第2話:王都での過ごし方
「いやー、まさかフェクトも魔法騎士になりたかったとはね。以外だな〜。」
そんな事を言いながら俺の隣を歩いているのはエレーナ。先程馬車で知り合った。たまたま泊まる宿が同じだったから、今は宿まで一緒に行動している。
「ていうか、なんで最初から言わなかったの?」
「それはまあ、色々あるんだよ。」
「ふーん。よく分かんないや。」
そんなくだらないことを話していると、目的地の宿に到着した。
見た目は可もなく不可もない、まさしく普通という単語がふさわしい宿だった。
「私はせっかく王都にきたんだから、この宿に荷物だけ預けたら王都を観光しに行くけど、フェクトはどうするの?」
「俺は別に観光とかはしなくてもいいかな。もともと魔導書をもらうためだけに来たんだしな。」
「ふーん。なんかフェクトって人生つまんなそうだよね。」
さらっととんでもないことを言われたような気がするけど、言及はしないでおこう。
そして俺は荷物を預けたあと、エレーナと別れ、特にやることもないので、宿の部屋で寝転がりながら、天井の木材にある点でも数えていた。しかしそんなことをずっとやっていれば当然、
「....暇だな。」
という感情が出てくるものである。かといって、魔法の説明書は馬車の中でじっくり読んでしまったので、暇つぶしの道具として使うことはできない。
こんなことになるなら、馬車の中で説明書を嫌になるまで読むんじゃなかった。
などと思っていると、良い暇つぶしの方法が頭の中に思い浮かんできた。
それは、自分にどんな魔法が与えられるのかを予想することだ。
「俺に与えられる魔法か....」
正直、全く分からない。というより、何でもいいというのが本音だ。
なぜなら基本魔法である炎、水、風、土、雷の五大性質魔法は全てかっこいいからだ。
情熱の炎、クールな水、爽やかな風、力強い土、轟く雷。基本魔法なら、どれを与えられようと何でもいい。
問題は独自魔法というやつだ。この独自魔法というやつは、説明書によると、種類は無限大にあるらい。
だとしたら、予測することなど、困難を通り越して不可能だ。
そもそも独自魔法というのは、基本魔法から派生してできた魔法らしいが、具体的にはどのような魔法なのだろう?
「氷とか、木、毒、あとは溶岩魔法とかか?」
俺が想像できるとしたらそれくらいしか思いつかないが、きっとまだまだあるのだろう。これ以上考えても切りがなさそうだ。
少なくとも弱い魔法ではなければ何でもいい。
そんな事を考えていると、次第に眠くなってきた。
(.....確かに寝るっていうのは、いちばんの暇つぶし方法かもな。)
現在の時刻は十五時。昼寝にはちょうどいい。
そんな事を考えながら俺は眠りについた。
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起きたら、翌朝の四時だった。
正直驚いている。大した眠気ではないと思っていたのに、まさか十三時間ほど眠ってしまったとは。
「そんなに疲れてたのか.....。」
ぐっすり眠ったおかげか、眠気は綺麗さっぱり消え去っていたが、眠気が消えた代わりに、今度は空腹が襲ってきた。
そういえば夜ご飯を食べていないことを思い出し、夜ご飯と言うには遅すぎる、朝ごはんと言うには早すぎる時間に食事を取ることにしたのだった。
食事を食べ終え、出かける準備をし終える頃には、出るのにちょうどいい時間になっていた。
鏡を確認し、格好に変なところがない確認する。
「よし、異常なし。」
そう言って俺は、宿を出て、目的の場所へと向かった。
目的の場所というのは、王都にある大魔法図書館だ。普段は立ち入りを禁止されているらしいが、一年のこの日だけは十五歳のものにのみ、立ち入りが許可される。
聞いた噂によると、大魔法図書館にある本は全て魔導書らしく、ある呪文を唱えると、魔導書が自ら自分の主人にふさわしいと思ったものの元に飛んでいくらしい。
「本にも自我なんてものがあるのか?」
そんな事を考えながら歩いていると、後ろから誰かに声をかけられた。
「あれ、フェクト。こんなとこで会うなんて奇遇ね。」
「なんだ。エレーナか。」
「なんだって何よ。」
少しふてくされたような顔をすると、エレーナは俺に聞いてきた。
「昨日、私と別れたあと何をしてたの?」
「えーっと....天井の木材の点の数を数えたあと、寝た...。」
「........やっぱりフェクトって人生つまんなそうだよね。」
また言われてしまった。地味に傷つくからやめてほしい。
「そういうエナーレは何をやってたんだよ。」
「私? 私はフェクトと違って色んなことをしてたわよ。」
「例えば?」
「そうだなー、美味しそうなサンドイッチ屋さんで、サンドイッチを食べたかな。」
「他には?」
「えっとー、サンドイッチを食べた後は、カフェでパスタを食べて、パスタを食べた後はスイーツ屋さんでティラミスを食べたかな。」
「食べてばっかじゃねーか。」
色々なことをしたと言うものだから、てっきり観光や買い物などをしたのかと思っていたのだが。
「そんなに食ってばっかいたら太るぞ。」
「別にいーの。私は毎日運動しているんだから。」
そんなくだらないことを話しているうちに、ついに目的の大図書館に着いた。
「ここが大図書館か。」
「すごーい!私の住んでるところにある図書館よりも何倍も大きい!」
そう言いながらエレーナは目を輝かせていた。
俺の地元にはそもそも図書館自体がなく、普通の図書館を知らないため、この大図書館がどれほどすごいのかがいまいち分からずにいたが、エレーナの反応から察するに、やはり普通の図書館とは違うらしい。
「でいうか、これってもう入ってもいいのか?」
「いいんじゃない?いつもは立ち入り禁止の看板が置いてあるらしいけど、見たところどこにも置いてなさそうだし。」
本当に入ってもいいのだろうか。
こういう能天気なやつの言葉はあまり信用できないからな。
少し不安な気持ちになりながら、俺は恐る恐る大図書館の中に足を踏み入れた。
中に入ってしばらく歩いていると、どこかから声が聞こえてきた。声と言っても、数人が話しているような声ではなく、もっと大勢が話しているような、ざわめきのような声だった。
どうやら結構な人数が集まっているらしい。
「ほら、やっぱりもう入って良かったんだ。」
そう自慢気に言いながら、エレーナは声の方向へと歩いていった。
俺もそのあとをついていくと、本がぎっしりと入った本棚に囲まれ、天井は見えないほど高くなっている部屋に入った。
そこには、すでに数百人ほどが集まっていた。
「もしかしてここにある本って、全部魔導書? だとしたらすごいなんて超えてヤバイだよ。」
相変わらず能天気なことを言っているが、今だけはエレーナの言葉に賛成だった。
これが全て魔導書とは俺もにわかには信じられなかった。
あまりの本の多さに圧倒されていると、誰かが本棚に建て掛かっている梯子を使い、上の方の足場まで登った。見た目は少し老いぼれているひ弱そうな男だ。
補佐的な係か何かだろうか?
そんなことを考えていると、男は俺達を見ながら、
「えー、お集まりの皆様、大変長らくお待たせいたしました。準備が整いましたので、ただいまからここにいる皆様全員に、魔導書を贈呈させていただきます。」
そう言って、男はある杖を持ちながら何かの呪文を唱えた。
「コンフェリート」
次の瞬間、先ほどまで本棚に綺麗に並んでいた本が一斉に飛び回った。
何百冊もの本が、広い空間を縦横無尽に飛び回る光景は、もはや神秘的とも言えるような光景だった。
あまりの光景に唖然としていると、俺の元に二冊の魔導書が降りてくるのだった。




