16:押し付け
水曜日と土曜日、16時ごろ更新予定です。
よろしくお願いします。
寒さで目が覚めてしまった。
外に出ると、息が白い。
う~ん、冬間近って感じだな。
そう言えば、魚、食ってないなぁ。
近くに川もあるみたいだし、いつか釣りにでも行くか。落ち着いたらな。
昨夜あれだけ飲んだのに、ハンターたちはすでに狩りの準備を始めていた。
持ち込んだ道具の手入れをしている。
とりあえず解体小屋ができるまでは、周辺の魔物の調査や狩り場の選定を中心に活動するそうだ。
情報は命。安全地帯が近いとはいえ、ここは森の奥深く。魔物は豊富だが強く、未知の物もいる。しっかりと調査をして、安全を確保するのがプロのハンターなんだ。と、説教じみてくるのがおっさんハンターたちの特徴のようだ。
朝から思わぬダメージを受けてしまった。
いかん、お仕事お仕事。朝食は軽めに、麦粥にしよう。
この世界基準では十分すぎるほどに美味い飯、なんだけど、向こうを知っている身としてはなぁ。やっぱり、スキル頼りじゃなくちゃんと料理のできる人がいてくれたらな。
「「それは良い考えですね。」」
急に後ろから声をかけられた。
心臓がバクバクしている。
クソ悪魔め。完全に不意を突かれた。おっさんの説教にクソ悪魔なんて、最悪の朝じゃないか。
「用はないけど。」
無表情をよそおう。
「「いえいえ、とても美味しく頂きましたよ。」」
無駄だった。
「ヒマクソ悪魔め。」
「「ひどいですねぇ。朝食後の優雅なひと時をかなぐり捨ててまで馳せ参じたというのに」」
相変わらずのオーバーアクションで悲しさを表現する。が、ただのポーズだと分かっているのでかけらも同情しない。
「冷やかしに来るくらいならそのままユーガナヒトトキとやらを堪能してろよ。」
自分も言うようになったな。
相変わらず顔が見えてるし、同じ個体だと認識できてるのに全く覚えられない。不快さしかない顔面はそのままだ。
「「今回は、とても耳寄りな情報をお持ちしたんですよ。」」
「怪しいからパス。」
にべも無く告げると回れ右して立ち去ろうと、
「「ちょ、待ちなさいって!まったく、あなたといい、あの乱暴者といい、どうしてこう、私への敬意というものが無いのか。」」
あるやつがいるならぜひ紹介してほしいものだ。
「「あなた方にとって都合の良い者達がいるのですが、どうにも要領の悪い方々でして。たぶん、明日には死ぬでしょう。」」
そう言うと、チラチラとこちらを見る。
のが何でわかるんだよ!自分は回れ右してクソ悪魔は見えないのに!イラつく。ホントこいつイラつく!
って心境も見透かされてるんだろうけど、腹が立つからそんなそぶりは見せてやらない。
「「あなた方なら間に合うでしょうねぇ。場所は、分かるようにして差し上げました。とてもお買い得ですよ。」」
あ~、もう!
こっちもいろいろ忙しいのに余計な・・・って、いねーし!
仕方ない、一応みんなに話すか。
見殺しもなんかいやだし。
でもそれが分かってて振ってきた話に乗るのも嫌だし。
も~、存在自体が嫌だし!
プリプリして朝食の準備。イカン、ちょっとしょっぱかったかな。
朝食後に集まって、先ほどのやり取りを話し合う。
「俺らなら間に合うってことは、軽トラ使えってことスかね。」
「それにしても怪しいな。死にそうだから助けに行けって、言うか?奴が。」
それなんだよね。明らかにおかしいよね。絶対何かあるよね。
「死にそうなやつの前に現れて、絶対届かない所ににポーション置いてもがく姿を喜んで見てる、のが似合うな。」
ちょっとひどいけど。
いや、ひどくないな。ヤツはそーいうやつだ。
「でも、行かないわけにはいかないよね。」
ユーキの一言でみんな うーん とうなってしまう。
迷惑なやつだけど、わざわざ嘘を言ってまで罠にはめる意味がない。
むしろ、ギリギリのタイミングで伝えてきて、慌てる様子を笑って見てる、って方が似合ってるな。ここでウダウダやってると本当に間に合わないかもしれない。間に合わなかったらそれで、後悔する様子を見て楽しんでいそう。あ、なんかしっくり来た。
「行くなら最大戦力で行った方がいい。」
スロークはもう決めたようだ。
確かに行くべきなんだけど、村も外部から滞在者を受け入れたばかりだ。
最大戦力=ソンチョー以外の4人ってことは、ここはソンチョー一人に負担がかかてしまう。せめて数日前か後だったなら、何も考えずに飛び出せるのに。
「ここは僕が何とかするから。速い方が良いんでしょ。」
そんな自分の不安に感づいたのか、ソンチョーが背中を押してくれた。
「無理はしないでね。と、場所はわかるの?」
ええ、分かりますとも。
なんせ、ずっと見えるんだよ。うっすらと、手招きする奴の姿が!
そのことを告げたときの、みんなの表情は忘れまい。
ソンチョーの同情を含んだ励ましに見送られて、村を出る。
今回の遠征用に、装備は一新してある。
元々第一貯蔵庫にはたいした装備は入れてなかったんだけどね。バラされて詰め込まれた拠点の資材の中に、宝物庫に展示してあった装備品のいくつかも紛れ込んでいた。
今のレベルで装備できるものとしては最高の装備があったのは行幸。
革の全身鎧に鋼の補強を埋め込んだ鎧は、金属鎧に分類されるが、特有の騒音が出ず隠密性に優れる。防御魔法も付与されていて、物理にも魔法にも耐性のある使い勝手の良い鎧だ。
武器も強化に強化を重ねた逸品。強化しすぎて耐久性が下がってしまったのが難点だけど、こまめに修繕すれば問題無い。100レベル台のモンスターにも通用する攻撃力が魅力のロングソードだ。
ユーシンのは、オリヒメ作の長ラン、裾の長い学ラン風のコートだ。染める手段がないので白いままだけど、ヤンキー漫画でおなじみの白ランっぽい感じになっている。防御効果は期待できないけど、ユーシンいわく、気合が乗るしコンボもつながりやすくなる気がする。とのことでオリヒメに頑張ってもらった逸品だ。
ユーキにはまだサイズの合う装備が無かったので、防御力上昇や毒等状態異常への抵抗を高めるアクセサリー類を、気休め程度だけど。
一つの命令で短時間という制限があるけど、それなりに離れてもユーキのモンスターは活動できる。ということが分かったので、ユーキ自身は安全な場所に引いてもらおう。
ホブゴブリンになって身長の伸びたゴンには強化した革鎧と、命中補正の付いた弓を。スリングでは完全に通用しないだろう。クマとアオンには、残念ながら使えそうなものが無かった。
スロークも、レベルが上がって使えるようになったという暗殺者専用の剣に持ち替えている。確か、ダンジョン産のクリティカル率がかなり高い片刃の剣だ。強化していると言っていたから、さらに性能アップしているだろう。
全員軽トラに乗り込んで救出に出発だ。
口を開いたら舌を噛みそうな悪路を2時間ほど進むと、前方に反り立つ崖に開いた穴に前足を突っ込む、3mはあろうかという巨大な熊の魔物、グレートベアを発見した。
「あ~、こいつを倒せってことみたいです。」
手招きしていた悪魔が、熊を指さしてファイトポーズを決める。ムカつく。
「あの中に助ける相手がいるってことスかね?」
そういえば、ユーシンの武器はいまだにバールのままだった。本人が気に入っちゃってるから無理に変えさせるのも、って、そのままだった。
「とりあえず隠密でクリティカル狙うから、気にせず仕掛けて。」
スロークの姿ががすぅっと消えた。暗殺者街道まっしぐらだな。
ユーキもゴン、クマ、アオンを呼び出す。
自分は、と、お決まりのパターンで行くか。
グレートベアの足元にアイストーン。まずは機動力を削る。
「ゲッ!」
グレートベアの後ろ足を貫くはずの氷のトゲは、脆くも砕け散ってしまった。
穴から前足を引き抜いて、こちらを振り向くと、ゆっくりと立ち上がる。
デモンエイプ並みの威圧感。素早くはなさそうだけど、そのかわり堅そうだ。
ユーシンにボディプロテクション、スピード、パワー、ディフェンスの3種のアップ系補助、オーラウエポンを矢継ぎ早にかけていく。
すでにアオンがグレートベアの気を引くためにとびかかっていた。
「サンキューっス、シンさん。」
補助をかけ終わると、ユーシンが飛び出す。
フレイムアロー
炎、というより、高熱の矢をグレートベアの後ろ足に放つ。現在撃てる最大威力の魔法だ。これが効かないなら魔法でダメージを与えるのは難しくなるけど、高熱の矢は、前足の一振りで脆くも砕かれた。
さすがに無傷ではなかったけど、いやがらせ以上の効果は無さそうだった。
そこにユーシンが飛びかかって、上段からバールを振り下ろす。
受けようとしたグレートベアの前足にヒット。
メキィっという嫌な音が響いた。
そのままバールを支点に宙返り、サマーソルトキック、とでもいうのだろうか、大きく円を描いた右足がグレートベアの頭部に突き刺さる。止まることなく右回転すると再び顔面に回し蹴りからのバールでの打撃。初めて実戦でユーシンの4コンボが見れた。白ランのおかげ?
グアオォオオォオオ!
頭から血をまき散らしながら咆哮を上げ、巨大な前足がユーシンを襲う。
そうはさせない!
剣を抜いて駆け出す。以前の量産品とはわけが違う。貴重なアイテムと資金、時間を投じて強化した剣だ。
膝付近に切りつけると、赤黒い血飛沫が勢いよく飛ぶ。
くずれ折れるグレートベア、すかさずアオンが喉元にかみついて防御を崩す。
もがくグレートベアの心臓めがけて剣を深々と突き刺した。
圧勝?ウソ。
と思ったら、少し離れた場所からズゥウン、と地響きが。
「気をつけろ!5匹はいるぞ!!」
スロークの声、グレートベアが単独でないことに気が付いて、一人で1匹を仕留めたようだ。
自分自身にも補助魔法をかけていく。この剣なら十分戦える。
木を薙ぎ払い、怒りに任せて迫ってくるグレートベアに対峙する。
上段に構えて、スキル”兜割り”を発動。噛みつこうと突進してくるグレートベアの頭へ振り下ろす。
ゴリッ
かすかな手ごたえで、グレートベアの頭は真っ二つに割れた。
あっ。
倒したけれど、いや、倒したからか、突進する勢いそのままに、事切れたグレートベアの巨体がつっこんできた。
ぐふぇっ。
メキィッ!
まさに交通事故。巨体と崖に押しつぶされて、危うく圧死しかけた。
あぁ、これ恥ずかしいやつだ。間抜けすぎる。
お、
最悪だ!完全に巨体と崖に挟まれて身動きが取れない。
自分が情けなくも血まみれクマとランデブーしてる時、絶好調のユーシンはもう一体を圧倒していた。3コンボ、4コンボを絡めつつ、流れるような動きでグレートベアを翻弄して、ジワジワとダメージを積み重ねている。武器が良ければ倒せていてもおかしくない。
アオンとクマも、連携してもう一体を相手にしている。クマがグレートベアの攻撃を受け止め、アオンが爪と牙で無数の傷を作っていく。積極的に倒しに行く、というよりは、隙を作ろうと時間を稼いでいる感じの戦い方だ。
「大丈夫ですか?」
ユーキとゴンが助けに来てくれた。いや、お恥ずかしい。
なんとか二人がかりで引っ張り出してもらった。
「いや、調子に乗ってしまったよ。」
さて、助太刀に行かなくて・・・・は・・・あぁあ!
剣・・・が!
真ん中からポッキリ。
確かに耐久低めだけど!
それでも修繕無しで100レベルのモンスター30匹は余裕で狩れたのに!
とんでもない時間と費用とアイテムをつぎ込んだのに!
「ぽっきり・・・」
一瞬、何もかも忘れて呆然としてしまった。
いかん、惚けている場合じゃない。
と、立ち上がるのと、ユーシンのバールがグレートベアの頭を砕くのがほぼ同じタイミングだった。
ズゥンと地響きを立てて倒れたグレートベア。
数泊遅れて、最後の一匹もスロークのクリティカル攻撃で沈んだ。
なんか、ひとり恥ずかしい。
尊い犠牲はあったが、無事グレートベア5匹の討伐は完了した。
あぁ、これでまたしばらくは量産品か。
う~ん、良い武器持つとみんなすぐ無くなるな…量産品で我慢しろってことか?
気を取り直して魔物の解体だ。クマの肉はクセがあるっていうし、硬そうなので今回は少しだけ。魔石と毛皮を剥いだら終了だ。
その間、隠密スキルでスロークが洞窟内を調べている。
グレートベアの魔石はデモンエイプより小ぶりだな。実際、レベルが上がってるとはいえ思ったほど強くなかった。
少しするとスロークがすぅっと姿を現す。
「どーだったっスか?」
「奥にプレイヤーと思われる者はいた。うん、何と言っていいか難しいんだが。」
?
どうも歯切れが悪いな。
危機感の無さそうな言い方だから一刻を争うってわけじゃなさそうだけど。
「とにかく声かけてみりゃいーんじゃないっすか。」
というとユーシンが穴の入り口まで駆けていき、すぅっと息を吸い込むと
「クマどもはぶっ殺したからもう安全っスよ~。」
と目いっぱいの声量で叫んだ。
ふむ、反応が気になるな。
自分も入り口まで移動して中を覗き込む。
と、ドスドスといった音が近づいてくる。
え?
えぇえぇぇぇえ!
なんだ?
四角い箱をつなぎ合わせたような人型がドスドスと駆け寄ってくる。
一瞬で元ネタが分かってしまったけど、怖い!
あのキャラがリアルになるとこれほど恐ろしいのか。
「ば、バケモンぢゃねぇ~っスかぁああ!」
と、おそらく人としてまっとうな反応をしたユーシンの顔面に四角い拳が叩き込まれた。
拳だよね?
「って~だろコルァ!こっちは命かけて助けてやったんだゾ!」
「いきなり化け物扱いしたクズには鉄拳制裁って法律で決まってんの!」
「んなわけあるかぁ!ロボ女!」
「ロボって、表現が古臭い!せめて箱娘でしょ!」
あ~、ユーシン、君の相方はユーキじゃなかったのかね?
ってか、よくわかったね、女性って。
「あおいちゃぁ~ん、やめてよぉ~。」
ヒートアップする自称箱娘の四角い足にしがみつくのは、赤い二足歩行のヤマアラシ…こちらも元ネタ想像ついたけど、リアルに寄せすぎじゃね?
さらに白黒で二足歩行のネズミ、二足歩行のビーバー?、青色で筋骨隆々の大男、両肘から、肩に届きそうな剣が生えて、所々金属部品が露出する少女が続いた。
うわぁ~。
さすがの自分もドン引きだ。
あのクソ悪魔、ゲームなら何でもいいってわけじゃないだろうが。
せめて見た目はこの世界基準に合わせろよ。
手抜きか。
手抜きだ。
そう言うやつだった。
あの野郎、まさか手抜きの修正に自分を利用する気じゃないだろうな。
・・・
よし、1案件につきヤツに要求するものを考えておこう。
当然最初は米だな。米!
とりあえず、ここでは魔物が寄ってくるということで詳しい話は村で、ということに。
同行者が6人も増えるので、スロークとユーキは貯蔵庫から出した例のバイクを使ってもらう。新人さんたちには悪いけど軽トラの荷台に乗り込んでもらった。
ハンターや大工たちに見つかると問題なので、彼らが活動する北側を避けて南側、ゴブリン居住地(仮)から入り、裏口からソンチョー宅へ。
「さすがに、想像の斜め上を言ったよ。」
頭を抱えるソンチョー。
だよね。たぶん、けが人は想定してたんだろう、新しい手拭いや、布の裂いて作った包帯が用意されていた。
でも安心なされよ。
「たぶん、あれ使えるでしょ。」
と言って、キャラメイクがやり直せる鏡台を指さした。
最初に使ったのは箱娘。
鏡台の前に立つと、程なく全身に細かいマス目のような光の網がかかり、足元から網で囲まれた部分がめくれるようにはがれていくと、はがれた場所の姿が変わっていく。
新しい姿は黒髪ロングの美少女だ。少し吊り目がちなのが特徴か。
「ごめんなさい、時間かかりすぎちゃって。」
慌てる元箱娘。なるほどの新発見、キャラメイク中は本人と周りの時間の感覚が違うんだね。ユーキの時は性別変えただけだったから気が付かなかった。
アスクラ、アースクラフトオンラインという、サンドボックスゲームの金字塔をプレイしていたという 橘 葵 さん、16歳高校生。
アスクラはクラフト中心のゲームで、素材も建築物も、キャラも何もかもが立方体で表現されていた。でも、だからと言ってこの世界でもそのまま採用するって…。
キャラ名は AOIii だったそうだけど、アオイと呼んでほしいそうだ。
続いて赤いヤマアラシ、たぶんフラッシュランナーだろう。高速でいろいろなコースをめぐって戦うアクションゲームだ。
生まれ変わった姿は…猫?
「ちょ、ユウコ正気?」
二足歩行の猫だ。擬人化したコスプレっぽい、猫な人じゃない。猫が立っているという表現が近い。
獣人?っていうのか、一応この世界にもいるらしい。超珍しいけど。
「夢だったのぉ~。猫ちゃんになるのがぁ。」
頬に手?前足?をあててクネクネする白い猫。120cm位だから猫にしては大きいか。
手の指は、猫にしては長いみたい。一応スプーンとかは使えるのかな?
「何回も使えるんでしょぉ。不便な所は少しづつ変えていこうと思ってぇ。」
本人がいいならいいんだけどね。
「フラッシュランナーをやってたユーコ、16歳高校生で~す。」
「ニャン。」
思い出したように付け足す。
「あんた・・・。」
「語尾は鉄板だと思ってぇ。」
「あ、ニャン。」
「速攻で忘れるくらいならやめなさい。」
オッサンにはちょっと、ついていけません。
白黒ネズミは長身のダンディーオジサマに。
「漫画で好きなキャラに似せてしまいました。」
と、照れながら言っていた。全然問題ないと思います。
プレイしていたというゲームは、版権関係に異常なほどの反応を示す外国の超有名アニメのゲーム化作。王道RPGだ。王道過ぎてゲーマーからの評価はいまいちだったが、キャラ総出演というだけあって売れに売れた。
もちろんやってないので詳しくは知らないけど。各キャラ毎に武器が決まっていて、彼が使っていたマッキー・ラッツの武器は巨大なスプーン。ということで、まともに戦えずにいたそうだ。
向こうではなんと、定食屋のご主人だったそうだ。心強い味方が増えた。自分のようなインチキ料理人とはわけが違う本職の登場だ。
増田 健介37歳、長年勤めた洋食屋から独立したばかりで、やっと常連ができ始めたのにと嘆いていた。呼び方は好きに呼んでほしいってことで、とりあえず増田だからマスターで、とユーシンが安直に決定していた。
ビーバーだったクリフトこと 牧田 達夫 さん29歳は青い髪の青年に。
人類滅亡後、進化したビーバーが異常気象にめげず王国を築いていく、というかなりぶっ飛んだゲームをやっていたそうだ。
ポンプや水車、ダム建設に水力発電など、水にまつわる色々な施設を作っていけたそうなので、ひょっとするとここでも流用できるのかもしれない。
向こうではゼネコン勤務だったそうなので、そういう意味でもとても期待できる。
青の筋肉だるまだった、 祐樹 真 さんは金髪ショートの少年?少女?に。
中性的な顔だちでどちらとも取れない。声も、女性に聞こえるけど見た目の年齢的に変声期前の男の子って線もありそう。
「フフフ、どうせなら、いっそのこと両方ありってのも面白そうだったんですけど。さすがに無理だったんで今は男です。」
今は、ってところを強調していたけど、ちょいちょい変える気か?不思議ちゃんってやつなのだろうか。
気を付けないと、女性の時にちょっとした発言がセクハラとか言われそうだ。
「色々な仕事をしてましたけど、プロゲーマー目指してストリートバトラーに励んでいました。」
ストリートバトラーは王道の格闘ゲームだ。必殺技やコンボが豊富で、世界大会が開かれるほどメジャーなゲーム。彼(彼女?)は国際大会に出るほどのレベルだったそうだ。
「21になってしまったんですが、この姿でも構いませんか?」
「あ、ダイジョブダイジョブ、自分アラフィフ。」
と自分を指さす。
「おじーちゃん?!」
アオイが放つ悪意なき口撃がクリティカルです。
ま、まだジィ様ほど年取ってないやい。
プルプル笑いを堪えてる奴は魔素抜かず飯の刑決定だ。
「良かった。どっちか分からないキャラは、いろんな意味でこの世代でないと難しいですからね。あぁ、僕のことはライアーと呼んでください。」
そして最後の一人、物騒な機械人形の女性は、顔はそのままで人の姿に、銀髪の美女だ。
「看護師の 佐倉 真奈 です。オートマトンをやっていました。」
これも超人気タイトルのアクションRPGだ。
未来の世界で戦争のために作られた戦闘用自動人形が主人公。収容されていた母艦が大破して墜落、機能が完全に停止した中、偶然起動した主人公がプログラムされた指示に従って、
絶対不可能な母艦の復旧作業に従事する。その過程で自我に目覚め、自らの存在意義を探し求めるという重めな内容のゲームだ。
全員の変形、もといキャラメイクが終わって、簡単に村の説明と相談をする。
救出した6人のことは、水汲みに行ったユーシンがグレートベアを発見、ソンチョーに報告すると、村の安全のために討伐に、ということになり、ハンター不在だったが一刻も早くと討伐に向かう。と、彼らが襲われていたのでそのまま救出。って感じで口裏を合わせた。
問題は、どうしてこんな森深くに、ということなんだけど…。
子供が、しかも獣人も一緒に、というのが作文を難しくしていた。
人里に出られないような姿で数か月を乗り越えて来たので、できれば希望の姿にならせてあげたいけど。
「もう、どっかから逃げて来たとかでいいんじゃないスか?」
完全に詰まって、ユーコとライアーがもう一度鏡を、という話まで出たところで、ユーシンの何気ない、というか、適当な一言。
意外にもそれがきっかけで、煮詰まっていた問題が多少投げやり気味に解決した。
彼らはとある理由で村にいられなくなり、商隊の移動に便乗して引っ越しの途中だった。それが野党に襲われ、追い立てられるように森へ。魔よけの魔道具を使って何とか生き延びていたけど、森を抜けだそうにも方向が分からずさ迷っていたところ、獣人のユーコにであった。ユーコは悪いハンターにつかまって、見世物や愛玩用に売られようとしていたが、グレートベアに襲われてハンターたちは全滅し、逃げている最中だった。グレートベアはユーコを追いかけてきていたのだ。
ちょっと、かなり?無理やりだけど、これで押し切ることにした。
当然ソンチョーに丸投げ。
いかん、顔に出たか?
ソンチョーのジト目は見ないふりだ。
後は、それぞれの能力だ。
実際、似ても似つかない姿になっているのだから、ゲームの仕様は対応するのだろうか。
アオイのアスクラは、素手で地面をガシガシ掘れるし、木も切れ(?)る。そして掘ったり切ったりしたものは、正方形でブロック状の素材になるのだ。質の良いつるはしを持てば、岩や岩盤まですいすい掘れる。そうしてできた素材は重ねるだけでくっついて建造物になるのだ。
ユーコのフラッシュランナーは高速アクションなだけに、戦闘面で期待できそうだけど、今はヤマアラシじゃなくて猫だからな。トゲを逆立てての回転アタックも、トゲを投げつけるトゲ投げも再現不可能ではなかろうか。
マスターは戦闘職って感じか?でも武器がスプーンなんだよな。それにどちらかというと食事で活躍してほしい。
クリフトは前職もあって街づくりの基盤になってくれそうなので心配無し。発電機が実現可能なら、将来色々楽しみだけどな。
ライアーのストリートバトラーは、ユーシンの爆裂学園同様タイマン格闘。戦闘力に期待することになるけど、使っていたキャラは作中でも異色の存在。トリッキーで極端な動きが特徴の、プレイヤーの9割が断念するという扱いの難しいキャラだ。子供姿では何一つ反映されない気がするのだが。
マナもゲーム上戦闘職になると思うけど、メイン武器のひじに装着するブレードも無いし、腕がパカッと割れてビーム砲が出るようにも見えない。
ここうはもう、悪魔を召喚して問い詰めるしかないだろう。
静かに、心を落ち着けて移動します。
両替機(自販機、もしくはガチャとも言う)の前でゆっくりと深呼吸します。
吸って すぅーーーーー。
吐いて はぁーーーーー。
吸って すぅーーーーー。
無心でけり続けましょう。
ゲシゲシゲシゲシゲシゲ・・・
蹴る足が白い手で止められたら召喚成功です。
「「なんてことを、してるんですか?」」
おお、ホントに出た。
「召喚の儀だ。」
「「・・・・・私をこんな扱いするのは、あなたとガラの悪い彼くらいのものですよ。」」
「んなこたぁどうでもいい。言うこと聞いてやったんだからちょっと来い。」
と言って、悪魔の首根っこをつかんで引きずってみんなの元へ。
あ、そういえばこいつ、触れるんだね。
何も考えずにつかんだけど、掴めたことにびっくり。
「あ、クソ悪魔。」
「「お久しぶりです、ガラの悪い君。ほんの少しだけ成長されたようで何よりです。」」
「舐めてんのかクソ悪魔。」
「「バッチいのでご遠慮いたします。」」
「漫才はいいから、質問に答えろ手抜き悪魔。」
「「てぬ?なんですそれは!毎日、日が昇る瞬間から登りきるまで、身を粉にして頑張っているというのに!」」
・・・・・・
「「ボケに対して無言とは人として恥ずかしくないのですか!」」
「関西人じゃねーし。」
「そもそも、登りきるまでって、日が出きることなのか、頭上に上がりきることなのか、あいまいでパンチ力が無いな。」
ユーシンが突き放して自分がダメ出しする。
「「くっ、まさかダメ出しまでされるとは…。」」
ソンチョーたちはまだ悪魔に慣れないようだ。固唾をのんで見守りに入っている。
新人たちは完全に固まっている。最初はみんなこうなんだなぁ。懐かしく感じるよ。
「で、お前の言う通り救出したけど、ゲームの能力はみんな使えるんだよな。」
「「さぁ、どうでしょう。」」
しらッととぼける悪魔。
「ごめんみんな。両替機もう使えないから。」
というと、あらかじめ用意していたつるはしを担ぐ。
「「ちょ、待ちなさい!ホントにわからないんですぅ。あれ作るの大変だったんだから!使えるように調整するから少し時間くださいっ。」」
「少しって2日?、3日?まさか、ダラダラ伸ばしたあげく、悪魔にとって10年、20年は一瞬のこと。なんてぬかさないよな。2~3日でゲームの能力は完ぺきに使えるようになるんだよね。」
矢継ぎ早に逃げ場をなくして念を押す。このくらいしないと安心できないからな。
「「ぐぅ・・・もちろんですよ。」」
と、言い残して消えた。
持ちつ持たれつ、6人も手抜きの尻ぬぐいをしたんだから、これくらいフォローしてもらわないとね。
あ、米ぶんどるの忘れてた。




