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アラフィフの履歴書(俺の場合)

気が付けば、45歳になりアラフィフになっていることに愕然とした。


俺はSEだ。SEの宿命なのか、俺の実力不足なのか、欲がないと言われる性格のせいなのか、ブラック企業を渡り歩き、唯一の幸運と思えたのは、懸命に働いていたため、その間に職場でであったW大学卒業後、音楽の専門学校に行き、なぜかSE になった妻と出会ったことだ。


その妻とも4月に離婚することが決定した。


何度かの転職で、グレーと思われる会社に正社員として就職するのだが、最終的にはブラック過ぎて転職する。この繰り返し。


俺は、大学進学になんの興味もわかなかった。二つ年上の姉がH大学に入学してから、「今日はカラオケでオールだから」「今日は終電なくなったから、友達の家に泊まってく」「夏休みだからパリとエジプト行ってくる」「バイトだから、帰りは深夜二時になる」


大学生って、何をやってるの?

バイト、遊び、飲み会、彼氏の部屋に半同棲、そんなの俺はバカバカしいとしか思えなかった。


進学先には、日本電子専門学校を選んだ。周りは男ばっかりだったけど、バイクの免許をとって、旅行したり、男友達と飲んだり、女性との出会いは全くなかったが、さして不満もなかった。


就職先は、俺の実力だとこんなとこかなと面接を受け、クラスで一番に就職が決まった。


「本当にうちの会社でいいの?」と就職先の会社から聞かれたが、安定して働ければいいと思っていたし、その質問の意味を本当には理解していなかった。


就職したら、毎晩、終電近くまで働かされるのに残業代がでない。


さすがにどうかと思ったが、SEの仕事は忙しい時は死にそうになるが、暇な時もあるので、ツーリングや山登りをする余裕はあった。


彼女もいないし、実家住まい、仕事だけしていれば、生きてはいける。


5年ほどブラック企業で真面目に働き続けた俺は、ある日、起きられなくなった。

会社から電話が来る。家まで訪ねてきた先輩もいたが、起きられない。


病院にいくと、「その会社を辞めないと鬱になるよ」と言われた。


一身上の都合による退職。


俺、この先、どうやっていきていくんだろう。


いわゆるニートになった。北海道にツーリングに行ってみた。

八丈島にもいってみた。


SEを続けるのか、全く違う業種に転職するのか?


岩槻の人形店に履歴書を送ってみたが、返信すらこなかった。


結局、また中小企業のSEになった。

今度は会社の都合で月に給料が10万の自宅待機を命じられた。


幸い、父親名義のマンションに住んでいて、家賃がかからなかったし、妻子もいなかった(彼女すらいなかった)から、とりあえず現状を受け入れた。


その後、ちょっと大きなプロジェクトで他社のSEと仕事をすることになり、妻に言い寄られた。


俺でいいの?


美人で、学生時代はファッション雑誌の読者モデルをしていたというお嬢様。


仙台出身で、うちみたいな中流階級の家庭とは、育ちが違い過ぎる。


しかし、初めての彼女に俺はめろめろになった。すぐに同棲を始め、入籍し、ハワイで結婚式をあげた。

しかし・・・


入籍して少したったとき、妻に「仕事を辞めたいの」と言われた。SEは女性にはきつい仕事だ。了承した。


しかし、退職金を手に入れた妻は趣味のコーラスのためといって、一人でヨーロッパ旅行に旅立った。オペラやいろいろな芸術にふれたいと。


俺は、地道に働いた。共働きはしてほしいが、バリバリのキャリアウーマンではなくていいから、生活に困らない程度にゆるめの仕事に就くつもりなんだろうと思っていた。


俺には、くせ者の姉がいて、家族はみんな、まりあ(おれの姪)に夢中だった。姉はシングルマザーという生き方を選び、H大学で俺よりよほど稼いでいた。


姉は出産後、精神科に入院した経歴があり、もともとヒステリーをよく起こす、少し情緒不安定な女性で、高校時代は南米のチリに一年間留学し、どうしてもC大学に行きたいと新聞奨学生をして予備校に通い、本命には落ちたが東京六大学に合格し、H大学から奨学金をもらいアメリカのテキサスに一年間留学していたスペイン語と英語が話せるが、興味のないことにはまったく興味を持たず、鳥取って何県?とか普通に言う変な女だった。


俺は、女性に免疫がなかった。妻の行動に不満や疑問を感じることは多々あったが、とにかく、かわいいし、俺なんかを夫に選んでくれたのだから、お互いに歩み寄り、幸せな家庭を築きたいと思っていた。


結婚して、3年目、妻は浮気をした。探偵事務所に安くない金を払い、証拠をおさえようとしたが、決定的な証拠がつかめなかった。


離婚する!!が、日常会話になるほど、お互いに不満を持ちながらも、なんだかんだ13年結婚生活を続けた。


仕事はブラック、本当は結婚したらすぐにでも子供が欲しかったが、妻が子供は苦手というから、子供も諦めた。


友達といえるほどの友達もいない。


結婚したことに後悔はない。離婚にも複雑な思いはあるが、これ以上の家庭内別居を続けたら、俺のメンタルもやばい。


唯一の生きがいは、ボルダリングだ。まあ、独りではあるが、20歳になった姪が俺に懐いて、かわいいし、両親も俺の人生にうるさいことは言ってこない。


今度こそ、定年まで働きたいと思える職場をと思っていたら、熱海旅行から帰ってきた姉が電話をかけてきた。


「直美がね、今、東京の広告代理店でリモートワークで熱海に住んでるの。でね、もう定年まで安定した会社でって時点で昭和。今は令和。って言ってたよ」


まあ、令和の常識は俺にはあまり理解できないが、時代は令和だ。


転職はする。でも、まず、離婚をする。


姉が言った「独りになるってことは自由だからね」


俺の履歴書にはいくつの転職歴がつづられることになるのだろう。


とりあえず、ボルダリング行こう。   

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