モズと発達障害
ぶっちゃけ言うとモズなんて本の中でしか知らないのでいずれ本物を見たい。
モズ、という鳥がいる。スズメよりちょっと大きいくらいの鳥で、虫やトカゲ、魚、モグラなどの小動物を狩る。見た目は小さくて可愛らしい感じなのに、自分よりも大きな生き物も捕食してしまう、れっきとした肉食だ。
このモズには独特の、「はやにえ」という習性がある。
目的ははっきりわかっていないが、彼らは獲った獲物を木の枝などに突き刺しておく習性があるのだ。食料の保存のためではないか、という説もある。
面白いことに、モズはしばしば、自分がはやにえにした獲物を食べられない。彼らは自分が獲物を突き刺しておいた場所がわからなくなってしまうのだ。そのためモズは、忘れん坊の鳥としても知られている。
しかし実は、モズが自分のはやにえの場所がわからなくなるのは忘れん坊だからではない。モズの記憶力は非常に優れていて、忘れるだなんてことは彼らにとってあり得ない。
それではなぜ、はやにえの場所がわからなくなるのか? それは、「記憶力が良すぎるから」だ。
モズははやにえ周辺の景色を、細部まで完璧に記憶する。落ち葉の位置、木の枝の本数に至るまで完璧に。
しかし景色は変化するものだ。風が吹けば落ち葉は移動するし、獣が通りかかれば木の枝の1、2本が折れることも珍しくない。
そのようにして景色が少しでも変わってしまうと、かつての景色を完璧に記憶していたモズは、「そこがそこであること」を認識できなくなる。かくしてモズは、せっかく自分が捕らえた獲物を食べることができなくなる。
この性質、何かに似ていると思わないだろうか?
飛びぬけた能力、それに比してあまりにもひどい応用の効かなさ。
そう、発達障害だ。
モズは皆、生まれついて発達障害なのである。
そう考えると、妙に親近感が湧いてしまうのは私だけだろうか。