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《女神の告白》

「神官に紛れて生きてるわよ、その皇子さま」


「は?」


「だから、解毒して生きてるのよ、炭水(すみみず)飲ませて吐かせて」


半年前に毒殺されそうになっていた男を助けたのは偶然であり、瀉血なんて意味のない治療を施そうとする神官たちに激を飛ばしたことはごく一部の人間しか知らない事実だ。


「皇子が・・・生きている?」


「後で神殿に行ってみなさい。」


「だがあの死体は何だったんだ?」


そう詰め寄ったのは、さっきまでショックで固まっていたラビスという男で皇子の死を確認した一人だと分かった。


「あの子は、・・・・」


皇子の死体を偽造できたのは、私付きだった伝令役の巫女の一人が数日前に王族に殺されて見つかったからだ。

彼女はとても美しい子で私の事も大切にしてくれた子だった。

だがその美しさが仇となり、王族の目に留まったのだろう。ある日凌辱を受けたと分かる姿で彼女は冷たい人形と化していたのだ。問い詰める事も出来たけどそれをせずにいたのは、その死体さえ奪われかねないと思ったからだ。

彼らは自らの罪を認めなかったが私は知っていた、2番目の皇子の腕に引っ掻き傷がある事を。

そしていつも意味もなく私の部屋を訪れては彼女を見ていた事も全て知っていたのだ。


「・・・私のために死なせてしまった可哀相な子よ、だけどタイミングがよくその7番目の皇子が神殿に連れてこられて呪いだ、死術だ、なんだと無意味に騒ぐから神官長が私に連絡を取ってきて症状を聞いたら明らかに中毒じゃない。基本的な処置を教えたら何とか持ち直したようだから」


あまりに冷静にいろいろな事を語る彼女につい周囲が聞き入ってしまう。

死体に近づこうとした人間を神官たちは慌てて止め、この病は人に移るからどうかこのままと神殿の外で皇子の最後を見届けて王に報告したのは騎士達。

自分の子供が死んだというのに王はなにもまるで関心がないように振る舞われていたように思えたのを今でも覚えてる。


「そんな話、誰が信じるか!!」


そう広間に居た人間が叫んだ。


「うるさい、その他C。脇役が吠えるなよ、自分の目で確かめなさい。それよりもこの革命を起こした責任者はあなたでいいのね?」


「あぁ」


明るい所で見た男は、とても綺麗な顔をしていた。顔つきは北欧系で色白その髪は鼈甲に似た艶やかな茶色、瞳はエメラルドグリーンだった。

この国の人間は琥珀色の瞳と緑色の瞳のどちらかしか生まれないらしい、髪色は様々で一番多いのは金色次に茶色、一番驚いたのは鮮やかな紫色を持つ人がいるのだ。


黒髪は生まれない、たまにその紫色があまりに濃い子供が生まれるとその子供は神殿に巫女としてささげられる。彼らには特殊な能力があるらしい。


「なら、これからについてどこまで考えているのか教えてくれない?」


「は?」


「だから・・・・もう面倒ね!」


この場所に私のイラつきの理由をしる人はいない、落ち着かないといけないのにそれができないのはなぜだろう。


「・・・皇子が生きているならあの方に王位を」


「7番目の皇子がそこまで優秀だとは思えないけど」


「無礼な」


「もういいわ、・・・・っちょ」


一度部屋に戻り、今まで用意してきた全てのモノをここに提示しなければならない。鎖を持ち上げて歩きだそうとした私にラビスが静かにその腰の剣を衝き付けた。


「逃げられると思うのか、」


「この鎖で逃げられる人間がいると思うの?」


「人間じゃない」


「・・・・そうね、」


イラつきもピークだ。

なら言ってやる、誰のおかげでここまで革命が成功したのか。


「資金も武器も食料もそしてこのチャンスも全て用意したのはワタシ(・・・)。王へ進言し、地方に追いやられた有力貴族たちに協力を頼んだのも、兵力を隠すために新たに神殿を建てさせたり、今夜の全くおかしな警備体制を展開させ王族を集めさせたのも、全部、全て(わたし)がしたことよ!!」


その場が静寂に包まれ、私の声は王広間に響き渡った。


「・・・・・・」


「国を滅ぼすなんて簡単よね」


「なっ!」


「革命を起こせてよかったわね」


驚きに皆固まって、私を見つめていた。流石に大声で叫んだせいか少し冷静な自分が戻ってきた。


「俺たちはお前に、・・・・いや嘘だ!」


ラビスの剣が振るえているのが見えた、自らが私のてのひらで踊っていたなんて思いもしかったらしい。


「嘘・・・ね、とにかく今は、きゃっ!!」


重い鎖に繋がれた足はあまり上手く動かないのだ。思いっきりよく転んだ私に未だ突きつけられたままだった刃が軽く触れ、わずかに首に痛みが走った。


「危ない!」


そう叫んだのは誰だろう。

それは、あまりに力強くしっかりとした腕、さっきまで自分がその腕に抱えられていたことを実感させられて顔に血が上った。


「!!」


「危ないだろう」


「放して・・」


「そんな足じゃ立っているのも辛いだろう、お前が女神なら自分の足枷ぐらい外せ」


「え?」


騎士は抱えていた私を離して膝まずくと重く冷たい足枷に触れた。


「リュリカデインの御名においてシオン・グラヌディス・リュシスがここに祈り願う。」


周囲が淡い光に包まれたが一瞬でそれはかき消された。


「ちょ待って!!」


「あれ」


「魔法はつかえないのよ、・・・・・」


正確には掛からないのだが、私の意識はここで途切れた。魔法との反動によって・・・・。




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