交渉
「はい、そうやけど、どうしたん?」
俺はまず将棋部の人数にびっくりした。なんと1人だったのだ。おかしくね?将棋部に一人ってだれと将棋するつもりでしょうかこの部長さんは。世界中探してもそうはいない。脳内CPUでも出現するのでしょうか?だとしたら驚きだ。是非とも俺にもやり方を教えてほしい。
「いや、将棋部を一人でやってる先輩がいると聞いて交渉に来たわ。少し話を聞いてもらえないかしら。」
「ええで、私の名前は2年の会津彩加や。交渉ってなんなん?」
この人、人が良すぎである。後輩が、しかも知りあって間もない俺達と交渉にとりあってくれたのだ。俺だったら殴り飛ばして宇宙のかなたに殴り飛ばしているかもしれない。そんなことは、チキンなのでできないけれど。
「実は私たち趣味部という部活を作りたくて、部室をかしてほしいの。」
「なんてこといいだすんだてめぇはーーーーー!!」
俺は全力でつっこんだ。このアマなんてこといいだすんだ。先輩にむかってなんといういいぐさ。ライアーマンおそるべし。
「それはかしてほしいというんじゃなくて占拠というんだ。全然はなしが違う。大前提として先輩はどうするんだ。仮にも将棋がしたくてここにいるんだろ?一人だけどな!でもなんかやりようがあるんだろ!」
正直なにかやりようがあるとはとても思えないが。
「だから交渉なのよ。彩加先輩には一緒に趣味部に入ってもらう。そして、そこの幸のうすい幸助君と一緒に毎日一回は将棋をしていいチケットを発行するわ。」
「なるほど、俺の意志はどうでもいいといった態度についてはひとまず置いておくとして、それならよいんじゃないか?どうですか先輩?もしよろしければ、この楓の戯言をきいてもらえませんでしょうか?」
「ええで、なんかおもしろそうやし。その交渉のったる!」
俺たちはふたりあわせて、
「ありがとうございます!」
といいましたとさ。