8、あなたとわたし生きている?
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私は生きていますか?
あなたもそうだけど、生きていますか?
ぐわんぐわんぐるり、ぐるり、ふらふら、ふわふわ
…?
なんだっけ。
私は薬を飲み込んだ。
今日も夢を見ているわけだ。
…
「…?」
私の目の前、血だらけの車、血だらけの手、笑ってる義兄。
おかしいなぁ、そんなに冷たかったっけ?
私の事お気に入りとしてくれてたはずなのに。
心配の言葉もない。
あ、分かった。飽きられたんだ。
なるほど、なるほど。
私は見捨てられたんだ。
あーあ。
「もっと心配してくれてたのにな…。」
…
どこかで少女はくすくす笑う、そして小さく歌い出した。
”大事な神経を容易く崩して♪”
”大事な根底を容易く崩して♪”
「永遠にいっちゃった♪」
少女はリモコンを片手に笑顔で歌う。
だがテレビを眺めながら思う。
麻薬で殺すより手で殺した方が早いのに。
テレビでは自殺した少女についてやっているようだ。
麻薬成分が検出されたとかなんとか。
「…麻薬?ふーん、さっさと手を下した方が簡単だよねぇ。ね、ルーちゃんどう思う?」
ルーという女の子のぬいぐるみは何も言わない。
「…どうせルーちゃんは、薬頼りだもんな。もしくはおにーさん頼り。とてもユーちゃんには理解できません。」
そう言って彼女は、ぬいぐるみにズドッ!っとナイフを刺した。
ぬいぐるみを貫通し机にまで刺さっている。
「あーあ、ルーちゃんのぬいぐるみ、刺したのこれで十七回目。まーた縫ってもらわないと。」
ツギハギなぬいぐるみの身体はどんどん修復を不可能にしていくことを物語っていた。
「あ、忘れてた!処理しなきゃ。」
血だらけになった肉を捌くために切るとは思えないフリルのついたエプロンを着て、笑う。
「…これとこれねー。それと今日は久しぶりにルーちゃんに会いに行こうかな。」
少女はくすくすと笑った。
”大事な神経を容易く崩して♪”
包丁の音がした。
…
ぐすぐすぐす、よく分からないけど泣いている。
血だらけの私。
そして義兄。
そんな中、飛び出してきたのはユーちゃんだった。
ハッとした感覚と共に私の視界晴れていった。
血だらけじゃなかった。
全部いつも通りだ。
ユーちゃんはくすくす笑う。
「あ、ルーちゃん!久しぶりだね!…ねぇ泣いてるの?なんで、なんで???なんで泣いてるの?ルーちゃんは泣いてちゃダメだよ?6年の付き合いなんだから!」
ユーちゃんはいつも通りこれだ。
私の涙を指で拭き取った。
義兄がいるのでより気まずいし少し不愉快そうにこちらを見ている義兄。
「…なんでもない…。ありがと、ユーちゃん。」
私はとりあえず微笑み返した。
ユーちゃんは顔を上げて義兄の方へと近づいた。
「おにーさん、なんで、ルーちゃん泣いてるの?」
純粋な疑問、純粋な感情、純粋な瞳。
義兄は少し不快そうに彼女を見つめた。
ただ、義兄は笑って言った。
「ルエは疲れてるんだよ。で、君はどうやって入ってきたの?」
ユーちゃんは笑った。
「ルーちゃんの部屋の窓、突き破ってきた!」
私は少しびっくりした。
「え。」
そして困惑した。
涙は引っ込んだ。
…
窓ガラスの破片を片付けながら、ユーちゃんは笑う。
「ごめんね〜、ほらルーちゃん薬作ってたでしょ?どうなったのかなぁって!」
まず一つ言いたい。
「どうやって働いてる場所知ったの?」
ユーちゃんは「え?」と少し表情を崩したが、すぐに笑顔に戻った。
「ルーちゃん知ってるでしょ?クマ頭くんが教えてくれたの!もうルーちゃんのこと大好きだから、また会いたかったの!こんなのまで作ってもらったんだから!」
そう言って見せられたのは人形だった。
いや、ぬいぐるみ?なんか、既視感があって不快だ。
「…クマ頭…だれ?というか何これ。」
ユーちゃんはニヤリと笑った。
「ルーちゃんのぬいぐるみ!作ってもらったの!」
私はとりあえず困惑して頭にハテナを浮かべたまま数秒間。
ユーちゃんは私を抱きしめた。
「もう!本当に、照れなくていいからね??ルーちゃん愛は誰にも負けないんだから!!4年の付き合いだからね??」
どうでもいいことだが、ユーちゃんはいつものフリルのワンピースではなく、今日はセーターとミニスカだった。
珍しいな、なんて思った。
だが、ギューッと抱きしめられている手が首に来る。
「…っちょ、苦しっ。」
止めてくれないかな、ユーちゃん。
さすがに死にたくないし、まだやりたいことが残ってるから。
しあわせの研究も終わってないから。
「げほっ…」
苦しくてクラクラする。
「あ、ごめん、やり過ぎちゃった!」
ルーちゃんは笑った。
「めっちゃ大好きってことだけは伝わったよね!!??」
あぁ、変わらないユーちゃんは一生こんなんなんだろうな。
…
「…ックシュ!…さむすぎ、死ぬわ。何度だ?」
部屋の温度は3度を下回っている。
ため息を吐いて布団やらモーフを取り出す。
「モーフ&布団5枚重ねするかぁ。」
クマ頭なんて呼ばれる彼は布団に潜り込んだ。
「あったか。…売れ行きどうするかなぁ。」
そう言って数分、爆睡し始めた。
…
「…不快だなぁ。」
あの子はなんなんだか。
ルエと接点があることを知らなかった。
これは予想外だ。
僕からすれば、あれは少し邪魔になる気がする。
とりあえず、ルエを迎えに行こうか。
…
車の中で私ぼーっと外を見ていた。
「ねぇ、ルエ。さっきの子は、いつ出会ったの?」
義兄に聞かれてドキリとした。
もう、私には正解の記憶が分からないのだ。
正直、小さい頃から知り合いだったのか最近なのかももう分からない。
「…えっと、…。」
もう、嘘がバレたばかりなのだ。
何も言えない。
「その、覚えてなくて…。」
でも、4年くらいだと思う。そう言ってた気がするもん。
「確か4年くらい。気づいてたら、仲良くなってて…」
義兄は笑った。
「そっか、思い出した方がいいよ、友達なんでしょ?…」
少しドキリとした。
…
少女はフリルのついたエプロンを着てまた、冷蔵庫を漁る。
「…大事な神経を容易く崩して♪大事な尊厳も容易く壊して♪…。」
4年、6年。
「間違えちゃったなぁ。」
私たちが出会ったのは6年くらい前。
仲良くなったのが4年前。
「まぁ、ルーちゃん記憶ボロボロだし、大丈夫でしょ!」
そう言って笑う。
彼女は屋根の上で歌う。
「…みな、別れの時だ♪」
そして、笑顔で人を刺し殺した。
死体がひとつそこにいる。
…
「6年前…4年前ね。」
義兄はそう呟いた。
私には理解できなかった。
何の話だろう。
私の記憶、生きていますか?
あなたの記憶も、生きていますか?
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