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第4話 正式書簡

 リオベルデ王国では、王女の存在は特殊な位置にある。


 辺境にある小さな国であるリオベルデが独立を保っている理由は、創世の女神を祀る女神神殿がある緑の谷が、女神による世界創造の地であることが大きい。


 同じく創世の女神を信仰する帝国から敬意を勝ち取り、独自の地位を保つことに成功しているのだ。


 それには、リオベルデ王家に時折生まれる、女神の祝福を受けた銀髪の王女の存在が大きく貢献していた。


 女神が降臨した地としての誇り。見事な銀髪をしていたと伝えられる女神を彷彿(ほうふつ)とさせる、銀髪の王女が生まれる神秘。

 リオベルデの中心は緑の谷にある女神神殿であり、代々の王女は巫女として神殿に奉仕してきた。


 同時に、帝国との古い盟約により、王家に王女が2人生まれた場合は、1人は帝国に嫁ぐことが定められていたのだった。

 しかし。


 現在のリオベルデ王家にいる王女はただ1人。

 さらに、銀髪の王女は姫巫女と呼ばれ、本来であればリオベルデの女神神殿を離れることはない。


 静かに書簡に目を通したアレシアは、顔を上げた。


「……このタイミングで、帝国に嫁げと」


 クルスはそっと息をついた。


「来月、君が成人するからだろうね」

「あ」


 アレシアはうなづいた。

 たしかに、来月はアレシアの18歳の誕生日を迎える。それは帝国文化圏では成人を意味していた。


「でも……カイル様とわたしが婚約したのは、わたしが3歳の時です。それから何のお話もなかったし、わたしもまさか……。それに、わたしは姫巫女です。本来なら、緑の谷で女神神殿にお仕えするべき立場なのに」


「この婚姻の話を整えたのは、エレオラ伯母上だ。あの方は先代の皇帝に嫁がれたから……。しかし、婚姻については、両家でよく相談した上だと父上から聞いた」


 クルスは侍従に目線で茶を持ってくるようにと伝えた。

 すぐに、ほのかに花の香りがする茶が運ばれてきた。

 兄妹は椅子に落ち着き、穏やかな様子で話し合いを始めた。


「この書簡はランス帝国宰相オブライエン様からのものですね。たしか、長い間カイル様の後見でいらっしゃった」


 アレシアの指摘に、クルスもうなづいた。


「カイル様が皇太子になられたのが、12歳の時。18歳で皇帝位を継がれたのが……もう4年前になるのか」


 <女神神殿の聖なる姫巫女様に、我が国皇帝カイル陛下との正式な結婚のため、帝国へお越しくださいますよう、お願い申し上げます>


 それは、あまりにも簡素な、ランス帝国皇帝との婚姻を伝える手紙だった。


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