000 プロローグ
「……っはー…」
いくつもの歯車やパイプが複雑に絡み合い、煙を吐き出している大きな物体。その上に両手を置いた男が嘆息し、瞑目する。
手を置いている場所にはレバー、スイッチ、淡く碧色に光った半球体などがこれまた複雑怪奇に配置されている。
おそらく何かの装置とその操作盤であろう。更に上部には真空管のようなものがいくつも並んでおり、その色は赤青緑黄白黒の6色。
息を吐き出す前、男の目線は、ずっとそこに向かっていた。
年の頃は40程度か、目つきは鋭く、精悍と言っていい顔立ちの男性。伸び放題の髪とひげを整え着ている薄汚れた白衣を脱ぎ、その下の引き締まった体躯を晒したら、さぞご婦人方の目線を集めるだろう。
「これでダメだったら暫く引き篭もろう……」
情けなさ過ぎる台詞を吐きながら、再び目を開く残念な中年。
飛び込んでくる多彩な真空管モドキ。よく見るとそれぞれ目盛りが刻まれており、中には着色された気体が漂っている。
「属性バランスは完璧だ、前回はそこ以外ミスは見当たらなかったんだから、今回はちゃんと同期できるはず…魔石の出力設定も問題ない。」
真空管モドキと操作盤の間にあるメーターを一つ一つチェックして、もう一度嘆息。
「よし…よし……大丈夫、俺なら出来る。」
頷きながら自分を励ましつつ褒める中年。
「なんかさっきから誰かに馬鹿にされてる気がするんだが…まぁそんなことより、最終工程を始めよう。」
操作盤の中央に配置された大きなレバー、それを一気に引き倒す。
淡く光っていた6本が激しい光を放ち始め、中の気体も激しく渦巻き始める。数秒後、それらの光は最初から存在しなかったかのように消失する。
だが部屋から光が無くなったわけではない。
装置の裏側に繋がれた6本のチューブ。透明なそれを伝って6色の光は1つの場所へ。
そこには大きな台に横たわる人体。それは成長しきっている、とはお世辞にも言えない小さな体躯。その口元へと流れていく光。合流し、最後に一際激しく輝き、体の中へ入っていく。
「……どうだ?!」
最終工程とやらの結果を期待しつつも、びくびくとした足取りで確認に向かう男。
彼が台の傍らまでゆっくりと進み、顔を覗き込むと同時に。
ゆっくりと、眠りから覚めるように、その瞳は開かれた。
こちら処女作且つ初投稿となります。勢いで書いている部分が多々あります。
出来るだけ続けていきたいなとは思いますが、基本的に不定期更新となります。