何もない僕。
僕の名前は古川旺太。高校三年生。身長は168㎝、体重60㎏、顔も中の下。勉強もそこそこだし、運動もそこそこ。
これといったキャラもなければ特技もない。
「やっぱお前って何にもないよな。」
そう言うのは同じクラスメートの神崎裕也。こいつはスタイルもいいし、勉強もできるし、スポーツもできる。僕みたいな全部中途半端なやつとは正反対のやつだ。
「何もないってことはないけど。」
僕は少し下を向いていった。はっきり言うと僕はこいつが嫌いだ。別にこいつとはそんなに仲良くもないしそんな接点もない、なのにこいつは何かと自分より下のやつに突っかかってくる。
「いや何もねーだろ。お前は俺みたいにスポーツができるわけでもなきゃ、勉強ができるわけでもねえ。
実をいうとお前みたいな全部中途半端な奴がこの世には一番いらねーんだよ。」
僕はイラっとした。なんなんだよ。別にお前に言われなくともそんなことわかってるさ。
「やめてあげなよー。」
そんなことを言うのは神崎と幼馴染の篠原圭。こいつはスポーツがズバ抜けている。この前も100mで全国大会に出てクラスメイトに自慢していた。
「こいつもさ、自分が何もない無能だってことくらい分かってるって。」
篠原は微笑しながら言った。
「そうだよそうだよ。裕也君みたいな天才がこんな奴にあーだこーだいう必要なんてないって。」
(うわ、またこいつか。)僕はこいつが一番嫌いだ、こいつは安藤恵。頭はピカいちだが性格がとことんねじ曲がっている。この前も塾で他校の女子を自分より点数がしたただからといじめていたらしい。
「あ、もうチャイムなるよ。」
「お、やべ。」
「じゃ、またねー。無能くーん。」
(ほんと何なんだあいつらは。)
キーンコーンカーンコーン
帰りのチャイムが鳴る。僕は急ぎ足で家へと向かった。
というのも今日は僕が大好きな異世界無双系のアニメがあるのだ。
ガチャ
「ただいまー。といってもだれもいないんだけど。」
僕の親はだいぶ前に遭難事故で行方不明になったらしい。僕がまだ小さいころだったからあまり記憶はない。僕は誰もいない小さなボロアパートで一人暮らしをしている。
「お、はじまった!あーあ。僕もこんな風に異世界に行けたらきっとほかの人にはない何かが出てくると思うんだけどなあ。」
僕が異世界系のアニメにはまりだしたのは高校二年生のころだ。僕は何もなく、よく人から無能だのなんだの言われてきた。そんな僕の唯一の救いだったのがアニメだ。アニメを見ていると何もない自分にもこんなことができるのではないかと希望が湧いてくる。得に異世界系がそうだった。はじめはあまり内容が面白そうではなかったけれど、だんだん見ていくうちに面白くなっていて、いつの間にかはまっていた。
「てか、よく考えたらもうすぐ受験じゃん。どうしよう。」
「まあ最悪神頼みでいいか。僕みたいなやつはどうせ中途半端なとこしか行けないんだし。」
次の日
僕はいつも通り学校に登校した。
「あ、古川君。先生が職員室来いって。」
「職員室?」
(僕何かしたのか?気が付いていないだけで。)
僕は心当たりがないまま職員室へと足を運んだ。
ガラガラガラ
扉を開ける。
「あのー先生に呼ばれてきたのですが、」
「あ―古川君座りなさい。」
僕は緊張しながら腰を下ろした。
「率直に言う。君、今のままだと大学どこもいけないよ。」
「へ?」
僕は理解できなかった僕は別に何かが特別悪いというわけでもないし、何かが特別にいいわけではないのだが、どこかしらの大学は入れるだろうと思っていた。
「あのね、君はすべてが普通過ぎるんだよ、普通過ぎるからどこも君を欲しがらないんだ。
どこかでいいからとびぬけていたらいいのだけれど。」
(な、なんだってー)
僕は絶望の淵に落ちた。
(こうしちゃあいられない。)
僕は学校が終わった後大急ぎで神社に向かった。
(よし、ここは学業成就の神社だここで神頼みをして勉強頑張るぞ。いや、まてよ。
今まで俺が頑張って他人よりできたことってあるか。いや、ない。だとしたら願うべきは…)
「ゴクリ」
僕は息をのんだ。
「ぼ、僕を異世界に、転移させてくださーい!!」
僕は大声で言った。
(シーン)
「ふふ、まあわかっていたさ何も起こらないことなんて。ああ、これからどうしよう。」
僕はみじめに家へと帰ろうとしたその時、
(パアアア)
「な、なんだこれ。う、うわああ!」
僕は謎の光に飲み込まれた。
「へ、ここは?」
見渡すとそこには草原が広がっていた。
(どこだよここ。)
僕はむくっと立ち上がり、考えた。
「・・・へ、え、うーん。ここ、マジで異世界なのか?」
「そうだよ。」
「へ、マジで、マジで異世界なの。えーー!!」
ふと僕は我に返った「今の声、誰?」
「私だよ。」
「へ、どこ。」
「ここだよ。上だよ。」
「あーなんだ。上田さんか驚かさないでよー。って上田って誰だよ!!」
「何やってんのさ。上を見ろってことだよ。」
そういわれて僕は空を見上げた。
「あ、なんかいる。」
(なんだありゃ、豚?猪?)
「豚でも猪でもねーわ!!」
「うわー!」
「私は神だ。人の希望をかなえる神だ。貴様が異世界へ行きたいといったからここへと連れてきたのだ。」逆光であまり顔は見えなかったが性別は男っぽい。
「君は本当に何でも普通だなあ。まあそれならこのスキルがいいか。」
髪は僕何々か青い光のようなものを渡してきた。
「それを飲み込め、そうすればそのスキルは君のものだ。まあこの世界は危険が多いし君みたいな人間はすぐ死ぬだろうから結構当たりのスキルを渡したよ。」
スキルか。アニメではよく登場してきたが本当にあるなんて。
「あ、言い忘れてたけど君をここに送ったのは君がただ願ったからじゃないよ。君の親がだいぶ前にちょっとした事故で間違えてこの世界に送還されちゃったから探してほしくてね、見つけ次第私に報告してくれ、君はアニメを見てたらしいからあとは何とかなるでしょ。じゃあね。」
髪はそう言ってそそくさと帰ってしまった。
(僕の親といっても顔なんて覚えてないしなあ。)
どうしようか迷っていると何か大きな地鳴りがしてきた。
ドス、ドス
何か大きなものが近ずいてきている予感がした。
「あ、あれは。」
アニメではよく見たことがある。最強モンスター。フェンリル。
「どうしようか…」
続く
新連載です。いろいろと教えてくれるとありがたいです。もしよければ感想どしどしお待ちしております。