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17:村づくり

水曜日と土曜日、16時ごろ更新予定です。

よろしくお願いします。

彼らの能力が解放されるまでに、顔合わせや村の案内、それぞれに合った作業の体験などを進めてもらおう。

 6人も増えるなんて思ってなかったので、家も部屋も全く足りない。

 今はソンチョー宅が増築して4部屋、自分とユーシン、ユーキが住んでいた家が4部屋、長屋が6部屋。

 ソンチョー宅にはソンチョー、スローク、ユーシンとユーキが住んでいる。カブロ一行が行商にやってくるので、自分たちが住んでいた家を空けたのだ。自分はというと、従魔用に作った長屋の一室に住んでいる。オヤカタ、トウリョー、オリヒメで4室、残り2室空きがある。カブロたちは朝出発したそうだから、とりあえず女子3人はその家に、マスターとクリフトには悪いけど、長屋の空き2室に入ってもらおう。問題はライアーだよな。

 性別不詳、現男の子だからなぁ。女子3人と同じ家でいいのか?

 うん、いつものようにソンチョーに任せよう。

 で、自分は次カブロさんたちがやって来るまでに宿泊所を作らないとな。

 とりあえずハンター小屋と同じでいいか。大部屋の周りを囲むように10部屋のログハウス風。カブロさん以外にやってくるかもしれないから部屋数多めにしよう。

 あと馬小屋も作った方がいいな。もうすぐ冬だ。大事な足の馬が雪にまみれて、なんてまずいだろう。

 ハンター小屋と道を挟んで反対側に作る。

 ギリョウ達がいるので、本気で作るわけにはいかない。7日程度かけるつもりでセーブしながら作ろう。たぶん、それでも驚かれるだろうな。

 ギリョウたちが作っている作業小屋はだいたい1か月くらいで完成するという。建物自体は住宅よりシンプルだけど、加工台など設備も作成しなければならない。2人で1か月、というのはかなり早い。とは久々の”常識”さんから。

 すでに食事の準備はマスターにお任せしてある。

 その日から食事は大幅にグレードアップすることになった。同じ食材でこうも違うのか~。スキル頼りの素人と本職の違いだなぁ。

 それは大工作業などでもはっきりと分かってきた。

 スキル補正によって作業速度や正確さは人外の域だ。ゲーム中作成できるものに関しては何も考えなくても正確に作れる。が、少しでもレシピを外れるオリジナル要素が入ると、技術と速度以外は元々の経験が頼りになってしまう。

 なので、ゲームのレシピ通りの食材が無い料理に関しては、コンビニ頼りの食生活を送っていた自分では本職の料理人だったマスターには遠く及ばない。

 大工仕事も同じく。ゲームの規定通りで、自分が一日で作れる建物をギリョウたちが作ると、二人で1か月かかる。しかし、自分がスキルで作れる建物はキッチリ同サイズの素材をつなぎ合わせた物で、基準になるのはm単位だ。斜めの素材は30度か45度の2択。と、融通が利かないのだ。結果、箱型の単調な建物になってしまう。飾素材を組み合わせて見た目豪華にはできるけど、あくまで飾り。本職のきめ細かな気配りには遠く及ばない。

 彼らの指示に従って作業するのが一番効率的なのかもな。

 ま、こちらは速度重視の建売り方式ってことで、ちゃんとした建築は彼らに任せよう。

 7日かけてのんびりとログハウスを建てる。囲炉裏テーブルも含めてハンター小屋と同じものだ。

 第一貯蔵庫の資材を搬出したり整理しながら、のんびり作る。

 

 約束通り3日目で能力解放した6名。

 アオイの能力は、期待とはちょっと違ったけどすさまじいものだった。

 シャベルの一堀りでトンデモない量の地面が掘れていく。ソンチョーたちが苦労して掘った地下室サイズの穴も実質10分ほどで掘ってしまった。

 「モグラ女。」

 途中、ユーシンの何も考えてない余計な一言で30分ほど中断したので実際には40分かかってたけど。

 余計な一言と言えば、キャラメイク後にも。

 「自由にできるのに巨乳いないんスね。盛り放題なのに。」

 いかにも意外って感じで言っていた。

 「バカじゃないの。あんなもん、見せる相手がいなきゃ肩凝るだけで邪魔なだけじゃない。」

 の一言でバッサリやられていた。

 それはさておき、第2の地下貯蔵庫も無事完成しそうだ。この能力なら、水路をつなげることも現実味を帯びてくるな。上下水道も夢じゃない。

 すでにそこら辺の計画はソンチョーと元ゼネコン勤務のクリフトが進めているらしい。さすがです。

 ユーコは、技を使うときだけトゲが生えるようだ。ジャンプ力もダッシュ力も素晴らしいが、本人の性格とはかなりズレがあるので、見てるとかなり違和感がある。

 普段は完全に力を抜ききったのんびり屋。子供好きらしく、ゴブリンの子供たちの面倒と勉強を見ている。

 マスターにはとりあえず木を削って大きなスプーンを渡してみたけど、食材の研究に集中しているらしく能力の検証は後回しになっている。

 クリフトも今はソンチョーと村づくりの計画中。能力の検証は水路ができてからかな。

 ライアーは苦戦中。技やコンボは出せるようだけど、体格が違い過ぎて間合いが取れないみたい。同じ格闘系のユーシン相手に特訓中。

 真奈はちょっと壮観。両肘に光るブレードが具現化されるのだ。

 腕に仕込まれたビーム砲も、さすがに腕は割れないけどちゃんと出せていた。掌の前に光る弾が現れると、ゲームのエフェクト通りのビームが出た。

 ダンスを踊るような流れる戦闘が話題になったゲームだけど、ちゃんと再現されていて思わず見とれてしまった。ブレードが光っているから余計に映える。

 看護師だったので、ヒールなどの魔法に頼れないハンターや職人たちの怪我、病気に対応してもらえそうだ。

 ユーシンは、ライアーとの特訓の他にもスロークとのレースも日課にしている。

 というのも、スタートとゴールを決めて、複数人が乗り物で一斉にスタート、ゴールするという条件で、ポイントが入ることが分かったからだ。

 最初に違和感を感じたのはカブロを案内した時。

 馬車でサンサテを出発し、5日かけて村、ゴールへたどり着いたあの時に違和感を感じたそうだ。確かに、あの時ユーシンがぴくッとしていたのを覚えている。

 馬車だったし、案内だったので競い合っていたという状況でもなかったので、その時は違和感を感じただけだったそうだ。

 そして今回の救出劇からの帰還。スロークのバイクとスタートして村へ、途中バイクが先行したり軽トラが先行したり、最後、軽トラが先に村に着いた時に、レースとして認識されたのか、ハッキリとゴールした、という実感とともにポイントが入っていたという。

 それ以来、川に水汲みに行く時に往路、復路の2レースをこなしている。1対1のレースだからなのか、ポイントはかなり少ないらしいけど確実に加算されている。

 レースはガチ。忖度一切なしでやっているようで、戦績はバイクの圧勝。

 道なき道を軽トラではかなり無理があるよね。

 悔しさを見せるけど楽しそうなので良いでしょう。

 スロークが使っているバイクは、燃料タンクに魔石を放り込むことで動き続けることが分かった。3度目のレースでとうとうガス欠になり、ここまでかと給油口を開けたら空の魔石が入っていた 給油口から苦労して空の魔石を取り除いて新しい魔石を。ダメもとだったけど、入れてみるるとタンク内があっという間にガソリンで満たされた。

 なるほど、魔石で動くというより魔石の魔素がガソリンに変わるのか、と変に感心してしまった。

 カブロたちの宿泊所ができるころには、ゴブリンたちの基礎教育も終わった。ソンチョーのカテキョチート効果で、時折訛りがでるものの、みんな流暢に会話できるようになっていた。

 食事を通して仲良くなっていたのか、狩猟担当だったゴブリン5人はマルク、ルキのハンターに師事して技術向上を目指すようだ。

 マスターの補助に3人、オリヒメと衣服など衣料品の作成、スレッドスパイダーの世話に2人、ギリョウたちに師事する2人、放置気味の畑、農業全般に4人、子供12人は午前中は勉強、午後はそれぞれ興味のあることを手伝っている。

 族長のンダバは、護衛のカダソ、ガラド、シャーマンのハゾルとともに、第一貯蔵庫から出した膨大な量の資材相手に格闘中。単純な石材ブロックなど、使い勝手の良いものと完成している飾物や、機能付きのアイテムなどの餞別を任せている。

 場所も取るし、流用可能な資材はギリョウたちにも使ってもらっているので、速めに仕分けしたかった。知能の高いンダバとハゾルが選別して、護衛の体力自慢カダソ、ガラドが種類ごとに整理している。

こうして、ようやくそれぞれの活動が本格化したころ、さらなる報が届くことになった。

 夕方ごろ村にやって来たのは、カブロの護衛として来ていたうちの二人だった。

 移動時間考えると、サンサテからほぼそのまま引き返してきたに違いない。

 急ぎの用だというから、とりあえずソンチョー宅へ。

 「カブロ氏から書状を預かってきた。できるだけ早く返事が欲しいそうだ。」

 と言って、ソンチョーに筒状に丸められた紙を渡した。中央をヒモで縛り、結び目に蠟で封がされている。

 紐を切って書状をテーブルに広げる。

 集まったみんなが見られるようにだ。

 こういうとこ、ソンチョーはよく気が付くよな。

 書状を要約すると、

 サンサテについて早々ギリョウに依頼された鍛冶師の件をカブロの母、食堂の女将ベリッサに相談していたところ、食事、というか酒を飲んでいた石工(石材の切り出しや加工をする職人)が興味を示して、来たいと言い出し、あれよという間に10人ほどの職人が来たいと言い出した。サンサテは十分発展した町で、職人にとって仕事の大半が修繕などになっており、新しく作る仕事は飽和状態らしいのだ。

 さらに、職人が行くなら商売になると、ベリッサも支店を出そうなんて言い出した。

 当然カブロも店を出すつもりでいる。

 結果、わずか半日で20名ほどの移住希望者と、移住者の家、店を建築するためにやってくる30名ほどの職人、護衛たちで、70名を超えてしまった。次回の来訪で連れてきても問題無いか?という内容だった。

 「いや、無理でしょ。原状の安全圏だと収まりきらないよ。」

 100m四方、1万㎡に100人を優に超える人がひしめくことになる。

 護衛も、建築関係の職人が仕事を終えて帰宅するまで滞在するかもしれないし。

 「やはり無理でしょうか。護衛はいったん帰るので滞在期間は1~2日ですし、移住者はテントを持参します。食料も当面は自分たちで用意することになっているのですが。」

 ?

 急に敬語?

 ついさっきは違ったよね。それに似合わないなぁ。なんか、棒読みポイ芝居臭さも感じるぞ。

 ちょっときな臭さを感じるな。

 「もうすぐ冬ですしねぇ。せめて、春になれば問題無いと思うんですが。」

 あ!ソンチョーそれマズイ。

 書状を持ってきた男の顔がほころぶ。

 やっぱり。急な敬語は、台本かなんかがあって言わされてるな。

 「春なら受け入れていただけるということですね。時間もありますので、多少増えるかもしれませんが、許可をいただきありがとうございます。」

 言い終わらないうちに部屋を出ようとする男を、間一髪スロークが立ちはだかった。

 「あ・・・。」

 「なるほど、カブロにそう言えって言われたんだね。」

 もう、カブロに”さん”はいらないね。

 「いや、そのですね。」

 スロークに睨まれてオタオタする男。

 「だから、俺らにゃ無理だって言ったんだ。」

 もう一人が、額に手を当ててボソリとつぶやいた。

 「いや、あの、俺らがサンサテに戻った時は、実はもう話題になってたんですよ。この村。デモンエイプの魔石の件で。」

 え?

 なんで?

 村のことは話してないはず。

 「あぁ、もちろん買い取った魔石店は情報を漏らしてないですよ。」

 慌てて付け足す。

 「でもねぇ、あれほどの物が出れば嫌でも目立つもんです。」

 もう一人の男が補足説明。

 「昔起こった氾濫が、はぐれのデモンエイプが原因だった、って事は中高年以上ならだれでも知っていることなんだ。そのデモンエイプの魔石が売りに出されたってことは、今回の氾濫もそのせいだったんだろうって、しかもそのデモンエイプはすでに死んでいるって、すぐに広まったんだ。」

 そういえば、買取の店員もすぐに推測していたな。

 なるほど、うかつだった。

 けど、あれのおかげで食料も冬支度も進んだわけだしな。なるべくしてってやつか。

 「でも、こことは無関係、とはいかないか。」

 「あぁ、森の奥に村ができたってのは、女将の食堂で売られ出したあの干し肉で広まってたからな。森の中に村なんて、デモンエイプ討伐と無関係とは思えないだろ。」

 開き直った二人は、サンサテの状況を詳しく教えてくれた。

 「噂が噂を呼んで、町ではもう、この村の話題で持ちきりだったみたいでな。カブロさんとおかみさんの話を聞いた石工が直訴して、それを聞いた別の職人も名乗りを上げてって具合でな。あっという間に話しが広がって、希望者が殺到しちまいまって、カブロさんも抑えきれなくなっちまってな。」

 「そんなに魅力的に見えるのかな?ここ。」

 ソンチョーが首をかしげて疑問を口にする。

 「そりゃぁ、ハンターにとってここは天国だろうさ。普通なら、移動だけで何日も無駄にするんだからな。職人にとってもそうだ。技術を持て余している連中は多いし、森の奥に行くほどいい素材が取れる。木もそうだし、石なんかもな。普段は何人もの職人が合同で護衛隊を雇って採取にでるんだが、ここなら移動時間も省けるし、省けた分護衛の費用も浮かせる。しかも村を発展させるなんて大事業にかかわれるとなりゃぁ、職人みょうりに尽きるだろう。」

 「ハンターに職人、護衛としての傭兵が移住するってなると、そいつらを相手にする商人や飲食関係の人間もついてくる。カブロさんのところにはひっきりなしに希望者が殺到してな。すぐ冬だから春まで無理だし、村に話を通さなきゃならないからって何とか落ち着かせたんだがな。どうにも収まりそうにないんだ。」

 小さくなった男が申し訳なさそうに白状してくれた。

 「だますようなことをしてすまない。春にいきなりそんな大人数が来るとなったら、断られるかもしれないからと頭を悩ませていたようでな。」

 ソンチョーには小細工無しで相談してもらった方が効果的だと思うけど。でも教えない。

 「で、いったい何人なんだい。」

 無表情で尋ねるソンチョー。うん、本当に70人なんて感じじゃないよね。

 「俺らが出たころは130人でした。」

 うわお。

 カブロ…。

 「春には200を超えてそうだね。」

 ちょっとあきれ顔のユーキがぼやく。

 「ここに来る条件だけど。」

 ソンチョーが紙を取り出して、書きながら全員に確認を取っていく。


絶対条件:以下の内容は村の秘匿事項である。生涯秘匿を約束できるもののみ読むことを許す。以下を読む者は、たとえ村に来ることを断念したとしても生涯話してはならない。


①この村には守護神像が祀られており、その加護によって魔物から守られている。

②加護の範囲は様々な試練を乗り越えることで拡大していくので、守護神像からの試練には協力すること。 

③この村の守護神像は、元々は戦神の御遣いであったため、一度機嫌を損ねると手に負えなくなる。決して触れたり、無礼な態度や罪深き態度を取ってはならない。

④ソンチョー、スローク、シン、ユーシン、ユーキの5名は最初に守護神像を祀った事から、アオイ、ユーコ、マスター、クリフト、ライアー、マナの6名は善行により守護神像より庇護を賜ったため特別な力を授かっている。が、そのことを村の外に広めてはならない。 

⑤この村には魔物もいる。魔物たちの中には、守護神像の加護を受けた者もおり、村にとってみんな大事な一員なので、彼らに危害どころか、差別的な対応を取らないと誓い行動する。

⑥これから魔物が増える可能性もあるので、同様に受け入れる。


 すげぇ。

 自分ならしばらく考えないと出てこないような条件がスラスラと。しかも、自分たちのスキルとかまで無理矢理納得させてしまうような内容。素敵です。

 「すごい。ひょっとして、我々も守護神像様に認めていただければ特別な力を授かれるんでしょうか。」

 やべ。

 そっちに取るかぁ。

 目をキラキラさせる伝令約2名。

 「それについては、発言する許可をいただいておりません。」

 ソンチョー逃げた!

 って、それしかないよね。まぁ、神のみぞ知るで逃げるしかないか。

 ちょっと怖いのは宗教化してしまう事かな。

 魔法が一般的でないこの世界で、現実に奇跡を見て、感じてしまっている。その反応は自分の想像をはるかに超えていた。カブロなんかは守護神像見て泣いてたからな。

 宗教は民心コントロールには都合のいいシステムなんだけど、信者が盲目的になってしまうと身の毛もよだつような悪逆非道も平然と起こしてしまう。最悪なのは、指導的立場の者がコントロールしきれずに暴走してしまうことだ。よほど優秀な指導者でなければ狂信的な信者を抑えるのは難しいと思う。

 向こうの世界でも、宗教問題での悪逆非道は数知れず。

 宗教に関しては良いイメージが何一つ無い自分だけど、説明しようがない秘密を隠さなければならない立場になると、何とも手軽で魅力的に見えてしまう。そんな自分に嫌悪感を感じる。

 「自分たちはたまたま最初に発見しただけだし、人を導けとか、そう言った天啓を受けてるわけでもない。単純に、土に埋もれた像を祀ったから礼に力を授かっただけだし、それを使って何かを成せとか、そういった指示も受けていない。村を守っているといっても、悪意のある魔物が入れないだけで、悪意ある人間は素通りだし、天災や事故は普通に起こる。個人的な感想だけど、かなり気まぐれだよ。恭しく敬うよりも、親しみを込めて接した方が喜んでるようにも感じるね。像の周りに集まる者たちが和気あいあいと暮らしている様子を楽しんで見ているんじゃないかな。一度、毎朝毎晩祈りをささげ、丁重に奉った時期があったけど、安全圏が小さくなったし、心なしか不機嫌に感じたよ。宗教化されて祀られることを望んでいないんだろう。」

 脈絡も無いのに一気に言ってみたけど、どう?

 かなりドキドキ。伝わったかな。

 「あの時はひどかったよねぇ。立派な祭壇作ったのに、次の日カビ生えてたよね。」

 伝わったかまではわからないけど、何となくユーキが乗っかってくれた。助かります。

 「そう言った理由で、教会を作るつもりもないですし、我々は僧侶でもありません。なので、守護神像を御神体のように扱うのは良くないんですよね。だから、自分も力を授かれるかもしれない、なんて幻想は持たない方がいいかな。」

 察してくれたソンチョーがまとめてくれた。

 ちゃんと伝わったかな?。

 あ、無理かな、二人とも目が泳いでる。

 やっぱり特別な力は欲しいよね。

 「その、言われることはわかったんだけど。俺らにうまく説明できると思うか?」

 あぁ、そっちかぁ。

 うん、この二人じゃ無理っぽいな。

 「俺が行こう。ユーシン、付き合ってくれ。」

 説明役にスロークが名乗りを上げてくれた。

伝令役の二人はとりあえず休ませるために出来たての宿泊所に案内すると、プレイヤー11人が集まって事態の説明会となった。

 「とにかく、宗教化してしまうのはまずい。無用なトラブルや対立を生むだけだし、聖人君子なんてキャラづくりはなによりもめんどくさい。」

 それを怠れば、立場を乗っ取られかねないわけでね。健全な街づくりを目指すなら宗教なんてシステムに頼るべきじゃない。

 学生時代、友人の母親がカルト宗教にはまって、財産のすべてを献金したどころか、闇金から多額の借金をしてそれも献金するに至り一家離散、音信不通になってしまったという苦い記憶がある。

 宗教、ダメ!絶対!

 これだけは引けないのだ。

 ライアーは最初、「楽でいいじゃん、みんな従ってくれるなら。」と気軽に言っていたけど、話していくうちに「ダメだね、それ。そういえばテレビで見たことあった。」と納得してくれた。

 素人が不用意に手を出せばどうなるか。悪名高き多くの怪しげな宗教団体が示してくれている。

 早い段階でこの村の問題点や危うさの認識を統一できたのは良かったのかもしれないな。

 「実はね、新しく分かったことがあるんだけど、この村、今は集落って扱いだけど、ランクアップすると面積が増えるんだ。今はランク2で集落。次のランク3、小さな村までに必要な条件のうちほとんどがクリアしているんだよ。後は、作業場か狩猟小屋の建設だけなんだけど、ギリョウさんたちが作っている解体小屋が狩猟小屋として認識されるみたいなんだ。」

 ほうほう。だから春なら受け入れOKって言ってたのね。

 誰が作ったものでもOKってことは、長屋とかも実績?ソンチョーたちが苦労した地下貯蔵庫も当然倉庫としてカウントされたんだね。

 「ランク2までがチュートリアルでね。ランク3になると、一気に面積が広がって、横300m、縦200mの6万㎡になるんだ。畑の規模も増えるし、畜産もできるようになる。」

 畜産って言うと、ニワトリにブタにウシってことか。それは大きい。

 「取り寄せできる作物の種も一気に増えるし、豊かになると思うよ。資金面が何とかなれば、作業場を作って、高級肥料を使って作物を一気に収穫できればランク4にも上がれるくらい。住人は増えるからね、ランクが4になれば、確か銭湯とかもできたはずだよ。」

 銭湯。なんて魅力的な響きだろう。春の移住待ちだけど、すぐにでもランク4に上がってほしい。

 「風呂入り放題にはまず金っスかぁ。魔石だけじゃ難しいスよねぇ。」

 うむ、干し肉は村への興味を引くのに役立だってくれているけど、いかんせん単価が低い。稼ぎ頭の魔石は質の差が大きい。大物が出れば一攫千金だけど、そうそう出るもんじゃない。

 酒はまだ売れるほど作れない。

 銭湯のためにも、ここは、でかく稼がなきゃならないな。

 「おじーちゃん悪い顔してる。」

 相変わらずおじーちゃん呼びしてくるアオイ。いつか、しっかり話を付けなければならないな。と思うけど、セクハラとかパワハラとか思われるのが怖くて何もできないチキンなアラフィフ。それが自分。

 それはさておき、

 「家を売って貸そう。そして土地も貸そう。」

 ポカンとするみんなに説明する。

 「住宅キットを資金の限り取り寄せてもらって、それを移住希望者に売るんだ、全額前金でね。ミニチュアを作って売り込みに行くのもいいな。今なら、移住時にはこんな家が持てますよって。それで結構な資金が手に入ると思う。でも、土地は売らない。土地はみどり村のプレイヤー、ソンチョーの物だからってことにして、住宅を購入した連中からは、入居後は借地代をもらう。住宅キット以外にも、安めの設定で自分たちが作った家を売ってもいいな。他に家族用と単身者用のアパートを建てて賃貸もしよう。2階建てくらいなら作れると思う。1か月分の家賃で契約しておけば確実に入居できるよって触れ込めば、しばらくはテント暮らしを決意してる人でも結構食いつくと思うんだけど。」

 一気に自分の考えを話し切った。

 ドキドキ

 「シンさんって、不動産屋さんですぅ?」

 ユーコが首をかしげて見てくる。

 くぅ!モフりたい!

2足歩行の猫がこんなにも凶悪だとは。

 いかん、確実にセクハラだ。猫だけど。

 猫だけど女の子だ。

「んにゃ、ただの電気屋だよ。」

 ふぅ、何とか誘惑に打ち勝ったぞ。犬派でよかった。

 銭湯キットの購入資金もあるし、資金稼ぎはそれで行こうと満場一致で可決。価格設定は、カブロが来たら相談するってことで決定した。

 「まずはギリョウさんたちの完成待ちと、自分たちで作れる分を何とかしようか。アオイさんが水路の方を進めてくれることになったから、護衛と手伝いに何人か手を貸してほしいんだ。途中に浄水設備も作りたいし、下水処理場も必要になるから、クリフトには協力してもらうけど。」

 ソンチョーは女性陣と、なぜか自分には“さん”を付けるんだよなぁ。あ、自分に対してはアオイ以外みんなか。やっぱり爺さん認定なのかな。

 なんてショックを受けていると、

 「アオイさんの能力って、ちょっと不便なところもあるんだよね。掘るときは1mの立方体が基準になっちゃうし、きっちり水平、垂直になるんだよ。ゲームがそうだから仕方ないんだろうけど。水路の場合、緩やかな勾配が必要だから仕上げは他のメンツで人力作業になるんだよね。」

 おや、ユーキもさん付けか。自分もならった方がいいのか?他のメンツはどうなんだろう。

いかん、圧倒的経験不足でキョドってしまう。

「水路は、できれば何かで補強したいね。理想はコンクリートだけど、とても無理だろうから石垣とか、崩れにくくしないとね。」

 石垣かぁ。大変そうだな。そもそもちょうどいい石がそんなにあったかな。

 「それなら問題ないよ。ゲームと同じで、いったん岩を壊して回収して、素材として使うとすっごい硬いブロックになるの、くっつけて置くと最初からつながっていたみたいになったから。水漏れもなかったよ。」

 すっかり検証済みなら頼もしいね。緩やかな勾配も、200m毎に1段、1m下げて掘り、中間をアオイ以外が手作業で均せば、1mあたり5mmの緩やかな勾配ができる。

 水路の方は、アオイとクリフト、護衛にユーキとアオンたちが、補佐にオヤカタがつくことになった。とりあえずは川の上流から村まで掘り進めてくる。

 高低差を考えて取水口を決めたので、取水口から村まで10Kmにもなってしまった。高低差が30m、ずっと勾配を取り続けるには50m必要だから、所々水平なポイントを作りながら、ってことなんだろうな。そこら辺はクリフトに丸投げだ。

 しばらくは往復だけでも大変だろうけどね。

 自分はトウリョーと、ログハウスタイプのアパート建造に入る。2階建てで1室が1K、単身者用風呂なしトイレ共同だ。一応簡単なキッチンはつけるけど、基本的には食堂で食べてもらう。

 水道管は豪華に銅管だ。第一貯蔵庫で見つかった大量の銅インゴットを使う。

 叩いて板状に延ばして、細く均一にカット、鉄のインゴットで作った、直径2㎝程の丸い棒に巻き付けて、つなぎ目を過熱して、叩いて結着、鉄の棒を引き抜けば銅パイプの完成。

 鍛冶のスキルが解放されてから、金属加工限定、鍛冶小屋内限定だけど自由に熱を使えるようになった。ピンポイントで自由に過熱できるし暑さも感じないのであっという間に銅パイプが量産されていく。

 え?鍛冶小屋なんていつ作ったって?

 アパートを作るのに、小さな簡易キッチンをつけるなら水道がいる、塩ビパイプなんて作れないし、どうしようか、と考えていたら、給湯機の配管で銅管を使っていたのを思い出した。銅インゴットは大量にあるから、鍛冶スキルでできるのでは?ということで、急遽手抜き工事したのだ。炉は貯蔵庫にそのままあったので運び出して地面の上に置いて、作業スペースを確保して適当に板で囲い、天井に板を置いただけ。

 自分で作っておいて笑ってしまったが、一応鍛冶小屋として認識されたようだ。いずれちゃんと作ろう。

 水道は1階、2階の廊下中央に各一、3個ずつ蛇口をつければいいか。排水管は直径10㎝の銅パイプで。上下水道ともに道の脇辺りまで伸ばしていくことにしよう。熱を自由に使えるのは鍛冶小屋限定なので、溶接機が無いから面倒だけど小屋の中でつなぎながら伸ばしていく。必要な長さのパイプができたら現場へ、最終的な接続は、すでにトクイ技の後回しだ。

 冬、水の入った配管が凍結して破裂しないようにするための断熱にも苦労してしまった。

 こうして、雪が降りだす頃には1棟目が完成した。7日間で2階建て12部屋の単身者用アパート1棟完成。夕食後にはミニチュア作りもチマチマと、単身者用アパートと、住居キットも完成させていた。

 アパートは1Kのつもりだったけど、部屋で調理は火が怖くなったので、水道を設置する廊下中央を共同炊事場にして。大きめの土かまどを設置した。その分部屋が広くなったってことで。

 2棟目はもう少し早くできるだろう。雪次第だけど。

 ソンチョーは、すでに届いた住宅(中)キットを2棟完成させていた。

 なんか、ちょっと悔しい。


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