凍える世界とつながる鎖
世界は残酷だ。
本来ならばこれは別の誰かの役割であったはずだ。
このような形で世界に対峙する必要など無かったはずなのに、それがいつの間にかこうやって鎖によって世界の有り様を見せつけられている。
この世に吹き荒ぶ凍えた空気は、街々をまるで色調の壊れたブラウン管テレビの映像のように、現実感の無いものにさせている。
俺はつながれた鎖に引きずられて街道を進む。
その責め苦は街を一周するまで終わらない。
俺も仕方なくわずかに早足で付き従う。
鎖の先ではなにが楽しいのか、軽快な足音が街の空気を切り裂いてゆく。
なぜこんな事になったのだろう。
思考までもが凍り付きそうな世界の中で、ただただ考えに没する。
初めはいつも通りだったはずだ。
俺はただ、世界の平穏を守るため、取り残されたこの世界で一人砦に籠もり続けるはずだったのだ。
そうやって思考の海に漂っていると、いきなり強く鎖が引かれた。
鎖を途切れさせるわけに行かない俺は抵抗を続けるが、仕舞いには鎖の先で獰猛な声を上げ始めた。
仕方なく俺は声をかける。
「そっちは散歩コースじゃないだろ、ジロー!寒いんだから早く帰ろうぜ。
おかんのいうことは聞くのになんで俺だとことごとくコースを無視するんだよ!」
世界は残酷だ。
どうやら俺のヒエラルキーは犬以下であることが再認識されただけだった。
寒い日は引きこもるに限る。
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