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102:活動開始

 信頼はしていたけど、村方面もほぼ損害無く大勝利に終わったらしい。

 ユーキやユーシンに聞いた限りだと、ロン毛の従魔たちは行動パターンがゲームのまんま、レベルアップによる基礎能力向上分を考慮した想定攻略法で問題無く倒せてしまったらしい。

 「なんか、気合入れたのに肩透かしって感じだったっス。」

 なんてユーシンが言っていたけど、全体の指揮を取っていたユーキの感想も同様だった。

 「やっぱり、シンさんの従魔への対応とこの村の特殊性が彼らを大きく成長させてるんじゃないかな。」

 とはユーキの分析。

 結局、ロン毛の従魔は一人を残してみんな討伐された。

 仇討ちとばかりに暴走される危険性があったからだけど、その心配はなかったんじゃないかと、遅まきながら思っている。

 理由が唯一残された従魔の様子を見たからだけど。

 幼女のようなシルエットの真っ黒な従魔。

 真なる闇。

 たぶん、俺を追い詰めるために前々から仕込んでたよね。

 従魔が予想外の行動をとるようになったとか、ユーコをおびき出すときにも、ヤミがハンターを襲っているとか、監禁中にもヤミの能力を連想させる攻撃をしていたようだし。

 で、実際にここしばらくヤミは行方をくらませていたし。

 どうやら、俺からの緊急な指示だとロン毛に誘い出されて森の中の洞窟へ、指示があるまで待機するように言われていたらしい。

 俺からの指示であることの証拠として、念話のできるシャドウデーモンを通じて連絡ができるのになぜだろう、といぶかしんだものの、俺が良く使っていたエイルヴァーン製のアイテムを見せられて信じてしまったらしい。

 ロン毛がエイルヴァーンプレイヤーだと伝えていなかったことが致命的な問題になってしまった。

 俺としても、訓練やら仕事やら趣味やらと、普段から自由行動している従魔たちが数日拠点を開けることなんかよくあることだし、気にもしていなかった。

 奴の配下に真なる闇がいる可能性を確信していたので、ヤミの行動を疑って、結果裏切られたと誤認する、なんていう奴の目論見はこの時点で破綻していたと言っていい。だって、俺ヤミがいないことを不審に思ってなかったし。

 獣魔を全員を呼び出したときにもいなかったし連絡取れないっていうんで流石に驚いたけど、程なくシャドウデーモンが洞窟でおとなしくしているヤミを発見してすべて理解した。

 で、ロン毛の従魔、真なる闇は、俺との対戦地として想定していたであろう村近くにある巨木のウロに潜んでいた。

 主人が死んだことで命令はキャンセルされたが、だからといって自発的に行動できなかったようだ。

 やっぱり、うちの子たちとはだいぶ違う。

 普段から道具としてしか使われてこなかった結果、自分で考えて行動するという成長ができていなかったんだろう。

 どう扱おうかと思っていたけど、ヤミが気にかけているみたいなので任せてみるとしよう。

 MODによるものなのか会話ができるようなので、打ち解けることができれば他の仲間とも意思疎通は可能だろう。

 となると、呼び名がいるな。

 ロン毛は名前つけていないみたいだし。

 う~ん、ロリなヤミだからロミでいいか。

 嫌なら自分で考えておくれって言ったけど、まだ自分で判断できないみたい。

 

 リョータとアオイのおかげで過去から吹っ切れたユーコは、しばらくそのままの姿でいるか、ネコ獣人にもどるか、それとも新しい姿になるか悩んでいた。

 決別できたとはいえ、いろいろと嫌な思い出の多い姿でいるというのは気分的に良くない。

 かといって、この世界のネコ獣人の恋愛事情は受け入れがたいものがあるようだ。ネコ獣人の来訪も増えてきているので、以前ユーコを悩ませたトラブルがまたおこらないとも限らない。

 ということで全く別の姿に、と思っていたものの、村の子どもたちがユーコの帰りを待っている、なんて話を聞いて揺らいでいるみたいだった。

 小さい子どもたちの遊び相手を買って出ていたからね。

 いきなり別人になってしまったら、子どもたちに受け入れられないかも、とか考え出したみたい。

 で、散々悩んで出した結論が、足して二で割る、だった。

 直立するネコから、萌絵で見たような、擬人化ネコの姿に。

 人になりたいと守護神像に願っていたら、少しだけ願いを叶えてくれた、って設定で行くらしい。

 身長は少し伸ばして140cmくらい。

 幼女感はあまり無いな、その枠はもう埋まってるから良かった良かった。

 って、なんだかなぁ・・・。

 

 今回最大の犠牲者とも言える兵士のみなさんだけど・・・うん、たいそう怯えてらっしゃる。

 一応例の広場に拘束、状況を把握してから対応にあたったんだけどね。

 こっちには被害がないんだし、送るから帰れって伝えたんだよ。ハッキリ言って面倒見きれないし。

 喜んで帰るだろうって思ったのにさ。

 兵士の殆どが農民の三男以下で、なかば操られるようにして家を出たとはいえ、帰っても居場所がないというものばかり、捕虜でいいからいさせてくれと・・・中には奴隷でもいいからなんて者までいる有り様だ。

 これにはまいったよ。

 なんせ5千人だ、みどり村も大きくなったとはいえ、全村人より多いのだから受け入れられるはずもない。

 これはもう、御領主様にまるな・・・ゲフンゲフン、判断をゆだねるしか無いよね。

 ということで、簡易なバラックを急増、監視を残して俺たちは報告に戻ることにした。

 後はもう、スロークに丸投げ〜。

 

 これでようやく一段落、と思ったけど、先延ばしにしていたヒノモト勢の受け入れが残っていた。

 案の定みんなロン毛の影響を受けていたよ。

 これが、マサトシのカリスマとはまったくの別物、ロン毛のファーストゲームである大陸覇道3に実装されていた、論破や弁舌、説得と言ったスキルによるものだった。

 ゲームでは、武将を訪問して配下になるよう説得したり、仕える君主を裏切らせたりするわけだけど、その時有利に働くスキルってわけだ。

 一度は本物を装備していた精神耐性向上のための装備も、偽造された偽物にすり替わっていた。

 腹立たしいことに、精神支配をしていた本人が死んだことで解除される、とはいかなかった。

 説得や誘導をするのに有利に働くスキルなので、マサトシのと違って完全な精神支配というわけではないらしい。

 スキルによる補正はかかっていても、実際に会話などで信頼を得てしまっているだけに、解除のためのアイテムだけでは解決せず、会話しながらスキルによって補正された内容と現実とのギャップを探して気づかせていくという、非常に面倒な作業が必要だった。

 本来の性格とかけ離れた連中はすんなりと解放されてくれたんだけど、半数ほどはロン毛を信じきっていたからねぇ。

 ロン毛の死亡は伏せておいて、実力判定と言う名目で地下訓練施設1階にキャンプを設置、攻略完了するまで出られませ~んとか何とか言って時間を稼いで、休憩中とかの会話を通してジックリ矛盾をついていく作業はなかなかの難事。

 ま、とうぜん丸投げだけどね。

 いやぁ、ユーコを治療するのに専門家を育成しておいてよかった。

 お疲れ様、ケルペイオ君。

 

 ヒノモト勢の洗脳解除と同時進行で行われていたのが捕虜の扱いをどうするかっていう会議だ。

 なんせ、ろくな教育も受けていないうえ、魔物とは縁遠い社会で生活してきた者たちだ、いきなり受け入れることはできないと、大いに悩ませてくれた。

 思い出されるみどり村拡張期の諸問題。

 今ではマジ合コン化している親睦のための飲み会とか、苦労したよなぁ・・・ソンチョーたちが。

 そのまま受け入れたらどうにもならないくらい摩擦が起こるだろうし、読み書き算数くらいはできてくれないとこの村では生活もままならないだろう。

 とはいえ教育と言っても5千という規模はあきらかにキャパオーバーだ。

 会議も煮詰まってくると、敗残兵なのだから奴隷として扱うのがいいのでは、なんて意見が出てくる。

 分かってる、この世界ではダメな方の奴隷制度が当たり前に存在しているんだってことは。

 新しくやって来る商人たちの中にも、なぜ奴隷は連れてこられないんだって問い合わせが増えているみたいだけど、ダメなものはダメなのだ。

 さらに煮詰まってくると、ラノベ世代のワタリビト、いわゆる捻じ曲げられた奴隷制度に馴染んでしまったグループからも、ラノベ的奴隷ならいいんじゃない?なんて意見まで出てきてしまった。

 うん、そんなん絶対ダメだからね。

 と言うことで、何も進展しないまま10回を超える議論の結果が・・・。

 まず、彼らを収容する長屋風宿泊所を村の外に建設。

 6畳一間、風呂・台所無しトイレ共同、食堂付きの団地形式な5階建て住居を大量に建設、当然チートを使った簡略仕様だ。

 彼らには賠償金として500万ベルの借金を負ってもらう。

 貸主はグリンウェル伯爵家だ。

 彼らは伯爵家が雇用するという形で、月給10万ベルで労働してもらう。

 下積みの見習いでも15万は稼ぐから、破格の低賃金だけど、住居も食費も衣服も支給なので、まじめに頑張れば5年ほどで返済が完了する。

 返済は毎月だけど、返済額は自由に決められる。村での買い物も自由だし、労働環境は一般住民と同じなので実際にはもっとかかるだろう。

 そうして自由になるまでの時間で学んでもらおうってことだね。

 仕事は、村の役所に派遣労働者窓口を新設、人手が必要な住民は、日雇いと安い賃金で労働力を確保できる。

 彼らは難民として受け入れたことにして、無一文なので自立できるまでの難民支援だとして、一般従業員と同等の扱いをするようにと告知する。

 そうでないと、奴隷同然の扱いをする連中も出てきかねないからね。

 完済後は、2百万ベルを支援金として渡す手はずになっている。無一文で放り出すわけにもいかんしね。

 まぁ、派遣業務は村に馴染んでもらうための顔見せと、仕事を体験してもらうことが目的だから、依頼があるのはせいぜい3割程度、ほとんど村拡張のための土木作業に従事してもらうことになるんだろうけどね。

 あ、まずは自分等が暮らすことになる団地からか。

 

 

 で、面倒事が一段落、と思う間もなくだ、いよいよというか、とうとうというか、ナレハテ対策出張サービス(仮w)が正式稼働することになってしまった。

 ヒノモト勢の研修(という名の洗脳解除)が終わり、部隊編成に訓練も完了してしまった。

 

 軍団長 王太子 レイナルト・ド・サンザド親王

 副団長 シン・サンザド・グリプス子爵

 補佐官 クロウ(従魔・エイルヴァーン/デモンロード)

 

 第一部隊長 シン・サンザド・グリプス子爵、エイルヴァーン(RPG/シングル)超越者/ヒューマン

      副隊長 クロウ(従魔・エイルヴァーン/デモンロード)

          コン(従魔・エイルヴァーン/九尾)

      隊員 レンとユイ(最強悪魔)、マガちゃん、ヤミ、ロミ、スラりん(従魔・エイルヴァーン)、ナナホシ、ザイス(コザイス達)、フィフス、クロキリ、チルンジャー、ヌコ(地下訓練場)

 

 第二部隊長 マサトシ、魔闘学園(RPG/シングル)隠しキャラ西園寺誠

      副隊長 ゲイル、無双旅団(無双系/シングル)槍使いゲイル

          タロマル、ヘルクライ・オンライン(RPG/MMO)オーガ

      裏番 カムイ(従魔・エイルヴァーン/ヘルナイト)

      編成 デスナイト、ダークナイト、ヘルホース、騎乗兵隊(主に人、ゴブリン、コボルトなど)

   突破力重視のパワータイプな編成。騎乗兵隊は、シンとスロークのアイテムで訓練した馬に騎乗。

 第三部隊長 ツキタケ、バトルエリアⅤ(FPS/オンライン)軍曹

      副隊長 リタ、銃道(FPS/シングル&マルチ)橘真由美 1年生

          ルリ、幻想霊域(RPG/MMO)精霊使い エルフ

      裏番 ハクア(従魔・エイルヴァーン/フェンリル)

      編成 狼系魔獣、弓兵中心

   中・遠距離攻撃を得意とする編成。ハクア配下の狼系魔獣は防御や攪乱にも活躍できる。

 第四部隊長 カタヤマ、サムライ・ロード(アクションRPG/シングル)浪人

      副隊長 アキヒロ、ディープミレニアム(RPG/MMO)アーチャー エルフ

          バリケン、モンスターズ(格闘/シングル&2P)ワーパンサー 獣人

      裏番 コクエン(従魔・エイルヴァーン/オーガロード)

      編成 オーガ、オーク、弓兵

   オークが防御、コクエン配下のオーガが近接攻撃を担当し、弓兵が遠距離をカバーする。

 第五部隊長 バンバンジー、クラフトマンズ(シミュレーション/シングル)職人 ドワーフ

      副隊長 サーヤ、メイプルファンタジア(RPG/MMO)バード ハーフエルフ

          マルチナ改めシンノスケ、マルチナ・ストーム・キリング(アクションRPG/シングル)マルチナ(外見変更済み)

      裏番 ゼビル(クロウ配下のグレーターデーモン)

      編成 ティガルド、エンオウ、クマドン、ドワーフ、エルフ、人

   情報が少なく、現地での作戦立案が必要な状況に対応できるよう、戦闘力だけではなく建築、罠設営、開発などの工作活動もこなせるマルチ部隊。

 

 他に、輸送兼航空戦力として龍&ドラゴンたち、

    装備開発局の局長としてトール(従魔・エイルヴァーン/聖域巨神)

    諜報局の局長としてリョータ、ミクロンマン(アクション/S)ミクロンマン(真実の鏡で本来の姿に)

 

 舐めてんのか、とか言われないよ、だって、この世界には裏番(裏番長)なんて概念ないからね。

 外国での活動も多くなるから、隊長、副隊長は人であったほうがいいってことでヒノモト勢を多く配置することになったけど、当面の間はお飾りで、実質のトップは裏番なのだ。

 実績を十分積んで、問題なしと判断できたら裏番を廃止して本当の隊長になってもらうけどね。

 第二から第五部隊には、兵士以外にも医療従事者、技術者、調理師、用務員、高速輸送用のドラゴンなどが配属され、総勢100名ほどになる。

 通常この世界の軍隊は、5〜10名で構成される小隊、5〜10の小隊をまとめる中隊、5〜10の中隊をまとめる大隊、5〜10の大隊をまとめる軍団から成り立つ。

 なので総勢500人ほどの対ナレハテ対策特殊部隊は中隊規模に該当するわけだ。

 兵員数だけ見ればね。

 

 王都で華々しく結成式が行われ、その足で会議室に拉致監禁された(?)俺は、バカでかいテーブルに並べられた書類の山とにらめっこすることになった。

 こちらが準備を進める中、国の方も着々と準備と根回しを勧めてきたらしい。

 ナレハテの情報を提供して恩を売り、ファーレンでは多数のナレハテを討伐し、そのノウハウを活かして専門部隊を創設することを広めた。

 結果、各国、各地から派遣の依頼が殺到していると。

 すでに重要度、と言うか、国にとって優先順位の高い順で並べられていたけど、危険度も精査しなければならないだろうと全依頼案件をチェックするようにと・・・いや、書類仕事が嫌で丸投げしたはずなんですけど・・・。

 クロウや悪魔たちの手を借りて書類を整理・・・山では無かった。

 一案件ごとの資料が分厚くて、かさましされていたみたい。

 依頼の書状に、サンザ王国との関係性に、現地の産業に産出品、見返り品、欲しい物などなど・・・肝心のナレハテ情報よりはるかに物量が多いんですけど・・・。

 はいはい、量が多いものを優先してほしいってことね、了解了解。

 第二から第五まで4か所に送れるかな。

 と思ったところでクロウから待ったがかかった。

 「こちらの案件なのですが・・・。」

 と渡されたのは、ぺらっぺらな書類。

 本来なら最後に回すべき案件だけど、いくつか引っかかるものがあったんだよね。

 うまくすれば、一般兵の大幅強化もできるかも。

 ということで、国のおすすめ案件三つと、このペラペラ案件一件を、出張サービス最初のお仕事に決めました。

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