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第十八章 改札

 改札の前は、思っていたより静かだった。


 音はある。

 人も通る。

 それでも、

 雪乃の周囲だけが少し空いている。


 約束した場所に立つ。


 立ってしまえば、

 あとは何もすることがない。


 探さない。

 名前を呼ばない。


 来ているかどうかを、

 決めるのは早すぎる。


 時間は、

 まだある。


 短い髪が、

 首元に触れる。


 切ったあと、

 何度も感じた感触。


 それが現実だと、

 今も分かる。


 人の流れが、

 一度だけ途切れる。


 視界が開く。


 そこに、

 誰もいない。


 雪乃は、

 それを

 「いない」とは

 判断しなかった。


 まだ、

 時間だからだ。


 改札の音が鳴る。


 誰かが通る。


 また音が鳴る。


 同じことが、

 何度も繰り返される。


 時間は、

 確実に進んでいる。


 雪乃は、

 時計を見ない。


 見る必要がない。


 約束は、

 守るか、

 守られないか。


 それだけだ。


 風が、

 駅の中を抜ける。


 首元が、

 少し冷える。


 雪乃は、

 一歩だけ位置を変える。


 約束した場所から、

 ほんの少しだけ。


 それは、

 待つのをやめたからではない。


 ()()()()() ()()()()()ただけだ。


 改札の向こうを見る。


 向こう側は、

 もう日常だった。


 ここに立ち続ける理由は、

 なくなった。


 雪乃は、

 バッグの紐を持ち直す。


 視線を上げて、

 前を見る。


 来なかった。


 それだけが、

 確定した。


 理由は、

 分からないままでいい。


 雪乃は、

 改札を通る。


 音が鳴る。


 それは、

 いつもと同じ音だった。


 振り返らない。


 振り返る必要は、

 もうない。


 約束は、

 ここで終わった。


 壊れたわけではない。


 果たされなかっただけだ。


 改札の向こうで、

 人の流れに混じる。


 短い髪は、

 もう揺れない。


 それで、

 十分だった。

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