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9. 主の帰館 それも何かと一緒

少し短めです。

本日中にもう一話投稿しますね。

 朝のお仕度。シャワー15分。メイク15分。着替え5分。それが今までの時間配分だった。


「何か……疲れた……」


 どう考えても2時間は経っていると思う。いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。だって。身体は(ほぐ)れて艶ピカだけど、精神と言うか? 気力? がごっそり削られた感じがする。


「姫様、鏡を御覧なさいませ? もう! もう! もう! なーんてお美しいのでしょう!」


 最後の仕上げに髪のリボンを整えると、ジーンさんが数歩下がって私の前に鏡を移動させた。


「ほーっ……」


 美少女だ。それも、見たことの無い程の、超絶ハイパー美少女。


「す……ごい‼ ナニコレ⁉ 本当に私?」


 プラチナブロンドの髪は、ハーフアップに結い上げられ、ローズカラーのリボンが品良く編み込まれている。ほら、あれよ? イタリアの画家、ボッティチェリの描いた女神の髪型みたい。緩いウェーブが少しずつ後れ毛を残してふんわりと編まれている。

 凄い技術だと思うわ。だって、ヘアアイロンもカーラーもワックスも使っていないで、このクオリティーだ。ジーンさんの技術に脱帽だわ。


 椅子から降りて、鏡の前でクルリとターンしてみる。エンパイアラインのドレスの胸の下で、繊細なドレープが広がる。幾重にも重なった薄い絹地が鮮やかで、まるで薔薇の花弁みたいだ。

 うん。このドレスにして正解だった。コルセットは要らなかったしね。


「姫様、まるで薔薇の精の様ですわ。とっても良くお似合いです。さあ、あちらの部屋で旦那様をお待ちしましょう」


 メリアさんが扉を開けてくれる。そうだった。この部屋は()()()()()()部屋だった。


 私、この生活に慣れるのかしら?








「お茶でございます。どうぞ」


 今度はメリアさんがお茶を淹れてくれた。テーブルの上には、


「アフタヌーンティーだわ。ホテルのカフェみたい~。三段重ねだ♡」


 思わず目がハートになる。ティーセットも来た時に飲んだ時と違うものだ。

 白いカップは金の縁飾りが繊細で、小さい花々が細密画で描かれている。セットになっている三段のトレーには、色とりどりのスイーツとサンドイッチが盛られていて、まさしくアフタヌーンティーで食べる()()だ。


「お気に召しまして? 当家自慢のお茶のメニューです」


 どれを取りましょう。と、メリアさんがお皿を持っている。見ていると、小腹が空いていることに気が付いた。そうか、お風呂って体力使うからね。ここでエネルギー補給も良いじゃないですか。

 可愛らしくデコレーションされたミニケーキと、野菜のサンドイッチをお願いした。


「ところで、ジェイドさんはいつ帰って来るんでしょうか? ここにいろって言われましたけど、何時までいればいいのかしら?」


「そうですねぇ。そろそろお戻りになるのではないでしょうか? 遅くなるとは伺っていませんから。それに、姫様をお一人のままには出来ませんでしょう? きっと、今頃は……あらっ?」


「ン?」


 何だか部屋の外が騒がしい。ドアの向こうで何やら言い合いをしているみたい。



「ココ~! 来ちゃったニャーン」


 ドアが勢いよく開いて、真っ黒い豹が飛び込んできた。そして素晴らしい跳躍をすると、私の目の前でスローモーションのように宙を跳んだ。


(お、襲われる!)


 そう思って目を瞑った。衝撃を覚悟して身体が突っ張った。けど、あれ?




「ダーチェ。落ち着け。静かにしないと送り帰すぞ」


「ウニャン!」


 恐る恐る目を開けると、黒豹の首に赤いリボンが絡まっていて、それが後ろにいる人の手までピーンと伸びていた。




「旦那様。お帰りなさいませ」「お帰りなさいませ」


 ジーンさんとメリアさんが姿勢を正して礼を執った。ジェイドさんが帰って来た。()()()()()()



「静かにするニャン。だから、リボンを外してニャン」


 喋ってるし。


 この子、そう言えばこの世界に来た時に、舞踏会のホールでも見た。豹じゃなかくて、大きな猫だったわ。

 座っていた椅子から腰を上げると、少しずつ()()から距離を取る様に後退りする。猫だけど、大きさは豹。それも大きさ的には私と同じ位だし! 怖いわ。



「ただいま。ああ、ココレット姫はお茶の時間でしたか。私達もご一緒して良いでしょうか? ダーチェ、お前も大人しく出来るな?」


 ジェイドさんは、スタスタと私の前に来ると、私の顔を覗き込むように腰を折った。

 ちょっと、顔が近い! 言葉が出ないので、身体を反らせるようにしながらコクコクと頷く。ジェイドさんはいざ知らず、ダーチェと呼ばれたこの大猫さんもお茶をするの? 一緒に?



「ありがとうございます。それでは席に着きましょう」


 ニッコリと微笑んだその顔。椅子を引いて座らせてくれる仕草は、優雅で凄く自然な所作に見えた。


 やっぱりこのヒト、只者じゃない。感じ?





ブックマーク、誤字脱字報告、感想

評価ボタンのポチもありがとうございます。


ジェイドがダーチェを連れて帰ってきました。

心菜さん的には、ゆっくりお茶してる

場合じゃないんですけどね?


次話、心菜さんがジェイドに詰め寄ります。

聞きたいことは、山程ありますからね。


楽しんで頂けたら嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] ダーチェ…イラストが見たいですねー。
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