰められ大振りの一撃を食らってしまった。

 「ギャハハッ!甘ちゃんじゃぁ勝てねぇぞ。俺もテメェも魔物なんだ。理性なんざ捨てちまえよ。」

 「魔物だと?何を言ってる。」

 相手のたわごとだと思っても、時間稼ぎに利用させてもらおう。

 防御スキルや魔法を総動員していたが、それでも無視できないダメージを食らってしまった。自己回復の魔法はポーションよりも回復量は大きいが、時間がかかるのだ。

 「理解がおせぇな。俺たちは人間の親から生まれてきたわけじゃねぇ。多分あの悪魔が、人型の魔物に俺たちの魂を押し込めやがったんだ。聖都へ行ってみろよ。魔物をはじく結界が、お前たちみんなきれいにはじいてくれるぜ。」

 (確かに、普通の人間ではないという実感はあった。そもそもレベルとかスキルはこの世界の人間には無い。しかし、確か悪魔は、召喚主の肉体を魔素に還元し、再構築したと言っていたとシンさんから聞いた・・・魔素から生まれるのは、魔物か。)

 「そうか。確かに、人間ではないのかもしれないな。」

 意外なことにショックは少なかった。

 「で?だからなんなんだ?」

 「は?」

 男の反応は少し間が開いた。必死になって否定するか激昂するか、を期待してたんだろう。

 「村には魔物も多く住んでいる。みな気のいい連中だよ。少なくともお前みたいなクズはいないぞ。」

 ダメージもだいぶ癒えた。そろそろいいだろう。

 「自分が魔物だと言われて驚きはしたが、ショックではないな。彼らと同じなら、人間とも十分に分かり合える。」

 言い終えると同時にエアスラッシュを放った。

 不可視の刃は、暗殺にも使えると唯一持ち越した攻撃魔法だ。

 バチンッ!

 エイプの胸で火花が上がって、エアスラッシュは不発に終わった。

 「てめぇ!何しやがった!」

 形相が変わり、スロークにつかみかかる。

 (くそ、獣戦記だったか、まったく知らん。さっきのはスキルか?それとも魔法は一切効かないのか?)

 エイプの攻撃をかわしながら、なぜエアスラッシュがはじかれたのか、無駄撃ちは避けた方がいいのか、それとも打ち続ければ効くようになるのか、判断しかねていた。

 (やっぱり、シンさんの超越者は規格外だな。レベルが上がらないことと能力値の伸びに悩んでいたけど、剣でも戦えて、覚えた魔法をポンポン使えるのはこの世界では大きい。)

 レベルははるかに高いが、スキル特化のスロークは魔力が多くない。自己回復を考えると、あまり攻撃に魔法は使えない。効かないなら効かないでスッパリ諦めるところだが、敵の魔法無効が回数制限付きで、それが多くないなら、焦りを引き出す餌にできる。

 (5回までで効かなければ諦めよう。)

 フェイントを多く織り交ぜながら、回避に重点を置いて立ち回り、隙があればエアスラッシュをかける。

 一発ごとに苛立ちが増すのが分かる。

 (フェイクか?それとも無効化は制限があるのか?)

 あからさまな苛立ちを見せるエイプに余計混乱してしまう。

 エアスラッシュを無効化したのは獣戦記のスキル、遠距離攻撃を5回まで無効化する獣結界だったのだが、苛立ちを隠そうともしないエイプに作為的なものを感じてしまったスロークは、5発目が無効化されたことでスッパリと諦めてしまった。

 何かのスキルなのか、紙一重で交わした攻撃でさえジワジワとダメージを受ける。結果、必要以上に大きく回避せねばならず、体力の消耗も無視できなくなってきた。

 想定していたより回復と防御に使う魔力を多く残さなければならない事態に、エアスラッシュをもう一発、は撃てなかった。

 ふいにエイプの意識がそがれた。

 ユーシンが2体目を倒したようだ。こちらに向かってくる足音が聞こえる。

 「ここはいい!シンさんのもとへ!」

 背中越しにユーシンに伝えると、一気に攻勢に出た。

 姿を現している以上、使えるのは戦士系のスキル、しかも武器が短剣なのでかなり絞られてしまう。

 それでも攻勢に出たのは、ユーシンの勝利でできたエイプの隙をつくためと、その一瞬で感知できた勝利の一手を確実にするためだ。

 

 3匹を瞬殺、非常に良い。

 準備時間が取れればマジックミサイルの有効性はナンバーワンだな。

 剣を抜いて4匹目と対峙する。

 少し距離が離れていたことで躱されたけど、十分脅威として認識してくれたはずだ。このまま時間を稼いでもいいし、隙があれば倒しに行ってもいい。

 問題は、いまだに姿を見せないプレイヤーだ。

 戦闘力が無い司令塔タイプならまだいい。スロークのような暗殺系だとまずい。

 とにかく動いて暗殺のチャンスを与えないようにするしかないか?

 それとも、一気にもう一匹を倒してしまおうか。

 なんて馬鹿なことを考えたものでした。

 デモンエイプは想像以上に強化されていた。

 3匹瞬殺?

 運よく不意打ちがクリティカルしただけだったよ。

 対峙する直前にかけた複数のバフがあったから何とか有利に戦えているけど、切れたら一気に立場逆転しかねないほどの大接戦。

 普通に切っただけではかすり傷程度しか与えられず、主力だと考えていた、短発だけどマジックミサイル2倍化より威力の高いフレイムアローも躱されてしまう。躱されない距離に近づくと、エイプの手数の多さに魔法を使う余裕が無くなる。

 さらに、バフが切れ始めると状況が悪化、かけなおしながらの戦いになってしまいまさにドロ試合化してしまった。

 焦りが募る。

 魔力が切れたら積んでしまう。

 そんな泥仕合に転機が訪れたのは、魔力も気力もほぼ使い切った後だった。

 「シンさん!」

 ユーシンの声が、エイプの気を引いた。

 一瞬のスキを見逃さず、剣をエイプに胸に突き刺した。

 心臓へ向けて真っすぐに。

 剣は心臓には届かなかった。

 左肩からの衝撃に、一瞬意識が飛んだ。

 さらに直後、右肩に衝撃。

 倒したと思い込んでいた3匹目のエイプに後ろから攻撃され、弾き飛ばされて木にたたきつけられた、と気が付いた時には、4匹目のエイプが眼前にいた。

 鋭い爪が、胸を深く、抉るように切り裂いた。

 あぁ、なんで俺はこうなんだ…

 薄れる意識の中、自分の血でなんとかメッセージを残せた。伝わってくれることを祈って。

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