表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜を撫でる  作者: 星子意匠
10/10

10 敵の竜

 天竜の滝からの帰路、降雪に阻まれたが、3日かけて国まで戻ってきた。しかし、記憶にある国の姿はもうそこにはなかった。


 木造家屋は焼け落ち、石造りの古い家も使役竜によって破壊され、あたりは煤で汚れている。


 国の象徴であった城の尖塔(せんとう)はどれも破壊され、崩壊している。


 道端に死体が転がり、燃えた人間は炭化し中から腐敗する。刺し殺された母親の横では、幼い子供が指を加えて凍死(とうし)している。


 生きた人間も、生きた竜もいない。


 ディアナは竜屋の大きな看板を拾い上げたものの、炭化しており自重で崩壊する。


ディアナ「竜は連れ去ったか…」


 連れされた足跡を見ると、やはり南方面へと伸びている。


レイナード「ダメだ…誰も」


ディアナ「火竜だな」


レイナード「火竜?」


ディアナ「気性の荒い大型竜だ。

     旦那いわく、使役が難しいらしい。

     中央の希少種だが、

     これは1頭2頭の仕業ではない」


レイナード「繁殖させたのか?

      国を襲うために」


ディアナ「可能性はある。

     気性が荒いやつは元来、

     性欲旺盛(おうせい)だからな」


レイナード「それなら、そいつらが(かたき)の国か」


ディアナ「まだ(かたき)討ちとか考えてるのか…」


 ディアナが挑発的に息を吹きかけた。


レイナード「ちが…おかげで手がかりが、

      わかったってだけで」


ディアナ「手がかり…まあそうだ。

     火竜の肉は食ってみたい」


レイナード「はぁ?」


ディアナ「地竜はもう食べたからな。

     それに希少種というのだから、

     火竜はさぞ珍味なんだろう」


レイナード「美味しくはないと思う。

      だからひとの手で

      繁殖させなかったんだろ」


ディアナ「そういう考えもあるか。

     ならばあの飛竜も、試しに

     食ってみればよかったな。

     しかし鶏肉には勝てまい…」


 竜舎は燃えて、ディアナの私物も残ってはいない。残ったのは背負っている同胞(はらから)の毛皮だけ。しかしここには彼女にとって、それよりも大事なものがあった。あるはずだった。


ディアナ「あーっ! なんで!

     私の鶏小屋が壊されてるぞ!」


 当然ではあったが、地竜たちと同じく鶏はすべて奪われて、それどころか小屋も火をつけて破壊されていた。


ディアナ「許さん…っ!

     おい、レイナード!

     これやった犯人を見つけてやる!」


レイナード「ディアナにも執着(しゅうちゃく)があるのか」


ディアナ「当然だろっ!

     天竜の宝を踏みにじった罪だ。

     私がこれを許すわけがない!」


 人間同士の戦争には無関心だった天竜、ディアナはいつになくやる気をあらわにした。



 (序章『天竜』終わり)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ