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31話 幕間2 &登場人物紹介

「まだかなぁ〜」


 彼女は呼ばれるのを待っていた。砂漠の真っ只中で。


 生まれてからまだ10数日しか経っていないが、母親とも呼べる存在に世界の成り立ちから辿った歴史、文化や産業に至るまでありとあらゆる事を教え込ま(インプット)された。


 その中には『コレは私からの許可があるか、ご主人様から聞かれるまで秘密だよ』という重要機密までも混じっている。

 それはいいのだそれは。


 最重要事項は自分にはご主人様がいることだ。


 ご主人様に関してのデータだけは彼女の中に全く無い。母親も教えてはくれなかった。

 かろうじて、名前と(たぶん『ご主人様』で通すので呼ばない)女性であること。お供にお爺さん(・・・・)が付いていることだけしか聞かされてない。


 自身が完成して『ご主人様』のことを聞いてから喜び勇んで母親の元を飛び出してきたのである。


「……ご主人様ぁ……」


 切なげな声がついポロッと零れる。


 現状彼女はご主人様の元へ飛び込んで行く訳にはいかない理由があるのだ。

 それは“呼ばれない限りご主人様に近付いてはいけない”という母親からの命令のせいである。なので人間の街を遠くから超常の感覚を持つと思われるご主人様に気付かれないよう、隠れて観察するしかないのである。


 彼女を呼ぶためのアイテムを持つご主人様は、人間の街に辿り着いてから何度か砂漠へ出てきたので容姿についてはばっちりである。


 ぐれいと、素敵、素晴らしい! 


 と褒めちぎれるほど彼女はご主人様を目にするたびに感動でうち震えるほどだ。

 加えて自動機械をあっさりと葬るあの強さ! ついあのご主人様に自分って必要なのだろうかと考えてしまうくらいの強者。


 いや、強さで適わないならこの可愛さで勝負だ! ご主人様! と思いつつ自分の体をじっと見つめる。


 母親には『大丈夫! あなたの可愛さならご主人様もきっと満足してくださるわ。もっと自信をもって飛び込んでらっしゃい突撃あるのみよその質量の破壊力をみよ!』なんか母親の言い方も途中から主旨が違うような気もしたが、改めて見下ろす。


 見た目全長50メートルの陸の城、白亜の輝きは砂漠の中でも目立つこと間違いなしである。

 普段は超時空迷彩(母親命名)によって周囲にカモフラージュを形成し、砂漠の光景に溶け込んでいるので目立たない。でもご主人様はこっちの方を見て首を傾げていた。


「くっ、侮れない。さすがご主人様」


 横から見れば二等辺三角形。

 艦首側は緩いカーブを描いたなだらかな坂状。ストンと崖になっているのは艦尾の方。艦尾に詰まっているのは砲塔とかミサイルコンテナだからまず可愛くない却下。


 三角形の頂点には、砂漠の中でもお肌の大敵である直射日光の紫外線を強化遮光ガラスで完全にカットされた艦橋。精々3人が座れてなんとかの狭さだけど。


「いざとなったらご主人様以外をシャットアウトすれば広くなるよね」


 甲板は坂道の途中に段々と3段に分けて存在している。

 1番下は内部ハンガーからの射出機能を備えた騎兵用。


「ご主人様は騎兵持ってないようだったけど、ここって必要かな? トラック入れても問題ないし。ま、いっか」


 2段目の甲板は見た目だけ。

 主砲とか副砲とかが普段は折り畳まれているところである。


「主砲の試し撃ちは設置する前に済ませたって母さまが言ってたし。どうせご主人様の許可がないと撃てないしね」


 3段目は艦橋の下。各個室に繋がる場所である。

 ちょっと広めのベランダと言ってしまうと建て売り住宅のように見えてくるから不思議だ。


「部屋は寝ることだけ出来ればいいって母さま言ってたけどホントかな? ご主人様の部屋だけでも広くしてくれれば、私が褒められたかもしれないのになぁ」


 ここまでで分かる通り彼女のボディは砂上戦艦である。

 ファングから離れてT・S(テッサ)に拾われ、主機や武装などに大改造を施されて生まれ変わったのだ。

 自動機械の支配から逃れるため、外部に独立型の有機電脳(バイオロイド)を主AIとして備えた形へと。

 それが彼女である。


 見た目は首輪を付けた茶色い柴犬。

 全高1メートルくらいのちんまりした感じ。首輪には名札がぶら下がっているも、そこは空白。

 彼女は自分のボディとなる白亜の戦艦の上でくるりと丸まった尻尾をぶんぶんと振りつつ待ち続ける。


 ヤルインの外でじっとご主人様の様子を窺い、バナハースへの旅路へも距離を取って同行していた。

 おはようからお休みまでご主人様の動向を逐一見守る一種のストーカーと化していたのだが、誰もそれを指摘する者はいなかった。



(ここまでの登場人物紹介)


●ケーナ T・S(テッサ)の事情がよく分からないので、次会った時は捕獲しようと画策中。あと人魚チェス駒にも頭を悩ませている。


●オペケッテン・シュルトハイマー・クロステットボンバー ケーナの僕の一人。元々は(カラス)の姿をしていた。愉快犯なところは変わらず健在である。T・S(テッサ)の事情についてはこいつもよく分かっていない同類。目下の頭痛の種は判明している人魚チェス駒のことである。


●キー ケーナの内在面に居候する蛇型のしもべ。ケーナに作り出された眷属。普段は防御を担当。


●ファング ケーナたちの事情はどうでもいいが、拿捕した騎兵の整備で金が飛んで行くのが悩みの種。あと戦艦を探しに行きたいが、砂漠がデンジャラスすぎているのでままならない人生に途方にくれている。


T・S(テッサ) ケーナの魂源(ルーツ)の僕の一人。オプスやキーと違い、別の者によって生み出された使い魔のようなもの。かなり古くからこの世界で暗躍している。テスタメント機関という秘密結社を作り、人々の生活に僅かながら手助けをしている。諸々の理由からケーナの元に行けないのを悔しく思っているもよう。


■ベルナー・ロシード ロシードキャラバンを率いる商人。愛妻家。祖父の代から続く中堅所の商会。妻のミサリは都市ヤルインで素泊まりの宿屋と喫茶店マルマールを経営している。


■トカレ・ロシード ロシードキャラバンでメカニックを担当。妻のパナライラと息子のラグマと共にキャラバンに同行している。


■ダン ロシードキャラバン専属傭兵団を率いるおっさん。所有するコンテナキャリーは2台と、こじんまりとした集まりである。成り行きで手に入れたエルダードラゴンを仕留めた(と言われている)功績を早いところ払拭させたいと考えている。


■アテネス 都市ヤルイン行政府直下の研究所で砂漠の研究をやっている女性。オプスの前世が所属していた傭兵団の団長ハイマーの孫


■キング・オディ 戦車乗りのハンター。個人的な罪人奴隷の部下として、兄フォル・弟エーデを連れている。乗っている戦車はこの世界ではかなり大型のもの。


■青猫団 オプスの非常識さを見て恐怖におののいたが、ケーナの方がもっと恐ろしいと知って機嫌を損ねないか心配な人たち。


■スバル 青猫団スバル小隊隊長。ケーナのことについては恐ろしさと頼もしさが半分ずつくらい。自分たちにその矛先が向くことはないと確信している。ケーナがお姉ちゃんと呼びたい人物第1位。


■シグ スバル小隊所属。軽めのお兄さんのような人物。F型騎兵のりで射撃の腕はピカイチ。


■ガーディ スバル小隊所属。口が悪い荒事担当? ケーナにセクハラ発言をしてオプスに睨まれている。


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