118: 廃墟
廃墟と化した室内。
壁も天井も、崩れ落ち、その先の闇が見えている。
豪華であっただろう大きなデスクには無数の傷が走り、所々炭化している。
壊れかけた、かつては豪華であった椅子には一人の男が。
限界まで倒された背もたれに体を預け、上を向いた顔には薄汚れた白い帽子が被せられている。
着ている白い燕尾服は、薄汚れ、あちこちが破れている。
右腕は肩ごと何かに抉り取られたかのように無く、右足も同様に膝から下がない。
「「まだそんな物にこだわっているのか。」」
鮮やかな青のスーツに身を包んだ人物が現れると、生きているのかもわからない状態の白い男に声をかけた。
「「・・・そうですね。」」
白い男はピクリとも動かずに答えた。
「「ずいぶん育ったんですよ。何も無い、何も存在できないこの世界で、やっと、私の家を取り戻せた。」」
ゆっくりと上半身を起こすと、顔にかかっていた帽子が落ちた。
その顔には左上が無かった。
「「まだ200〜300年はかかると思っていたんでね、舞い上がるほどうかれてしまったんですよ。そうやすやすとは手放せません。」」
人であれば生きているはずのない状態だが、声には弱々しさを感じない。
「「見苦しい。とっととこんな物放棄して自分の再生を優先させることだな。じきにあれも動き出す。そのまま喰らいつくされたいなら構わんが。」」
それだけいうと、青い人物はまるで部屋から出ていくかのように闇へと消えた。
「「ロマンを理解しない悪魔ですねぇ。」」
瞬間、廃墟が砂のように崩れ、渦巻き、男の元へ、失われていた箇所へ吸い込まれてゆくと、文字どおり再生した。
「「しかし、王ならまだしもあんな下っ端が世界を渡るとは。つくづく厄介な存在になったもので・・・っ!!」」
飄々としていた男の表情が、突然驚愕に歪む。
「「なぜまた戻る?! クソ! せっかくあそこまで育ったというのに、これ以上私の物を破壊する気か!!」」
何も無い空間から死闘燕尾服の男が消え、黒だけが残った。




