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行きつけの古本屋さんはありますか?

ひだまりのねこ様主催、集まれエッセイ企画参加作品です。

主催者様のエッセイ「初めての3周年」を、涙ズビズビになりながら読んだ後で遺品整理の話かい!とも思いますが。

メメント・モリ、死を想うことはこれ生を想うことなり、ということで、私なりの生への向き合い方として書かせていただきます。

今年最初の活動報告に書いた、父の遺品の本を整理した話です。それでは、どうぞ。


 皆様、行きつけの古本屋さんはありますか?今回のお話は、行きつけの古本屋さんがあって、本当に助かった、という体験談です。古本屋はいいぞ。


 読書好きにとっての永遠の悩みの種、増え続ける蔵書をどうするか。愛読書、貴重書多数お持ちのなろうユーザーの皆様、解決策を模索されていると思います。

 積ん読、ではなく、文字通り積んどく、先送りする方もいらっしゃると思いますが、諸行無常、人はいつか死にます。それが来年か、半年後か、はたまた今日なのかは誰にも分かりません。長生きしても、判断力、記憶力は衰えていきます。

 そのとき、残された本を引き継ぐのは、家族、あるいは後見人です。整理されていなければ、管理にも売却にも困りますし、蔵書の価値が分からなければ、二束三文で引き渡し、最悪古紙回収です。

 我が愛読書、貴重書、そんなのは嫌だ。次に読んでくれる人につなぎたい、というのは、本好きの願いだと思います。

 そんな時に役立つのが、古本屋のネットワークです。残された家族が古本屋を使って、次の所有者を探す、その手助けについて書きたいと思います。


 いきなりですが、昨年、父がポックリ逝ってしまいました。あっという間だったので、身の周りの整理など全くできませんでした。

 諸々手続きが終わって、遺品整理となったとき、半間かける6尺(90cm×180cm)ほどの本棚1つに入った本が残りました。

 このまま持っておくのも場所が足りない、ということで、処分することになりました。車がないこともあり、最初はまとめて捨てる、ということも考えました。しかし、幸いなのか、時々話す知り合いに古本屋を経営している人がいるので、その人にお願いしました。

 古本屋さんは知り合いの父親の不幸ということで、丁寧に査定してくれて、私も、お金よりも、価値あるものを、できるだけ次の人につなぐことを優先してほしい、ということを伝えて、作業に当たりました。

 小分けにして箱詰めし、自転車に載せて少しずつ店舗に運ぶこと数週間、ほとんどの本を買い取ってもらうことができました。(ちなみに、お値段は〇万円となりました)

 今回の話は、知り合いの古本屋さんが特別に、という面が大きいです。ただし、(個人経営の)古本屋というシステムがなければ、故人の思い出の品は古紙回収という末路を辿り、次の人につながるチャンスはなかったでしょう。


 という有難い古本屋のシステムですが、一定数、廃棄される本はあります。

 次の人につながるチャンスを最大化するために、利用者の側で、できることがあります。経験をもとに書いていきます。


1.行きつけの古本屋を持つこと


 まずはここから。できれば個人経営の、顔と顔を突き合わせられる店がいいです。遺品整理はなかなかな負担になるので(後述)、ある程度ご迷惑をおかけすることをゆるしてくれるといいです。


2.挨拶し、顔を覚えてもらう


 勇気を持って入店します。店に入ったら「お邪魔します」出るときは「失礼しました」商品を手に取るときは「よいですか?」

 もちろん、他のお客様のご迷惑にならない音量で。

 人間関係大事です。忙しい中でのお仕事、客と店といえど人の子、お得意様とそうでないのとでは、仕事の優先度が違います(高齢化に伴い、遺品整理、家財整理は増えているので)。


3.何冊か買う、読んだら売る、を何サイクルか繰り返し、お客として覚えてもらいます。


4.店の雰囲気をみる。

  その際、次のaからcのようなことを、さりげなく見ていきます。

特に、移動圏内に複数古本屋さんがある場合、お付き合いするお店選びの参考になります。

a.店主はお願いできそうな人かどうか。

 繰り返しますが、遺品整理は古本屋として負担になります。

 ただし、古本屋に遠慮して本を捨てるのは絶対にやめてください。文化遺産を捨てているのと同じです。

 これから関係作りをしていく上で、また、家族とのやり取りが発生することを考えて、お話してもらえる環境をつくってくれる方がいいです。

 あまりに多忙、という方は、お邪魔するのは申し訳ないです。


b.品ぞろえは、自分の蔵書の傾向に似ているか


 古本屋の品ぞろえ、店の主力は、店主の詳しい、つまり、価値が分かるジャンル×売る才能があるジャンル×お客がよく買うジャンル、で決まります。

 本に詳しい古本屋さんといえど、広い本の世界、全ジャンルの価値を査定できる人ばかりではないです。

 戦前の文豪や、もっと前の古文書が主力の店に、ラノベの初版全巻を持って行っても困るでしょうし、マンガが主力の店に古文書の山を持っていっても困るでしょう。たとえどちらも価値あるものであっても、です。

 どんなジャンルが好きな人かは、店主が読んでいる本でも察せられるかもしれません。

 次、古本は査定できるだけでなく、ビジネスですから、売れなくてはいけません。仕入れた店で売るのが最も効率が良いです。

 という訳で、回転が速そうなジャンルが、自分の蔵書の傾向と似ていれば、査定してもらえ、かつ、その店を訪れる次の持ち主につながる可能性が高いです。


c.古書店のネットワークに入っているか。


 査定はできるけれど、店では売れ筋でないので並べられない、または、引き取ったけれどうまく査定できない、という本は、他の古書店に売られます。

 地域ごとに、古本や古物の市場があり、古物商の許可を持った人が古物を取引しています。

 このネットワークで売りさばけるか、というのも古本屋さんの腕の見せ所、その店では売れなくても、別の店で蔵書が次の持ち主につながる確率を高めます。

 顔見知りになってきたところで、「仕入れはどちらで?」と聞いてみてもいいかもしれません。ただし、営業機密に関わることなので、顔見知りになってから。

 他店に売れるかどうかを知るのに、「日本の古本屋さん」というウェブサイトを使う方法もあります。 古本屋さんの団体で作るウェブサイトで、日本の津々浦々、どんな古本屋があるか、検索した本はどこの古本屋にあるかが分かる、巨大なデータベースです。このネットワークに入っているということは、自店舗で売れなくても、他で売れる可能性が高くなります。

 ただし、日本の古本屋さんには、敢えて加入していない古本屋さんもあります。今回依頼した古本屋さんもそうでした。古本は縁あってその土地に来たものだから、単なるモノとしてネットでやり取りするのは好きじゃない、というのが理由でした。


 ここで、本の廃棄について、あまり触れたくありませんが。

 どうしても売れない本は、有料で買い取った後でも、廃棄されることがあります。仕入れの失敗、食品ロスと同じです。

 古本に特有の廃棄理由として、もっと緊急性が高い(価値がある)本を救うため、というのがあります。

古本屋さんの店や倉庫のスペースは有限です。今買い取らなければ、今持っている本より価値がある貴重な本が廃棄されてしまう、店での販売、他店への転売ともさばききれないという事態になることがあります。

 そうなると、たとえ将来売れると分かっていても、手持ちの本は廃棄となります、涙ながらに。特に、遺品整理や家財整理で大量の本が入ったときに起こりやすいです。

 これが、先述の、遺品整理は負担になる、ということの理由の1つです。


5.蔵書の整理をお願いできるか尋ねる


 さて、こうして、店と店主の雰囲気が分かり、店主とも関係ができてきたところで、自分が家財整理、遺品整理が必要になったときには、お願いしたい旨を伝えます。

 その際、自宅でまで出張してくれるか、見積はどうするか、本の引き取りはどうするか、聞けるとなお良し、です。

 ここからは、自分自身と、片づけをする家族の準備です。


6.家族に本の処分法について伝える


 話しづらいかもしれませんが、本を処分する必要が出てきたら、先ほどお願いした古本屋にお願いするように伝えます。

 口頭だけではなく、特に古本屋さんの連絡先は紙に書いておきましょう。


7.蔵書リストを作る、本を整理する


 今回は、売却する本のリストを作って持って行ったところ、大変に喜ばれました。どんな本があるか分かるので。

 貴重書、愛読書だけでもリストは作っておきましょう。膨大な本と一緒に処分されるのを防ぐことができます。

 リストは紙に出力しましょう。PC内ではパスワードが分からなくなったら終わりです。蔵書点検のときに更新していきます。


8.手続きの仕方


 ここからは、家族や家財整理をする人向けです。


 まず、古い本、ボロイ本も捨てない。一度そのままの状態で見てもらうことを伝えましょう。

 私の母は、よそ様に汚い部屋、古い物を見せるのは申し訳ないと、古い本をまとめてひもで縛り、ゴミに出す準備をしていました。(なぜか、私のお気に入りの本まで捨てられそうになりました。。)

 古本屋に届く前に、こうして捨てられてしまう本はけっこう多いそうです。特に古い貴重書は、家族が価値を理解しているとは限りません(物の整理で揉めているならなおさら)。

 ぼろくても捨てるな、ということを伝え、リストにも明記しておきましょう。もちろん、日ごろから整理整頓することを忘れずに。


 持ち込みは分割して、ただし、シリーズ物は揃えて。

 遺品整理で大量の本が持ち込まれて、やむなく手元にある本を、という事態を防ぐために、持ち込む場合はどれくらいまでなら持ち込んでよいかを聞いて持ち込みます。

 ただし、引き取りに来てもらう場合は、1回で済ませた方が良いこともあります。


 お金は少なめで、次の人につなぐことを第一に。

 古本屋さんのコストで、査定は多くを占めます。次の人につなぐためには、売れるかどうかを丁寧に査定する(場合によっては、一冊一冊、ネットで相場を調べることもあります)、となると、時間=コストがかかります。次の人につなぐことを第一に、その分代金は減らしてよい、と整理する人に伝えておきましょう。


 さて、こうして、蔵書の整理をする準備ができました。

 メメント・モリ、死を想うことは、これ生を想うことなり。本、大切なものと生きることへの向き合い方を考えるきっかけになればと思います。


 といっても、自分が死んだあと、老いたあとに、残された人がこの通りやってくれるかは分からないんですけどね。


 堅苦しく書きましたが、大切な本を、古本屋さんを通して次の誰かにっていいよ、って話でした。


 それにしても、古本屋さん、特に個人経営の小さなとこ、減っていますね。。

 ここに書いたことができる地域と時代が、すでに貴重なのかもしれません(・ω・)


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― 新着の感想 ―
[一言] 古本屋さんええですよねぇ。 ちなみにウチの近くには全国チェーンの古本屋さんはあれど個人経営の古本屋さんはないですわー。 というか本は終活の時にまとめて売り飛ばしますなぁ私の場合……無論、親…
[良い点] 素敵なエッセイありがとうございます。 本とお父様への愛情をとても感じられました。 改めてお父様のご冥福をお祈りいたします。 [気になる点] 古書店は大好きで見かけるたびに入店し何かしら購入…
[良い点] 古本屋さん、学生時代は神保町でよく古本街巡りしてました(´艸`*)あの雰囲気と匂いがたまらないんですよね。 特に古い書物を扱っている専門店が宝物みたいで大好きでした。誰も買わないようなマニ…
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