生まれつき強力な魔法が使えたのですが、そのせいで婚約破棄されてしまったこともあり、後はもう戦いだけに生きていこうと考えていたのですが……?
「そっち頼むよ!」
「ええ!」
私は生まれつき強力な魔法が使えた。
しかしそれゆえ残念な思いをすることも少なくなくて。
これまで私は魔法が使える人間に生まれたことをあまり良くなかったこととして受け止めてしまっていた。
――でも、現在の夫であるアウィンに出会って、考え方が大きく変わった。
「すべて倒したわ」
「無事かい?」
「ええ、反撃される前に倒せたわ」
「良かった……ありがとう」
今から数年前、私にはダイルという婚約者がいた。
しかし彼は私を良く思っていなかった。
理由はやはり魔法を使えるから。
それでも私は彼との未来を信じていた。
いつかはきっと理解してもらえる日が来る、と信じて、彼に尽くしていた。
でも、結局、ダイルは私を受け入れなかった。
婚約者がいる身ながらたびたび女を作り浮気していたダイルは、結婚式の直前、ついに婚約破棄宣言をしてきた。
そうして私たちの関係は終わってしまった。
しかも、その時、ただ婚約破棄を告げてきただけではなく、心ない言葉もたくさんかけてきた。お前は穢れている、とか、化け物だ、とか。そういった、私という存在を侮辱するような言葉を幾つも投げつけてきて。言われた側が傷つく様子を見て楽しんでいるかのようであった。
魔法が使える、それだけでこんな目に遭わされるなんて……。
すべてに絶望した私は、もう異性はどうでもいいと思い、魔法を使って戦う道を選んだ――のだが、その中で知り合ったのが、弓を手に戦っていたアウィンであった。
そこからの展開は早くて。
戦場で何度も顔を合わせる中で段々親しくなり、やがて結ばれたのだ。
「今日もお疲れさま」
「お疲れさま。アウィンの方が疲れているんじゃない? 弓での戦闘って結構体力使いそうよね」
私たちは今、夫婦になり、共に戦いに身を投じている。
常に傍に危険があるけれど。でもこの道を選んだことを後悔はしていない。否、むしろ良かったと思っているくらいだ。
魔法という生まれ持った能力を使え、誰かのためになることもできる。それが今の仕事だ。加えて報酬も悪くない。そう考えると、こうして戦う道を選んだことを後悔する理由なんてありはしないのだ。
「そっちこそ。魔法を使うってどんな感じだろうって思うけど、なんというか、大変そうだよね」
「いえ、普通よ」
「疲れはない?」
「このくらいならどうってことはないわ」
ちなみにダイルはというと、私との婚約を破棄した数週間後にこの世を去った。
彼が住む町に魔物の襲撃があったのだ。
想定外の襲撃に地域の警備隊は呆気なく倒れ、一般市民が抵抗した程度で勝てる相手ではなかったので、ダイルが暮らす地域はあっという間に破壊されてしまった。
そしてダイルも命を失った。
まぁ、彼が言う化け物でも仲間にいれば、少しは抵抗できただろうに……。
だが可哀想ではない。いや、正しくは、彼については可哀想とは思わない、か。婚約者を平気で傷つけるような人だ、その後どうなろうが痛い目に遭おうが知ったことではない。……そもそも、その時にはもう他人だったし。
「「ただいま~」」
私はこれからも良き夫アウィンと共に生きていく。
「飲み物どうする?」
「そうね……ハーブティーがいいわ、あのリラックス効果の高い」
「オッケー」
「その後夕食を作るわね」
「作ってくれるのかい」
「ええ、今日は私が担当の日だもの」
「ありがとう!」
傷ついた過去は過去に捨てていこう。
もはや人生に迷いなど要らない。
過去の影に縛られるより、今この瞬間手に入れられているものを大切に抱き締めて、前向きに生きていきたいから。
「先にハーブティー用意するからね、休んでて」
「ええ、ありがとう」
アウィンと共に歩むなら、きっと、未来は明るいものとなるだろう。
何も怖くない。
何も恐れない。
そして、迷うことだって、決してない。
◆終わり◆




