《世界の理》
この世界には、面白い理があった。
世界は14の大きな国と小さな島国に分けられていたりする。現在最も力を有するのは、ガリオスとクラレス、レンドリアという3国でありその周囲を取り囲む小国が同盟を組んでいる。
国の成り立ちは様々で、ガリオスは典型的な神話型だ。
そしてガリオス以外に神話のような国の成り立ちをしている国が6つある。
その6つの国にはとある共通の技術が受け継がれている。
それは『魔法』だと私は判断したが、彼らにとっては『祈り』に近いと教えられたのは、この世界に来てすぐの事だった。
自らが生まれた国に関わる神の名と共に自らの真名を告げて、自らが願うまた望む事を告げるとそれは自らの魂の質によって実現が出来る。
『魂の質』とは、生まれ持った才能のようなもので、その質は成長するにつれて開花する人間とそのまま維持できる人間、そして減退する人間の3種類に分けられるのだそうだ。
自らの魂の質を知る簡単な方法がある、それは髪色だ。
特に色の濃いもの、ガリオスでは紫色があざやかな人間だが彼らは、特に魂の質が良く、生まれた瞬間にその色を持つ子供は神殿に仕えることが定められていた。
神に仕える事でよりその力を開花させようというのだ。
だがこの『魔法』には、様々な制約がある。
まず自らの知らないものは作り出せない。現実にありえないもの例えば『不老不死の薬』『絶対に壊れない盾』など具体例がないものは精製できないというのだ。
またその性状や機能を正確に知らなければいけない、ただ『水』をイメージするとそれが様々なものに変換されてしまう。
一番確実なのは目の前に欲しいもの求めるものを置き、これと同じものが欲しいと祈る事だろう。
確実であるためにこれを行う事が多い、ただ生物にこれを使うことが出来ない。
『目の前の豚と同じ豚』とクローンを作る事はできないのだ、生態系を壊さないためなのかとてもよく(・・)出来て(・・・)いる(・・)。
次に無から有を作り出すには才能が必要になる。
例えば『パン』を魔法だけで作り出そうとする。
何もない空間からパンを出現させる、精製ができるのはこの世界に生きる魔法使いのうち100人程度である。
だが小麦と塩を用意してパン精製を魔法で行えるのはこの世界で100000人ほどの人間が出来るらしい。
そして小麦と水と塩を用意すればこの倍の人間が一般的なパンが作り出せるのだそうだ。
小麦と水と塩を用意してもパンを精製できない人間が山ほどいる。
だがこれには語弊がある、正確には空間と言ってもそこに本当に何もない分けではないのだ。空間に存在する物質の分子を利用する例えば空気なら『酸素≒O2』『二酸化炭素≒CO2』『窒素≒N2』『水素≒H2』だろう。
要約すると錬金術のようなもの。
〔はい、ここで某アニメを思い出した人、仲間です。〕
錬金術と同じでそうでないのは、計算や化学の必要性がない事だろう。必要なのはその資質だけ、欲しいものをどれだけ正確にとらえる事が出来るかがカギになる。
はい、ここで問題。
多分異世界から来た人間は、魔法が使えるのか?
答え:無理。
えぇ、何度も挑戦しましたよ、品を変え、手を変えてそれこそいろんな神の名を告げて自分の名「國守 瑠佳」を大声告げて作り出そうとして、結果は、全く何も起こらなかった。
どうせ異世界なら『魔法』使って好き勝手やりたかった私のささやかな夢が無残にも砕け散ったのは魔法を勉強して半年が過ぎた頃であった。
そして私はとある問題を抱える事になった。
ただ魔法が使えないというのは、そこまで大事にならない。国の9割9分の人間がほとんど使えないものが使えなかったからと言って生きていけないなんて事はないのだから。
ただ一度私がヘマをして指を怪我したことがあった、それを見た巫女の一人が私に治癒の魔法をかけようとしてくれたのだ。そこで事件は起きたのだ、治癒魔法はものの見事に発動せず、私は指にものすごい激痛を感じて泣き叫んだ。すごい勢いで私に謝り倒す少女がこの国で5本の指に入る術者であり間違いなく術をかけた事が分かった後、指の傷はそのままだったことで私はとある可能性に行きついた。そしてそれを確認した。
『異世界人には魔法は、掛けられないし掛からない。』
魔法で攻撃されても無効ということは、すごく嬉しいが魔法が掛からない事がものすごく問題だった。
この世界には、医療が発展していない。
医療技術がなまじ魔法で補われているからだ。先ほど生き物を新たに作り出すことはできないと言ったが自らの体が健康ならばその状態に相手を近付けるなんて便利なことが出来たりする。
この理屈で行くと無敵の医療と考えられる。
だがここで医療を齧った事がある・・・いや常識ある人間なら気づくだろう、人間の持つ遺伝子情報が個体ごとに違うという当たり前の事実に。
この不思議な魔法は、その法則に翻弄されてしまうらしい。例えば食中毒など内面的な病態には全く適用出来ていないのだ。
だが面白いのは外傷にはこれが無敵であるうえにこの技術がものすごく簡単である事。だが内面的な病気については恐ろしいほどに何も効果がないのだ。
医療発展は、魔法が使えるせいかそれを頼りに殆ど発展させていない。薬の知識も家庭の医学並みだ。
そんな世界で生きていけるか?無理だ。
病気に罹ったら最後で怪我も出来ないそんな恐ろしい世界に私は来てしまったのだ。
だからまず私は医療の発展を考えていた、だってこの世界に来るまでは薬学生だったのだから・・・
どうせ女神なら異世界でヒポクラテスになってやろうなんて馬鹿な考えを思いついて行動し始めてから約1年が過ぎた・・・・。
結果は、惨敗だ。
でも知識は忘れないように書き留めてある。でもそれが活用できるかはわからない、うろ覚えの記憶を何とか掘り起こすそんな時間ももう飽きた。
これが夢なら覚めてほしい。現実なら次の転生先はどうか普通の世界をお願いしたい。
普通ってなにか?もちろん魔法も妖怪も怪獣もいない、化学の発展した医療も出来ればもっと進んだ場所がいいなぁ、でもクローンは発展してなくていいよ!機械との戦いも嫌だからね。ターミ○ーターに勝つ自身はないから、どうか死ぬ時は元の世界に帰る夢をみせてほしい。
戻りたい、戻って平凡で退屈な日常に小さな幸せをみつけながら将来に向かい勉強をして国試を受けて、薬剤師になる。
そんな夢のような世界へ。