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招待状

感想をくださった方ありがとうございます。


今月は仕事が忙しく投稿が遅くなりがちですが、のんびりお待ち頂ければと思います。

 あの朝の散歩の後、アガサから庭の一角を使用して良いかと聞かれた。なんでも、植物を愛でるのが趣味らしい。言葉のニュアンスに違和感を抱くも、これと言って問題は無いので毒性を持つ物とハーブ系以外ならと条件を付けて許可した。


「本当に!?嬉しい!任せてください、私、昔園芸部だったんです!」


 頬を紅潮させて飛び跳ねる勢いで喜ぶアガサ。無邪気な姿に、先程抱いた違和感など頭の片隅に追いやった。


 ところで、えんげいぶとは何だろうか…俺が学園に通っていた頃、そんな催し?あったか?




 朝食後一服していた俺はノエルから渡された高級そうな便箋に押された、グリフォンが描かれた金の封蝋を睨め付ける。折角高級茶を楽しんでいたのに…。


「時期的に考えて、秋の舞踏会の招待状じゃね?」

「もう届いたのですね。流石、王宮の馬は俊足です」

「あはは。言えてる~。帰るのも早いし」


 楽しそうな双子の声を聞いて、俺同様お茶を飲んでいたアガサが思い出した様に尋ねてきた。


「そう言えば、何故毎年春の舞踏会には出席されないのですか?」


 秋の舞踏会が悪いわけでは無いが、デビューする令嬢や参加する貴族はやはりというか、春の舞踏会の方が多い。交流を持つには其方に参加した方が良いのでは、とアガサは言いたいのだろう。本来ならば彼女の言うとおりだ。だが悲しいかな、此処はレッドフィールドである。


「ああ…。温かくなると、頭のネジを外した連中がわんさか出てきますからね…」

「…え?」

「寒い冬を乗り越え浮かれに浮かれた問題児共の活動が、徐々に活発になってくるのが春なんです。つまり、俺は監視と抑制のために春の舞踏会には出席できません。秋の舞踏会には嫌々ながらも出席しているので、問題は無いはずですが」


 そこまで言って、はたと気付く。家は貧乏子爵家で、年に一回しか参加しない王都の舞踏会の為だけに服をオーダーメイドするのは金の無駄遣いだと毎回既製品を購入し、お針子達にアレンジしてもらっていたのだが…アガサがいる以上、そうもいくまい。


 ちらりとノエルに視線を向けるが、意図を察した彼に首を横に振られてしまう。ですよね…。うーん…だが、今仕立屋は一軒しかないんだよなぁ。


「服を仕立てようと思うのですが、領内にある仕立屋は二軒だけで、うち一軒は三ヶ月前に全壊して立て直している最中でして。店を選べないのですが…よろしいですか?」

「それは……」


 はっと何かに気付いた様子で、アガサがそっと口元を手で覆う。その双眸は痛ましげに揺れていた。


「前回のスタンピードで……」

「いえ、夫婦喧嘩です」

「えっ」

「目玉焼きには塩かソースかで朝から拳で語り合い、家兼店を崩壊させたんですよ」

「えぇ……?」

「まぁそうなりますよね、普通」


 クスクス、双子が声を潜めて笑う。


「喧嘩で家が壊れるなんて、此処じゃ珍しくないよ~?」

「奥様もいずれ慣れますよ。ご安心を」

「………(絶句)」


 本音を言えばそうなる前に公爵家にお帰り願いたいんだが…適応能力高そうなんだよなぁこの奥さん。









 目を閉じると脳裏に蘇るものがある。俺がまだ幼かった頃、養父母が見せてくれた一枚の肖像画。高貴な身分を表わす金髪から覗く赤い眼光がひたと自分を見据えている、そんな錯覚がした。


「…だから嫌なんだ。王都に、王族に会うのは………」


 必死に隠匿したパンドラの箱を暴こうとするから。

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