出会い
「ここはどこだ?」
優希は目を覚ますと見知らぬ部屋のベッドの上にいた。
木造の家であり広くはないが物があまり無いため狭いとも感じなかった。階段があるのを見ると二階にある部屋だろう。二階であることを考えると広い方だろう。
階段を降りるとリビングのような広い部屋があった。
部屋の中央にはテーブルがあり、そこにはシチューのようなものが置かれ、湯気を立ち上らせていた。
いい匂いが優希のもとまで届き食欲をそそる。
ギュルルル。と腹の虫がなり、空腹を覚える。
しばらくたって部屋に家の住人が入ってきた。
女の子だ。長い茶色い髪を一つに束ねポニーテールにしている。瞳は黒いが日本人とは明らかに違う顔立ちだ。
「あっ起きたみたいだね。二日間寝っぱなしだったから心配したよ」
少女に話しかけられる。
俺は二日間も寝ていたのか。そりゃ腹がへっているはずだ。
「とりあえず安心したよ。お腹空いてるでしょ?そこのシチュー食べていいよ」
こんな可愛い女の子の手料理が食えるなんて俺も捨てたもんじゃない。
すぐにでも食いたいがまずはお礼を言わなくては。
「助けてくれてありがとうございました。俺の名前は氷室優希。年は15才。はるばる日本からやってきました。恋人はいません!!」
女の子と話すのが久しぶりな俺は意味の分からない支離滅裂な自己紹介をした。
「ヒムロユウキ?ニホン?」
少女が聞き返すと。「ああ、名前が優希で家の名前が氷室っていうんだ。ユウキ・ヒムロといえばわかるかな?」
「なるほど。ユウキっていうのね。でもニホンっていうのは初めて聞いたわね。どこか遠い国なのかな?」
なんですと!!日本を知らないとは!
メイドインジャパンの素晴らしさを今すぐに伝えたい。
きっと日本を知らないとはよっぽど貧しい国に生まれてきたんだろうな。
と切ない目を少女にむける。
その前に日本を知らない子に何故日本語が通じてるのかという当たり前の疑問を優希は持たなかった。優希は案外そうゆうところで抜けていた。
「ユウキ?」なかなか質問に返答せず、何故だか哀れみの目を向けてくる優希に少女は不思議そうな顔をしたがすぐ取り直した。
「まあいいわ。私の名前はルーリィ。この家でおじいちゃんと二人で暮らしてる。年はあなたと同じ15才。色々聞きたいこともあるけどそろそろおじいちゃんも帰ってくるし、詳しい話は三人で話すことにしましょうか。冷めないうちに食べなよ。おかわりもあるからね」
優希は待ってましたと言わんばかりにシチューに食らいついた。元々腹が減っていたこともあるがシチューの味も良いこともあり、気付いたら三人分の量を平らげていた。
「すごい食欲だねえ。私とおじいちゃんの分が無くなっちゃったよ」
ルーリィは驚きながらいった。
「ごめんなさい!!あんまりにうまかったもんだからつい…」
「大丈夫大丈夫。また作るから気にしないでいいよ」
そう優希に笑いかけながらルーリィは台所に向かう。
その時玄関から人が入ってきた音が聞こえる。
白髪の老人が部屋に入ってきた。
入ってきた老人は小柄で温厚そうながらもどこか目には威厳を漂わせる不思議な雰囲気をもつ老人だった。
「おお、客人。目を覚ましたようだな。私はローリィという。そこの娘、ルーリィの祖父だ」
「ユウキ・ヒムロと申します。二日間も寝続けていたようで。お世話になりました」
「いやいや無事で何よりだ。年寄りにとっては若い命が自分より先に失われることが一番つらいことだからな」
ローリィという老人は優しくそういい、ルーリィに声をかけた。
「ルーリィ。夕食はまだかな?」
「もう少し待っててね、おじいちゃん。そろそろ出来るから」
ローリィはルーリィの返事に意外そうな顔をした。
「まだ出来てなかったか?珍しいな」
ルーリィはいつもローリィが帰ってくるまでには必ず食事の準備を済ましていたのだ。
「すみません…僕が皆の分も食べてしまって…」
と優希は恐る恐る言った。
まずいよなぁ、よくわかんないけどこの家の人はどっかで倒れてる俺を助けてくれたんだろう。助けてもらった上に飯まで遠慮なく食いまくって…
それを聞いたローリィはしばらく間をあけて豪快に笑って言った。
「はっはっはっ。若いうちはそれくらいの食欲はないとな。足りんかったらまだ食べていいぞ?」
そんなローリィを見て優希は感動した。
なんていい人達なんだ。
俺はこの人達に拾われて良かった…。
……
いや、本当に拾われたのか?俺はなんでこんなとこにいるんだ?もしかして意識なく人の家にあがりこんでベッドで寝ちゃってたのかな。
よっぱらいかっ!!
って突っ込んでる場合じゃないか。
二人に聞いてみよう。飯食ってからな。
優希は夕食を結局またおかわりした。