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107:要塞戦

 ツキタケは自他共に認めるミリタリーオタクである。

 一番の趣味はサバイバルゲーム、次いでFPSゲーム。

 仕事もサバイバルゲーム関連雑誌の営業と言う筋金入りだ。

 第一志望だった記者も第二志望だったカメラマンも、残念ながら才能が足りず営業へ、それでも満足していた。

 アニメからFPSゲームに入ったリタとは違う、いわゆるガチ勢のミリオタだ。

 プレイしていたゲームも、eスポーツとして世界大会も行われるバトルエリアシリーズの最新作、バトルエリアV。

 今作では銃火器やナイフと言った当然の装備だけでなく、地面に転がる石や椅子に至るまで、あらゆるものを武器や防具として使うことができ、乗り捨てられたバイクや車、馬まで乗り物として使えるという圧倒的自由度が難易度を跳ね上げ、世界中のプレイヤーを苛立たせ、熱狂させたものだった。

 この世界に来てからツキタケは、物足りない日々を過ごしてきた。

 リタもFPSゲームのプレイヤーだったが、リアル重視のガチ勢ツキタケとアニメ原作ファンのリタではモチベーションの方向性が違い過ぎた。話がかみ合うはずもなく、この隊で行動をともにするようになるまでは距離を取っていた。

 同じ隊の仲間として、あらためて向き合ってみれば、FPSゲーマーとしての基礎はしっかりしていたし、実戦や訓練で成長したのか、実に頼もしい存在だった。なにせ、彼女はファーレンでのナレハテ戦を生き残ったのだ。

 ほぼ何もせずに殺された自分とは大違いで、尊敬するべき経験と言える・・・のだが、普段の彼女の言動や行動が・・・キャラ、とでも言うのだろうか、どうしても素直に尊敬しきれないハードルになっている。

 彼の望んでいたのは戦場だったが、ヒノモトではマサトシの護衛を命じられて戦う機会が無かった、マサトシの魅了によって精神支配されていなければ、早々にヒノモトを離脱していただろう。

 今思えば、いったいどうしてあんな、国盗りみたいなことになったんだろう。

 暗殺されかけた王女をマサトシの気まぐれで救ってから・・・まぁ、イェンとあの貴族どもが何か画策したんだろうな。

 マサトシも王女に頼られて有頂天になっていたし、誰も、何もおかしいなんて思うことも無いまま国盗りが達成されてしまった。

 精神支配っていうのは本当に恐ろしいもんだな。

 今の俺なら、かなり早い段階でおかしいと気が付けていたに違いない。

 結局、ナレハテの出現で対応に追われている間に区にも取り戻され、気が付けば軍の一部に組み込まれていた。

 ナレハテのせいで国を取り戻されたが、間違いなくあのまま国を治めていたとしても取り返えされていただろうな。

 統治なんて言うのもおこがましいほどにめちゃくちゃだったもんな。

 失敗した革命軍なんて、全員処刑されてもおかしくなかったが、ナレハテのおかげで処断されずに済んだんだから皮肉なもんだ。

 バラバラにナレハテ戦に投入された後は、仲間の安否すらも分からないまま捨て駒のように使いまわされた。

 いや、実際使い潰す気だったんだろうな。

 バラバラに派遣される前、

 「仕方ないから奴らの指示に従え。」

 投げやりに言うマサトシの命令に従うしかなかった。

 まだ魅了されていたからな、不満ではあっても仕方ない、程度にしか思わなかった。

 そして死んだ。

 先陣を切って突入しろなんて無策ともいえる将軍様とやらの指示で、ほとんど何もできずに。

 生き返ることができたのは、かなりイレギュラーな奇跡のおかげらしい。

 まぁ、その後自分もイェンに操られていたようだ(完全に納得したわけじゃないが、思い返せばなんか違和感はあった)し、マサトシを情けないと責めることもできなくなってしまった。

 ナレハテ専門の特殊な舞台に編入される、と聞いた時はわずかに期待したが、自分の意思ではなく、他人によって決められてしまう自分にやるせなさも感じ始めていた。

 流されるまま第3部隊を任されたが、本当に自分でいいのか?自分はこれでいいのか?という疑問が付いて回っていた。

 そんな彼の部隊が対応することになったナレハテは、彼の心を揺さぶった。

 

 彼らのターゲットは、全長10mを超える巨大な蟻である。

 その蟻は次々と卵のような物を産み、数日でその卵から全長1mほどのウジのような姿の幼虫が孵化する。

 幼虫は脱皮を繰り返し、10日ほどで、体長2mほどの蟻の姿へと成長してゆく。

 成虫となった蟻は周辺の木々を強力な大あごで切り倒し、砕き、自らの唾液と混ぜて、女王蟻ともいえる巨大な蟻を中心に要塞を建造していった。

 蟻たちは周囲の木や魔物、ヒトなど、あらゆる有機物を破壊、殺害し要塞へと運び込んでゆく。

 蟻の要塞は、外周を防壁のような壁でぐるりと囲まれた。

 所々穴が目立ったが、騎士団が被害の拡大を防ごうと奮闘しているすきに、防壁の外側に新たな防壁が作られ、それがまだ穴だらけで完成する前にまた新たな防壁がと、まるで年輪のように要塞が巨大化していった。

 そしてついに、穴のない完全な防壁が作られた。

 15を超える拡大を続けた防壁の穴は、未完成なのではなく、彼らが通るための通路だった。

 内部は、迷宮のようになっていることだろう。

 最後の防壁は高く、30mを超える。

 建設中の観測から、厚みも5mを超えると確認されている。

 門は無く、なめらかな外壁をヒトが乗り越えるのは不可能に近い。

 しかも防壁の頂上には、酸の弾丸を飛ばしてくる個体が配置されていて、近づく者に容赦なく酸弾を飛ばしてくるのだ。

 腹部を”くの字”どころか”つの字”に曲げて、先端を正面に向けた姿勢のまま整然と並んでいる。

 それ以外の蟻達は、防壁を難なく乗り越えて出てくる、つまり、どこから出てくるかが全く予測できない。

 それまで騎士団の奮闘で被害地域の拡大を防いでいたが、要塞が完成したことで戦局は大きく変化した。

 蟻たちは要塞ないからあまり出てこなくなり、周辺への被害も大きく減り、出てくる蟻が減ったことで殲滅もしやすくなった。

 そして、王の決断によって戦力の再編が行われ、要塞攻略が開始された。

 結果としてこの攻略戦が、サンザ王国へ遠征隊の派遣を依頼するきっかけになった。

 決死の覚悟で突入した精鋭部隊が、近づくこともできずに壊滅したためだ。

 サンザ王国とは、国境付近にある鉱山を巡って度々小競り合いを繰り返してきたが、鉱山の権利を永久に放棄することを条件に派遣を要請した。

 苦汁ともいえる決断は、王にはできなかった。

 戦いで二人の王子を失い、王が心労によって臥せったためだ。

 王に変わり若い王太子が実権を持ったからこそ、過去のしがらみより民の命を、と大きく舵を切ることができた。

 要請を受け第3部隊が到着した時には、要塞の周囲20Km圏内は、草木一本生えない砂漠と化していた。

 現地騎士団からの情報では蟻の数は500を超えており、硬い外殻は矢を弾き、剣や槍も通りにくいが、蟻一体に対して複数で当たれば現地騎士団でもなんとか対処可能だという。

 ナレハテの厄介さがここにある。

 現地の兵力でも、足止め程度はできてしまう。

 だから国として大きな借りを作ることになる派遣要請が遅れ、被害が拡大してしまうのだ。

 足止め程度はできても倒すことはできず、戦力の消耗は進む。均衡が崩れればあっという間に瓦解するのだ。

 結果、長年争って来た資源の永久放棄と言う大きな代償を払うことになった。

 


 行動開始後、しばらくは我慢の日々が続いた。

 要塞攻略には、ツキタケとリタのグレネードや無反動砲、プラスチック爆弾などといった、炸裂系の装備が必須条件になる。

 分厚い外壁に侵入口を作るだけでなく、壁を破壊できる装備は迷宮と化す要塞内部の短期攻略になくてはならない。

 いかに動きの素早い狼系の魔物が多い第三部隊でも、迷宮と化した狭い要塞内では苦戦を余儀なくされるだろう、罠なども警戒しなければならないし、なんとしても長期戦は避けたいところだ。

 現地へ到着する前の情報から、要塞の材料が木材であることが予測できた。

 出発前の準備で、火炎放射器や火炎瓶といった装備を重点的に準備してきたが、これが失敗だった。

 初戦、酸への備えをした盾を装備したうえでの突入で、外壁が非常に燃えにくいことが判明したのだ。

 強度も木とは思えないほどで、一般的攻城兵器では破壊が難しいと判断された。

 新たに装備を準備しなければならないが、ツキタケもリタも装備品を手に入れる方法は、敵を倒して得たポイントを消費するしか無い。

 ゲームであれば、ミッションの成功率などでボーナスを得たり、リタの銃道には課金という手段もあったが、現在は残念ながら使うことができなくなっている。

 地道に敵を倒してポイントを獲得するしかないのだ。

 MMORPG幻想霊域で、精霊魔法の使い手であるルリはサポートをすると同時に、外壁に対しての検証も行っていた。

 範囲(半径10~20m)に影響する魔法の多い精霊使いではあるが、自然の力を利用するため威力に難がある。

 蟻に対して睡眠系などが効果の無いこと、単体攻撃魔法が外壁の上にいる蟻に届かないこと、範囲系魔法では一撃で仕留められないことが判明したが、氷雪系の魔法なら蟻の動きを極端に鈍らせることが分かった。

 「も~、最悪。氷雪系の精霊魔法って、初級単体のコールドか上級範囲のブリザードしかないのに。」

 初級では動きを鈍らせる効果も弱く、上級でも範囲攻撃のブリザードは狭い迷宮内では扱いにくい。

 幻想霊域の精霊使いは、一種類の精霊(地・水・火・風・光・闇)と契約することから始まる。

 契約した精霊属性の魔法は強化され、使える魔法の種類も増えるが、反発する魔法は減衰する。

 ルリは火の精霊と契約していた。

 氷雪系は最も苦手なのだ。

 ルリの愚痴は日に日に増えていったが、検証中、酸弾を避けた拍子に狙いのそれたブリザードが思いもかけない結果を残した。

 凍結された外壁は強度がかなり落ちる。

 ツキタケたちの兵装と合わせれば、弾薬を大幅に節約できる可能性が出てきた。

 その結果をもとに、1週間ほどかけて装備を整えてきた。

 作戦開始。

 先陣を切るのはハクアと配下の狼たち。

 降り注ぐ酸弾をハクアやシルバーウルフ達の雷で蒸発させつつ、一気に外壁へ肉薄するとグレイウルフやウルフが強烈な体当たりをかます。

 地響きが起こり、外壁の上から蟻たちがワラワラと降りてくる。

 狼たちは、出てきた蟻を分断しながら、酸弾の射程外へと誘導する。

 まんまとおびき出された蟻を兵たちと騎士団が迎え撃ち、各個撃破してゆく。

 ナレハテから生まれた蟻たちには、指揮系統が存在しない。

 指揮官や連絡手段にトラブルがあれば軍全体が行動不全に陥ってしまいかねないという問題とは無関係で運用できるという、高度な社会性システムでもある。

 異世界の蟻と生態が酷似していると、シンとの連絡で確認でき、たてられた作戦だ。

 個々の蟻がそれぞれ判断し動くため、ウルフたちが外壁に攻撃し、出てきた蟻を各個撃破するという単純なおびき寄せが何度でも通用する。

 指揮官が存在しないため、要塞を守るという行動の優先順位が高い個体が真っ先に飛び出してくるのだが、その蟻がいなくなれば、次に高い個体がというように、繰り返されても抑止がかからず各個撃破にとっては非常に都合が良い。

 同時にツキタケとリタが外壁上の酸弾蟻を狙撃して減らしてゆく。

 2日ほどの波状攻撃で、出てくる蟻の数も1割程度まで減り、酸弾蟻もまばらにしか確認できなくなった。

 そして、作戦は第二段階へと移行する。

 ツキタケ、リタ、ルリを先頭に、無反動砲を構えた弓兵(第三部隊の兵は、常日頃から兵装の取り扱い訓練も受けている)が細長い隊列を組んで前進する。

 狼たちはこれまで以上に蟻を引き付け、翻弄し、ツキタケたちの正面を開けた。

 その瞬間、外壁の一部が白く凍結した。

 「撃て!」

 短い号令。

 ほぼ同時に4つの破裂音が響く。

 数秒後、激しい破壊音が大地と空気を振動さえた。

 はじけ飛んだ要塞の外壁には、直径10mほどの大穴が出来上がっていた。

 「予定通り進むぞ!ルリ、リキャストタイムが明けたら即ブリザードを奥の壁にぶち込め。第二隊も遅れるなよ!」

 壁をぶち抜きながら直進。

 これが第二段階だ。

 無反動砲を打ち終えた兵は装備を戻して援護に回り、全ての無反動砲を打ち終えるまで直進を続ける。

 単純だが、壁をぶち抜けるというアドバンテージを最大限利用する作戦だ。

 通路の狭さは自分たちにとっても有利に働く。

 一度に攻撃される蟻の数が少なくて済むからだ。

 ツキタケとリタ、打ち終えた兵たちが襲い掛かる蟻から仲間を守りつつ、ルリと無反動砲部隊は前進する。

 作戦は順調すぎるほど、想定以上の速度で迷宮をぶち抜いてゆく。

 中央に確認されている女王、ナレハテの本体まであと2枚。

 

 「いかん!至急退避を!!」

 要塞内での殲滅戦に移行しようとしていたハクアが異変に気付いた。

 シャドウデーモンを通じてツキタケたちに退避の連絡を入れると、配下を伴って走り出した。

 前方に見える白い物体へ向けて加速してゆく。

 白い物体の正面が、大きくくぼんでゆく。

  (今からでは間に合わん、我らが盾となるしかあるまい。)

 そう思った瞬間、それがはじけた。

 無数の岩の弾丸が要塞を襲う。

 ギャン!

 ツキタケたちを守るために飛び出した狼たちが、自らを盾として、次々に岩弾の餌食となってゆく。

 ハクアですら捌ききれず、数十の岩弾をその身で受け倒れた。

 自らの身を守るための力を配下に使ったため、幸いにも即死はいないが、皆瀕死の重傷だ。

 それほどの損害を出しても、ツキタケたちへの直撃を防ぐのが精一杯、多くの岩弾は要塞を破壊し、今まさに崩壊しようとしていた。

 新たなナレハテの出現によって、討伐目前に迫っていた戦線は一瞬で崩壊した。

 

 連絡を受け、即座に反転の退却指示を出したツキタケ。

 討伐目前での退却に一瞬迷ったが、ハクアへの信頼が退却を即断させた。

 直後、凄まじい衝撃とともに頭上から砕けた壁材が降り注ぐ。

 「急げ!要塞から退避!!」

 混乱の中の退避だったが、直線にぶち抜いてきたことが功を奏し迅速に要塞から出ることができた。

 「ハックン!!」

 ルリの悲痛な声。

 視線の先には、赤く染まった大地に累々と横たわるオオカミたちの姿と、白銀の毛を赤く染め、ピクリとも動かないハクアの姿だった。

 オオカミたちの中へと駆け出し、杖を空に掲げるルリ。

 杖の先端に取り付けられた翼の飾りがまばゆく光り、水平に、光の輪が広がった。

 精霊使いの範囲回復魔法、キュアサークルだ。

 ゲームではパーティー全員を回復できるが、この世界で再現されたキュアサークルは、術者を中心に半径5m以内の敵対していない生存者と限定されている。

 「ルリ待ち!」

 ビシュッと言う音が聞こえそうな勢いでルリの前に立つリタ。

「魔力がもたない、まずこれ。」

 そう言ってリタは、背のリュックから大量の注射器を取り出した。

 銃道の回復アイテム、元気モリモリ君である。

 このふざけたネーミングは、原作中主人公が勝手に名付けて呼んでいたもので、正式名称は細胞増殖促進剤という。

 ゲームにおいては主人公がつけたあだ名がアイテム名として採用されてしまい、原作者が後に、もっとちゃんと考えればよかったと後悔していたらしい。

 「そうだな、まずアイテムで少しでも回復させて、できるだけ近くに集めて魔法かけたほうがいい。」

 魔力消費量の多いブリザドを使い続けていたのだ、もう余裕があるわけではないし、新たなナレハテの脅威は計り知れない。

 兵たちと手分けして、迅速に回復アイテムを使用してはオオカミたちを運び出す。

 とにかく要塞の裏へ、新たなナレハテからは死角になる位置へ。

 特に状態の酷いハクアには、支給された最上級のポーションを使わなければならなかった。

 なぜかわからないが、ナレハテが沈黙していることだけが救いだった。

 ついてない。

 気分転換にモニター周りを掃除しようとしてパタリ。

 モニター転倒。

 慌てて起こして画面チェック・・・良かった、傷一つない。

 安心して掃除を終えて、続きを書こうとPC電源ON。

 モニターには、とても細かいきれいな蜘蛛の巣上のモザイク画が・・・。

 スマホでも書けるけど、資料関係が見れない。

 よりによってこれまで登場してこなかったキャラがメインな話で・・・。

 泣く泣くポチって、到着したと思ったら風邪ひきました。

 今の医者ってひどいね、発熱してないのに咳出るってだけで診察しねぇのよ。

 発熱外来に隔離されるのはいいけどさ、スマホでQRコード読まされて、問診票を入力、送信。

 延々待たされたと思ったら、処方箋渡されてサヨウナラって・・・

 まだ若干喉痛いけど、なんとか復帰しました。

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