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烈風のアヤキ  作者: 夢闇
二章 ~アクリス武闘大会~
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『夕餉の時間帯』

「これまた・・・・」


「たまげるね」


「これなにー?」


「・・・・・」


「うまそうだな」



あちらの世界出身の四人とツキが横に並んで座っている


反対側には同じくファンダーヌからご一緒にと誘われたアルデリア、グレアント、リーナの王女4人とお誘いしたファンダーヌの王女がそろって座っている


これまた全員が美しいドレスを身に纏い、俺はこれ以上ないような素晴らしい光景を見ている


なんとまぁ全員が全員こうも綺麗で美しいのだろうかと聞きたいくらいだ


千尋ちゃんは目の前の小さな、謎の焼いた鳥の足のような物体を持っていろいろな方向から見ている


以前見た食事風景の倍はあるだろうか


巨大な机に余すところ無く食事が並んでいる


此処はお城の中なのだが、皆がそろって食事するというのも滅多にないことなので、ということで王女5人がそろって食事をとることになったのだ


まぁ俺たちはついでみたいなようなものらしい


別にいいけど



「さて、料理を前に静になることは無いですよ。楽しい食事会にしましょう」



ファンダーヌの王女、たしかエリエルと言っただろうか


エリエルさんはそう言って手を二度叩いた


俺もついこの間知ったのだが、食事の時に二度手を叩くのは元居た世界でいう頂きますのようなものらしい


まぁ意味は違うだろうが、食事の始まりを意味する合図のようなものだと知った



「いただきます」



ということで、まず真っ先に食べ物に手を伸ばしたのはグレアント王国王女、紅髪のアルフレアさんだった


ひょいと手を伸ばした肉塊をブスリと刺して口に放り込む


咀嚼風景を見ているとなんだかとても美味しそうなものに見えてきたので、俺も近くにあった同じ肉をフォークで刺してぱくりといただいた


あ、美味い



「今日はお疲れ様でした」



なんて思って肉を噛んでいるとアルデリア王国王女セレシアさんが俺に声をかけてきた


すぐにそれが俺にかけられた言葉だと理解すると俺はすぐに噛んでいた肉を飲み込んで水を一口飲む



「いやいや、別にそーでもないですよ」


「おぉ、そう言えばお主も出ておったな大会に」



あら、なんか話題が大会方面へ向かい始めたな


視界の隅で一条さんがサラダのようなものに手を伸ばすのが見えた



「え、まぁ、出てましたよ」


「予選突破おめでとう、と言いたいところだが実質あれはどうやったのだ?」


「え・・・っと何の事で?」


「お主、何か細工をしただろう?」



おっと、ばれた?ばれてた?


出来るだけ他の選手に手の内をあかしたくないので十分相手の勢いを利用したつもりだったのだが



「あっちゃ、ばれますかね?」


「どうだろうな。私はお主がどのようにして勝つかということをじっくり見ておったからな。それなのにあんな相手が自滅というあっけない結果で、それもあんなミスを相手が犯すのかと思ってな。ちょっとかまをかけてみたのだが、どうやら図星らしいな」


「うゎ、ひでぇ」


「どれ、種明かしを聞かせてもらいたいな」



んー・・・ここで話しても別に大会に支障が出るわけじゃぁ無いし・・・って、あ!



「ってかそっちの騎士団もこの大会に出てるじゃないですか!教えられませんねー」



秘密厳守。そう易々と手の内をあかせるものか!



「ぬぅ、こっそり聞き出してお主の秘密の対策をと思っていたのだが・・・」


「ひでー」


「まぁ良い。そんなことせずとも、我が紅炎騎士団がお主に負けるとも思えんがな」


「う・・・まぁ戦うのが本職の人に簡単に勝てるとは思いませんけどね」



その辺は本音である


騎士団、まぁ騎士なのだが。そのトップに居るような人達に勝てる気なんて殆どしない


なら何で大会に出ているのか、という事にもなってくるのだが大会に出るまでは修行で気がついた能力の一つを使えばそれなりに奮闘出来るのでは無いかと舞い上がっていた部分も少なからずある



「でもまぁ、粉骨砕身で頑張ってみる所存であります」


「頑張れアーヤん。ほれあーん」



そういって一条さんが小さな肉を俺にズイッと差し出してきた


ほんのり頬が紅いが、それは恐らく右手に持ったワインもどきのせいだろう


さっきからものすごい勢いで飲んでいたからな


ていうか寄っているのだろうか?



「お、おー」



ぱくりと肉を頂き、手元の水をごくりと飲み干す


何となく視線を王女達の方へ向けると、私の国の騎士団の方が、いや私の国の方が・・・みたいなやりとりをしている


さっきのやりとりから自国の騎士団が勝利するだろうという論争を繰り広げているようだった


無闇にそこに突っ込む気も無いので静に俺は食事をとることにした


するとその論争が終わったのか、今度は先ほどの龍の話に移った


発言者はリリアだった


なんでも間近で龍を見てとっても興奮したとか空を飛んで恐かったとか、まぁいろいろと話していたのだがすぐに俺にも関係ある話になっていった



「え、北ですか?」


「あ、そうそう。なんか近々北の方に行くかもしれない」


「へぇ、それまたなんでですか?」


「まぁ、えとセレシアさんとアルフレアさんは知ってると思うけど俺龍の神子になったってのは覚えてますよね」



二人はこくりと頷いたが、他の三人の王女、そして千尋ちゃんと佐竹さんには良く分かっていない様子だった


とりあえず最後の二人には後々俺の冒険談とあわせて聞かせるとしよう



「それでなんだか龍とは別の神獣が俺をお呼び、ってな感じです。なんか封印がなんとかかんとかって」


「あ、それで私も同行するかも」


「お前もか」



アルフレアさんが声をあげた


背もたれに体を預けてぐいっとワインもどきを飲んでいた



「えっと、実はそこの神獣さんの神子がどうやら私っぽくて」


「なるほどな。それでこの前のアヤキと同じ立場に立っているということか」


「ん、そうなるねー」



すると、佐竹さんが俺の肩を叩いてきた



「話が全く見えないんだが」


「あー・・・後で説明します。たぶん貴方も神子だと思うし。えっとまぁ簡単に言うとこの世界に神獣っていう生き物がいて、それぞれがいろんな場所を治めてるらしいんですがそのために神子の力を借りてその治めている場所に、その魔法的な、マナっていうんですけどそれを行き渡らせるのを毎年やっているんです」



俺もそれやってきたんですけどねー、と付け加えた



「ていうか佐竹さん、このファンタジーな世界に慣れました?」


「・・・・未だに信じたくは無いんだが、夢とかの類では無いのか?」


「じゃぁぶったたきましょうか?痛かったら現実ってことで」



俺は手を振りかぶってみる



「ジョーダンだ、ジョーダン。それで、ここは何処なんだ?」



あー、そっからかー



「別世界ですね。簡単に言うとお隣の世界的な感じ。帰る方法は今模索中。でもある程度この世界にも慣れた方が良いと思います。何時帰れるか分かったものじゃないですしね」



最も、移住するくらいにまで心を許すのはどうかと思いますけどねーなんて言っている自分はどうなのだろう


案外住み心地が悪いわけではないし、この世界なら自分にあった魔法を使う能力を使えるのだからある意味便利なんだけど・・・


結構この世界に馴染んできているのでは?と思わずにはいられない自分がいる



「そ、それで北ってどんなところなんですか?」



王女達の言い争いがぴたりと止まる



「そうだな。戦争一歩手前ってところだ。最も南のこっちは情報が遅いからすでに戦争していても不思議ではない。が、まだそういった情報は入ってきていないな」


「戦争一歩手前・・・・」


「やっぱりこっちの世界の人って魔法とかも使って戦争するんですか?」



と質問したのは隣にいた一条さん


驚いたことにまだ自分で質問するくらいの意識は保てているようだ


というかお酒置いてくださいよ。とりあえず


もう顔真っ赤じゃないですか。そのままメルトダウンするんじゃないかあの人?


ま、冗談だけど、酔いつぶれるのも時間の問題だろう



「戦争で魔法の効果は大きいぞ。やろうと思えば一気に相手の部隊を全滅、なんてのも可能だ」


「わー、すげー・・・・ってか人の命をそれだけ一気に奪えるものなんですね」


「まぁそうさせないために身方の魔術師が頑張るんだがな」



そう言ってアルフレアさんもワインもどきをごくりと飲み干して、給仕の人にお代わりを注いでもらっている



「とはいえそんな大がかりな魔法を使えば大半の魔術師と周囲のマナが一気に消耗してしまうからやりませんけどね」


「だな。一発撃つためにそんな消費はしていられん。失敗すれば敵の魔法を防ぐ者も、魔術の源、マナすら無くなってしまうからな」



話を聞く限り、嘘でも大げさな話でも無いらしい



「北かぁ・・・」



日本人で平成生まれなものだから戦争なんてまるっきり経験も実感もわかない


平和ボケだろうか、みんなで仲良くをモットーに育てられてるようなものだから、俺も争い事は基本的に好きじゃない


喧嘩なんてまっぴらゴメンだ


まぁ試合は別だけど


そんな戦争一歩手前な場所に行くのか俺たちは


戦争の火の粉が降りかからない程度の場所なら良いけど・・・


巻き添えなんてまっぴらゴメンだ


こんなところで命をかけていられるか



「お前達も戦争ぐらいは知っているだろう?」


「そうですね。昔はやってたみたいですけど俺たちの国はもう戦争していません」


「平和だな」


「まぁ・・・安全っちゃ安全ですかね。島国なんですけど昔戦争で多くの人が亡くなったものですからもう戦争しません宣言してるんで、おそらく戦争はもうしません」


「ということはもし敵国が攻めてきたらどうするんだ?防衛も反撃も出来ないじゃないか」


「まぁいろいろとややこしい事になってるんですが、簡単に言うと俺たちの世界で恐らく一番強い国に守ってもらってる状況ですね。何処まで信用できるか分かりませんけど。基本こっちが何もしなければ攻撃されませんし」


「だが、外交上不利な部分もあるのでは?」



セレシアさん・・・



「まぁ、俺が外交してる訳じゃないから詳しくは知りませんよ。まぁただ、他国にはヘコヘコしてるイメージがありましたね」


「ほぅ」


「まぁ一国民としての意見ですから、あまりお気になさらず」



俺はそう言って肉を手に取った


夕餉の時間はまだまだ続いた






 「さて、どう忍び込むものか・・・」



ここまで来ておいて計画すらろくにたてていなかったのは流石に不味かったか


周囲はゆったりと流れる川が濠となっているし、裏手に唯一道が通じている唯一の橋はこの時間は対岸まで掛かっていない


必然的に忍び込むならこの濠を抜けないといけないが、そんなことをすれば見張りの兵にあっさりと捕まるのは目に見えている


まぁ昨日の今日で立てた無理矢理な計画にそもそも無理があったのかもしれない



「飛び込むのはいやだしな」



仕方ないと男が腰の鞘から剣を抜く


流れるような仕草で剣を一振り、そして鞘に収める


そして男は水の上を歩いて、出来るだけ兵士に見つからないようにこっそりと城へとたどり着く


流石に道も部屋も分からない城内を進むのは得策ではないし、兵士も多くいていざこざが多くなるだろうと俺は上を見上げた


男が壁の凹凸に手をかけてよじ登っていく


とりあえず上に向かえば出会えるだろうと、これまた何となく適当な考えでの行動であった









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