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105:元レンジャーと元リーダーの憂鬱

大幅に修正しました2023/12/1

完全にフライング投稿でした。


 「朝から騒がしいな。」

 体内時計には自信がある、まだ起きるには少し早いはずだが、外がバタバタと騒がしい。

 「ケンさん、起きてるかい?」

 声と同時にドアを叩く音。

 (まったく、声かドア叩くか、どっちかでじゅうぶんだろう。)

 寝起きはいい方だが、こうやってせかされるのは好きじゃない。

 しかし、ここで俺より早く起きるやつがいたことが、異常事態を予感させた。

 「今出る。」

 短く答えると、素早く支度を終えてドアを開ける。

 見知った顔が青ざめている。

 豪胆を絵にかいたような男の態度が、予感を確信に変えた。

 「何があった?」

 野党や魔物の襲撃なら半鐘が鳴るはずだが、それが無い。

 「魔物の軍隊が門の前にいる。」

 「・・・は?」

 魔物の襲撃ならわかるが、軍隊?しかも門の前にいる?襲撃じゃなくて?

 「攻撃されてるわけじゃないのか?」

 一応確認してみる

 「はい、騎士団と一緒に魔物がいるんです、話を聞きたいから開門するように言ってきてるみたいで・・・村長がケンさんに来てくれって。」

 ますます意味が分からない。

 とりあえず呼ばれたのなら出向くしかないが。

 念のため、簡単に武装してから家を出た。

 集落には木造だが頑丈な防壁と門がグルリと設置してある。

 この規模の集落には不釣り合いなほど頑丈なものだ。

 右も左も分からない俺を受け入れてくれた村への恩返し、と言うわけではないが、魔物や野盗から怯えて暮らす村人たちのためになればと、かつての知識と経験を生かして自衛のための防備や訓練を施したのだ。

 おかげで今ではケンさんと呼ばれ頼られている。

 彼らには健次郎という日本人の名前は発音しづらいらしい。

 集落を守るための訓練とはいえ、住人にも生活がある。

 普段の仕事を済ませた後、短時間の訓練ではこれこれほどの異常事態には対応できなかったのだろう。

 門へと向かう道でも、多くの住人が外に出て、不安そうに門の方を見ている。

 「ケンさん、ど、どうしたらいいんでしょう・・・。」

 人のよさそうな初老の男がオロオロとしながらすがりついてきた。

 普段は穏やかで人当たりが良く、ちょっとやそっとのことでは取り乱すことの無い頼れる村長なんだが、見る影もない。

 「状況は?」

 村長をなだめる青年に情報共有を求める。

 彼は片山令央、自分より少し前にこの村へやって来たという異世界人だ。

 薬剤師を目指していた学生だったらしいのだが、一応この村では医師見習いとしてごく簡単な治療のようなことをしていた。

 超有名な錬金術ゲーム(らしい)、アトリエ・レイナードをプレイ中に巻き込まれたというのだが、薬草の名前と効果が分かる能力のおかげで、一応医者見習いとして活動できていた。

 肝心の錬金術は設備の問題で使えないそうだが。

 自分も彼同様、突然真っ白な部屋で目が覚めたと思ったら悪魔を名乗る存在によってこの世界に落とされた。

 元自衛官。

 精鋭の証明、憧れのレンジャー訓練を乗り越えたばかりだった。

 プレイしていたゲームはと言うと・・・ソリティアだ。

 古いパソコンに、よくサービスで入っていた暇つぶしのためのトランプゲーム。

 普段ゲームをしない俺が、なんであの時に限って・・・と、何度後悔した事か。

 自衛官だった知識や技術が、ある程度はこの世界で生き残る術を補ってくれたが、銃などの装備が無い以上大きな助けにはなってくれなかった。

 ゲームには疎いし、そもそもトランプゲームなのでアテにはしていなかった。

 だからこの村で片山君と出会って、ゲームについて話す機会がなければいまだに気が付かなかっただろうが、ソリティアをプレイ中は外部からの攻撃を受け付けないようだ。

 一応特殊能力と言えなくもないが、さすがに敵に囲まれた中優雅にトランプゲームに興じる度胸は無いから、最後の手段と思っておくしかない。

 「王都の騎士団なのは間違いないみたいだけど、それに交じってどう見ても魔物って感じの真っ黒な騎士とかがいるんだよね。見ようによってはゲームのキャラに見えなくも無いんだけどさ。」

 眉間にしわを寄せながら指を鼻筋へ・・・眼鏡が無いことに気が付いて気まずそうにひっこめる。

 元の世界では眼鏡をかけていたのだろう、癖と言うのはなかなか抜けないようだ。

 「王都の騎士団なら受け入れないわけにはいかないんだろうな、仕方ない、門を開けよう。一応警戒はしておけよ。」

 警備役の住人に警戒のための指示をすると、一般人を遠ざけ、門を開けるように指示をする。

 「とりあえずは村長と自分が対応する。危害を加えられるまでは動くなよ。」

 

 緊迫した騎士団とのやり取りはあっけなく終わった。

 白く巨大な魔物、ナレハテが突如発生し、世界各地で甚大な被害を出しているらしい。

 それがこの国でも発見されていくつかの集落が壊滅したんで、十分注意するようにと警告に来たということみたいだ。

 ナレハテは姿をくらましていて、探索と情報収集のため被害地域周辺を回っていると。

 で、ナレハテ戦に特化した組織がサンザ王国で組織されたので支援を頼んだら、やって来たのが怪しげな魔物の騎士団だった・・・らしい。

 いちおう魔物を従えているという話は伝えられていたらしいけど、あまりの禍々しさに王都は一時騒然としたとか。

 一応隊長はじめ幹部ははヒトではあったが、四六時中あの亡霊のような騎士団や魔物と一緒に行動しなければならないストレスは少なくないようだ、騎士団長の目にはクッキリとクマが・・・。

 で、もし発見した場合は迅速に狼煙のろしを上げるようにと、小ぶりな袋を渡された。

 これをふりかけて狼煙を上げれば、真っ赤な煙が高く上がる。

 村に常備してあるものより数段高級品で、長時間色が消えないから赤い煙が高く上がるらしい。

 それだけのやりとりで去っていった。

 「ナレハテねぇ・・・やっぱりサンザには同郷がいるのかもしれないな。」

 成れの果てってことか?

 「魔物を従えるなんてゲームあるのか?」

 ゲーム事情には疎い、というより、ほぼ知らないので健次郎には判断がつけられない。

 「結構あると思うよ。まぁ、僕はアトリエシリーズと有名どころのRPGしかしないからよくわかんないけど、ストラテジー系のゲームとか、パソコンのゲームとかなら、大群を従えたりってゲームもありそう。」

 「接触してみるべきだと思うか?」

 その問いに、片山はしばらく考え込んだ。

 「難しいよねぇ。本当に僕らと同じ日本人なら話してみたいけど、魔物の軍勢引き連れて冒険者・・・じゃない、傭兵みたいなことしてるんでしょ? ガチなバトル勢って、なんか怖いなぁ。」

 片山の言わんとしていることはなんとなく理解できた。

 防衛ではなく、自ら戦いに赴くような性格の相手なら、必ずしも友好的とは限らない。

 特に自分たちはゲームの恩恵をほとんど受けられていないのだから、不当な扱いを受ける可能性もある。

 「とりあえずは様子見だな。」

 もし同じ日本人ならば、情報交換だけでも有益な時間を持てるだろう。しかし、もし敵対的な相手だったら。

 そう思うと、迂闊に接触して集落の人々を危険にさらすわけにはいかない。

 期待と不安が入り混じる。

 ここは我慢してでも様子を見るしか無い。

 そんな歯がゆさに悩む事になってしまった。

 

 

 自分がお飾りなのはわかっている。

 今俺は第二部隊長という立場を与えられているが、これはイェンによってヒノモトのリーダーに祭り上げられていたから、しかたなく据えられただけだ。

 実質的な隊長はカムイってやつだ。

 シンの直属の部下なのだから当然だが、魔物である以上遠征隊の隊長をやらせるわけにもいかなかったのだろう。

 この隊はカムイを頭に、ゲイルとタロマル、カムイの部下の何人かが補佐して動いている。

 俺は戦闘以外何もしていない。

 してはいけない。

 元仲間たちからは憎まれている。

 魅了の力で精神支配されてたなんて、許せるはずがないのだから。

 これまで何度も、土下座でも何でもして謝ってしまおうと思った。

 だが、俺が少しでも楽になろうなんて、そんなことを考えてはいけないと思いとどまってきた。

 完全に命を失った者たちがいる以上、自分は許されてはいけないんだと、自分自身に言い聞かせてきた。

 失った命の中には、唯一この世界に来る前からの知人、友人と言っても良い存在もいた。

 ちょっとした、本当にくだらないすれ違いでケンカして、そのままこの世界へ、再会後もぎこちない関係のまま素直に謝れず、そのうち俺は無自覚とはいえ、カリスマ性と言う、スキルでも能力でもない、説明書きに書かれていたという特性によって周りからもてはやされ、有頂天になっていった。

 結局、俺とあいつはほとんど話すことも無くなった。

 今思えば、イェンの思うつぼだったんだろう、影で俺の悪口を言っている、ワザと失敗して俺の評判を落とそうとしている、そんな話をたびたび聞かされ、いちいちそれに腹を立てていた。

 掌で転がされるように俺は、あいつへの不信感といら立ちを募らせ、半ば嫌がらせのつもりで、誰もやりたがらないだろう面倒事を押し付け続けた。

 「同じ境遇のくせに俺たちに従わない? そんな奴適当に痛めつけろよ。それでも下につかないなら邪魔だ。国から叩き出せ。」

 最初は直接そう伝えていた。

 次第にそれすらも煩わしくなり、

 「お前やっておけよ。」

 たったそれだけの短い命令に変わった。

 程なく直接命令することもしなくなった。

 イェンを通して命令し続けた。

 「っておけよ。」と歪められていたと知ったのは最近のことだ。

 そうして、あいつは心をすり減らして続けていた。

 あいつの能力は、確かに暗殺に向いていた。

 それでも、「殺せ」なんて・・・。

 いや、俺がそう命じていたのと同じだ。

 日に日に表情が無くなるあいつを、嫌々やっているから、俺にあてつけているだけだなんて見向きもしなかった。

 一度でもアイツのことを気にかけていれば。

 声をかけていれば。

 他人に任せずに俺が伝えていれば。

 再会したとき、素直に謝れていれば。

 いや、そもそも俺に従わないなんて理由で痛めつけるなんてバカげた態度を取らなければ。

 後悔ばかりが頭をよぎる。

 イェンからすれば、さぞ扱いやすかっただろう。

 生涯後悔し続ける。

 二度と同じ過ちを繰り返すことがないように。

 だから、自分は責め続けられなければならない。

 許されてはいけないんだ。

 そう、マサトシは自分を責め続けていた。

 シンが聞いたら、「バカだろ、お前。」とバッサリいかれただろう。

 自分を責め続けるうちに、変にこじらせてしまっているのだと気がつけるほど大人になれてはいなかった。

 

 

 集落中が慌ただしい雰囲気に包まれている。

 被害にあった近隣の集落から避難してきた人々が押し寄せてきているのだ。

 どうやら、野盗や魔獣からの被害対策に建てた防壁の噂が、普段やり取りしている行商人から周囲に伝わっていたらしい。ここなら大丈夫だと目指して来ているようなのだ。

 騎士団の訪問後一応避難者の受け入れも考えて準備をしていたが、想定以上の数で仮設の小屋も足りていない。

 当然食料もすぐに底をつく。

 問題はまだある、被害者たちに聞いた化け物の話では、この防壁ではとても防ぐことはできないだろう。

 頭の痛い問題ばかりが増えてゆく。

 「例の騎士団は何やってるんだ。」

 もう愚痴しか出てこない。

 せめて状況が分かればいいのだが、このままでは避難民どころか住人の食事もままならなくなってしまう。

 「こんな時、本当なら僕の力が役立つはずなのに。」

 錬金術には、空腹感を感じなくさせたり、防壁の強化や付帯機能付きの武具を作ったりもできるらしいのだが、それには施設が必要なため、これまで片山は錬金術を使ったことが無い。

 せめて薬草でポーションを作って活かせればと森に入ったこともあるようだが、ゲームとは植生が異なり何一つ利用することができなかった。

 唯一、鑑定能力によってこの世界の薬草を見分けることができたので、かろうじて医者の真似事のようなことができているだけだ。

 本来なら、こんな時にこそ必要な能力なのにと悔しそうにこぶしを握り締める。

 「ケンさん! ちょっと来てくれ。」

 ドアを乱暴に開け、住人が飛び込んできた

 また厄介ごとか。

 「どうした?」

 「避難の連中がもめて取っ組み合い始めたんだ。村長じゃ抑えられない。」

 緊急時であるにもかかわらずもめごととは。こういう時は、食料不足や極端な不公平が無ければ、多少の不満は我慢するものだ。

 現状はまだそこまで切羽詰まっていないはず、となると、もめごとの理由は根が深いものが多い。

 重い足取りで向かう。

 素予想通り、もめている2つの集落は普段から狩場の縄張り争いで険悪な関係、ここに来てからもたびたび口喧嘩を繰り返していた連中だ。

 「これ以上続けるつもりなら出て行け!」

 双方を無理矢理引きはがして一喝、にらみをきかせる。

 避難してきている者たちは老人や子供、女性が多い。

 戦える者たちは集落を守るために戦い、もういない。

 つまり、ここから追い出されれば生きてはいけないのだから従うしかない。

 (まずいな。)

 一時的に落ち着いても、問題を解決したわけではない。

 いつ爆発するか分からない爆弾を抱えるようなものだ。

 「俺、村長じゃないんだけどな。」

 今日何度目かもわからない愚痴が出た。

 


 神出鬼没。

 ターゲットのナレハテを表現するに、これ以上の言葉は無いだろう。

 全長20m、体高10mと言う巨大な牛のような姿のナレハテは、強力だが愚鈍という情報だった。

 破壊力に特化した第二部隊であれば労せず処理できるだろうと選ばれたのだ。

 最初の接触でも圧倒し、あと一歩と言うところまで追い詰めたが、その瞬間、ナレハテはスゥっと姿を消した。

 翌朝、カムイの全力疾走ですら到底たどり着けない場所での被害が報告された。

 ナレハテが姿を消す瞬間にゲイルが投げた魔槍が突き刺さったままで、それが同一個体であるとの証明におったが、以後追いかけっこのような状態になってしまっている。

 被害の報告に駆け付けるが、すでにナレハテの姿はなく、地道に巡回と警告を繰り返すしかない状態だった。

 日に日に同行する現地の騎士団の苛立ちも増加してゆく。

 会議でも紛糾することが多くなった。

 「そろそろ潮時でしょう。」

 騎士団幹部たちとの会議で、珍しくカムイが声を上げた。

 「潮時とはどういうことですか?」

 騎士団団長がすかさず返す。

 先ほどまでムスッとした表情だったが、すでに青ざめている。

 初戦で騎士団はほぼ役に立たないことが証明されていた。

 しかし、彼らの立場が撤退を許さなかった。

 国内最精鋭の騎士団であるというプライドもある。

 しかし、はるかに少数の遠征隊が激しい戦いを繰り広げる中、彼らはただ逃げまどい、傍観することしかできなかったのだ。

 もし、これで遠征隊が手を引くと言い出したら。

 撤退のできない騎士団には、壊滅する道しか残らない。

 「部隊を分けるべきでしょう。」

 「は?」

 カムイの提案は、騎士団長の懸念とは別の物だった。

 「これまでの行動を分析した結果、アレの転移には明確な法則があることを突き止めました。」

 淡々と告げるカムイの声に反応した物が一人。

 「あぁ、シャドウデーモン使ってなんかやってたな。」

 ゲイルが指をパチンと鳴らしてドヤ顔で声を上げたが、誰も反応しない。

 「突き止めた法則から、転移先の予測が可能だと判明しました。」

 「おい、なんで無視するんだよ。」

 声を無かったかのように続けるカムイにゲイルが突っかかるが、それもやはり無視されてしまう。

 「転移する距離は49~50Kmとほぼ誤差なく均一の距離にしか転移しません。さらに、転移前の高度と同じ高度へしか転移できず、一度転移すると10時間は転移を行いません。

 このことから、目撃情報の位置より50Km付近で同じか低い場所に転移すると予測を立てることができます。

 重要なのは高低差です。

 目撃地周辺での調査から、かなりの質量が落下したと思わしき地面の上階を発見しました。

 転移前より低い位置へと転移した場合は地面に転移するのではなく空中に転移し、落下するという推測がたてられます。

 以降、10mを超える落差への転移が無いことから学習した物と思われます。

 また、アレは我々を正確に感知できていないことも分かりました。ベアカウの群れが接近した時に、転移をしていました。500程度の集団が10Km圏内に入ることで、我らではなくとも転移する可能性が高いです。

 これらのことから、この国の詳細な地図があれば、転移先を予測、誘導することも可能となります。」

 瞬間、会議室内に緊張が走った。

 その国の詳細な地図は、軍事的最高機密に当たる。

 それの提供を求めることがどれほどのことか、理解できないものはこの場にいない。

 「さすがに無理だろ、それは。」

 沈黙を破ったのは意外にもゲイルだった。

 以前の彼なら、「討伐のためならそれくらい出せよ、役に立たないんだから。」なんて喧嘩腰で突っかかりそうなものだが、彼もしっかり成長していた。

 「ま、討伐は諦めなきゃならねぇかもしれないだろうけどな。」

 ゆさぶりまでこなすようになってきたのだから、大成長と言える。

 「まあまぁ、別の方法を考えるって手も無いわけじゃないし。」

 緊迫した雰囲気をタロマルが和らげる。

 予定調和の段取り通り・・・な流れが打ち合わせ無しでできるようになっている。

 この派遣で第二部隊は、パワーばかりではなく駆け引きもこなせるようになっていた。

 プライドの高い騎士団連中とのやり取りで学んだ成果だ。

 「提供が難しいようでしたら、転移先の予測は騎士団に皆様に立てていただくとしましょう。いかに詳細な地図とはいえ、高低差まで記載されていないでしょうから実際に確認していただく作業も必要になりますし、戦場になると想定される地域周辺の村、集落への避難勧告や受け入れ先の調整など、大変な労力をおかけすることになるでしょうから、我々と騎士団とで分かれて活動することが良いでしょう。」

 (うまいな。)

 一歩引いた場所でやり取りを見ていたマサトシは、カムイの誘導に素直に感心した。

 この方法なら、騎士団は軍事機密を提供せずに済むし、そのために裏方仕事に徹したという言い訳が立つ。しかも、裏方とはいえナレハテを追い詰めるための重要な役割なので、ただついて来るだけの現状よりはるかに自尊心を保てるだろう。

 こちらとしても足手まといの騎士団を追い出せるし、もし転移先の選定を誤ったとしても責任は騎士団にある。

 ゲイルの成長とタロマルの性格なども把握したうえでの巧妙な誘導技術。

 (俺やイェンみたいに偽物の力じゃない、本当の交渉術ってやつなんだろうな。)

 そこまで理解できたのだから、マサトシもしっかり成長している。

 何でも自分が前に出て、自分の思い通りに従わないと気に食わなかった過去と違い、お飾りであると自覚しているから決して自分から発言せず、一歩二歩下がってやりとりを見続けていたことで、冷静に判断することができた。

 実は、これもキャラクターの特性でもある学習能力が非常に高いという効果によるところが大きい。

 原作付きのゲームなので、キャラクター設定が詳細なうえ、ゲームの説明書に記載されていなくても広く認識されていた。

 図らずも、冷静で普段は口数が少ないというキャラクターの性格に近い、引いた位置で静かに状況を見るという行動をとることで、ゆっくりではあるが確実に特性による良い影響を受けていたのだ。

 その後深夜まで、騎士団へ誘導のためのレクチャーが続き、翌日からは準備のための打ち合わせと、騎士団の部隊編成などが急ピッチで進められた。

 7日後には作戦行動を開始した。

 

 

 もう限界だ。

 日々険悪化するいくつかの集落出身者をできるだけ離れた仮設小屋に移動させたりと、思いつく限りの手は尽くしてきたつもりだが、元々広くはない防壁内では、効果も一時しのぎで無いようなもの。

 食料も切り詰めてやりくりしてきたが、冬の備えもとうとう尽きた。

 気のやさしい村長も、連日のトラブル対応でついに体調を崩し倒れてしまった。

 いつ暴動に発展してもおかしくない。

 そんな緊迫した時、再び騎士団が訪問してきた。

 療養する村長の代わりに対応すると、直ちに集落を捨てて避難しろと来た。

 「ちょっとまて、それだけの説明で集落を捨てろって、できるわけ無いだろう!」

 化け物の討伐どころか、さらに混乱を持ち込むなんて。

 怒りに任せて手が出そうになるのを、片山君が止めてくれた。

 「「くそ!どこの世界も権力者は・・・。」」

 「あ?何と言った。」

 思わず日本語でののしっていたようだ。この場は助かったというべきだが。

 「承知しました。集落を放棄するよう話し合うことにします。」

 怒りをぐっと堪えて、ぶっきらぼうに伝えるとその場を後にした。

 この集落だけではなく、避難してきている集落のまとめ役などとも話し合わなければならない。

 顔役数人に声をかけて、翌日朝から会議を開くと通達を出してもらうよう頼んでから家に戻った。

 「ありがとう、あの時止めてくれなかったらまずいことになっていた。」

 帰って早々、先に戻っていた片山に頭を下げた。

 「いやいや、あれはしょうがないよ。僕も頭に来たし。」

 ドカッと椅子に座ると、大きなため息を吐いた。

 まったく、丈夫な自分の体を恨めしく思う日が来るとは。

 すこしだけ寝込んでいる村長をうらやましく思う。

 「誠に申し訳ありませんでした。」

 突然背後からかけられた声に、咄嗟にナイフを取って構えた。

 「突然の訪問失礼いたします。日本語を話されておりましたが、白い部屋をご存じでしょうか。」

 真っ黒な、立体感を感じない人型が立っていた。

 「白い部屋って、僕らがこの世界に落とされる切っ掛けの!?」

 片山が反応した。

 やっぱり、と言った感じで期待の表情だ。

 「はい、私は、あなた方と同じ境遇でこの世界に来たシン様の配下、シャドウデーモンです。」

 そう言うと、シャドウデーモンは現状などを詳しく説明してくれた。

 彼は影に潜む能力があり、不測の事態のため騎士団に黙って同行していたらしい。

 「長距離瞬間移動って、そりゃ苦労するよね。」

 こちらの状況も説明すると、考えこんだようなしぐさをする。

 「承諾が取れました。食料については援助可能です。作戦が決行されると、この周辺は戦場になる可能性が高いのでできるだけ早く避難を、とのことです。」

 驚いたことに、遠く離れた遠征隊と連絡を取れるのだという。

 「念話ってやつ?いいなぁ、僕もゲームの力を堪能したいよ。」

 ゲーマーの片山くんが素直な感想を口にする。

 「残念ながら、念話は現状我ら悪魔間でしか使用できません。が、片山様の能力に必要な設備ですが、みどり村なら揃うかもしれません。村には多くのワタリビト、あなた方と同じ境遇の方々が暮らしていますし、ドワーフやエルフ、魔者や魔獣も共生していますので、片山様の能力にあった設備がある可能性もあります。」

 健次郎は片山を見てぎょっとした。

 涙を流している。

 それほど能力を使うことを望んでいたのか? 普段の彼の様子からは、できたらいいなぁ、程度には思っていても、まさか可能性があるというだけで涙を流すほどとは。

 「エルフにドワーフ・・・実在するんですね。」

 ん?

 「誰に聞いてもおとぎ話だなんて言われていて・・・いるんだ・・・実在するんだ。」

 噛みしめるようにつぶやく片山に内心引きながらも、よかったなと肩をたたいた。

 「とにかく、まずは避難だな。避難すること前提で食料などの支援を受けられる、という解釈にするがいいか?」

 明日の会議での口裏合わせのための確認である。

 「はい、みなさんが満足できるだけの食料を提供可能です。さらに、荷物を運搬するための荷車や、鎮痛効果のある薬剤も提供できますし、受け入れ先の町にも交渉済みです。」

 至れり尽くせりだが、うまくいくだろうか。

 この集落だけならなんとかなりそうだが、問題を抱える避難者たちがどう出るか。

 「明日の会議、参加してもらうことは可能だろうか。」

 感情論になってしまったら話し合いどころではなくなる。少しでも事情を理解している味方が欲しかった。

 「承知しました。」

 この一言がなければ、一晩中悩み続けただろう。

 

 会議はやはり紛糾した。

 シャドウデーモンが騎士団の代理として参加しているため、表立っての反対発言はないが、いくつかのグループからは支援物資だけ受け取って防壁の中に立てこもろう、という魂胆が見え隠れしている。

 「支援物資が運ばれるのは、この集落から2日ほど進んだカダソンとモキウレへの分岐点です。人員の問題から、そこ以外への輸送は不可能ですので、資材を受け取った後この集落に戻ることは可能でしょう。ただし、それは王命に逆らうという行為でもありますのでご留意を。

 実際に化け物を目撃されていればおわかりの方も少なくないとは思いますが、戦闘は熾烈を極めます。少なくとも、この集落の防壁は化け物にとっては薄板と同じことです、軽く踏み潰されるでしょう。

 我らに与えられた使命は、化け物の殲滅です。

 作戦開始後、この集落には誰も存在しないという建前でたたかうことになります。もし何かがいてもかまってられるような余裕は微塵もありません。」

 異論は認めぬとばかりの勢いで放たれたシャドウデーモンの発言は、紛糾の原因だった避難者たちの代表を黙らせるには十分だった。

 彼らは、化け物を目撃していたのだから。

 頼りにしていた防壁が効果ないと告げられた。

 いや、みんなうすうすは気がついていた。

 それでも、すがらずにはいられなかったのだ。

 会議でうっぷんをぶちまけた直後に、淡々と現実を突きつけられた。

 もちろん、シャドウデーモンも悪魔である。

 心理操作の能力はいかんなく発揮した。

 その後は、驚くほどすんなりと話がまとまり、準備を整えて3日後には出発する運びとなった。

 「勝手に物資の引き渡し場所を変更して申し訳ありません。」

 三人だけになると、シャドウデーモンが深く頭を下げた。

 「いや、あれがあったから、ここを出なければならないって意識づけられたんだと思う。助かったよ。」

 あの状態を抑える自信は微塵もない。

 「では、私は物資の準備などのために失礼させていただきます。」

 「あの、避難の後もう一度会えないでしょうか。」

 消えようとするシャドウデーモンを止めるように片山が声をかけた。

 「私は物資の手配を終えた後、再び騎士団に合流することとなりますが、お二方のことは遠征隊に共有させていただきますので、討伐終了までに王都へお越しください。サンザ王国大使館にレンダールという文官が滞在していますので、その者にお声がけください。」

 そう言うと、テーブルの影に溶けるように消えた。

 「みどり村とやらに行くのか?」

 答えは聞かなくても分かっているが、それでも何となく口に出してしまった。

 「ケンさんも行こうよ。僕らはここに居続けるわけにはいかない、分かってるでしょ。」

 分かってはいる。

 この世界の、一般人と共にいつまでも暮らしていくことはできないだろうことは。

 自分自身も片山も、この世界に来てから今まで全く変わっていない。

 この世界に来てもう何年になるか、その間、まったく歳をとっていない。

 後1~2年がいいところだろう。

 分かってはいた。

 それでも、今まで築いてきた関係を捨てる決断が付かなかった。

 いい機会なのかもしれない。

 「そうだな、考えてみるよ。とりあえずは無事避難を完了させることだ。」

 そう言いつつ、心の中では決意を固めたのだった。

 

 

 「ぬぅうおぉぉおおお!」

 タロマルの雄たけびが響き渡る。

 作戦開始から13日、ついにナレハテを捉えた。

 後は時間との勝負、次に転移が可能となるであろう10時間以内に処理を完了しなければならない。

 タロマルにヘルホース、ダークナイト達が渾身の力でナレハテを拘束する。

 ダークナイトの体にまとわりつく漆黒のチェーンは、武器にもなれば敵に絡みつき動きを封じる拘束具にもなる。

 なれはての足に絡みついたチェーンを引き、動きを止める。

 オーガであるタロマルの筋肉が膨れ上がり、はじけそうなほど血管が浮き上がる。

 <剛力ごうりき><超力ちょうりき><神力しんりき>筋力強化系スキルを総動員してチェーンを引く。

 スキルの効果はわずか1分、ヘルホースやダークナイトが多数でやっと抑えている足を、タロマル一人で押さえている。

 このわずかな時間に、タロマルの抑える足に集中攻撃を仕掛ける。

 マサトシが白い矢のようにナレハテの膝へ、硬く巨大な膝を砕くと、そのまま駆け上り、回転して腿の肉を細切れにしてゆく。

 剥がれ落ちる肉は、デスナイトたちが残らず切りつけ、青黒い死の炎で焼き尽くしてゆく。

 少し離れた位置でゲイルは、槍を頭上に掲げて、水平に回転させる。

 槍は炎を噴出し、回転数が増えるごとに火力を上げてゆく。

 最初は刃だけ、炎の輪だったが、炎は中心へと広がり円盤に、そして、赤い炎は白く、まばゆい光になってゆく。

 「紅蓮斬!(ぐれんざん)」

 輝く円盤を放つと、火の粉をまき散らしながらマサトシによって砕かれた膝へ、見事に切断すると、切断面にまばゆい炎がまとわりつき再生を阻害、すかさずデスナイトたちの炎が切断された足を襲う。

 足が切断されたことで、タロマルはスキルの効果時間ギリギリで解放された。

 「ぬぅぅううおぉお!」

 再び雄たけびを上げると、タロマルの拳が頭上へ振り上げられた。

 数瞬ののち、頭上のナレハテの腹(?)が大きく波打ち、弾けた破片が降り注ぎ、デスナイトたちが処理してゆく。

 ナレハテの体を駆けあがったカムイが神裂きの剣を振るう。

 切り裂かれた背は、地獄の炎によって焼かれる。

 炎の攻撃を持たないマサトシとタロマルが削り、デスナイトたちが確実に処理することで着実に体積を減らしてゆく。

 ゲイルの炎は火力が高く、切りつけ、突き刺した瞬間に周囲を焼き尽くす。

 カムイの炎は逆に、長く燃え続けジワジワと侵食してゆく。

 まさに総力戦、ナレハテの再生速度を上回る速さで削り、焼き尽くしてゆく。

 カムイと配下のデスナイト、ダークナイト、ヘルホース以外は当然消耗する。

 開戦後2時間経過から、一人づつ順番に30分の休憩を入れることで戦闘を継続する。

 ついに頭部を削り切った時は気持ち的に楽になった。

 それが形状の一部でしかないということは理解しつつも、象徴的な部位を処理し終えたことで一気にモチベーションが上がった。

 しかし、ナレハテの抵抗は衰えることが無い。

 残る3本の足を拘束され、尾を振り回すことしか攻撃の手段がない中、尾の先に無数に生える長毛が鞭のようにチェーンを引くダークナイトやヘルホースを襲う。

 騎乗兵隊が長毛の攻撃からダークナイト達を守るため立ち回り、ダークナイトもヘルホースも自己再生を持つからこそ耐えられているが、綱渡り状態のまま戦いは続く。

 5時間後、ついに均衡が崩れた。

 騎乗隊はすでに崩壊、治療が済んでもすぐに戦線復帰はできないだろう。

 そして、左後足を拘束していたダークナイトとヘルホースが力尽きた。

 尾による攻撃を受け、ジワジワと削られ続けていたのだ。

 一体、また一体と倒れ、ついに抑えきれなくなった。

 強力な後ろ足が自由になったことで一気に戦況がひっくり返ろうとしたが、再びタロマルが拘束に加入することでなんとか崩壊を防いだ。

 残されたダークナイトやヘルホースと共にチェーンを引く。

 今度は一人ではない、スキルを使用しなくてもギリギリ耐えられた。

 しかし、これで火力がまた減った。

 8時間を想定していた攻略が、10時間ギリギリ、もしくは間に合わない可能性が濃厚となってゆく。

 尾による攻撃も続いており、拘束が解かれるのも時間の問題だ。

 尾を切り落とせばいい、と言うわけにもいかない。

 最初の接触で尾が非常に硬いことが分かっており、切り落とすのに時間がかかる。そちらにかかっている間に削り続けてきた前方部が再生されてしまうことを恐れたためだ。 

 ゲイルやタロマルに焦りの色が濃くなる中、マサトシは異様なほど冷静だった。

 元々マサトシには作戦も残り時間も関係なかった。

 ただ目の前の敵を切る。

 自分にまかされる役割はただそれだけと、自殺行為ともいえる攻撃を繰り返していた。

 ナレハテを消滅させるために必要な炎を持たない以上、ただ何も考えずに切り続ける以外にやることは無いと、後先も考えずに切り続けてきた。

 少なくともゲイルとタロマルは、もうマサトシを恨んではいない。

 仲間として受け入れているのだが、こじれたマサトシは気が付かない。

 不器用なゲイルはどう接したらいいか分からない。

 普段穏やかで誰に対しても優しいタロマルが伝えても、そんなタロマルだからと信じてもらえない。

 第二部隊にとっての悩みだった。

 しかし、今回はそのことが良い方向へと導くことになった。

 常に冷静で部下に対してすら無情。

 最高の悪役として登場する西園寺誠の設定だ。

 偶然にも、マサトシはその設定に近い状態になっていた。

 お飾りの隊長(事実はそうでもないのだが)としての立場を受け入れ、自分には誰も期待していない、自分のことをみんな恨んでいる、と思い込んでいることで激しい感情の起伏から遠い状態にあったための冷静さ。

 そして、ただ目の前の敵を切ることだけに終始したことが、結果として苦境に立たされる仲間を歯牙にもかけないという状態が、部下に対してすら無情さを。

 この二つ、西園寺誠と言うキャラクターを語るうえで最も大きなポイントと酷似した状態になることで、マサトシの能力が最高の悪役に少し近づいた。

 紅華(こうか)旋空(せんくう)

 西園寺誠の対集団殲滅技であり、自分を中心に周囲にあるものすべてをバラバラに切り刻む大技。

 以前の紅華旋空であれば、せいぜい自分に隣接する敵を切り刻む程度であった。

 それが、図らずもキャラを模倣するかのような行動によって、技も本来の威力に近づいた。

 直系6mを超えるナレハテの腹が、細切れの肉塊となって弾け、大地に降り注ぐ。

 疲弊を知らないデスナイトの炎によって着実に焼却され、大幅に体積を減らし、胴体を分断されたことで抵抗する力も失ったナレハテは、その後予定時間を超えることなく処理された。

 突如強力になった自分の力を不思議に思い立ち尽くしていたマサトシ。

 「スッッゲェじゃねぇかよ!マサトシてめぇ!」

 駆け寄ったゲイルは、乱暴に肩を叩きながら賛辞を贈る。

 勘違いして(させられて)いた頃、この手の讃辞はいくらでき受けてきた。

 でも違う。

 あの時とは何かが違う。

 「うんうん、よく頑張ったな。」

 そういうタロマルはポロポロと涙を流している。

 「シンさんが言っていた通りだったね。イェンが最も恐れていたのはマサトシとリョータだって。」

 隊を結成する際、マサトシを除く元ヒノモトに所属していたワタリビトを集めてシンが語っていた。

 西園寺誠の能力は、カリスマ性を除いたとしても脅威で、イェンにとっては利用しやすいと同時に警戒しなければならない存在だった。

 リョータのサイズと能力は、イェンの企みにとって邪魔でしかなかった。

 さすがにあのサイズを検知できない。

 いつ、どこで聞き耳を立てているのか、誰と接触しているのか認識できない以上、常に警戒し続けなければならないし、うかつな言動一つでイェンの企ても崩壊しかねない。

 だからこそ、イェンはマサトシの元々の性格を増長させ、西園寺との共通点を極力削るように誘導していった。その上、最終的には全ての責任をかぶせて排除できるようにも立ち回っていた。

 リョータに対しては、役立たずであると思い込ませるように刷り込み、可能な限り他の仲間との接触を禁止していた。

 最も深くイェンの洗脳を受けていたのがマサトシだったのかもしれないと、みんなの前で説明していた。

 「性格的にマサトシと西園寺はかなり違うから、本当の力を発揮するのは難しいかもって言ってたけど、ホントに頑張ったんだね、すごかったし助かったよ。」

 ごつい体でマサトシを抱きしめるタロマルは、顔をくしゃくしゃにしながら喜んだ。

 「なんだよそれ・・・結局あの野郎の思うつぼかよ。」

 絞り出すようにつぶやいたマサトシの目にも、涙が浮かんでいた。

 初めて仲間になれたような気がした。

 

 

 「すげぇ!ドラゴンだよドラゴン!!すげぇ!!。」

 片山君の語彙が崩壊している。

 かくいう自分も感動してしまっている。

 子供の頃映画で見たドラゴンが、目の前にいる。

 避難を終えると、集落の住人に別れを告げ王都へ、みどり村への移住を希望した。

 その地であればやっていける気がした。

 騎士団と遠征隊が凱旋すると、式典やらのために残る幹部を残して帰国準備が進められる。健次郎も片山も、彼らと共にみどり村へと向かうことになったのだが、まさかドラゴンがぶら下げるコンテナに乗って空を行くことになるとは。

 乗り込んだコンテナの中にはしっかりと座席が固定されており、3日ほどの行程で到着すると聞いている。

 突然の浮遊感。

 ドラゴンの離陸は想像以上に安定していた。

 輸送機より乗り心地は良さそうだ。

 3日後には新たな地へ、同郷の人たちはどのような生活をしているのか、期待に胸を膨らませずにはいられないのだった。

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