02 刹那の夏(3)
「し、しかし、やっぱりいいな扇風機。ちょっと無理して導入した甲斐があったよ」
僕は少しわざとらしいな、などと感じながら、どうにか話題の転換を試みる。
友香は少しジト目でこちらを見ながらも、はあ、とため息を一つついて、
「この部屋、風抜けませんから」
などと、話に乗っかってきてくれた。ふむ、なんだかんだ優しい。……のだろうか? 僕はまた何か上手いこと騙されていないだろうか?
「まあ、このレベルの空調ぐらいは流石に必要ですよね」
そんな僕の疑心暗鬼をよそに友香は扇風機を一瞥し、そんな言葉を続けた。
この部屋の唯一の窓は、風を取り入れる為に開放して、陽射しをカットするためにカーテンを引いている。結果、日差しはカット、風も六割カットという状況である。
「お、さっき渋々扇風機つけたやつと同じとは思えない発言だな? どうした、涼しさに負けたか?」
「う、確かにそれも少しありますけど」
やっぱり暑いの嫌ですし、と少しバツが悪そうに目をそらす友香。
「だろ? やっぱ涼しいの最高だよなー」ソファーに寄りかかって「さて、それじゃあ休憩をかねてひとねむ」
「ダメです」
ピピッ。無慈悲な電子音と共に扇風機、沈黙。
「だあ、まだ最後まで言ってねえ!」
一瞬で体温と湿気で最悪の環境となったソファーから飛び退く。夏場のコレは、扇風機なしでは熱のこもるだけの凶悪な合成繊維の塊である。
「そこまで聞けば何しようとしてるかぐらいは解ります。というか、扇風機つけたくなかったのは、先輩がさらに仕事しなくなるからですよ?」
リモコンを持ったまま手首を縦にぷらぷら。なんだろう、見下されているイメージが苦々しく広がる。
しかし、あれだ。友香の中の僕のイメージには若干のズレがあるな。
「いや、暑くてもそうでなくても結果的に仕事しないんだよ、僕」
印象の修正を試みる。
「だから?」
知ってますけど? みたいな表情で聞き返された。
「いや、だったらいっそ快適なほうが──」
「──先輩に苦痛を与えられるほうがいいですね」
「うちの後輩が鬼だ!」
僕の提案は一瞬で却下された。しかも最悪の方向で。
友香、恐ろしい娘……。
「さあ、仕事をサボってこの熱監獄に囚われ続けるか、仕事をしてそこそこ風の回る部屋で監禁されるか、二つに一つです」
「いや。結果、監禁は変わらんのかい」
確かに二つに一つだけどさあ……。
「どっちがいいですか?」
凄みのある笑顔。『結局私も暑いんだからさっさと諦めて仕事しろよそしたら扇風機ぐらいつけてやるよいくらでも』的気迫がビシビシ音を立てて飛んでくる。
「……仕事、します」
生徒会最高権力者が後輩女子に屈した瞬間であった。その時歴史が動……いや。
てかまあ、薄々お気づきかと思うのだが、だいたいいつもこんな感じなんだけどさ。
そんなこんなで第2章後半でした。
なんだか予定外に短くなってしまったなあ…。
しかし、生徒会。珍しく仕事してるはずなんですが…
どう見ても遊んでますよね、コレ。
ではでは、また。




