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108:呼び出し

 いきなり王室に呼び出された。

 なんで?

 派遣していた第二部隊と第四部隊は無事解決済みだし、第三部隊の派遣地は新たなナレハテの襲来と言う事態にもかかわらず健闘中で、増援部隊も派遣した。いや、これがまたいろいろ面倒だったんだけどね。

 第五部隊は最初型長期戦として派遣してあるし問題もなく進行中。

 報告もきちんとあげているんだけどなぁ。

 ・・・あれ?

 「派遣してたのってなんて国だっけ?」

 王家からとクロウの見立てで決めたから、あんまり国名とか気にしてなかったなぁ。

 「それ、本気?」

 あぁ、辛辣。

 何気なく出てしまったつぶやきを聞かれてしまった。

 先に王都へと発ったスロークに呼ばれたとかでマナさんと同行することになったんだけど、正直苦手なんだよなぁ。

 「いや、もちろんナレハテの状況とか地理、政治に風土とかはちゃんと調査して派遣部隊を決めたよ。でもさ、国の名前とか王家の名前とか必要ないじゃん。」

 ため息つかれちゃったよ。

 ドラゴンが吊るすコンテナ輸送機なんだから、こんな近くにいなくていいんですけど・・・。

 あ、馬車なら別々になれたんだ。 

 マナさんは名目上だけとはいえスロークの婚約者だし、現在唯一の女性貴族。

 未婚の男女が同じ馬車に乗るのはタブーなんだから、時間かかっても馬車移動にするべきだった。

 「で、なんだっけ?」

 秘書代わりに連れてきたグレーターデーモンのセルカノに頼るとしよう。

 「第二部隊の派遣先が南に隣接するクイード、現国王はペデュラム・ナケド・クイード四世。

 第三部隊の派遣先が西に隣接するレリノラ王国、現国王はロキスネアド・サムアナフですが、療養中のため実験は王太子のスクネアドが握っております。

 第四部隊の派遣先は遥か南方の大陸、ユーステラの小国家レグレア、現国王はナハト・レグレア。

 第五部隊の派遣先はファーレンの北にあるホネロス帝国、現皇帝はダリオラル・グステト・ランダリウムです。」

 さすがクロウ推薦のセルカノ君、暗号のような名前がスラスラとでてくる。

 なんてやってるうちに王都に到着、うん、やっぱり航空便で良かった。

 謁見の予定は3日後に決まったので、それまではのんびりしよう。

 のんびりするんだ。

 のんびり・・・したかった。

 到着早々第三親王に呼び出されて邸宅へ。

 いやな予感がするなぁ~。

 

 

 「今回の謁見で、新規に村の開拓を命じられることになる。覚悟しておけ。」

 はい?

 「いや、私はグリンウェル卿の補佐では?」

 貴族間のパワーバランス的な色々でそうなってるんじゃなかったっけ?

 グリンウェル伯爵スロークは、みどり村を守るためにカルケール伯爵の提案で、カルケール伯爵の頼子として貴族に、そして王への献上品で功績をあげて伯爵位を、みどり村を含むノスサンザ大森林の統括を決定されていた第三親王を酒と馬車の車軸技術を提供することで味方につけてノスサンザ大森林の半分を管理する地位を得た。

 独立したグリンウェル伯爵領になる腹積もりだったけど、功績が大きすぎたことで他の貴族たちとの軋轢を懸念した王の計らい(?)でノスサンザ大森林はグリンウェル伯爵領ではなく、王家直轄領としてグリンウェル伯爵に統治を委任される形となった。

 さらに、俺を王の頼子として子爵にして、スロークの補佐につける念の入れよう。

 カルケール伯爵に力が偏らないようにしていたわけだよ。

 その俺をスロークから切り離そうっていうわけだから、パワーバランス云々はもう解決したのか?

 「お前たちのおかげでいくつか問題が起き始めてな。」

 最近開発されたドワーフ火酒の水割りを一息に・・・大丈夫か?

 5倍くらいに薄めてるけど、それでも結構強いぞ、これ。

 ドワーフですらぶっ倒れる最強激強な酒だからなぁ。

 毎年つくられる割に消費されないから、100年物以上の超熟成火酒が大量に出て来たんで、何とか消費する方法は無いかって相談されたんだよね。

 作らなきゃいいじゃんって思うんだけど、伝統行事みたいになってるんだそうでやめられないんだそうだ。

 で、試しに水で割ったら化けた。

 度数が異常なだけで、マジ美味い酒だったんだよね。

 ってわけで、話題性もあるドワーフ火酒100年物を持ってきたわけだけど・・・。

 こりゃ、早く話を進めないと大変なことになりそうだ。

 「問題と言うと・・・遠征の方は順調に進行中ですが…それに、開拓とは。」

 謁見にはスロークにマナさんも参加するみたいだから別件だろうとは思うけどな。

 「あぁ、まずな、グリンウェル卿を始め、ノスサンザ地域の発展も国への貢献も、建国以来比類ないものとなっておる。

 その結果異例の出世を続けておるわけだが、これが良いも悪いも影響が出てきておる。

 男爵位以下は大きな功績を上げることが出来なければいづれ爵位が消滅するわけだが、これは元々、領地を持つ貴族が信頼できる配下を育てる土壌になることを期待しての制度なのだ。」

 領主が旗爵に上爵する権限を持つことで、平民でも能力のある者たちに忠誠心とやる気を引き出す、さらに上へあがる可能性も、「推挙」と言う形で領主に持たせているわけだ。

 確かにこれなら平民出身でも夢を持てる。

 しかも、旗爵は一代限りで爵位を引き継ぐことはできないが、準男爵は子の世代まで、男爵は孫の世代まで引き継ぐことができるとなれば、忠誠心もやる気も高まるだろう。

 平民出身ということになっているスロークの高速出世が良い刺激になっているのだという。

 その良い影響が、貴族たちの子、特に家督を継ぐ見込みのない三男以下の現役騎士、騎士爵たちに波及し、無茶をする者が出始めているのだそうだ。

 「手っ取り早い功績をと分不相応な魔物に手を出し命を無駄にする者がいれば、いざ対峙したものの臆病風に吹かれて逃げ出したあげく、中途半端に傷つけられた魔物が暴れまわり地域住民に被害が出るケースもある。やる気を出すのは大いに結構だが、あまりにも不甲斐ない。」

 まぁ、そりゃ無理だよな。

 デモンエイプなんて、権力闘争に負けた個体1匹ですら、要塞を壊滅させた氾濫の原因になるくらいの存在だもの。

 「今はまだいいが、将来騎士団の存続にかかわるほどの事態になることもあり得ると、陛下が懸念を表明されたのだ。だからと言って、功績の基準を下げて継承権のある準男爵位が増えすぎるのも問題だ。」

 と言うとまたグビり。

 あぁ、今晩は帰れそうも無いな。

 重要なことだけ巻きで聞いとかないと。

 「ええと、それが開拓とどういうつながりがあるのでしょうか。」

 「まぁ待て、順を追って説明する。」

 と言ってまたグビり。

 いや、もう結構やばそうだからせかしてるんですけど。

 「騎士たちについてはだな、ユーステラ大陸から持ち帰ったという・・・魔導甲冑だったか、その技術を提供してもらいたい。」

 それは問題ない、と言うか、そのための準備を始めたところだ。

 「で、その後だがな、現状領地を持てるのは伯爵位以上と決まっておる。領土が増えん以上はこれを変更することもできんわけだ。ノスサンザ大森林のような土地はもう無いからな。

 そこで、新たな制度として寄親の領地内にある町や村に集落、その周辺を治める町主(ちょうしゅ)村主(そんしゅ)集主(しゅうしゅ)として子爵、男爵、準男爵、騎士爵を任命できるようにする特例を発布することにしたのだ。

 任命権は領主が持ち、町主、村主、集主には領主に税を納める義務は負うが、それ以外は自由裁量権を与える。というものだ。」

 なるほど。

 現状領地をもたない子爵位以下の貴族は、寄親の部下といった立場で領内の様々な職についている。

 給金は領主からなので、貴族が増えすぎるのも負担増になってしまうので、推挙もあまり活発には行われていない。

 領都以外の町には部下の貴族を代官として管理を一任、代官には貴族としての給金の他に統治するための費用も出さなければならない。

 村や集落になると代官すら置かれず、それぞれの代表者が収入などを管理、徴税官が年に一度回ってきて税金を回収するといった状態で、頭の良い者が誤魔化そうと思えばいくらでも誤魔化せてしまえている。

 領主側のメリットとしては、給金として配下の貴族に給金として出す支出が減る、管理してこなかった村や集落にも主をつけることができるので管理しやすくなる。

 デメリットとしては、収入が減る。が、支出も減るし、優秀な人材を主としてつければ、将来発展して増収になる可能性のある。

 主となった貴族たちも、手腕次第で発展させることができ、それが功績として評価の対象になるんだからしっかりやるだろう。

 「お前たちは何かと目立つからな、テストケースになってもらいたいところだが、領都一つしかないからな。開拓から始めてもらうことになる。」

 あ、それ決定事項なんですね。

 

 

 謁見ではあらかじめ第三親王に聞いていたおかげで問題起こすことも無く、無茶ぶりを拝命させられました。

 忙しくなるのやだ~。

 で、なんでこの場にマナさんがいるんだって事なんだけどね・・・。

 結婚するんだそうだ。

 嘘の婚約が本物になっちゃったってね、ハイ、そうですか~。

 わざわざ?って思ったけど、男爵位以上の結婚は王家の許可が必要なんだってさ。

 一応王家からの祝福によりなんたらっていう建前があるみたいだけど、要は王家に反抗的な家同士のつながりを防ぐためなんだろうよ。

 後から聞いた話だと、半年ぐらい前にスロークからプロポーズしたんだそうだ。

 それからはマナさんが病院に常駐して無くてもいいように調整と教育を続けてきたんだそうだ。

 今では医療ポッドが必要なほどの緊急事態が起こらない限り、マナさんがいなくても回る状態になっている。

 で、許可を受けに来るならついでに俺を引っ張って来いと・・・俺、今かなり忙しいんだけどついでで呼び出されたの?

 あげくに俺はいつ結婚するんだとか、せめて婚約者くらい決めろとかネチネチ言われたあげくしっかりドワーフ火酒の100年物を要求されてしまった。

 もう帰っていい?

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