問① 車内から投げ出された恋人とホモが崖っぷちにしがみ付きながら今にも落ちそうになっている。この時あなたが取るべき行動を示せ。なお、ホモは妊娠しているものとする。
背後で大爆発する車。黒煙が盛大に立ち上り、燃えるタイヤが小脇を転がり崖の下へと落ちていった。
「もうダメ……! 落ちる……!!」
恋人のジェシーが必死で崖にしがみ付いているが、今にも落ちてしまいそうだった。
「俺もダメだ……!! もうもたない……!」
直ぐ隣でホモが崖っぷちにしがみ付きながら、今にも落ちてしまいそうになっている。
「貴方! 助けて……!!」
ジェシーが叫ぶ。
「お願いだ、助けてくれ……!!」
ホモも叫ぶ。
俺は、ホモに目を背けジェシーの手を掴もうとした──!!
「俺のお腹にはお前の子どもが居るんだ!!」
ホモの叫びが俺の手を止めた。
「なんだって……?」
「何を言ってるの!? ケン! まさか貴方、あの男と知り合いなの!? って言うか子どもって何の話!?」
俺の脳裏に、かつて夜の街で踏んだ一夜の過ちが過った。
「もしや……シュナイダーか!?」
「そうだ……! あの時お前と一夜を共にしたシュナイダーだ!!」
俺は咄嗟にシュナイダーの方へと手を差し伸べた。
「ちょっと待ってよ!! そのホモ野郎を助けるつもりなの!?」
「すまない……俺は確かに君と付き合う前まではホモだった。しかもシュナイダーのお腹には赤子が居る……本当にすまない」
俺は今にも落ちてしまいそうなシュナイダーの手を掴もうと、手を伸ばした──
「私も妊娠してるかもしれないわ!!」
その時、彼女が叫んだ。
「な、何だって──!?」
俺は伸ばした手を止め、彼女の方を見た。
「あのクリスマスの日、貴方と激しく燃えたわ!! あの日……多分アレよ!! いや、間違いなくアレよ!!」
「な、なんだと……!?」
俺の頭の中はちょっとしたパニック状態になった!
二人とも身籠もっているとしたら、俺はどちらを助ければ良いんだ……!!
かつて愛を求め合った男か、それとも今愛を語り合っている女か──俺は頭を抱えて酷く悩んだ!!
「神よ……!!」
十字架を握り締め、俺は苦悩に苦悩を重ね、そして決断した──!!
「今助けるぞ!!」
しかし伸ばした手は空を切った。
「……?」
崖の下を覗くと、既に二人とも限界を超えて落ちてしまっており、かなりペチャンコになっていた…………。
「……ヤッベ」
俺は髪の毛を掻き上げ、そしてビールの栓を開けた。