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クソガキからの挑戦状  作者: 今居 里美
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新任教師と初めての部活ー中学生

私は結局中学受験をして、滑り止めの中学校に行くことになったんだ。本番にどうしても弱くて本命中学は3回受けて3回とも振られました、、、

クラスのみんな女の子で制服だから最初は見分けがつかなかった。知ってる子は一人もいなかったしさ。今思っても女子校って異様な空間だったよな。滑り止めだったから学校での成績はかなり良かった。


最初に驚いたのは担任が2人いたこと。担任は30代の女教師(アラサーは地雷なのにぃ)、副担任は新任の女教師だった。何となく接していく中で私は担任のほうに苦手意識を持ったんだ。さすがアラサー女教師。本当にちょっとしたことなんだ。話し方がきつかったとかそういうことだったんだけど、どうしても苦手だったの。


教師との交換日記みたいのを毎日やらされてたんだけど、あなたが苦手ですなんて書けるわけもないし、当たり障りのないことしか書いてなかった。

あれは本当に意味のないものだったな。私だって誰にだって最初から反抗してたわけではないので勘違いしないようにしてね。私が嫌いと思うのは生徒を思い通りにしようとするやつ、子どもの気持ちを考えないやつです。

でも私がケンカしたのは担任ではなく新任の副担任のほうだった。


最初の自己紹介で黒板の字がとてもきれいって自慢気に担任に褒められて、それに対して得意げだったのがちょっと気になったポイントなの。私にとって黒板のきれいな先生っていうのは水田先生だけだったからなあ。大人げなかったんだけど、水田先生より下手じゃんって思ってた。水田先生がめちゃくちゃきれいだっただけなんだけどね。


その教師は社会科担当だったんだ。そのときは世界史。私、世界地図を中学に入って初めてまともに見た。それまではアメリカがどこにあるかも知らなかったの。中学受験までしたのに。小学生に教える範囲って限られてるんだな、って思った。

次に、こいつ嫌いかもって思ったのが授業中の出来事。

<ここまでで何か質問はありますか>

って言ったのね。よく聞くやつ。そのときに、私は素直に

『質問とは違いますが、奴隷の隷って字が分からないのでもうちょっと大きく書いてもらってもいいですか』

丁寧に聞いたのにも関わらず、あいつは

<そういうのは自分で調べてください>

こういう返事だよ。二度と聞くもんかって思うよね。


そのあとはまとめノートかな。社会では、授業で書いたものとは別にまとめノートっていうのを作らされたの。そのまとめノートは授業中以外で調べたこと、教科書に載っていないことを書くと成績が上がったんだ。それもあって、その教師にムカついてた私は“漢字以外のこと”で質問攻めしてた。

『スペインは大差で攻め勝ったって、具体的にどのくらいの差だったんですか』

『ベルばらにあるフェルゼンって本当にいたんですか。オスカルみたいな人はいたんでしょうか』

『ポンペイって今の地図でどこら辺にあるんですか』

その場で回答があったのは一つもなし。次回までに調べておきます、って言いながら調べたためしがないよね。

じゃあ質問ありますかなんて聞くなよって思う。


あとは中間テスト。私は初めての中間テストで緊張してたんだ。小学校とは比べ物にならないくらいピリピリしてた。そんな緊張感の中で、副担任が見回りのときに消しゴムを落としちゃったんだ。カンニングを疑われたくなくて、手を挙げて拾ってほしい、と伝えたら

<このくらい、、、>

って小さい声でため息つきながら言ったんだよね。もう最悪。こっちは申し訳なさそうにお願いしていることに対して、それくらい自分でやれってか。こっちは真面目にテストに取り組んでるのに。本当にカンニングしてやろうか。


イライラしていたところで中間後の初めての授業での出来事。そいつはある生徒のまとめノートをクラス人数分印刷して配ったんだ。

<尾崎さんのノートはよくまとめられていいですね。色もたくさん使っていてわかりやすいです。字はちょっと汚いですけど(笑)>

もう私はブチ切れたよね。別に尾崎さんとは仲良いわけじゃなかったけどさ。生徒の許可なしに勝手にノート印刷して配った挙句、字が汚いってなんだよ。自分はろくに調べ物もしてこないくせに。


もう本格的に大嫌いになった私は世界史の勉強に本腰を入れた。嫌いな教師には文句を言われない成績をとらないと反抗する資格ないっていうのがお母さんからの教え。私もそう思う。期末では95点をたたき出したんだ。歴史でこんなに点数が取れるのはすごいことなんだよ、歴史すごく苦手だったのに。頑張った私。


その後、私にチャンス到来。

学期末に授業アンケートっていうのを配られたんだ。アンケートって言いながら名前を書かなきゃいけないのが気に食わなかったんだけど。各教科5段階評価で書いて、授業で改善してほしいことを書くの。私は用紙が全部埋まるくらい書いたよね。

『授業中の質問で漢字は自分で調べろと言われた』

『教科書以上の情報がないし、質問して次回までに調べると言ったまま調べられたことがない』

『まとめノートを本人の許可なくさらした挙句、字が汚いとクラスの前で暴言を吐いた』

『私のお母さんのほうがまだ世界史に詳しい』

こんな感じのことをつらつらと書いたの。

その日、放課後呼び出されて担任・副担任と私の2対1の説教よ。よっぽど‘未成年なので親を呼んでください‘って言おうと思ったか。生徒の特権だよね。使ったことがない人で、親が話の分かる人なら使ってほしい。


二人が言うに、こんなに反抗的なことを書くのは私が初めてだそうで。

<なんでこんなことを書くの。こんなにたくさん書いたのはあなたが初めてよ>

『授業改善アンケートと書いてあるじゃないですか。改善してほしいことを書いたまでです。大体私のほうが理屈通っていると思うんですが、なぜ責められなければならないんです。まとめノートをさらすなんて教師によるいじめと捉えられてもしょうがないことですよね』

<だからってこんなにきついことを書かなくてもいいじゃない>

『センセイ方のほうがひどいんじゃないですか。生徒一人に大人二人がかりで説教ですか。改善する余地がたくさんあってよかったじゃないですか。私が指摘しなかったらそのままですもんね』

<お母さんのほうが詳しいってひどいと思わない>

『事実だからです。今はネットで何でも調べられるのに次回までに調べておくって言いながら放置するのは責任放棄ですよね。だったら私は教科書以上のことは教えられませんって最初から言ってくれればいいんです。質問はありますかって聞いといて漢字すら教えていただけないんですもんね』

そんな言い合いは私と担任の二人でやってて、副担任は何も言えず、挙句泣くんだよ。


甘いんじゃないの、覚悟が足らないんじゃないのって思った。まさかついこの間までランドセルしょってたガキに言い負かされるとは思わなかったんだろうね。最後に副担任が言ったのは、

<私の専門は政経だし>

この言い草だよ。ふざけんなって。

『私の母は普通の主婦ですが。授業にそんなに自信が持てないのであれば政経の授業だけなさればいい。私もそんなに責任感のない教師に教わりたくありません』

副担任は大泣きで担任に慰められてた。もう目いっぱいいじめちゃった。担任にはニラまれるし。

こっちが悪いのか、改善点を挙げただけでこれかって思った。二度と書くもんかって思ったよね。


でも確かに新任にやりすぎた気持ちはある。学生気分が抜けないままでこんなことが起こると思わないよね。でも、自分が悪かったことを何一つ認めずに生徒を二人がかりで丸め込もうとするその態度がまず駄目だったんだよ。私もこの点は悪かったです、って言わなきゃって思う。

担任も悪いんだよ。私を呼び出す前に副担任と話し合わないから、アンケートをよく読まないからこういうことになるんだ。教師何年目だよ、本当にこういう風に反抗する子は一人もいなかったのかな。私が問題児だっただけなのか。・・・まじか。そうなのか。


もうそれからは質問することはなくなった。授業もろくに聞かなかった。外見たり、ほかの授業の宿題をしてた。どうせ教科書を覚えればテストで点は取れたしね。

あるとき副担任が意趣返しで私に質問してきたの。凝りもせず。

<今居さん、キリスト教はどこで始まったでしょうか>

この聞き方も本来ならあまりよくないんだけどね。イエス・キリストが磔にされたって言われる場所があるんだ。それは教科書じゃなくて資料集に載ってたことだから、授業を聞いてなきゃ答えられないことだったの。でも私は何も見ずに

『イスラエルのエルサレムのゴルゴダの丘』

って答えてすまし顔で答えたんだ。本当はイスラエルって答えればいいところをわざと詳しく答えたもんだから、クラスがざわついちゃって。丘って何・・・?みたいな。

<・・・よく調べてありますね>

だってさ。小学校の家庭科のときも思ったけど、漫画かよってリアクションするよね。本当に言葉に詰まりながら負け惜しみを言うんだよ。お前知らないだろ、って思う。合ってるかどうかも確認できないような授業をするなよ。

このときのあいつの質問のチョイスが最悪だったよね。私のお母さんはクリスチャンなんだよ。キリスト教のことはお母さんのほうがそりゃ詳しいって。アンケートで書いた、お母さんのほうが詳しいって証明になっちゃったじゃん。

それからは腫れもの扱いよ。鬱陶しかった。


当然2年生からは担任も副担任も、社会の担当も変わった。あー清々したって思ってたんだけど、中学のときは教師だけじゃなくて部活も最悪だった。


私は金管楽器をやってたから吹奏楽部に入ろうと思ったんだけど、お母さんがスポーツのほうがいいって言うから、ソフトテニス部に入ったんだ。確かに吹奏楽だと楽器買わなきゃだったし、家でなかなか練習できなかったからスポーツにして良かった。


同じ漢字で里美っていう子もいて、その子はテニプリに憧れて入ったって言ってた。私もその子も左利きだったんだけど、その子は最初右手で練習してた。気持ちはわかるが、利き手で出来るようになってからやれって。絶賛厨二病だったよね。すごい面白い子だったんだけど、1年の後半で辞めちゃった。辞めて正解だったんだけどね。


1年生のときは楽しくやってたんだけど、2年生のときからだんだん空気が悪くなった。2年は7人いたんだけど、その中でペアを組んでその中で私はとりあえず一番上手なペアにいたのね。左利き同士、ってことで3年生の先輩と組まされてやってたりしてたんだ。

2年の中で派閥みたいのができ始めて、それが上手ペア2組とラスト1組みたいな感じでわかれちゃったんだ。私はむしろラスト1組のほうが好きだったからみんなと仲良くしてた感じ。


あるとき2年生だけで練習する機会があったんだけど、私は先輩について行って試合をしてたんだ。テニスシューズを置いて帰ろうって思って部室によると、シンとしてて、上手ペアの4人がニヤニヤしてたんだ。何してたの、って聞くと、友里亜つるし上げてたって笑顔で返ってくるの。友里亜っていうのはラスト1組の一人だったんだけど、その子に向かって2時間くらい4人はずっと文句を言ってたんだって。

<友里亜がいるからペアの千波も勝てないんじゃん>

<あんた辞めたほうが部にいいよ>

<いる意味ないし>

みたいな胸糞悪いことを延々と言ってたんだって。信じられない。大した実力も実績もないくせに。実力があったって絶対言っちゃいけないことだと思うけど。焦って友里亜はどこに行ったのか聞くと

<トイレで泣いてるんじゃない>

って返答。頭が真っ白になった。その日友里亜は私たちの前には出てこなかったんだ。

陰から見てたのかもしれない。そのまま帰っちゃったのかもしれない。


私は何度もこのときのことを思い出すんだ。大好きだった友里亜をなんで待ってあげられなかったんだろう、なんで4人に何も言えなかったんだろう。後悔しかない。こんな4人でも私はハブられるのが嫌だった気持ちがあった。小学校の無視された2ヶ月が頭によぎっちゃって強く出れなかった。


その日友里亜に電話して大丈夫か尋ねたら、本当にか細い声で、泣きながら部活辞めることを教えてもらった。自分が情けなさ過ぎて悔しい。大丈夫なわけがなかった。友里亜は何も悪くないのに、中学生の鬱憤晴らしに使われたんだ。その場にいたら一緒に逃げることくらいはできたかもしれない。本当に助けられなくて、あいつらに文句を言えなくて申し訳なかった。せめて顧問や担任に相談くらいはすればよかった。


後日、また2年だけで練習することがあって、そのとき私のパス出しがおそろしく悪かったの。それがきっかけで私は部活メンバー全員から無視されることになった。


きっかけなんて大したことじゃないんだ。流行りのハブ。流行りの無視。おっそろしくくだらない。それでも何話しても聞いてもらえないっていうのはすごく堪えた。キツかった。そのくせ試合帰りのマックには一緒に来させようとするの。その場に私を居させて、それでもって私の存在を無視。


このときに感じたのは、やっぱり因果応報ってことだった。小学校のときにいじめてたあの子からの報いだと思った。あの子は優しすぎたから神様が私に罰を用意したんだと思ったんだ。悲劇のヒロインやるつもりはないけどね。そんな風に思ってた。


そのいじめは部活の保護者・顧問を集めて問題になった。そのときに初めて私は副担任だった教頭先生に慰められたんだ。私はその先生の前で

『私のことなんかどうでもいい、でも友里亜が。友里亜を助けられなかった』

ずっと泣いてた。そしたら教頭先生は

<どうでもよくないよ。今居さんも辛かったね>

そういってくれたのを覚えてる。もう大泣き。


友里亜への罪悪感でいっぱいだったのは本当なんだ。

私はそのときに初めて、私への無視のきっかけが練習中でのパスが悪かったことだけだったって聞いたの。そんなくだらないことで私は辛い目にあっていたのかと思うと、泣けてきた。友里亜を助けられなかった私に辛いなんて言う資格ないと思ってたから、そのときの先生の‘あなただって辛かったでしょう‘って言葉が沁みた。あの中学で唯一先生に一番近かった教師だと思う。


教頭先生の笑える話があってさ。

部活の保護者が集まる場で私のお母さんがその場にいる全員に向かって説教をしたんだって。たぶん‘あんたら何を見てきたんだ’、‘こんだけ傷ついてる子がいてなんで助けてやらなかったんだ’、‘どういう教育をしてきた’ってこんな感じのことだと思うんだけど。

私はその場にいなかったからわからないんだけどね。私を育てた母ですもん、そりゃ容赦ないはずよ。逃げ道を無くしてからボコ殴りよ。


私はその頃しょっちゅうお母さんと喧嘩してたんだ。いつも内容は同じようなこと。兄貴に対しての態度がきつすぎる、今の口調は何、喧嘩売ってんの、って主に口のきき方だよね。このときに散々怒られてきたからこそ、昔より丸くなったんだと思う。


怒らせると2週間くらい口きいてくれないの。その間私はお母さんのご機嫌取りをするのね。お弁当は自分で作ったし、普段はあまりしないトイレ掃除とかも率先してやって、灰皿はいつもきれいだし、台所はいつもお皿がないようにして。

毎日

『お母さん、おはよう』

<・・・>

今日もまだ駄目か、って思いながら逃げていくっていう。

そのうちお母さんから

<里美さん、お話ししますか>

っていうお言葉が出るから、それまで頑張った。当時は本当に真剣な顔で、真面目に話しかけたり、家事をやってたんだけど、こうして文字にすると笑いしか出ない。


何度怒られても(何度も同じ内容で怒られるなって話なんだけど)お母さんを嫌いにならなかったのは、言い分に芯が通っていたことと今までの信頼関係の力だよね。今でも頼もしい相談相手です。


お母さんが学校で説教した次の日、当時副担任だった教頭先生が私に向かって、

<今居さんのお母さん怖いわね>

こういう風に話しかけてきたんだ。思わず笑っちゃったよね。

『ですよね!私このまえ3時間泣かされましたもん!!』

こういう風に笑顔で答えてた。事情知らない周りの子が

<ウチも怖いよ、慌てて土下座するんだ>

って会話に加わると、真剣な顔で

<違うの、そういうんじゃないの>

こう返すんだもん。今でもうちの鉄板笑い話だよ。こういうことを私に向かって言っちゃうところが好感持てたよね。そうなの、うちのお母さん本当に怖いの。


結局友里亜は美術部に入った。

例の4人は私に手紙を送って来たよ。友里亜にあげたかどうかは分からない。手紙なんか渡してなきゃいいけど。私は中学を卒業するまでは証拠として持ってたけど、その後は気持ち悪くて捨てちゃった。何も考えてない、書かされたごめんなさいなんて嫌悪以外の何物でもない。


それから私の学年はみんな部活を辞めた。4人のうち一人は軽音楽部に入ってちゃらちゃら楽しそうに演奏してたよ。心底腹立った。


このことがあったから私はこんな学校出てやる、って高校受験したんだ。友里亜とはそれからうまく話せなくなった。罪悪感でいっぱいでさ。本当に最悪。

部活の中で高校外部に行ったのは私だけだった。友里亜は偉いよ。私なら堪えられない。尊敬する。強いっていうのはこういうことなんだと思う。私は逃げたけど、友里亜は戦ったんだよな。


学年全員で200人くらいいたんだけど、その中で自分の事情だけで外部受験するのは私だけだった。あとの子は成績でついていけない子だったり、親の転勤とかだった。

そういう点でも私はかなり浮いてた。ちょっとした有名人。高校生になってから文化祭に遊びに行くと周りからざわざわ声が聞こえるんだもん。

あの人が・・・

じゃあテニス部の・・・

やめてくれ。こんなんで何年も噂されるってどんな話題の無い学校だったんだよ。教師から見ればうざい生徒がいなくなって良かったんじゃないかと思う。


そういや高校1年生のときの夏休み、学校に見知った制服の女の子がお母さんと一緒にいたんだよ。なんと、私の卒業した中学の生徒だったんだ。思わず‘・・・中の人ですか’って声かけちゃった。そしたらすごくびっくりされて、怪しまれた。私が卒業生だって話したらすごく興味持ってくれたんだけどね。あの学校の人たちが私の行った高校について話すなんてことはないと思うから、単純に偏差値で考えたのかな。


そのときはそれだけだったんだ。でも文化祭に遊びに行ったときいきなり話しかけられてさ。あのときの先輩ですよね!!って。よく覚えてるよね、あのときジャージだったんだけど。まあ、でも周りでざわざわしてたもんね。

そこでテンション高めに話しかけられて、連絡先交換した。その子は新体操部だったんだけど、うちの高校のバトン部に入りたかったんだって。なかなか強かったのよ、うちのバトン部。でも周りに相談もできずにずいぶん悩んでたみたい。それで噂で私のことを聞いて話したかったみたいなんだよね。だから他の学校の良さを語り、楽しいことを伝えまくって、うちの学校に引き込んだよね。学校出た後でも迷惑かけるやつは私です。

まあでもあの学校よりは高校で環境変えるのもよかったんじゃないかな。その子も生き生きしながら青春生活送ってたと思うよ。


高校受験宣言してからはかつてないほど勉強を頑張って内申点をとって、受験勉強もした。3年の最後の成績は学年でも一桁だったと思うよ。

やっぱり社会がだめで(歴史できる人本当に尊敬する)、本番に弱いこともあって公立高校には振られちゃったんで、中・高と私立に行っちゃったのは親に申し訳なかった。ランク落としてでも公立行きたかった。


それでも中学よりはるかに偏差値の高い高校に行って、教師どもを見返したかったんだ。友里亜を守ってくれなかったお前らは、こんなに優秀な生徒を無くすんだ、って思わせたかった。

実際どう思ってたかは確認できないんだけどね。


部活のメンバーの中で、ペアを組んでた子が私は大好きだったんだ。ちょっと臆病者で、でも私の冗談に乗ってくれるオシャレの大好きな子だった。

その子は卒業文集に部活のことを書いたの。テニス部ではいじめがあった、ってこのまま。見たとき驚いた。私も実名で全員の名前出しときゃ良かった。一生残るものだからって遠慮しちゃったんだよ。


本当にぶっ飛んだ面白い子でさ。その子もそのまま高校に上がったんだけど、当時かなり荒れたらしい。化粧ガンガンやって、学校には登校拒否。夜遊んでるのを見つかって3回停学食らったんだって。そこで出てくるのが教頭先生よ。1ヶ月くらい毎日車で送り迎えしてくれたんだって。電車乗ると途中で逃げるから。

たぶんそれがその子の、どうにもならなかったいじめの発散方法だったんだと思う。いじめに参加はしてなかったけど、いじめてた子には逆らえなくて。よくいる傍観者だったんだよね。私もその場にいたらどう動いたか分からない。友里亜を守りたかったけど。


送り迎えをしてた教頭の心労は計り知れないし、事件にならなかったから笑えるんだけどね。あとからそのときのことを聞くとたまらなく面白いよね。

その子は1学期の半ばで他の高校に編入して、キャバ嬢やりながら大学卒業してた。今は美容系の会社の受付嬢やってるんだって。途中でやめるくらいなら受験に誘えばよかった。もともと頭の回転が速い子だから受験勉強も楽勝だったろうに。


このいじめには後日譚があってさ。

私は2年前に初めて知ったんだけどね。いじめてた一人の軽音部に入ったクソ野郎は理科の教師になってこの学校で働いてるんだよ。こんなことってある?しかもそいつの採用面接には私たちの学年の学年主任がいたの。教頭はどうだったんだろう。いたのかな。

いじめてたことを知っていてその上で、母校で採用したんだ。目の前が真っ暗というか、真っ赤になったよね。腸が煮えくり返るってこういうこと。あのときの部活メンバーで教師になっていいのは友里亜だけでしょ。


直接文句を言いに行った。

『どの面下げて教師をしているのでしょうか。生徒の前でちゃんと、‘いじめは悪いことだよ、私は一人の子を4人がかりでつるし上げて部活崩壊まで追い込みましたけど’って話してますか。』

<あのときのことは悪いと思っています。でも、あの経験があったからこそ今の私がいます>

本当にこういう風に言ってきたんだよ。今思い出しても冷静でいられない。あいつは自分がいじめてたことを美談にしたんだ、友里亜にロクに謝りもしないで。謝ってても腹立つんだけど。私が友里亜と連絡とれないって言ったらあいつは

<まさか死んでないよね>

こう言ってきたからね。お前らの為にあの子が死ぬわけないだろ。死ぬかもしれないような傷を与えたことを分かっていてよく教師になんかなろうと思えたよな。当時の学年主任にも一通り文句言ったけどね。

<今はいじめてない。彼女は改心したはずです>

こういう風に返してきたよ。あの学校は腐ってる。あいつはきっと教師を、生徒を傷つけるよ。


私が先生に夢を見過ぎてるのかな。

この件に関して私はいまだに答えを出せていない。私はそいつを含めいじめてたやつらを許せない。でも、周りから言わせればずっと昔のことを根に持ってる暗い子って認識なんだ。

普段は思い出さないし、そいつらがどうしていようがどうでもいいんだけどさ。教師だけはなっちゃダメだろ。

皆さんはどう考えるんだろう。聞いてみたい。


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