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100:仮面

おかしいな、100話で決着つける予定だったのに。

 見つけたはいいけど、いきなり突っ込むわけにもいかないんだよな。

 こちらが予想外に有利な戦いを進められているのも、奴の能力によって士気と練度が強制的に、この世界基準を外れるほど強力に引き上げられ、個の能力が想定をはるかに超えたことでこちらも手加減の必要がなくなったためだ。

 俺との直接対決となった場合、ヤツはゲームを大陸覇道3からチェンジしてくるだろうし、その場合強制的な強化が失われる可能性が高いんだ。

 というのも、出発前にユーシンに確認したんだけど、クラッシュレーサーと爆裂学園と言う2つのゲームを利用できる彼も、かなりあいまいではあっても、2つ同時に能力を発動できないと言っていた。

 クラッシュレーサー発動中に爆裂学園の技などは使えない、逆に爆裂学園を発動中に車を出したり動かすことはできない。

 しかし、クラッシュレーサー発動中であってもパワーやスピード、動体視力などの基本的な能力は常人離れしているし、出し入れや動かすことはできなくても、すでに出していた車は爆裂学園にチェンジしても消えることは無いなど、結構ルールがあいまいみたいだ。

 もし乱戦中に強化が失われて、意識が一般人レベルになったら、間違いなく大パニックになる。

 殺さないように神経を使うことになるし、それでも命を奪ってしまうだろう。

 いや、今でも結構・・・手足欠損くらいはいいじゃんってノリで進行中だし・・・終わったらヒールとポーション祭り確定だな、こりゃ。

 それは置いといて、確実にパニクって逃走しだすよね。

 この広場から外へ逃げだせば、100%魔獣の餌食になるけど、できるだけ助けると決めた以上無視できないから捜索&救助に時間と労力を取られることになってしまう。

 それを防ぐためにも、奴と対峙するのは終盤、それまで俺の所在を気づかせてはいけない。

 最悪、俺がやられそうになった時にクロウ達が助けに来てもらえる余裕もできるよねって思惑もあるんだけど。

 とにかく、隠密系をフル活用して奴の背後へ移動する。

 う~ん、どういう登場したらビビらせられるかなぁ。

 兵士たちの強化具合を考えても、大陸覇道では勇将か猛将を選んでるんだろう。

 ステータスは編集できても、タイプによる補正はいじれなかったはずだし。

 これまで全く悟らせずに、これほどの準備を進めてきたんだからエイルヴァーンも高知識型を選んでいる可能性が高い。ここの防御設備の中にはエイルヴァーンの施設も見られるし。

 知力が高くてタイマンもはれるとなると、思い浮かぶのは聖騎士、大魔導士、精霊の王あたり、あとは・・・さすがに無いか。

 シングルゲームのエイルヴァーンでPVPの経験なんて無いけど、それぞれの特性は十分理解している。

 対応策を考えながら移動、潜伏と、戦況把握を行うのはなかなかしんどかったよ。

 

 

 「あ~、やっぱ来ちゃったんスね。」

 シャドウデーモンが敵発見の一報を持ってきた。

 シンから情報提供は受けているものの、さすがに緊張が走る。

 「敵は35体、ドラゴニュート3体、禍ツ焔、グレーターデーモン5体、ヘルナイト2体、フェンリル2体、グリフォン2体、バンパイアロード、バンパイアブライド、デモンスパイダー、オーガキング、オーガクイーン、オーガナイト10体、オークキング、オーククイーン、ゴブリンキング、ゴブリンクイーンです。」

 淡々と告げるシャドウデーモンに微かな苛立ちを覚えるユーシン。

 「シンさんの情報より多くないっスか?」

 訓練施設やVR模擬戦で戦ったことがあるが、シンの従魔はあきれるほど強かった。それが35体もやって来る。

 「最悪の状況なら100を超えるかもって言ってたから、それより全然いいんじゃない?」

 従魔システムで導入できる最大数は25体だと聞いていたが、配下を持つ従魔もいるし、シンの従魔のように、システム外の配下ができている可能性もあると注意されていた。

 だからこそ、シャドウデーモンと蠅の王による警戒網を構築し、ユーシンとユーキは最低限の人員を残して警備隊と共に村の外で待機していた。

 「スローク様、浮き岩で待機していた方々にも連絡はいっておりますので、村からの増援は接敵前に合流できるでしょう。浮き岩からの増援には最短でも30分ほどは必要になるかと思われます。」

 名前の挙がった敵は全てシンから情報提供を受けており、戦い方なども頭に叩き込んである。

 (シンさんは想定外の従魔を警戒してたけど、どれも想定通りなんだよな。)

 相当な苦境も覚悟していただけに、拍子抜けした感がある。

 が、強敵なのは間違いないし数も多いと気を引き締め直すユーキ。

 「悪いけど、レンとユイにも手を貸してほしいんだけど。」

 と、シャドウデーモンに双子の参戦を要請、それぞれ相性のよさそうな相手のマッチアップなど、準備に取り掛かった。

 

 

 「よう、久しぶりだな、ロン毛。」

 結局、これと言って効果的な登場方法が思いつかなかったのでありきたりな登場になってしまった。

 ちょっと・・・いや、かなり恥ずかしい。

 「いったいどこで、私だと分かったんですか?」

 おや?やけにあっさりと認めたな。

 もっととぼけると思ってたので、ちょっと肩透かしだ。

 「最初からだよ。」

 嘘だけど。

 初めて会った時から不審感があったのは事実だし、いいよね。

 「は?」

 悪趣味な仮面外せよ、表情が見れないじゃないか。

 不信が警戒に変わったのは、ファーレンでのナレハテ戦後少しして・・・結構最近だ。

 初めて会ったときに感じた違和感、奴のつけていたネックレスは、エイルヴァーンで最初期に手に入れるアイテムで、ほんの少しの魔法抵抗力と、ほんの少しの精神系の耐性アップを付加する物だった。

 そこそこレアなくせに、すぐにもっと有用なアイテムが手に入るし、売っても大した金額にならないということで、手に入ってもアイテム枠確保にすぐ捨てられてしまう程度のアイテムだった。

 効果どころか存在すら忘れていたアイテム。

 収集癖のある俺ですら持ってなかったほどのクズアイテムだ。

 思い出せてよかったと思う。

 思い出せたから、警戒することができた。

 なぜって、最初村に来た時アレをつけていたってことは、マサトシの魅了にかかっていなかったってことだから。

 それに、村へ入り込んでいたヒノモト勢の一人、文字通り何もかも真っ黒な幼女、というもの引っかかっていた。ヤツは真なる闇の従魔化は断念したと言っていたけど、MODの中に従魔の姿だけを変えるというものがあるのは知っていたから、ひょっとしてそれではと疑っていた。

 マサトシのキャラに設定されていた、強力なカリスマ性という特性を具現化した魅了効果を、マサトシは不完全にしか扱えておらず、それなりの時間近くにいなければ効果が出ないほど弱かった。

 ほんの少しの耐性強化でも十分防げるほどに。

 リョータの扱いについても不信感を感じていた。

 うまく使えば蠅の王以上に優秀な諜報員になりえるのに、本人はそれをまったく認識していなかった。

 仲間たちとも触れ合わないようにしていた節があるし。

 最初はマサトシがリョータを都合よく利用するために、と思ったが、先日リョータを確保してからよくよく聞いてみると、どうもマサトシもリョータの存在をハッキリと認識していなかった可能性が出てきた。

 なんせ、指示はリーダーから直接ではなくロン毛からで、直ぐ側にいても決して話しかけないようにと言われていたという。

 そういったモロモロの積み重ねから、ロン毛を犯人だと確信した。

 「私は、彼女の前で無残に引きずられていたはずですが、心配してはくださらなかったんですね。」

 あぁ、そんな話もあったっけ。

 「それな、お前の三文芝居、たぶんユーコにもバレてるぞ。あれ以来一言もお前を心配する言葉が無かったしな。」

 心配する素振りもなかったことに違和感はなかった。

 敏感な子だから、ちょっとした違和感に感づいていたんだろう、心配しなかったというより、無意識のうちにその行動を気にかけていないように感じた。

 そもそも、目がさめたタイミングで引きずられていくなんて安い台本を馬鹿正直に信じる義理はない。

 「まったく、誤算だらけでしたね。先行させている従魔たちに道中邪魔な魔物を排除させてから、5000の兵を引き連れて村を急襲する予定だったのですが。」

 あっさり認めた割に、のっぺらぼうマスクを取ろうともしない。

 取れよ! くやしがっているだろう表情が見えんじゃないか。

 「5000じゃ村は落ちんぞ。」

 なんたって、300の兵に無力化されてるくらいだしね。

 「それも誤算でした。あなたなら、すぐに一般人だと気がついてくれると思ったんですが・・・まさか皆殺しとはね、操られているだけの一般市民を。」

 やれやれ、とでも言いたげな仕草。

 気が付かなかった、もしくは気がついていても殺したのだと負い目を負わせようってつもりのようだ。

 なるほど、その罪悪感を村のみんなにも植え付けるつもりだったのか?

 「皆殺しって物騒だな、現状誰も死んでないけど。」

 現状は、な。

 「は?」

 予想通りの反応アザっす。

 ・・・って、なんか変だな。

 どうしてこうもこっちの思い通りに反応するんだ?

 兵たちの無力化も終わっているし、俺と対峙している以上、すでに大陸覇道からエイルヴァーンにチェンジしているはずだ。

 姿は変わらずとも、やつの醸し出す雰囲気も変わっているのを感じるし、まだ大陸覇道のままだとしても、編集で知力は最大にできているのでは?

 なのに、どうしてこんなにツメが甘い?

 (まさか・・・)

 ヤツの職業を予想するとき、あえて除外した職業の名が頭に浮かぶ。

 次の瞬間、眼前に迫る真っ白の仮面、その理由に気が付くと同時に、死が確定したことを思い知らされた。

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