青春のはじまり
よろしくお願いします。
あの日、俺は「人生の先輩」に出会った。一瞬でそう呼べるほど、衝撃的な出会いだった。
それは俺の今までの概念をぶち壊すような、そんな出会いだった。
俺が高校生になって1週間、この種子咲工業高等学校に入学した俺は、バレーの強豪校であるここに入部して、全国大会に行きたいと思っていた。
しかし、そんなに練習は甘いものではなかったのだ。
暴力を振るうコーチ、陰口を叩き合う部員たち、など、バレーボールを練習する場所としては最悪だった。
そんな理由で、結局バレーボールの世界に入り込むことはできず、このまま帰宅部になろうとしていたとき。
「君、良い体格してるね!!ちょっとこっち来てよ!!!」
ふいに、青い靴を履いて、同じ制服を着た高校生に話しかけられた。
この高校では、学年によって靴の色が異なっている。
1年生は赤色、2年生は青色、3年生は緑色となっている。つまりこの人は2年生、先輩だ。
「あぁ、はい、分かりました」
特に放課後の用事もなかったし、ここで先輩の心象を悪くしては困ると、部の勧誘に付き合った。
「俺はシュンヤだ、よろしくな!!さぁ、こっちへ」
「あぁどうも、ダイスケです」
体格を先に見てきたと言うことは、また運動部だろうな。今回はどんな悪劣な環境が待っているのやら...
そんなことを考えながら歩いていると、先輩の口から届いた質問は意外なものだった。
「ダイスケくん、だっけ?君、音楽に興味ある?」
「え?」
なぜ今音楽についての話をするのか、意味がよくわからなかった。体格がいい人のやる音楽関係のことなんてあったか?まさかダンス部...でもウチにはそんな部活なかったはず...
思いを逡巡させていると、気付けばそこは最上階、音楽室の目の前だった。
「さあ、入って入って!」
「えっ、ちょっと」
半分強制的に中に入った俺が目にしたのは、意外な光景だった。
そこでは、黄金に輝く様々な楽器を抱えた部員たちが、赤い靴を履いた高校生を勧誘しようと必死になっていた。
「これって、もしかして...」
「フフッ、気付いたかい?」
そこにあったのは、種子咲中学校にはなかったあの部活。
「ようこそ、吹奏楽部へ!!歓迎するよ!」
吹奏楽部であった。
ありがとうございました。
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