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97:スパイ大作戦?

 この数日、俺は拠点のリビングで過ごしている。

 本来今頃はヒノモトの受け入れ準備で忙しいところだけど、なんだかんだと理由をつけて引き延ばした上、一応彼らの上司になるコクエンとカムイに丸投げした。

 ユーコの件があるので、スロークやソンチョーが引き延ばしに協力してくれたおかげで一ヶ月程の延期が決定している。

 夜中悪夢で飛び起きることも無くなり、だいぶ落ち着いてきたように見えるとはいえ、まだ目を離すのは不安なんだよな。

 今も、ボーっとプチメタのライブ動画を見ている。

 少し前なら、ノリノリでヘドバンまでしていたのにな。

 見ているのかな・・・ただ何となく画面に視線を送っているだけにも感じてしまう。

 だから目が離せない。

 ちょっとでも関心のあることで紛らわせればいいなってプチメタライブを流してるんだけど。

 専門家でない以上、できることはあまりない。

 頼みのマナも、今でこそみどり村の医師として活躍してくれているけれど元々は看護師さん、精神科は専門外だというし。

 とにかく一緒にいること、ノエルさんやマスターに協力してもらって、心が落ち着くというハーブ類を使った食事や、俺のスキルで作った精神耐性アップのバフが付いたデザートなどを勧めるていどしかできない。

 親友のアオイに任せた方がいいのか、とも思ったけど、昔の自分に何かトラウマのようなものがあるみたいだし、思い出させるようなことは極力避けた方が良いだろうといまだに会わせていない。

 とりあえずは悪魔の一人に、精神科医の勉強をさせている。実践が無いけど、もともと悪魔はそちらの方(悪い方へだけど)の技能は高いので、何とかなりそうな気はする。

 というか何とかして。

 今はただ、時間をかけてゆっくり焦らずに対処していこう。

 もどかしいけどね。

 


 ぼく・・・俺は、深山良太。

 特殊捜査員、要はスパイ活動を生業にしている。

 今日も、ある危険な任務を任されてい・・・従事している?だと誰かに使われてる感が・・・なんかカッコ付かないな。

 こういうところなんだろうなぁ、僕がいまいち活躍できないのって・・・いまいちじゃないよね、全くできてないよね。

 はぁ・・・米粒サイズだもんなぁ。

 保護してくれたイェンさんからも、見えないくらい小さいうえ必殺技とかスキルも無いんだからこっそり情報収集以外は危険だから絶対するなって言われてるし。

 声だけすごく大きいから、他の人に話しかけるなって言われているから、ひょっとするとヒノモトのみんなも僕のこと知ってる人あんまりいないんじゃないかな。

 なんか、荒っぽい人が多いからいきなり声かけたら敵の攻撃と勘違いされて攻撃されるからって。

 「君のサイズだと、ちょっとはらった程度で即死してもおかしくないからね。」

 って、念を押されちゃったからなぁ。

 まぁ、こんな僕にも仕事をキッチリ割り振ってくれるんだからいい人だよね。

 報告してもあまりいい顔してくれないから役に立ててるとは思えないんだけど。

 認めてもらえるように頑張らなきゃな。

 そんな僕を優秀だって認めてくれた唯一の人が、シンさんだ。

 ・・・認めてくれたんだよね?

 心の友、いや、親友と言ってもいいよね。

 そんなシンさんが僕に火急の用があるらしい、と言う話を聞いた。

 聞きたいことがあるだっけ?・・・頼みたいことがあるだったかな。

 ま、いいか、親友が会いたがってるっていうなら、何を差し置いてでも行かなきゃね。

 せっかくだから、忍び込んでびっくりさせてやろう。

 意外とサプライズ好きって聞いたからな。

 感動してむせび泣くに違いない。

 さて、どうやって忍び込もうかな。

 みどり村までは楽に来れるんだよ。

 行商がいっぱい往来してるから、紛れ込むだけでいいんだもん。

 問題はここからだ。

 なんで、シンさんの家は村からあんなに離れてるんだよ。

 しかも、ほとんど人が通らないし。

 ・・・友達いないのかな・・・。

 いや、僕と言う親友がいるんだから大丈夫だよね。

 前は、伝書鳩の手紙にしがみついて行ったら鳥が打ち落とされちゃったんだよね。

 手紙じゃなく鳥にしがみついてたら即死案件だった。

 ・・・サプライズ危険じゃね?

 よく考えたらシンさんの家って、超デンジャラスな部下がいっぱいいるんだった。

 どうしよう、サプライズやめて普通に行こうかな。

 う~ん、普通に玄関から入るとしても、そこまでの手段をどうするかなぁ。

 僕の足じゃ何日かかるんだよって話だもんな。

 誰か通らないかなぁ・・・。

 それにしても、ハエが多いな。

 考え事してるのに、ブンブンうるさいっての。

 ・・・あ!

 ハエに乗っていけないかな。

 うまく乗りこなせるかな。

 ってか、捕まえられるか・・・お、ちょうどいいことに、地面にとまってるじゃないか。

 「そりゃ!」

 うそ・・・

 あっけなく捕まえられたぞ。

 うんうん、乗るのは無理そうだな、羽の動きを邪魔しちゃいそうだ。

 足にぶら下がって、体重移動で何とかコントロールできないかな。

 お、スゲェコントロールしやすいぞ。

 僕って天才?

 こんなに簡単に操れるなんて。

 よし、いくぞ~。

 待っててね、シンさん~。

 びっくりさせてやるぞ~。

 

 

 リビングにいる、と言っても、ただボーっとしているわけではない。

 犯人の見当はついているけど、目的が分からない。

 俺がターゲットなんだろう、と言うことはなんとなくわかるけど、俺をどうしたいのか、と、俺をターゲットにする動機が分からない。

 クロウからの密談を通して、調査に動いている悪魔たちからの情報が逐一入って来るので、それらを精査してなんとか見当をつけたいところなんだけどな。

 あとは、消極的だけど相手のアクションを待つしかない。

 まぁ、そろそろ来る予感はあるんだけど。

 <確保したようです。>

 やっぱりか。

 待ち望んでいた、犯人からのアクションだ。

 心配ではあるけれど、断腸の思いでユーコのことをメイド悪魔に任せ、俺とクロウは部屋を出ると隣接する作業場の一つに向かった。

 俺がターゲットなら、何らかの手段で俺とユーコを確認したいはずだ。

 スパイ活動ならば、優秀な”はず”のやつに心当たりがある。

 俺なら迷わずにあいつを使うしな。

 あ、でも、使う前にしっかり行動の指示をしてからだけど。

 「ひどいですよ! 僕が何したっていうんです。」

 と、ガラスのコップに閉じ込められた米粒のような男が喚いている。

 宝の持ちぐされというのは、まさにこの男のためにある言葉だろう。

 上に立つものがまともなら、超一流のスパイとして名を馳せただろうに。

 「よぉ、ゲスいリーダーは元気かい?」

 軽い口調で米男ことリョータへ歩み寄る。

 「あぁ!シンさん、良い所に。相変わらずお飾りリーダーの態度はでかいですけどね、でもまぁ、だいぶ丸くなりましたよ、許す気はないですけど。」

 (やっぱり、マサトシの魅了が復活したわけじゃなさそうだな。)

 無いと思っていても、やっぱり確認はしておくに越したことはない。マサトシの魅了が復活したのならば、リョータの返答はまずクズと呼んだ俺への非難から始まるはずだ。その懸念が消えただけでも良しとしよう。

 「それより、ひどいじゃないですか!なんでまた、こんな扱い受けなきゃならないんです?」

 抗議するリョータだが、そもそも勝手に忍び込んでおいてどの口が言うんだか。

 「お前らの受け入れ準備が忙しくてみんな気が立ってるんだよ! だいたい、不法侵入者を素通りさせるわけ無いだろうが。まったく、俺の惰眠を奪った上こんなことで時間を使わせるなよ!」

 と、あきれた態度を前面に出す。

 「ひど!不法侵入者って、僕とシンさんの仲なのに!」

 なにかポーズを取っているようだけど、米粒サイズなので全く分からん。

 「お前からは面倒事と不法侵入しか受けた記憶が無いんだがな。」

 知人以上の関係では決してないのに、どんな勘違いをしていることやら。

 「で、今回はどうやって侵入したんだ?」

 この残念スパイは、一応凄腕ではある。なんせ、従魔達が守るこの拠点にたやすく侵入してみせたのだから。

 「あぁ、前回は伝書鳥が運ぶ手紙にしがみついてきたんですけど打ち落とされてしまったので、今回は行商人に紛れ込んでやってきたんですよ。村からは、ちょうど目の前を飛んでいたハエを捕まえてしがみついてきました。うまく操れるか心配だったんですけどね、いやぁ、ボク、才能あるんですかねぇ。ハエライダーとか。いや、フライライダー?語呂が悪いな・・・。」

 「汚ねぇな、蠅なんか雑菌だらけだろうが。」

 こんなバカをやっているところじゃないわけだけど、一応理由はある。

 <発見しました。行動からして、間違いなく明確な意思を持っています。>

 その理由が見つかったようだ。

 <処分いたしますか?>

 密談の声に殺気がこもる。

 <いや、掃除か何かに見せかけて拠点内から追い出せ、決して殺すな。>

 無事に帰ってもらわなければ、無駄な時間をかけている意味がない。 

 こちらが気づいていない、と思わせなければならない。

 <承知しました。>

 しばしリョータ相手にバカなやり取りをしていると、

 <拠点からの追い出しが完了しました。>

 と、待ち望んだ回答が来た。

 さて、これでバカも終わりだ。

 「で、なんでここに来たんだ?」

 そう言って、コップからリョータを開放すると、代わりに指輪を、リョータが真ん中に来るように置く。

 「サプライズです!シンさんが僕に会いたがっているって聞いたんで、ならびっくりさせてやろうと・・・あれ?誰に聞いたんだっけ?」

 やっぱり、精神操作を受けてたか。

 自分を囲むように置かれた大きな指輪を見るリョータの表情が曇る。

 「この指輪って・・・前にマサトシの魅了から解放してくれたやつですよね・・・ってことは、また・・・。」

 さすがに意気消沈と言った・・・様子なのか?

 まぁいい、敵はおとりとして使ったつもりだろうけど、また一つ犯人を確定する要素を確認できた。

 こちらに注意を引き付けておいて、本命はユーコの様子を確認、もしくは接触を図ったんだろう。

 つまりこいつは捨て駒。

 しかしね、この能天気な、自覚のないスパイはどこか憎めないんだよ。

 だからなのか、がっくりと落ち込んでいる(らしい)リョータに、思わず声をかけてしまった。

 「なぁ、普通のサイズになりたくないか?」

 ヤツの犯行だと裏付ける意味でも、ここで試しておくのも悪くない。

 「え・・・そりゃぁ、なりたいですよ。でも、まぁ無理ですよ、こんなですし。」

 ファーレンでのナレハテ討伐後に例の鏡台で試したが、結局大きくなることはできなかった。

 キャラメイクで慎重や体形もいじれるけれど、彼はあまりにも小さすぎた。いわゆる、設定できる最小サイズよりはるかに小さかったので、エラーで編集できなかったのだ。あの時の彼の落ち込み様は・・・小さすぎて見えなかった。

 しかし、ユーコの件で別の方法に思い至ったのだ。

 「いや、たぶんできるぞ。」

 ユーコに対して行われたであろう行為を検証するためにも、リョータには悪いが実験台になってもらおう。

 ・

 ・

 ・

 数分後、涙と鼻水でひどいことになっているリョータが抱き着いてくるのを必死に抑える俺とクロウがいた。

 ゲームでは米粒サイズでジュースの缶やフライパンを投げるアクションがあったけど、それが人間大になるともう・・・90レベルの俺一人ではとても抑えられないほどのパワーを持っていたのだった。

加筆完了しました。

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