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リュウという名の男  作者: あき
第2章 アヤ
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余話 其の1 ~なまえ~

 我ながら、あまりにも甘いもの成分が足りないと思ったので補充(笑)。

 むしろこういうのが本編だろ?と思ったりも。も。

 ごろごろ~~。


「あ~~~~……」


 ごろごろ~~。


「う~~~~……」


 ごろごろ~~。


「あ~~~~……」


 ごろごろ~~。


「う~~~~……」


 ……………………。


「……うにゃーーーー!」


 くぐもった奇声が室内に響く。


 幸いなのは、頭まですっぽりともこもこにふくらんだ布団の中なので、隣まで聞こえるようなことはないはず――ということだろうか。


 うん。

 きっとそうに違いないから、問題ない。ないったらないのだ。


 ふぅ~~~~……。


 包まれたお布団の暖かさの中、私はため息をつく。


 転げまわったせいで髪の毛はぼっさぼさ、顔は……ぽかぽかどころか、カッカするほど血が集まっているのが分かるくらいなののだ。そりゃあもう面白いほどまっかっかに違いない。

 まっかっかでわっはっは…………はぁ。全然つまらないうえに笑えない。わたしゃどこのオヤジかっての。


 もしも誰かに見られたら、確実に「こいつ頭大丈夫か?」と言われてしまいそう。


 ……なんだけど。


 な ん だ け ど!


 そんなことはわかってるんだ!


 だけど、しょーがないじゃない!


 ねぇ!?



 ――――――。

「おはよう、アヤ」


 抱き枕みたいに抱きしめていたのがリュウさんの腕だと分かった時、頭の中が真っ白になったよ!

 しかも、思いっきり頬を擦り付けてたのばっちり見られちゃったよ!

 ああ、ああ! もしかしたら「んふ~~」とかニヨってたかもだよ!


 ――――――。

「手を、放してくれないか?」

「――っ! ご、ごめんなさい!」


 なのに、さらにさらに!

 言われるまでそのまんまだったと気づいた時のあの恥ずかしさったら!


 恥ずかしいっていうのを「穴があったら入りたい」て例えるけれど、まさか自分が布団に潜り込んで実践するとは思わなかったよ!


 あの時の事思い出すだけで顔から火が出そうになるのに!

 しかも! 今日! なんて!


 ――――。

「アヤ、アヤの名はどう書くんだ?」

「どう――あ、日本語で、漢字でってことですか?」

「ああ、そうだ」


色彩(しきさい)(さい)、いろどり――と書いて『あや()』です」


「なるほど」

「彩り豊かな人生を、とつけてくれたそうです」

「そうか」

「まぁ、実際、想像以上に変わった人生になっちゃいました。これは――彩り豊かといっていいのかな」

「……そうかもしれないな」

「…………」

「――日本語というのはいいものだな」

「?」

「華やかさがあり、それでいてやわらかく、優しさも感じる」

「え? と……」

「ふむ――」

「リュウ、さん?」


「とてもアヤに似合っている。いい名だ。………… (あや)


 とか!

 とかぁ!


 確かに日本知ってるって聞いたけどさ!

 漢字まで詳しいってどんだけなのよ!

 なにそのカタカナとひらがなのニュアンスまで言い分ける呼び方は!


 久しぶりにちゃんと名前を、「私」を呼んでもらえたような気がして――


 涙出そうになっちゃったんですけど!

 泣きそうになっちゃったんですけど!


 しかも本人はなんにも意識してないっぽいし!

 まさかの無自覚天然ジゴロさんですか!?


 うぅ~~~~……!


 いやいや、そりゃさ? そりゃあさ?

 私だって吊り橋効果なんて言葉も知ってるよ?意味だってちゃんと分かってるよ?

 でもって、自分の状況がまさにそう言ってもいいくらいだと思ってるよ!?


 けどさ!?

 でもさ!?


 うぅうぅうぅ~~~~……うにゃあ~~~~!!!!



 ――――――。

 ――――。

 ――。



 ~~ 以上、(あや)の、多分、それほど遠くないある日のお布団の中より ~~


 次回より第3章に入ります。

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