第三話:★1の主、レビュー討滅戦! ~風呂の恨みは魔界より深し~
温泉改革から三日後──魔王城には行列ができていた。
風呂目当ての観光客、温泉旅館として生まれ変わった「地獄沼湯処」、そして……レビュー欄に★1を連投する謎のアカウント「灼熱至上主義」。
「また★1レビュー入ってるぞ。しかも“地獄のぬる湯”返せって……」
俺はレビューボードを睨みながら、ぽりぽりと頭を掻く。
あのままぬる湯で放置してたら、利用者ゼロで廃業コースだったろ?
それなのに、なぜこんなにも反発が強いのか。
「湯温上げただけで敵視されるとは思わなかったな……」
「……“湯派閥戦争”かもしれません」
ルースが深刻な顔で言った。
「湯派閥?」
「魔界には“ぬる湯至上主義”の過激派が存在します。火山熱を使う熱湯派とは水と油で……下手をすると温泉テロが起こります」
──温泉テロ。
なんてパワーワードだ。
その夜。俺は一通の手紙を受け取った。
内容は簡潔だった。
⸻
《挑戦状》
貴様のレビューは魔界の風呂文化を汚した。
真のレビュー力を見せてみろ。
──灼熱至上主義 総評官
⸻
「……なんだよ、バアルって」
だが、その名前にルースは震えた。
「サ、サウナ・バアル……!? 魔王軍時代、“レビューで戦争を止めた男”です! 魔界のレビュー四天王の一角!!」
──レビューで戦争を止めた?
どんな世界だよ。
でも、俺の中の何かが静かに燃え上がるのを感じた。
「上等だ、バアル……レビューで勝負してやるよ」
――翌日。場所は魔王城温泉前の“レビューバトルステージ”。
審査員には魔王本人、ギャラリーには観光客と魔族兵たちがずらり。
テーマは《温泉の未来》。
各自が施設をレビューし、どちらの投稿が多くの支持を得るかで勝敗が決まる。
まずはバアルがレビュー投稿。
⸻
《レビュー投稿:ぬる湯原理主義者より》
評価:★★★★★
・28℃の快適さは精神と魔力を癒やす。
・熱湯は肉体を削る暴力。
・火山熱は自然を冒涜している。
・魔界に人間の文化はいらない。
⸻
それに対し、俺は一つだけ投稿した。
⸻
《レビュー投稿:元社畜レビューアー》
評価:★★★★☆
・湯温は41.5℃。ぬる湯文化を尊重しつつ、初心者にも優しい。
・人間も魔族も、癒されるために風呂に入る。
・“心が温まる風呂”が本当の勝者。
⸻
──ギャラリーがどよめく。
「……感情が……伝わってきた……」
「温泉って、争うためのものじゃないんだ……」
「バアル、ちょっと入ってみたら……?」
「え、いや……わ、わかったよ……」
バアルは一歩、風呂へ足を踏み入れる。
「あっつ……でも……悪くない」
その瞬間、レビューボードに★が次々と増えていった。
⸻
★4.5 → ★4.7 → ★4.9 → ★5.0!
⸻
魔王が高らかに宣言する。
「勝者、元社畜レビュアー・カズマ! 魔王軍正式レビュー担当官に任命する!」
こうして俺は、正式に“魔界レビュー官”となった。
……が、舞台裏でルースがぽつりと呟いた。
「でも、★1の投稿……実はまだ続いてるんです」
――次回、「★1荒らしの正体、まさかのあの人!?」
──つづく。
【読んでいただきありがとうございます!】
異世界レビュー生活、今回もお楽しみいただけましたか?
「現実もこうならいいのに」と思ってしまう方、大歓迎です(笑)
お気に入り・ブクマ・評価・感想など、いただけると魔王がガッツポーズします。
次回もまた、異世界の“ちょっと変わった日常”をレビューしていきますので、
どうぞお楽しみに!