バス停の彼女
朝利用しているバス停でたびたび会う女性がいる
いつもまるで当たり前のようそのバス停の雰囲気になじんでいる
帰りも同じバスを使うのだがなぜか一度も会ったことがない
しかし朝出会うといつだってその日にその場になじんだ彼女がいるのだった
いつしか会釈を交わすようになった
ある朝小雨が降り軽く走りバス停につくとすぐ目の前に彼女がいた
彼女は僕を見て会釈をし
「雨降りましたね」と言った
僕は少し動揺して
「ええ、ぬらしてしまいました」と雨で色の変わったそでの部分を見せた
彼女はバッグの中から折り畳みの傘を出して
「よろしかったら」と傘を僕の手の方に差し出してくれた
僕は彼女の気遣いをすんなり受け入れた
彼女と声を交わしたのはそれきりだった
その一件以来彼女をバス停で見ることがなくなってしまった
僕は彼女が貸してくれた傘は黒の折り畳み傘だ、
いつか返さなくてはいけないのでいつもかばんの中に入れている、急な雨が降ってきてもその傘を使うことはなかった。
この話を妻にすると
妻は彼女の事を「バスストップの彼女」と呼びたまに話題にする、僕はその呼び方がとても好きだ。