愚かな鳥は羽を折られて……
星はとても勝手な人だった。
俺が星を好きなのと同じくらい、星も俺のこと好きだったはずなのに、わざと別の人と遊んでみたり、一夜を共にしてみたりして、俺が嫉妬するのを楽しんでいた。
「祐平くんは、あまり人に好かれる要素がないからね」と言って、ナメきった態度を取っていた。
実際、星以外に付き合った人もいなくて、自分に自信がなくて、ずっと我慢していた。
でも、それも限界になって……
もう振り回されるのに疲れたよ……
俺は、自宅マンションの10階から飛び降りた……
死ぬ気だった。なのに、死ねなかった。
死ねなかったのに、障害が残った。
一生車椅子で生きる人生になってしまった。
星は「俺のせいだね……」と自分を責めて、会ったら毎回泣いてくれた。
「本当の愛」に気付いた星は俺だけを見るようになった。俺のことしか頭になくなって、お洒落もしなくなってしまった。
星はずっと不安だったのかもしれない。
障害者になった俺がやっと自分のモノになって、安心したのかもしれない。
……でもね。俺は星のモノになんかならないよ?
星もそろそろ気付いた頃かな?
障害を負って辛いこともあったけど、意外と良いこともあった。
入院やリハビリをしているときに看護師や理学療法士、他の同じ年代の患者に接する機会があって、会話をした。
今までお洒落とは無縁の世界で暮らしていたから、色々アドバイスを受けて素直に実行したら、自分でも見違えるほど垢抜けたし、コミュ力もついた。
さらに、障害者雇用で一流企業に就職することもできた。給料も申し分ない。
もう、俺は今までの俺じゃない。
俺に言い寄る人間が複数現れるようになった。
2本の足で歩けないことなんて、今の時代はそれ程恋愛の障壁にならないんだ。
客観的に見て若さと美しさしか取り柄がない星は、今から堕ちていく一方だろう。
俺が捨てたら星は寂しい人生だろうな。
でも、俺は星を愛しているよ。
星が俺にしたことと同じことをしてあげるからね。
絶対に安心なんてさせない。
星は常に俺に捨てられる恐怖を抱きながら生きていくんだ。
俺は、星みたいなヘマもしない。自殺なんて絶対にさせない。
上手いことやるよ。生かさず殺さずを信条に……
丁寧に丁寧に羽根を折って、鳥籠に閉じ込めてあげるからね。
俺だけ見て、愛してね。