表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

13. そこで引くってどういう事よ?

 沈黙。

 それも、皆の視線が突き刺さる。イタイわ。


「えっ? ココ、お前27歳だったのか?」


 恐る恐るといった風に隣のアレンが聞いてきた。無言のお前が聞け。という圧が一番年下であろう彼に掛かったみたい。ああ、それとお前の妹? だろう! そんな感じね。


「ええ。向こうの世界、えっと日本ていう国だったんだけど、私は27歳だったよ。それに、この姿じゃなかった。黒髪黒目で一般的な日本人だったわ」


 確かに少し色素が薄かったと思うけど、こんな金髪じゃなかったし、目の色だってアニメのヒロインの色だもの。唯一同じだとすれば、まあ性別位の物じゃない?


「……」


 黙り込んでしまったアレン。それはそうよね。初めて会った妹が10歳も年上だっていうのだから。


「……魔導士長、一体どういうことだ? 何でそうなったのだ?」


 頭を抱えているアレンの替わりに、ロマグレ魔導士長様に金色近衛騎士様が尋ねた。


「考えられる原因は幾つかありますが、限定するにはもっとお話を聞かないとなりません。しかし、本当にココレット姫は27歳ですか? そうは見えませんが」


 遠慮しながら尋ねてくれてますね? 


「はい。本当に27歳でした。社会人になって6年? 結構頑張って働いていました」


「シャカイジン?……働いていた?」


 金色近衛騎士様は、シヴェル様だ。首を傾げて独り言のように呟いている。


「えっと、社会人というのは、学校を卒業して働ける状況にある年齢の人ですかね? 大体20歳前後からでしょうか。私は大学を卒業してから、直ぐ就職したので働き始めて6年目ですね」


「働いていたというのは、どんな仕事をされていたのですか?」


 ポニテの第二騎士団のバージル様だ。何だか好奇心で、キラキラした目で見られている。


「仕事ですか? 仕事は食品の開発や販売をする会社で、企画や営業をする部署に勤めていました」


 言っている意味が解るのかな? この世界に会社なんてあるのかしら? そもそもお姫様が働く事なんてあるのかしら?


「とにかくお前は向こうの、えーと、日本という国で27歳。働く女性だったという事だな?」


 立ち直ったアレンが腕組みをしてそう言った。言いながら自分でも納得しようとしているみたい。


「そうです。27歳。杉本心菜。日本人でした。ところで、何で私は日本に異世界転移? させられたの? 生まれたのはアレンと同じ日でしょう。何か理由があったのですか?」


 確か、昔の日本でも双子が生まれると、どちらか片方を里子に出したりしたらしい。最悪片方を殺めてしまうとか、監禁して外に出さないとか……不吉で残酷な歴史もあったと聞く。

 ごくりと息を飲んで答えを待つ。


「それは王様と大神官に聞くニャーン。この場では無理ニャンねー。それよりココ? ココに聞きたい事がニャーン」


 ダーチェだ。彼は自分の座っていた椅子ではなく、私の座っているソファの床に座り込んで私を見上げている。


 か、可愛い!! 真ん丸の頭が、ピンと立った耳が可愛すぎる!


「なあに? ダーチェは何が聞きたいのかしら?」


 ついついダーチェの頭を撫でてしまった。この位置にあるモフモフの誘惑に、勝てる人間なんていませんよ。


「ウニャン。あのニャン。ココは()()なのかニャン?」


 部屋の空気がビキッと音を立てて凍りついた。


 シヴェル様がお茶に咽た。

 バージル様がソファからずり落ちそうになった。

 レブランド様がティーカップを持ったままお茶を零している。

 アレンはお茶をブーっと噴き出した。

 ジェイドは、目を見開いて私を凝視している。


「どうニャン? ココ?」


 おとめ? 乙女って、乙女ってこと? つまり、乙女って乙女(ヴァージン)ってことを聞かれてる?


「……」


「ココ?」


「……な、」


「な?」


「……なんて!」


「なにニャン?」


「なんて事を聞くの!? 言わないわよ! ぜーったい言わないわよ! セクハラよ! 立派なセクハラ!」


 可愛い貌と可愛い声、可愛い仕草で、ダーチェったら何て事を聞くの! そんな事この場で言えるわけ無いじゃない! 男性ばかりの、それもこんなイケメンばかりの中で!


 鼻息も荒く言い切った私に、ダーチェが肩を竦めて言った。


「ゴメンねニャン。僕は聞けないと言ったのニャン。でも、この大人達が聞けって。僕は嫌だって言ったニャン」


 ダーチェが私の膝にスリスリしながら上目遣いで見てくる。っくっ。


「おい! 貴様、ダーチェ! 嘘を言うな。貴様が自分で聞いたのだろう! 誰もそんな事聞けとは言っていないぞ!!」


 真っ赤になって立ち上がったアレンが、ダーチェの首根っこを摘み上げようとした。ああ、そうね。この世界の17歳の青少年にとっては、刺激が強い話なのかしら。


「イヤーン。ココ、アレンがダーチェを虐めるニャーン!」


 私の膝にしがみ付いて、ダーチェがいやいやをしている。アレンの手を避けようと必死だ。


「まあまあ、アレン、落ち着いてちょうだい。ダーチェも女性に聞いて良い事と悪い事は、覚えておいてね? まして、こんなに人のいる所でなんて駄目よ」


「じゃあ、二人だけなら教えてくれるニャン?」 


 この子、意外とメンタル強いわね。可愛い顔して結構グイグイ来るわ。


「ダーチェッ!」


 若干引き気味だった私の替わりに、シヴェル様が口を開いた。


「ダーチェ。いい加減にしろ。ココレット様も困っていらっしゃる」


 微妙な空気に包まれてしまったけど、まあ、確かに気になるところかな。だって、17歳と27歳だよ? 多分この世界では日本より結婚が早そうだもん。27歳なんて、言いたくないけど婚き遅れ。婚かず後家とかお局様とか言われてる年頃じゃないの? 

 まあ、確かに日本でも早いとは言われる年齢じゃなかったけど、まだまだ大丈夫。40代で結婚だって普通にある時代だし、結婚しなくてもちゃんと生きていける世の中だったけど。



 でも、この世界は……男尊女卑の早婚。一夫多妻制だったりして!?


「おい。ココ。大丈夫か? 何だか顔色が悪いぞ?」


 アレンに顔を覗き込まれた。何だか想像だけで疲れて来たわ。早く色んな事を明らかにしたい。そうじゃないと想像だけが大きく膨らんでしまいそうだ。


「ジェイド、ココの具合が悪くなる前に城に帰るぞ。父上達もお待ちだからな」


 考え込んでいる私を見かねて、アレンがジェイドに声を掛けた。そうよ、何時までもここにいる必要は無いのだから。


「ココレット姫、ここからお帰りになりますか?」


 ジェイドが聞いてくるけど。ちらりと見やって頷く。


「お話しを聞きたいので、王様や大神官様に会いたいです」


「判りました」


 すんなりとジェイドが頷く。何だか急に物分かりが良くなったみたい。だ。

 でも、下を向いて何か呟いている。



「ココレット姫が……27歳。乙女ではない……かも?」


 小さな声でブツブツ言っているのが聞こえた。それもさっきの話題を引きづっているし。



「はぁ。あのね、日本で27歳って言ったら、()()である方が珍しいかもよ!?」


 ついついそう口に出てしまった。慰めるつもりで言ったのだけど……




 ヤバっ!! やっちゃった!


 

 シヴェル様がお茶に咽た。

 バージル様がソファからずり落ちそうになった。

 レブランド様がティーカップを持ったままお茶を零している。

 アレンはお茶をブーっと噴き出した。

 ジェイドは、目を見開いて私を凝視している。




 ああ! デジャヴった! さっきもこの風景を見たわ。





 そして、皆にドン引きされたのが……判った。








ブックマーク、誤字脱字報告、感想、イラスト

評価ボタンのポチも

お待ちしています。


少し事情の分って来た心菜さん。

しかし、多分皆が気になっていた

年齢の経験差をダーチェが

突っ込みましたね。


さて、城に戻って話が聞きたい

所ですが、なんかショックを受けているジェイド。


次話、美爺節炸裂です。


楽しんで頂けたら嬉しいです。


別話の悪役令嬢は天使の皮を被ってます!! の本編が完結しました。宜しければそちらもお楽しみくださいませ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] えーっと…結局乙女じゃないって事でいいんすかね?(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ