3/3
医者の履歴書
俺の親父は、精神科学会ではかなり有名な医者だ。慶應義塾大学医学部をでて、埼玉の浦和にメンタルクリニックを開業した。
俺は高校二年の時に後を継ごうと思い、勉強して、獨協大学医学部に受かった。
キャンパスが宇都宮だったので、結婚してからは宇都宮のマンションを購入し、三人の子宝にも恵まれた。クリニックには新幹線通勤だ。
数年前に院長になってからは、なにかと多忙な日々を送っている。カルテの電子化に伴うパソコン購入と手続き。訪問看護とリモート診察の導入。新しい医師も雇いたいのだが、なかなかこれという人物がみつからない。
理事長になった親父が、週に一日のみの勤務になってからは、診察日は待合室がぎゅうぎゅうになり、対応に追われている。
なぜ精神科の医師になったかと聞かれると、長男だったからという単純な動機しかないが、性に合っているのだと思う。
俺には長女、次女、長男がいるが、子供たちは全員、精神科の医者にはなりたくないとそれぞれ希望する進路に進んだ。
気がつけば52歳。イサオクリニック院長、悳武人。仕事にやり甲斐は感じている。




