2.平凡な日々はどこへ消えた、アウトー↑デットー↑
ぶっ飛んだ日常。それが今のテーマだ。何を言っているかわからないと思うが大丈夫だ。僕もわからないから。
「さぁそのまま腕立てふせだ!休むんじゃあないぞ」
何でこんなことをしているのだろう。
あの後、あの少女が僕の腕をひっつかんで抱き寄せてきた。その瞬間までは「やっぱり僕の時代キター」と思って鼻の下を伸ばしていたけど、違った。
腕を引っ張って捻りこんで背負い投げ。
いや、言葉を失ったよ。
なんか僕は強くならなくちゃいけないらしい。理由は話していたけど良くわからなかった。だけど僕のためというよりは少女が自分の野望(?)を叶えるために必要なことらしい。「勘違いしないでよね」っていうところだけすごく覚えてる。
そういうわけで絶賛腕たせふせ中。だけど10回ぐらいで腕が限界なんだ。日頃運動していなかった自分が恨めしい。
「軟弱なやつめ。10回しか腕立てができないとは。まぁ大丈夫だ、骨が砕けたわけではあるまい。とりあえず腕の骨を立てて骨が砕けるぐらいまで続けるぞ、さぁい~ち、に~」
本当に10回で限界なんです。という限界を通り越して、本当に肘関節が赤くなるまで腕立てをさせられた。これ長い目で見たら絶対良くないトレーニングだろ。
「よし次は腹筋だ。腕が使えなくなったら腹を使え。腹を使えなくなったら足を使え。体が全部使えなくなるまで鍛えるぞ、おぉおぉぉおおおお!」
今まで幼稚なことだと思ってすがることはなかったけど、天国のお母さん、お父さん。もうすぐ会いに行けるかもしれません。あぁ…お腹吐きそう。うぅ。
「良い調子だ。次はスクゥワットだ」
「スクワットじゃないんですか」
「スクゥワットだ。そんなことはどうでもいい。早くやれ。死ぬ気でやれ。い~ち、に~」
「い~ち、に~」
膝が砕ける…。
平凡な日々はどこへ消えてしまったのか。ただそんな中でも僕は、久しく忘れていた生きている実感を味わっていた。死にそうorz。
あれから少女が家に上がり込んできて、両親は他界しているから何も憚らず一緒に住むことになった。
起きて筋トレ。学校に行こうとするも阻止されて筋トレ。3時のおやつに筋トレ。寝ながら筋トレ。夢でも筋トレ。…
1年後
そして1年が過ぎた。それでどうなったかと言えば、事態は思った通り最悪の方向へ向かった。ムキムキになっているはずだって?いやいや、無理な筋トレを続けたせいで、本当の意味で全身疲労骨折したよ…あはは。
そういうわけで割と前から入院している。
不思議なのはその少女だ。
なぜか今でも毎日やってきて筋トレ筋トレ言っている。医者に止められているけどなぜか言われるとやらなきゃってなって隠れて筋トレしている。でもまぁ、なんだかんだ言ってその少女は、僕が恋に落ちた人だし。
それに、なぜか僕が痛がる度に一瞬だけ心配そうな顔をするんだ。じゃあなぜこんなことさせてるんだって?はは、僕が聞きたいよ。ただ僕はやらなきゃって思うんだ。
その数日後。無理がたたって、僕は死んだ。