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薫陶

作者: 長万部三郎太

「老師、昨日の続きを!」


わたしは門をくぐると元気よく挨拶をした。

すると、まるで玄関先で待っていたかのように開く扉。


「来たか小僧」



教えを受けてはや3年が過ぎようとしている。

まだまだ修行中の我が身、学ぶべきことばかりだ。


師との対話は禅問答から始まり、思想や哲学、さらには宇宙にまで議題が広がっていく。わたしはこの尽きることのないやり取りがとても好きだ。



「さて、今日は何について話そうか?」


その問いに、予てよりぶつけたかった『ある質問』を投げかけた。


「先人たちが云う“よく生きる”について、老師はどのようにお考えでしょうか?」


老師はくるりと後ろを向き、しばらくの間黙り込んだ。

そしてこちらに振り返るとこう答えた。


「魂の配慮。己が魂を優れたものへと導く道標を、人生を通して探究しなさい。

 齢八十を越えた儂ですら、まだその断片しか見えておらぬ」


老師の話はいつも難解かつ抽象的だが、逆にそこが興味をより引き付ける。

わたしはさらに問う。


「“無知の知”についてはいかがでしょうか?」


老師は再びくるりと後ろを向き、同じようにしばらくの間黙り込んだ。

そしてこちらに振り返ると笑いながらこう答えた。



「スマホで検索してもさっきからソクラテスのことばかり出てくるねぇ」



わたしは今日も近所のおじいちゃんと『師弟ごっこ』に興じている。





(筆休めシリーズ『薫陶』 おわり)

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