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05 彼女が彼を嫌いな理由(2)

  ◆



 ──私は彼が嫌いだ。


 このどうしようもないほど平坦な高校生活の中で、なぜだが彼だけが妙に癇に障るのだ。もやもやと嫌な感情に襲われる。理由なんて山ほどある。これからそれを述べてやろうと思う。

 だというのに、その彼──理由悠ときたら、私のそんな二季節分溜まりに溜まった感情の発露をぶつけられたことに、これから罵倒の限りを尽くされることに、気付いているのかいないのか、

 「うん?」

 と、まさしくきょとん、といった風に首を傾げる始末。

 まったく、どうしてこんな人間が新生徒会長に選ばれたのかが解らない。実際のところ選挙はひと波乱あって、ほぼ信任投票みたいなものになってしまったから、ただ単なる多数決の結果といわれてしまえば反論は出来ないのだけれど。

 ちなみに、当然、私のそれは無効票。白紙で出したのだ。

 そんなことを思い出しながら、そんな反応の所為でさらに募ってしまった苛立ちを、言葉に変えて一気に吐き出す。


 「大きな仕事を適当に割り振って、自分は特に手伝うでもなくずっとPCで地味な仕事してますし。なんかいつもへにゃへにゃしてますし、ぶっきらぼうで適当で面倒くさがり屋でひねくれててぶっきらぼうですし……」


 延々と欠点だけをずらずらずらとあげつらってみた。よくもまあここまで出てくるものだと自分でも驚くのだが、口は止まらない。

 ざわり、と。にわかに喧噪が生まれる。

 それはそうだ、今ここには会長と私だけではない。二年の先輩方や、私と同学年の庶務達も当然ながら仕事をしてる訳で。

 普段なら、通常の私なら、そんな状況でこんな事は言わないだろう。

 けれどもう、限界だったのだ。

 いつもの私でいられなくなるほどに、私の会長に対する鬱憤は蓄積していた。

 ありとあらゆる行動が、癇に障るようになってしまって、ついに今日、暴発した。同級生に何か言われるだろうことも、先輩たちに何か思われるだろうことも解っていて、それでも理性で抑えきれなかった。

 押さえつけてきた感情はきっと、ただの火薬になっただけだったのだ。それに着火した。そうなればもうひたすらに延焼するだけ。

 だから、爆弾。

 爆発したのだ。文字通り。

 「ぶっきらぼう二回目だ」「二回言ったぞ」「大事だったのか」

 外野煩い。余計な事を言う同級生にガンを飛ばす。

 「「「ごめんさない」」」」

 よし。

 「兎に角、そんな理由です。そんな理由で私は、会長が、嫌いなんです」

 最後まで言い切って、私はふん、と息を吐く。

 絶妙にスッキリしてしまった。今となってはさっきまでの妙な気分はなんだったのか、解らない。

 さあ、どうだ会長。

 私は言い切った勢いそのままに、目の前の男を睨み付ける。


 「反論は、ありますか?」


 最後のダメ押し。

 これで。

 いくらなんでも、これだけ言われれば──。

 そう安易に期待して、しかして、それは、あまりにもあっさりと裏切られる。

 「うーん」

 と。

 これほど罵倒されたにも関わらず。

 私の嫌いなこの人は、唸って頬を掻いていた。まるで、全部当てられて困ったなあ、とでもいう風に。

 いつもの、苦笑いで。


 ──もやり、と。

 私の放った爆弾は結局のところこうして、いつもと同じ煙のような感情を胸の中に残しただけだった。

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