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烈風のアヤキ  作者: 夢闇
一章 ~龍の神子~
29/154

『いざ、天空へと駆け上がれ!』

「引くぞセルディア!」


「は!?」



昔から、こういう直感だけは信用しているつもりであった


その直感が、俺をここから離れさせようとしているのも何となく分かった


そしてその原因が先ほど見えた巨大な影であるということも


俺はセルディアのローブの襟首を持って思いっきり肩に担ぐ


攻撃が止んでアラミアントがゆっくりとこちらを見つめている


警戒しているのかは分からないが、横穴にまでは十分追いつかれずにたどり着けるはずだ



「ちょ、なんでよ!?」



セルディアが理解できないとでも言いたそうにしながら俺の顔を睨み付けているが気にはしていない


そして突如、前触れ無く天井が音を立てて崩れた


大きな破壊音と共に、巨大な影が飛び込んできた


崩れた瓦礫とアラミアントが落下してくる


そして二人は見た


一匹の紅い龍が、脆くなった地表を壊してこの縦穴に飛び込んできたのだ


そして落ちてゆくアラミアントを崩れた瓦礫を避けながら巨大な脚で鷲掴みにする


ギロリと俺たち二人を睨み付け、そして龍は上昇を始めた


一気に差し込む光が、瓦礫の影と共に床を照らし出す


瓦礫は、退路を断って縦穴の底を埋めるとしーんと静まりかえり沈黙した


間一髪、横穴に飛び込んで二人はホッと一安心する



「だ、大丈夫ですか?」



真っ先にサクラ・アヤキが俺たちの元へと駆け寄ってきた






横穴の先、巨大な縦穴の空洞で戦う二人が突如こちらに向かって走ってきた


いや、二人ではなく、セルディアさんをレイルさんが肩に担いで走ってくる


それと同時に巨大な音が遙か上空で鳴り響く


二人が横穴に駆け込むと、すぐさま穴の奥に巨大な瓦礫が落ちてきたのが分かった


瓦礫はそのまま俺たちの居る横穴の出入り口を塞いでしまった



「だ、大丈夫ですか?」



俺が二人に駆け寄り声をかける


レイルさんはぜーはーぜーはー息を荒げて仰向けになり、肩に担いでいたセルディアさんを放り出す


セルディアさんは落とした杖を拾って壁にもたれかかった



「何があったの?」



シェルディさんが後ろから出てきて二人に聞いた



「龍よ。龍が一匹、天井突き破って来たのよ」


「うゎ、マジですか」



俺は一度龍と対面しているから分かるが、あれは確かに逃げざるを得ないな



「まぁ向こうはアラミアント持って出て行ったけどな。まぁ餌探ししてたんじゃないか?」


「にしてもなんでこんなところにあんな大きなのが2匹もいたんですかねー?あんなでっかいのが入ってくる穴なんて無かったわよね」



ふさがった入り口を松明で照らしながら一条さんは言った


入ってきた穴とこの穴、その二つしか横穴は無かったと思う



「おそらくまだ子供の時期にここで育ったんだろう。巣穴自体は自分で作るからな」


「あの縦穴はあのでっかい奴の巣だったんですか?」


「そうだな。さて、先は長いようで短い。さっさと上を目指すぞ」



レイルさんは剣を杖代わりに立ち上がった


ってか少しぐらい休んでもいいのに、あの人どれだけ体丈夫なんだよと俺は思った








「さて、ようやく実験が成果になるときが来ましたね」


「そうそう。そうだね」



一人の女性と一人の男がいる


部屋は薄暗く、異様な光景が広がっていた


幾つもの蝋燭の火がゆらゆらと揺れて人影二つを映し出す


真っ昼間であるというのにこの部屋は闇に包まれている


机の上に置かれたグラスには紅い液体が入っている


真っ白なテーブルクロスに紅い光りがユラリと見える


それを二人は手に取りカチンとグラスを合わせた


そしてグラスに入った紅い液体をごくりと二人は飲み干す


長かった


どれほどこの時を待ち望んだ事か


どれほどこの瞬間を求めた事か


どれほどこの思いを募らせた事か



「長かった」



女はそう言ってグラスを机に置いた



「予想外に手に入った事ですこし予定が早まったが、まぁいいでしょう」


「あれはもういつでも使えるのか?」


「そうね。すぐに同調すればすぐにでも解き放つ予定よ」


「これを手に入れるのにも長い長い苦労をした。だーがだがだがその肉体を手に入れるのにも苦労したものだよ。わーざわざエスタニアにまで遠出をしたのだからな。まぁそれも今日この瞬間のためならば安い安い物だ」



男はそう言って部屋の隅にある地下への階段を下りていく


手すりもないその急な階段をゆっくりと下りていき、女性もその後へと続いた


階段を下りるとそこには広い空間が広がっていた


じゃらじゃらと小さく鎖の音が室内に響く



「そうあわてるな。今すぐ出してやるよ」



ギュアァァッ!!



バシンッと鎖が一気に張り、つながれている壁が大きく軋む音がした


が、壁が崩れることは無かった


代わりに小さな塵がぱらぱらと落ちてくる



「脆い脆い脆すぎる。全く、結界の設計者はどんな設計をしているのやらやら」


「あら、私に言ってるのそれ?」



男はため息をついてぼさぼさの髪を引っかき回す



「そう言うな。結界の期限も近づいている事だし、そろそろやろうか」


「何か気に障るんだけど・・・。まぁいいわ。皆が戻ってくる前に早く終わらせましょ。シアン、アラン」



女は闇に向かって自らの下部を2匹呼ぶ


闇の中から現れたのは2匹の魔獣


見かけはコウモリに似ている彼らは2匹で何かを脚でつかんでいた


それを女が受け取る


黒い物体はうっすらと自らの顔を映し出している



「なんと美しい輝きか」


「どれどーれ?私にもその輝きを見せてくれないか?」


「えぇ喜んで」



女が差し出すその黒い物体を男が両手で受け取った


まるで瞳を貫いて、その奥にある物までも見透かすような美しさをしている



「おーぅおぅ。これはこれは、なんと素晴らしい。まさに求めるだけの価値がある。さて、では彼を待たせるのも悪い。始めようか」



男は目を細めて闇の奥を見た


光りが無くとも物を見ることが出来る自らの目は、今、目の前の生物に注ぎ込まれている


期待と高揚感、



「教えてもらったキースイッチは?」



この特殊な魔道具の発動にはキースイッチが必要だ


これが分からなければこんな物に価値などありはしない


言葉と対になっている魔道具


鍵はすでに、これと共に手に入れてある



「キースイッチは――――」



女は言った


これが、この言葉こそが始まりだと



「『黒翼の堕天使の黒光』」









「おっしゃぁー、外だー!!」


「ッ高いわねー」



一条さんが下を見下ろす


断崖絶壁


なんでこんなところに出口があるのやら


続く道は壁づたい


ロープこそは壁に付いているものの、なんでこんな場所を歩かないといけないのかと思えてくる


高所恐怖症じゃなくても怖いぞこりゃ


腰が引けてくる


彩輝は引きつった顔で一条さんの隣に立つ


一条さんとは逆に俺は上を見た


山頂までは後少し


10分もかからないだろうという場所に出口はあった


が、そこまでの道のりが険しい


壁伝いにものすごく細い道を通り、そして断崖絶壁にかけられたはしごを登る


一歩間違えたら死ぬなこりゃ


転落死とか、なんかめっちゃ嫌だ


かっこわるすぎて嫌だ



そして・・・



つ、ついた・・・


たどり着いた


眼下の景色がすごい事になっている



「すげー・・・」


「ここまで来る人間は本当にわずかだろうな。ほら、見てみろ。あそこがさっき崩れた場所だろう」



レイルさんは少し下にある大きな穴を指さした


確かにそこにはぽっかりと穴が空いた場所があった


あれのずっとしたを通ってきたんだなぁ俺達



「って、帰りどうするんですか!?穴埋まっちゃいましたよ!」



俺は今更ながら突っ込んだ


今思えば穴は落ちてきた瓦礫で埋まっているしどうやって帰るのだろうか?



「ふっ、聞いて驚けノープラン!」


「・・・・」


「おい、驚けよ」


「もう驚けないです。リアルに怖くて驚けない」



え?なに?そのまま下山するとか?この急斜面を?無理無理無理



「まー何とかするさ。それよりも、このあとはどうすればいい?」



そうだったそうだった、このあとどうするかだ


まさか何も在りませんでしたで帰る訳にもいかないからな



「ソーレ、何か分かるか?」


「きゅー」



そうか、まだわかんないか


肩に止まるソーレにも聞いてみるが分からないとの答えが返ってきた


さて、どうしたものかな



「やっぱり火口かなぁ・・・・」



一番何かありそうな可能性が高いのは火口だよなと推測してみる


ここから火口までは少し距離がある


ここは少し火口から離れている



「ちょっと火口の方まで見に行ってきます」


「ん、分かった。とりあえず護衛としてついていこうか?」


「いや、大丈夫だと思います。すぐそこですし」


「そうか。じゃぁここで少し休憩しとるわ。暑いし」



そう。ここは暑い


すぐそこが火口なのだ


標高が高いとはいえ下はマグマ



「やっぱりあんまり近づくと危ないよな」


「かぅっ」


「だよなー。どこかいい場所ないかな・・・」



俺は眺めが良さそうで出来るだけ近づけそうな場所を探す


すると少し先にゴツゴツとした岩場があった


積まれた岩場の上までいければ当たりをよく見渡せそうだ


周りは結構高い場所まで岩の壁があり、前方は行き止まり


火口を見るにはこの上に登らなければいけなさそうだ


傾斜が緩やかな場所を見つけ、ちょうどゴツゴツとした岩場があったので岩を手で登っていく



「ほぇー・・・すげー。爆発とかしないでくれよなー・・・」



こんなところで噴火したら流石に死ねる


一瞬で蒸発だ



「お?なんだあれ?」


「きゅ?」



俺は登った岩場を降りる


先ほどの場所からは見えなかったがそこからまた一段凹んだ場所に、小さなほこらがたっていた



「なんだこれ?」



ほこらに刻まれている文字


この世界の文字が石の祠に刻まれている



「うむ、ここはやはり皆を呼ぶべきだよな」



俺はみんなを呼んだ


皆はすぐに俺のところに集まる



「ふむ、なかなかに古ぼけた祠だな」


「祠に術式が刻み込まれてるな。それも結構強力な守護陣の術式だ」



セルディアさんは祠に刻まれているのは術式だと言う


術式は魔術の行使をするときに作り出す術の数式のような物と教えてくれた


魔術を使うためにはマナを吸収して魔力に変換する


変換した魔力を魔術として使う際に魔法陣が出現するのだがその魔法陣が術式なのだという


魔法陣それぞれが術の構成をするため、術式がぐちゃぐちゃだと、魔力は魔術として行使できなくなってしまうらしい



「術の式、それを文字として残したものがこれだ。彼女が使う符術もその一つだ。術式を文字として紙に刻み込む。そしてキースイッチを言う事で発動させる」


「つまり魔法陣が術式で術式は文字?」



あれ?なんかこんがらがってきた


なんだか魔法とかの説明に関してはよく分からないことが多い



「まず魔術という物は魔力を・・・・そうだな。計算をイメージしろ。魔力を数字、術式は数字から答えの魔術を行使するための式そのものだと言えばわかるか?」


「あー、なんとなくは」


「これはその魔力、術式を魔法陣ではなく文字として使う事でここに封じ込めてあるのだ。そして条件がそろうと術が発動する仕組みになっている。符術はキースイッチである言葉がそうだ」


「えーっと、じゃぁ術式ってのは魔力を魔術に変化させるものだと思えばいいんですか?」


「まぁそんなところだ。これは熱に反応するようになっているな。それもかなりの熱が発生した場合のみに発動するようになっている守護陣だ。規模からして直径約500メートルほどか?」



セルディアさんは立ち上がって四方を見渡す



「みろ。ここを中心に約500メートル。このエリアは周囲よりも凹んでいるだろう?これはおそらく火山が噴火したときのみに術が発動して溶岩が流れ込むのを防いでいるんだ」


「へぇ。そういえばここだけ周りより少し低いですよね」


「まぁ魔力の残量からしてあと数十回は使えるぐらいの膨大な魔力が刻み込まれている。誰だこんなものを設置したのは?」



セルディアさんが首をかしげながら祠を調べる


俺は立ち上がって先ほど登った岩山を見上げた


あれはおそらくあそこが高かったのではなく、こちらが低かったということなのだろう



「これだけの優れた術式を刻み込める者はそう多くはないはずだが・・・。まぁもう死んでいるだろうな。これだけぼろぼろになっていれば」



俺は祠を見直す


至る所が欠けており、風が当たってかなり丸みを帯びている


たしかにかなり昔に作られたものなのだろうと思われる


ん?


俺は石の祠のドアが少しずれているのが見えた


あの隙間に手を入れてあけられないだろうか


中に何かあるかもしれない


俺は迷わず両手を隙間に突っ込んだ


それを見たレイルさんと一条さんも手を入れる


そして思いっきり石のドアを引っ張る


石が擦れる音もせず、思い石のドアはゆっくりと開いていく


そして中をのぞき込むとそこには自分の手のひらほどの大きさの虹色の板が置かれていた


板と言っても木製ではなく、それでも金属でもない板である


強固で叩いても割れそうもないそれは縦長の六角形のようにも見える



「なんだこりゃ?」



それを手に取ったレイルさんは日の光に照らす


虹色がきらりと反射する


美しいその光を俺は手に取った


虹色か・・・・


虹色虹色・・・なんだかどこかで聞いたことあるな


どこだっけか確か――――


手に取った虹色の板が突如光り出したところで俺は思考を止めた


虹色のそれは日の光に当てられて美しくきらめいている


が、反射の光ではない。自らが虹色に輝いているのである



「カゥカッ!」


「え?戻せって?」



ソーレがこれを元に戻せと言っている


俺は言われるがままにその虹の板を祠の中に戻した


すると祠が一瞬きらりと光ったかと思うと突如、そこから光りの球体が現れた


光りの球体はそのまま上空へと消えてゆく煙の中へと入っていく


そしてその光る球体は煙の中ではじけ飛んだ


それはまるで水晶がきらめくかのように太陽の光を反射して虹を作り出す


いや、あのきらめきはむしろ水滴のように・・・




虹を越えて空の大地へ



天架かる橋


ソーレの紡いだ言葉が唄となり、頭を駆けめぐる


白煙上る地にて天高く架かる橋、虹を越えて空の大地へ



「・・・・・虹の不死龍・・・」



そうか。そこで虹か


さっきのはおそらく、鱗



煙はゆっくりと固まっていく


実体がないその煙はゆっくりと集まり、やがて雲の橋が架かる


架かった橋は雲の向こうへ


架かった橋は虹を越えて



「道は出来たか」



レイルさんが祠を閉じる



「いや、すごいねこりゃ」



一条さんがたまげたように空を見上げる



「綺麗・・・」



シェルディさんが空を見上げて心の底から声を漏らした



「これ、わたれるのか?」



と疑問の声を出すセルディアさん



「雲に乗れるなんて夢みたい」



と珍しくうれしそうに言ったのはツキ



「きゅぃっ!」



と鳴くのはソーレ



「よし、行くか!」と空の先を見つめた俺



雲に触れる


雲は固まっている


フワフワとしたそれに俺は脚をかけ、そして登り出した


天空へと続く橋の向こう側に行くために


いざ、天空へと駆け上がれ!!


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