02 刹那の夏(2)
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さて、今の状況について説明、と言っても、季節についてはさっきも言ったが夏である。
しかし夏といっても八月も終盤、立秋なんかとっくの昔に通り過ぎ、もう少しだけ僕が挫けなければ、猛暑日が皆勤目指して毎日ラジオ体操にスタンプもらいに来てるんじゃねーか的記録的猛暑の、夏サバイバルを今年も生き残ることが出来るという、その間際。
そのタイミングで、昨夜歯を磨きながら見た、曇りのち雨時々雷という予報を盛大に裏切った今日の天気である。
今朝歯を磨きながら見た天気予報は、晴れのち晴れ、時々晴れ。最高予想気温は四十四度。
日本記録更新とかそれ以前に死人出るだろまずは対策流せよマスコミ、みたいな状況である。
「わかっていただけたでしょうか、僕の現じつとーひのりゆう」
ぶわわわわー、と僕の念願叶ってようやく自転して首を振って冷気を吐き出し始めた扇風機に向かって、震える声でそんなことを言ってみる。
われわれはーうちゅうじんだー、的オーソドックスな行動だが。今では現実逃避のための道具にすぎない。
「先輩……」ジト目「誰としゃべってるんですか……」
ふむ、誰とだろうか。なんて考えるまでもなく、独り言でしかないのだが。
「いや、ちょっと、宇宙の観測者と……」
とりあえず最もタイムリーだと思われる回答を返して見る。
「MIBな思考は捨ててください」
模範解答なツッコミだった。よく知ってるな、もしかして洋画好きなんだろうか。
いいじゃないかメンインブラック。あの映画面白いし。
「いや、しかしまだ暑いな」
ぱたぱたのワイシャツの襟元から空気を送り込みながら考える。
さすが室温40度オーバー。扇風機くらいでは簡単に涼しくはならないようだ。
さて、どうすべきか……。ふむ。
「……なあ友香」
「なんですか?」
言って、こくこくといい感じに結露して清涼感を演出しているペットボトルのお茶を飲みはじめた友香に向かって、ごく当たり前の次のような要望を出した。
「──服、脱いでいい?」
ぶふぉわ、と後輩がリアルにお茶を吹いた。
「にゃ」えっほえっほ「なにぶっ飛んだこと言ってるんです!?」
暑いときは脱ぐ。古来から続く知恵である。
「いや…脱げば全部解決するかなー、と」
「まずそのさらっと馬鹿なこと言いながら、ボタン一つずつ外していくの止めませんか!?」
「ほら、そっちも目の保養になるしだろうし──」
「いえ気持ちわるいんで迅速に止めてください。割と本気で」
「うん。なんかすっごく涼しくなったから止めるわ……」
……うわあ、すげえ。
人の眼ってあんなに冷たくなれるんだ……。知らなかったなあ。
「まったく。馬鹿なこと言ってないで仕事してくださいよ」
「お前がさっきの僕の行動に対して頬赤らめながら『や、やめてくださいよー』とか言ったらやる」
「あ、じゃあいいです」
「あれえ!? そんなに難易度高くないよねこの要求!?」
「最高難易度です。ていうかもう不可能ですよ」
「そこまで!?」
「私、そんなことやるくらいなら──」
なんだ? やるくらいなら死ぬとか言われるとかなりショック──
「先輩を殺します」
「想像以上に怖いっ!」
「殺されたくなければ仕事してください」
「はい」流石に殺されたくはな「……って、あれ?」
なんか僕、今ものすごく上手に仕事に誘導された気するんだけど。
「気のせいですよ」
「まだ疑問を口に出してすらいないんだが……?」
「顔に書いてあります」
「ねえよ!」
「さっき書いておきました」
「マジで!?」
「マジな訳ないじゃないですか」
「ですよねー」
「ふざけてないで早く仕事してください。死にますよ?」
「殺すんじゃなくて!?」
ついになんらかの要因で勝手に死ぬ運命にされてしまった。
しかし、このままじゃ仕事をさせられてしまう。それだけは断固阻止したい。というかこんなくそ暑い今日くらいは休ませて欲しい。
なんとか、なんとか話をそらす方向へ向けるか──
という訳で、ちょっと短め2章の前半でした。
ではでは、また。
次回更新で会えることを祈って!




