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烈風のアヤキ  作者: 夢闇
一章 ~龍の神子~
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『それは実りの祭日』

全てが終わった


そういった和やかな雰囲気を味わう間もなく、突如どこからともなく一人の男が現れてあっという間に黒玉を持ち去っていった


この事件に黒玉が関わっていた事に驚きもしたがむしろあの黒龍の襲撃が人為的だったことに俺は驚いている


黒龍が俺たちの前に姿を現したときにすでにボロボロだったこともこれで納得がいった


恐らくあの黒龍は捕まえられ、そしてあの男に利用されたということ


そして男の口ぶりからして他にも仲間がいるということも僅かながらに聞き取れた


それは組織的なものを感じさせ、今後黒玉を使って再び何かをしてくるかもしれないという予測もたてられた


『夜の風』から黒玉を奪われて日が浅いことも、アジトがそこまで遠くないということを表しているとも思われた。が、奴らは飛べると言うことでいくつでも山を越えることは可能だったと思われる


そうなれば歩くより何倍も早く移動できると言うことになり、どこから来たのか見当もつかなかった


魔力も闇と共に感じなくなった


情報もなく、追う手段は完全に断たれてしまった


俺たちは虹色の龍と別れを告げた


神龍達は元々の生命力が強いためかシェルディさんの魔術を使うとすぐに回復して治す本人もびっくりしていた


その後、数日をかけて一行は王都リッドクルスへと帰還した


その王都はというとものすごい活気に満ちあふれていて俺たちが王都を出る前とは遙かに規模が違うほどだった



「これって・・・」



王都への門をくぐった先には数々の出店が並んでいた


そしていつもの倍以上の人たちが街を行き交っていた



「これはマナの実りが巡ってきたことを祝う祭りだ。そうか、この前あの虹色の龍がマナを放出したからこの土地にマナが行き渡ったんだろう。やはりあれがマナの実りの正体だったか」



レイルさんは説明をして何故か一人で勝手に納得した



「ま、でも少し遊ぶのは早いかな。先に王女のところへと戻らないとな。そこまでが俺等の仕事だ」



セルディアさんとシェルディさんもこくりとうなずいて同意する


結構この人たちには助けられたなぁ


自分が実際に大怪我をしたりすることはなかったが無事に帰ってこれた事に感謝である



「なんか家に帰るまでが遠足って感じだね」



隣にいた一条さんがクスリと笑う


遠足にしちゃハードすぎましたけどね〜


なんて俺も笑ったりして


なんだかんだでいろいろ合ったけど、誰一人欠けることなく戻ってこれて良かった


街中は人が多く、大通りを走る馬車なども使えなくなっているため仕方なく裏道を通って俺たちは城へと戻った



「アルフレア様、レティール並びにロルワートからの使者が間もなく到着するとの事です」


「そうか。アルデリアの王妃は早めに手を打ってくれて助かったよ。ファンダーヌから返答は合ったか?」



アルフレアは椅子に座って書類を眺めながらその奥に居るジュルアスの報告を聞いていた


突如やって来て火山へと向かった彼らが出て行って一週間弱


登山だけなら半日ほど在れば頂上までたどり着くがそこまでの道のりが大変だからな


まぁもうしばらくかかっても無理は無いと思うが無事に帰ってくることだけを祈っておくか



「今朝方使者が到着し、返答をお持ち致しております」


「わかった。先にそちらを通してくれ。その後に使者二人を通す」


「畏まりました」



ジョルジュが礼をして部屋のドアを閉めた


静かな部屋に彼が立ち去る足音が聞こえてくる


先日送ったファンダーヌへのサクラ、イチジョウ等の異世界人の事に関しての文章をファンダーヌへと送ったのだがどうやらその返答が来たらしい


内容は確か彼らの事情と今後どうするか、そちらにも同じように異世界人が現れているのであればその情報の掲示を求めるような内容を書いた気がするが果たしてどういう返答が来るのか


もし居るのであればリーナに居る子供の親で合って欲しいと願っている


出来るだけあの子には親と再会して欲しいからな


あの子も寂しい思いをしているであろうに・・・


ファンダーヌはグレアント、アルデリアの南方に隣接する国でリーナのように西東に伸びる国である


海に面しており、ファンダーヌからは豊富な魚介類がここ、内陸の国にまで流れてくる


ファンダーヌに行くには街道を下り、セルホトの森、リト川を越えて行かなくてはならない


そう言えばアヤキ・サクラもアルデリアに行くと言っていたのでこの街道を下っていくことになるだろう


この街道はアルデリアを囲む山脈を迂回していく道で途中ファンダーヌとアルデリアへ行く道が分かれている


ファンダーヌに行ってあの少女を安心させるというのも一つの手だろうか・・・


っと・・・今日中に終わらせないといけない書類がいくつか在るのだったとアルフレアは手元の書類に目を通し始めた



「おーい、これ武官に回す奴だろう。なんで私のところに・・・」



何の手違いか目を通した書類は紅炎騎士団の派遣要請の許可書だった


派遣場所は少し遠目の村だが数日かければつく距離であった


が、その内容に目を通して言葉を止めた



「ふむ?まだそんな時期じゃ無いはずだが・・・」


「失礼致します」


「ん、入れ」



アルフレアは一端その書類を机の上に置いた


ジョルジュが部屋に入ってきた


その手には一通の紙筒があり、綺麗なリボンで結ばれていた



「返答ってのはそれか」


「はい。読み上げましょうか?」


「いや、いい。渡せ」


「はっ」



アルフレアはファンダーヌから届いた手紙の返答を読むべくリボンを解いて紙を開いた



「・・・・ふんふん・・・・ほぅ・・・・」



肩肘をついてその書状を摘んで垂らして読む



「黒髪黒眼、中年の異邦人一名を保護。殺されては居ないようだな。んで、我々はそちらと同意見で指示に従う、と。そうか。ま、上出来上出来」



ぽいっと放り投げた書状をジョルジュが受け取り、次いで投げられたリボンもジョルジュに投げつける



「保管庫に閉まっておけ」


「分かりました」



とりあえず殺されては居ないしこちらの提案ものんでくれたようで助かった


さて、お次はわざわざ使者をよこした2国か


アルフレアはサッと立ち上がり壁に掛けられていた紅いマントを羽織った


二つの国はどう返答してくれるのかな



「ジョルジュ、謁見行くから使者を通しておいてくれ」


「畏まりました」



アルフレアはマントを翻して謁見の間へと向かった


謁見の間にてその二人の使者を待つ


しばらくして二人の使者が近衛の騎士に警備されながら謁見の間に入ってきた



「近衛隊は部屋のドアを外で守っていろ。盗み聞きはするなよ」


「「はっ!」」



釘を刺しておいて二人は部屋を外出する



「報告は少し待て。今母上も来ることになっている」


「待たれる必要は無いわ」



母が来るのを待つつもりが声を発し終えてすぐに母が室内に入ってきた


アルフレアと同じように紅いドレスを身に纏っている


が、その風格はまだ幼さを体に残すアルフレアと違い、大人な風格を感じさせる


これがアルフレアの生みの親、オリシアである



「お二人とも、お顔をお上げになってくださいな」


「私、レティールより使者を仰せつかったミリオと申す者」


「私、ロルワートより使者を仰せつかったアルダートと申す者。主より書簡を預かっております」


「同じく主より返答の書簡をお持ち致しました」



二人はそう言って懐からそれぞれ紙を取り出した


綺麗な箱に収められたその書状を差し出す二人


それをアルフレアとオリシアはそれぞれ一つずつ受け取った



「レティール、精霊台保持国会議に参加」


「ロルワート、精霊台保持国会議に不参加」



・・・・



「そうか、不参加か・・・・あのじじぃめ・・・」


「こらフレア、そんな言葉を使ったらだめですよ。理由は大方分かりますが・・・」



私も何となくは分かっていた


今確か北方の国々ではいろいろともめていると聞く


一歩間違えば戦争へと発展しそうな勢いの中で国王が抜けるわけにも行かない


それにロルワートはあまり他国との交流をしない国であり、何年も独裁政治が続いている国と聞いている


そういう場所こそ参加して異邦者の安全を確保しておきたかったのだが・・・


とりあえず一国だけでも参加国が増えてくれるのはありがたい


これでグレアント、アルデリア、ファンダーヌ、リーナ、そしてレティールが参加を表明した


これは精霊台を保持する9国、上記の6国に加え残りの3国にも書状を飛ばしては居るのだがなにぶん遠いためにまだ書状の返答は届いていない


私が各国の精霊台の保持国に書状を送ったのはこの一件の責任者が私に選ばれたからだ


アルデリア、グレアント、リーナの水鏡での交信があった後日、2国からこの一件を我々グレアントが受け持つようにという書状が届いた


アルデリアよりグレアントの方が位置的に交通面や国力がやや上で在ること


リーナは帝都が二つに分かれているためあまりそういったまとめごとをするのにはむいていないとのこと


結果この国に彼らの一件を任されたのだが父も母も忙しいためこれも勉強と何故か父母から押しつけられたというのもあるけれど


とりあえず国同士の大事な決めごとの時には母か父に同席して確認などをとってもらうことはしている



「一つ聞くがアルデリアからも書状は届いているか?」



前回水鏡で会談したときにセレシアも書状を送るとか言っていたはずだ



「は。立ち聞きした話では在りますがどうやらアルデリアからも同じような書状が届いたと言う話を聞いております」


「ロルワートはアルデリアからの書状を確かに受け取っております。この書状の件に関してはお話しできません」



なるほどね。この(・・)、か。ロルワートは少し遠い北方の国であるためついでに、といった感じで彼に2国の文書を渡したのだろう


恐らくそうであろうという予想を立てた私は少し聞いてみる



「なるほど、では貴方は今もう一通、他国、括弧アルデリアへの書状をお持ち、ということでいいんだな?」


「は、え、えぇ!?」


「驚きようからして確かに持っているようだな。別に取ったりはしないさ。というか狼狽えるなよな使者なら。命取りだぞ」



こういう場合には同じ使者に二つ以上の国の書状を持たせるものではない


国にはそれぞれ思惑がある


仲が良くない国ほど、相手の動向を探ろうとするもの


それを悟られるようではまだまだ



「我々に良心が合って良かったな。なぁ母様」



内心使者の方は汗だらだらかも知れないな


私は少し遊びすぎたかと反省した



「フフッ、そうかもしれませんね。では確かに受け取りました。でこれを主にお渡しください」



オリシアはそう言って懐から2通の書簡を取り出した


片方をレティールの使者に


もう片方をロルワートの使者に


あらかじめ用意していたその書簡を手渡す



「確かにお預かり致しました」


「同じく、確かにお預かり致しました」


「確かにお渡し致しました。ちゃんと届けてくださいね」


「「はっ!!」」



二人は違う国の使者だというのになんだか息ピッタリだな


そんなことを思いながら私は窓の外を眺めた


彼らはいつ帰ってくるのだろうか


そんなことを最近はずっと考えてるなぁとふと自分に返り、今はまだ公務中だと自分に鞭打って仕事モードに戻す


私が見下ろした城下では、盛大に祭りが行われていた


あそこに■■■■遊びに行きたいな・・・


・・・・自分はいったい何を考えているのか・・・





「おっしゃ!」


「よし、持ってけ泥棒!!」


「サンキューおっちゃん!」



俺は手にした二つの大きな串焼きを隣にいた一条さんとツキに渡した


あの後少し城に行く前に城下の祭りを楽しんでも良いだろうという事で羽目を外す感覚で俺達は街を探索していた


っていうか前言撤回ですかレイルさん?


祭りの風景を見てたら自分も遊びたくなったとかそんな感じですかね?


一応レイルさんとセルディアさん、俺、一条さん、ツキ、シェルディさんのメンバーに分かれての行動となった


まぁ保護者的な役割、あと空気を読んでシェルディさんが俺たちの護衛を引き継いでいる


レイルさんもセルディアさんも再会をゆっくりと喜ぶ場が無かったからな


それにしても何処に行っても店店店!!


毎年行っていた近所の祭りの何倍在るだろうか


俺はこういった祭りなどは大好きだ


よく電車で二つ隣の市で行われる大きな祭りに行っていた事を思い出すがそれの比じゃ無いくらいの盛り上がりようだ


俺たちはツキと一条さんとの3人で行動している


レイルさん、シェルディさん、セルディアさんも、3人とも久しぶりに昔に戻った、そんな顔をしているようであった


っていうかあの人達まだ護衛の任務中だけど職務放棄とかにはならないのだろうか?


ま、そんなことはどうでもいいか


今はこの祭りを楽しもうと思う俺だった


ちなみにこの祭りはマナの実りを祝うためのものであり、似たような祭りは他でも行われている


アルデリアも、リーナも、ファンダーヌも、この周辺の国々は龍族の守護地に当たる場所のためあのとき開放したマナの実りは同時期に訪れたはずだから当たり前である



「そういやアーヤん両手に花じゃん!!」


「は!?」




彼らがグレアントに戻ってきたのは全4日の祭りの最終日


周辺国は数日間の祭りに大いに沸いた








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