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110:合流

 「射出は10から11時間に一回、すべて要塞に向けて放たれています。ナレハテ同士が争っているようにも見えますが、通称クラッカーが攻撃行動と見られる岩弾の射出以外一切の行動を見せないこと、通称アリが、要塞の修復以外の行動を取らないことから、敵対関係にあると断定はできません。」

 2体目のナレハテが現れてから3日、幸いにも矛先がこちらに向くことはなかった。

 クラッカーと呼ぶことにした新たなナレハテは、定期的に岩の弾丸を要塞へ向けて放つだけ、それ以外微動だにしない。

 岩弾をどうやって補充しているのかすら不明なまま調査できていない。

 その理由は、岩弾の飛距離だ。

 要塞から外れた岩弾を追跡した結果、なんと最長で100kmにも達することが分かった。

 ハクアが瀕死の重傷を負うわけだ。

 ポーションで怪我は回復しているが、失われた体力までは回復できない。戦線復帰にはまだ時間がかかるだろう。

 それほど威力のある岩弾だ、もし調査のために近づいて、クラッカーの攻撃(?)対象が変わってしまったら、周辺の集落や村に壊滅的な被害が及んでしまうのは確実だろう。

 だから動けない。

 クラッカーから見て要塞の先、30Kmほどのところにも集落がある。

 要塞が破壊されつくされても、その集落は壊滅してしまう。

 避難要請も出してはいるが、高齢者も多く、役人との関係も良好とは言えない地域のようで遅々として進んでいない。

 避難が完了するまではアリたちの補修に期待するしかない。

 ついでにクラッカーとアリで潰しあってくれれば楽なのだが、どうもその様子はない。

 アリは要塞の補修に岩弾を利用するようになっており、徐々に防御力を増してきている。

 見ようによっては、クラッカーの岩弾は、かなり荒っぽい資材供給ととらえることができてしまう。

 とにかく、このまま岩弾で外壁強化を完了されてしまうとマズい。 

 クラッカー側の補強が完了次第蟻攻略、次いでクラッカー攻略、といきたいところなのだが、のんびり構えすぎれば反対派の貴族連中が騒ぎだすだろう。

 攻略目前での乱入者は、ツキタケたちを大いに悩ませている。

 「バン爺召喚。」

 右手をピンと上げて要求するリタ。

 「だから無理だって、バンバンジーさんは第5部隊で長期遠征中。」

 「快適なベッド所望。」

 リタが使うキャラを演じている、と言うわけでもないらしいのだが、短文で区切るような話し方や自分本位にとれる内容、どうも馴染めない。

 以前はこれほどひどくなかったように思うのだが、魅了の影響下だったからなのか?とすると、これが彼女の本性なのだろうか。

 「でも、本当に誰か来てもらわないと無理だよね。クラッカーはうちらと相性最悪だし、ハックンまだまだ無理そうだし。」

 ルリとはまだ会話が成り立つ。ハクアをハックンと呼び、配下の狼たちも一頭一頭にあだ名をつけては甘やかしまくる以外は・・・今も、会議に参加しているハクアの隣から離れようとしない。

 まぁ、同じ部隊の仲間と仲良くするのは悪いことじゃない。

 狼たちへの甘やかしくらいは許容範囲・・・。

 「モフモフ所望。」

 「だめです~、ハックンはうちのモフモフですぅ~。」

 「我はシン様のモフモフであって、ルリ嬢のモフモフではない。」

 「ハックン、イケズ~。でもそこが好き~。」

 うん、やっぱり無理そうだ。

 まじめに対策を話し合いたいのに、どうしてうちはこう、変なのが集まったんだろう。

 結局有効と思える対策も出ないまま、ツキタケの苦悩(?)はつづく。

 

 

 「デカいなぁ。」

 巨大な要塞とナレハテを見たカイトの第一声だ。

 新たなナレハテ、クラッカーの詳細を確認したシンが増援として指定したのは、遠征を終えて帰還していた第四部隊でも、シンが率いる第一部隊でもなかった。

 理由は、シンが貴族だから。

 両国間の関係が普段から良好ならば問題なかったのだが、いかに非常事態とはいえ、小競り合いを続けてきた国の貴族が堂々と入国して自由に動く、という事態を受け入れられない連中が予想以上に多かったためだ。

 活躍されても問題だし、まかり間違って戦死などという事態になったら、新たな火種になりかねない。

 結果、クロウを臨時部隊長に、副隊長トール、隊員としてアオイ、カイト、アカネのサンドボックストリオ、トウリョー、オヤカタと弟子たちに、フレイアとデストームという、部隊以外の人員も巻き込んでの編成で送り込むことになった。

 アオイが行くならとユーシンも名乗りを上げたけど、彼も貴族である以上は受け入れないだろう。

 ユーシンが、だから貴族になんかなりたくなかったんだ、とかゴネていたけど仕方ない。

 作戦上でも、彼に行ってもらえたらずいぶん楽になるんだろうけど。

 彼らには、とにかく岩弾に負けない頑丈でデカい防壁づくりを依頼した。

 報告書の内容から、先に倒すべきはクラッカーだと判断した俺は、攻撃を仕掛けたことでクラッカーの標的が変わっった場合の対策から始めるべきだと計画を立てた。

 まずは頑丈な防壁を作り安全を確保してから、ハクアたち狼軍団で攻撃して出方を見る。

 ツキタケたちを守るために岩弾を体で受け止めるなんて無茶をしたみたいだけど、それが無ければ問題無く避けられるっていうから、彼らに任せる。もちろん、高性能なポーション類に防御力上昇のアイテムも大量に持たせたよ。

 一戦してみて、もし攻撃対象が変わらなければトールたちが改良した焼却用魔道具の建設に入る。

 攻撃対象が変わるなら、防壁を建設しながらフレイア&デストームを中心に攻撃する。

 ファーレンで見せたフレイアとデストームの合体攻撃なら、ナレハテの再生力を超えるってことが確認できているからね。

 ただ、この場合はかなりの長期戦になるだろう。

 攻撃で削った後、リキャストタイム中に再生されるからね、三歩進んで二歩下がる、みたいな状況を続けて削っていくことになる。

 攻撃方向も注意しなければ、周囲に甚大な被害が出てしまう。

 「とにかく、ちゃっちゃと作るよ~。」

 濃紺ツナギ姿のアオイが、大きなピッケルを担いで指示を出す。

 インベントリ25枠には容量目いっぱいに資材を詰め込んである。

 ゲーム中最高強度のブロック、黒曜石だ。

 簡単に手に入る物ではないし、手に入ってもゲームほどの強度があるとは限らない。

 わけなんだけどね、ゲーム通りの作り方、溶岩に水をぶち込む、なんて荒っぽい方法でできてしまった。

 溶岩は、ウシオが暮らしていた洞窟の下層で見つかった。

 クロウ配下の悪魔たちが調査をすすめていて、かなり広大な洞窟だってことがわかってるんだけどね、発見された溶岩窟までの道のりは、魔素を吸収して魔石に封じる魔道具を設置して安全を確保した。

 流石に洞窟内で水をぶち撒けるわけではない、高温の水蒸気で即死級のダメージ受けかねないしね。で、カイトが地道に運び出しては水をまいて、な、作業を繰り返していた。

 いつか、みどり村に防壁を作るときのために。

 しかし、いくらゲーム通りとはいえ、まさか溶岩が鉄のバケツで運び出せるとは思わなかったよ。

 カイトたち限定だったけどさ。

 資材は1枠に25個スタックできるので625個。

 カイトとアカネのインベントリはメイン枠15に、専用リュック30枠で45枠とアオイより多いが、スタックが20なので900個。

 総数1525個だ。

 35mの高さで壁を作るとすると、幅43m。

 全周囲を囲むとなると全然足りない。

 それに、当然衝撃や自重で倒れないように補強も必要になる。

 あくまでも最初の防壁として。

 アオイたちが壁を作り、オヤカタ、トウリョー達が補強を作る。

 そのための資材はトールの貯蔵庫に詰め込んできている。

 ファーレンへの遠征前にスキル、従魔師範によってトールに第四貯蔵庫を教えていた。

 あの時よりも焼却用魔道具が小さくなったため、資材も大量に詰め込むことができた。

 「たけぇ~。」

 地上35m、垂直に立つ壁の上から、真下をのぞき込むカイト。

 「あぶないよ、オニ~ちゃん。」

 普段服のデザイナーとして、また歌劇場でも活躍するアカネも、兄との作業にどこかうれしそうだ。

 「あ~、流石に落ちたら逝くんだろうな。」

 「当たり前でしょ!」

 こんなやり取りも久しぶりだ。

 

 3日ほどで防護壁が完成した。

 その作業スピードに、同行している騎士団は驚き疲れてグロッキーぎみだ。

 かまってられないので即検証スタート。

 クラッカーの攻撃対象が変わった・・・のか?

 迫るハクアたちに対して、確かに岩弾を放った。

 しかし、ごく小規模な攻撃にとどまった。

 想定外だ。

 いっそ、こちらに全力攻撃なら想定通り対応できたのに。

 新たに検証しなければならない項目が増えてしまい、10日程を費やすことになった。

 結論。

 クラッカーの攻撃目標はあくまでも蟻要塞であることに変わりはないようだ。

 しかし、何かが近づけば攻撃してくる。

 攻撃された時点で離れるか留まれば以降の攻撃はないが、近づけば連射してくる。

 同時に2方向まで対応できるようだ。

 近づくものの規模(単体の戦闘力より数で認識しているっぽい)によって攻撃の規模も変わる。

 要塞への攻撃を100とすると、5〜30程度の範囲で規模が変化する。

 累計で50を超えると、それ以降は5程度の小規模な攻撃だけになり、80を超えると次の蟻要塞への攻撃が延期される。

 80で2時間、以降10毎に2時間づつ伸びていった。

 

 と、いうことで作戦が決定した。

 蟻要塞と建造した防御壁、2方向からオオカミたちが同時に近づき、クラッカーの攻撃を誘発、直後にフレイアとデストームの合体攻撃で削る。

 その影に隠れながら、トールと建築部隊がジリジリと接近する。

 動かなければ、かなり近づいても攻撃されないことは確認済みなので、オオカミたちに攻撃しているスキにちょっとづつ近づく、だるまさんが転んだ作戦(リタ命名)で焼却用魔道具の有効範囲まで近づいて、グルリと囲むように5本の魔道具を設置する。

 さらにツキタケ達による蟻要塞への攻撃も同時進行で進める。

 クラッカーと蟻が協力関係にあるという最悪の事態でも、蟻たちにクラッカー攻略を邪魔させないためだ。

 なんせ、オオカミたちのうち半分は蟻要塞に背を向けてクラッカーにちょっかいを出さなければならないからね。

 内部がどれだけ強化されているかわからないので、突貫直進作戦(リタ命名)は使えないかもしれない。

 どちらも根気のいる作戦になるだろう。

 入念な準備の後、蟻要塞に背を向けるハクアの遠吠えが、作戦開始の合図になった。

すいません、頭の中がごちゃついています。

108話と109話の間に差し込みで、この話が110話になります。

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